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V. 要 約

1.問題及び目的

 自閉症児の行動の改善に及ぼす動作法の効果は、その治療原理を「体験」に よって説明されていることが多い。従来の研究においては、動作法の変化は、

訓練:者(以下Tとする。)の主観に基づいていることが多く、自閉症児を対象 とした動作法訓練における訓練者と被訓練者(以下Cとする。)間にどの様な 相互交渉が行われているかを詳細に分析している研究は殆どない。

 また、動作法を適用した自閉症児の行動変容の研究においても、自閉症児の 行動変容を客観的に示した研究は少ない。

 本研究は、自閉症児に集団集中訓練キャンプにおいて動作法訓練を実施し、

動作法におけるTとCの相互交渉の分析を行うとともに、自閉症児の行動変容 に及ぼす動作法の効果について検討することを目的とした。

li.方法

1.参加者(被訓練者)

 自閉症児男児4名。でα gO7〜15.03) いずれも動作法訓練の経験は殆ど無 く、集団集中訓練キャンプの経験は無かった。

2.動作法訓練

 集団集中訓練プログラムにより、6日間に14セッションの動作法訓練が行 われた。訓練課題は、腕挙げコントロール課題、躯幹の捻り弛めが全セッショ

ンで行われた。動作法訓練は、VTR記録され、以下の分析が行われた。

 ①訓練従事時間…各セッションにおける「課題動作行動」 「課題従事前行動」

         「逃避等行動」の各行動の従事時間比率。

 ②合図行動開始率…各セッションにおける動作法課題遂行中のTの合図に合         わせてCが課題行動を開始した頻度。

 ③Tの援助行動、Cの行動の変化…各セッションにおける以下の評定に基づ         く各行動の出現頻度。

Tの行動 T1:Cが始発した動きに追随、肯定的評価をしている行動。

    T2:Cの始発を促す合図、動きを呈示している行動。

    T3:課題となる動きを呈示している行動。

    T4:Cが始発した動きに制止、否定的評価をしている行動。

Cの行動 C1:課題行動を始発後、その動きを継続している行動。

    C2:Tの合図・動きに合わせ課題動作を始発している行動。

    C3:Tの動きを受容して動かされている行動。

    C4:Tの動きを受け容れない。無視している行動。

④T→C.ρソ副…T行動→C行動の連鎖をρy副として抽出した出現頻度。

⑤訓練者主観(エピソード記述)の変化。

3.般化課題

 般化課題は、BL期、訓練導入期、維持期に以下の課題が設定され、分析が

行われた。

①自由遊び場面における訓練者への始発行動。

 始発行動={接近、注視、道具呈示、微笑、言葉かけ、8ε5碑ε}とされた。

②指さし場面における訓練者への指示要求行動。

 物品が特定できない場面において、指さして「あれとって」を呈示し、その  時の訓練者に対する指示要求行動の頻度。

③運動(腕の回し下げの動き)模倣。

 訓練者の腕の回し下げ行動を呈示したときのCの模倣行動。

④身振りの模倣テスト(Bεr82&1972)

 その他、母親に行動変化の聞き取りが行われた。

III.結果

1.動作法訓練における相互交渉

①従事時間のセッションに伴う変化から見ると、光被訓練者が訓練中期以降 佃8〜♪は、 「課題動作行動」を通した相互交渉に大半の時間を費やしていた。

中期までは、 「課題従事前行動」の比率も高いことが示された。

②合図行動開始率は、二二訓練者がセッションの進行と共に増加した。

行動と、T2行動が多く見られた。 T4行動は前期 ∬1〜4♪に多くに見られ、

T1行動は中期 ∬5〜8)以降セッションの進行と共に増加を示した。

 被訓練者の行動は、セッションを通してC3、 C 2行動が多く見られた。 C 3行動は、中期以降に減少し、C1、 C 2行動の比率が高くなった。 C 4行動 は前期に減少が見られた。

④T→CD即4は、最頻値を示すDy磁の変化から相互交渉の変化が見られた、

T3→C3ρyα4からT2→C2、 T1→CIDyα4へと全訓練期間にZ3回

の変化の過程を示した。またこの変化には、訓練者の設定する課題内のねらい の変化との関係も見られた。

⑤訓練者主観は、相互交渉に関する記述は、エピソード内容がセッション進行 と共に変化を示した。また、Cの身体部位に関する記述や弛緩に関する記述も セッション進行に対応した関係が示された。

2.般化課題における自閉症児の行動変化

①自由遊び場面における訓練者への始発行動。

 訓練者への始発行動頻度においては、変化のない被訓練者と増加が見られた 被訓練:者があった。その増加時期は、動作法訓練における「被訓練者の能動的 な行動制御が多く行われている時期」∬g10に対応していた。変化の見られな かった回訓練者では同様の相互交渉の時間が短かった。

②指さし場面における訓練者への指示要求行動。

 指示要求行動頻度は全事例共に変化が見られた。被訓練:者が他者の要求を意 識しないで物品を決定する行動は減少し、訓練者への指示要求行動は増加が見

られた。この時期は、動作法訓練における「訓練者の呈示する動きに合わせて 行動を生起させてきた時期」に対応した時期∬8.gあった。

③運動(腕の回し下げの動き)模倣。

 訓練者の動きを模倣する行動が出現した。この時期は、動作法訓練において は、被訓練者が「合わせて行動を発する相互交渉」を形成してきた時期、 「動 作課題従事時間」が急に増加してきた時期∬45に対応していた。

④身振りの模倣テストの結果は、全事例とも動作法導入前・後に明らかな変化

は見られなかった。

⑤その他の行動変化では、訓練終了後、他者の指示遂行行動の増加や固執行動 の低減などが母親から報告された。

;V.考察

1.動作法訓練における相互交渉

 動作法は、身体接触を通して、訓練者と被訓練者が相互交渉を持つことが特 徴である。動作法は、腕や肩の動きや、重力に対応した姿勢を作る時の「体験」

によって説明されるが、本研究においては、モデル化された訓練者の呈示する 身体の動かし方を模倣すること、他者の意図に基づいた合図に合わせて行動を 開始・継続・終結させたりすること、他者の援助に基づき行動の制御をするこ となどが相互交渉の分析の中に多く観察が可能であった。動作法訓練において は、訓練者が、被訓練者の状態に対応した動作法訓練の相互交渉を行うことの 必要性が示され、訓練導入当初の課題遂行前行動時間における相互交渉のあり 方についても今後検討が必要であることが示された。

2.自閉症児の行動変容に及ぼす動作法の効果

 本研究において、動作法の導入における自閉症児の行動の変容が客観的に示 された。本研究における行動変化の指標は、他者に指さされたものがわからな い時「どれ?」と確認する行動や他者の動きに合わせて自己の身体の動きを制 御させる模倣など、他者の意図に基づいた自閉症児の行動制御に共通点が見ら れるものであった。これらの課題における自閉症児の行動変化は、自閉症の障 害の最も重要な社会的相互交渉との関連が示唆される。般化課題の変化は、動 作法訓練における相互交渉の変化の時期と問に対応関係が見られ、動作法訓練 の相互交渉が自閉症児の行動変容に効果を及ぼしていることが示唆された。

3.今後の課題

 動作法の効果は、訓練における相互交渉そのものにもあることが示唆された。

しかし、動作法には、従来から言われているリラクセイションやタテという従 来から重要と考えられている要素がある。本研究においては、それらの成分が

考慮されなかった。従って、相互交渉変化に伴う自閉症児の行動変容を明確に する為には他の要因の検討も必要であり、今後の研究方法の開発、発展が必要

である。

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