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江西省九江青陽腔「白兎記」

第1節  精神障害関係の施策と精神保健福祉の取り組み

(1)精神保健福祉施策の動向

この間の精神障害関係の施策は、2004年に厚生労働省精神保健福祉対策本部から出された精神保 健福祉施策の改革ビジョンでの「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本理念にもとづいて、

「受け入れ条件が整えば退院可能な入院患者」を10年間で7万人を退院させるという目標にそって進 められてきている。

特に2009年の「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」報告書では、精神保健医療 福祉体系の再構築や精神医療の質の向上などに関する提言がなされ、それをふまえて2010年6の月閣 議決定においては、精神障害者に対する強制入院などの保護制度の見直しとあわせて、「社会的入院」

の解消の具体的方策を数値目標も含めて都道府県の障害福祉計画に定めるとしている。これを受ける 形で、入院防止のための適切な支援を行うアウトリーチサービスや退院後の地域定着をサポートする 地域移行・地域定着サービスなどの取り組みを行うとしている。このように障害保健福祉施策におい ては、障害をもつ人の地域での自立生活を支える地域生活支援サービスを市町村を中心に行うための 施策が展開されてきているのが特徴である。

2007年から施行された障害者自立支援法では、特に障害をもつ人の自己負担の問題がクローズアッ プされ、多くの障害当事者や関係者から批判されたわけであるが、他方で精神障害に関しては、知

的・身体障害と並んで障害として位置づけられ、地域移行の推進や就労支援の強化など、精神障害を もつ人も他の障害をもつ人と同じように地域で自立した生活を営む上での制度的条件が整備されたと いう点で、一定の前進を見たことも事実である。

あわせて、福祉施策の実施主体を市町村にした点も重要である。地域移行や地域定着という課題を 考える時、その地域に密着したサービスを提供できるのは、いうまでもなく市町村であるから。とり わけ精神障害に関しては、サービス提供の主体が従来は主に都道府県であったことを考えると、サー ビスの実施主体を市町村に一元化し、都道府県はそれをバックアップするという仕組みに変えること によって、サービスの利用者である障害当事者に対して市町村が責任をもってサービスを提供できる ようにした点は特筆される。

また、従来多くの種類に分かれていた障害者福祉施設体系を6つの事業に再編統合するとともに、

新たに「地域生活支援」、「就労支援」のための事業を創設するなど、全体として地域生活中心のサー ビス体系へ再編した点も強調しなければならない。特に就労支援では、その内容を就労移行支援と就 労継続支援に分け、前者については、一般就労を希望する障害当事者に一定期間、就労に必要な知識 の習得や様々な能力の向上のための訓練を行うサービスを提供する。そして後者については、一般企 業等での就労が困難な人を対象に障害に対応した働く場とともに、就労の際に必要とされる知識や能 力の向上のための訓練を行うサービスを提供する。「平成25年版障害者白書」(内閣府、2013年)に よると、こうした取り組みにより、この10年ほどで就労系障害福祉サービスから一般就労への移行者 数は3.4倍に増加し、また就労継続支援A型事業される福祉工場などの利用者は5.5倍に増加している という。あわせて、一般就労が困難である障害をもつ人対象とした従来の授産施設、現在の就労継続 支援B型事業所等では、工賃の向上などに向けた支援を行うとしている。

一方、地域生活支援については、地域活動支援センターを立ち上げ、障害当事者がそこに定期的に 通うことで、創作活動や文化活動、生産活動等の機会を提供する。そのことによって、地域社会との 交流や定着の促進等を図る地域生活支援事業を実施するとしている。

障害者基本法では、障害者福祉に関する施策の計画的な推進を図るため、国に障害者基本計画を策 定することを義務づけている。これにそって「障害者基本計画」が閣議決定され、そこでは「共生社 会」の理念の下に、障害をもつ人が、社会において対等な構成員として位置づけられ、自己決定の原 則にもとづいて社会のあらゆる分野に参加できる社会の実現をめざした障害者施策の基本的あり方に ついて述べられている。さらに2004年の同法の改正によって、国と並んで都道府県および市町村に おいても障害者計画の策定が義務づけられた。その策定状況を見ると、2010年度末の段階ですべて の都道府県および政令指定都市で策定されている。内容的にも、国の障害者基本計画に盛り込まれた 8分野の中で、「啓発・広報」、「生活支援」、「生活環境」、「教育・育成」、「雇用・就業」、「保健・医 療」、「情報・コミュニケーション」についてはすべての自治体の計画に盛り込まれているが、「国際 協力」については約3割となっている。

また、市町村(特別区を含む)においては、同時期で計画を策定しているところは、全体96%となっ ており、その計画の内容を見ると、同じく8分野のうち、「国際協力」は約1割と低いものの、その

他については9割前後が盛り込まれている。

なお、20012年6月に障害者自立支援法にかわり「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援 するための法律」(略称:障害者総合支援法)が成立したが、基本的には障害者自立支援法を引き継 ぐ内容となっている。

(2)地域生活支援事業による自立と社会参加の促進

上述のように、障害者自立支援法によって障害をもつ人への相談支援は、障害種別に関わらず身近 な市町村が主体となって行うようになり、こうした相談も含めた地域生活支援事業が重要な役割を担 うようになってきている。

また、地域における相談支援の中核的な役割を担う基幹相談支援センターの設置や関係機関、関係 団体、障害をもつ人の福祉、医療、教育、就業などに関する仕事に従事する人たちで構成される自立 支援協議会の法定化さらに市町村における成年後見制度利用支援の事業化などによって、地域におけ る支援体制の充実を図ることもめざされている。とりわけ認知症の人や知的障害をもつ人そして精神 障害をもつ人など、判断能力が不十分であるとされる人々を保護し支援するため新たに成年後見制度 が設けられ、現在全国の市町村の約40%が成年後見制度支援事業を実施しているとされる。そうした 点で、この支援事業の普及が今後の大きな課題である。

同時に、障害をもつ人が地域で暮らしていくためには、在宅で必要な支援を受けられることが前提 となるため、利用者の実態に応じた支援を行うという観点からホームヘルプ(居宅介護)、重度訪問 介護、行動援護および重度障害者等包括支援などが実施されてきている。ここでいうホームヘルプと は、入浴などの補助や調理など家事の援助等を行うサービスであり、また行動援護とは社会の中で行 動する際に大きなハンディキャップのある知的障害および精神障害をもつ人に対し必要な支援等を行 うサービスである。

それとともに、地域で暮らすには住居の確保が不可欠となることから、単身での生活が困難な主に 知的障害と精神障害をもつ人が共同して自立した生活ができるよう、共同生活介護(ケアホーム)と 共同生活援助(グループホーム)が位置づけられている。前者は、介護が必要な人を対象に食事や入 浴、金銭管理や相談等の支援を行うことを、後者は、基本的に介護が必要ではない人に金銭管理や相 談等の支援を行うことを目的としているものである。

こうした地域生活支援事業における相談支援に住宅入居等支援事業を位置づけ、賃貸住宅への入居 を希望する人に対して、具体的に不動産業者への物件のあっせん依頼や家主等との入居契約手続等な どの援助および居住後のサポート体制の整備もめざされている。このように、障害をもつ人が社会の 構成員として地域でともに生活できるよう、生活訓練やコミュニケーション手段の確保など、社会参 加のための支援が必要となり、それを市町村と都道府県が中心となってそれぞれの地域の特性や利用 者の状況に応じた支援を行うというのが、地域生活支援事業の趣旨である。

精神障害に関しては、2002年に精神保健福祉業務の窓口が市町村に移行されたわけであるが、そ れが、さらに2012年には精神障害をもつ人の地域移行および地域定着の支援の実施主体が市町村に

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