第 4 章 課題解決のプロセス(詳細) 13
4.4 粘菌ライフサイクル
現在研究が進められている粘菌だが、とても面白い性質を持っている。その場の環境と自分の居 心地に応じて胞子を飛ばして場所を移動し、繁栄するといった、植物に見られる性質もあれば、キ ノコや微細胞生物など様々なものを捕食して大きくなっていくという、動物に見られる性質であ る。このように植物と動物の両方の特徴を持った非常に面白い性質を粘菌は持っている。そこで私 たちは粘菌の成長の過程と性質を伝えていくコンテンツを提案し、制作を行った。そして、今回の 展覧会全体としては小学2年生から大人までの広い客層を想定しているが、粘菌ライフサイクルは 文章を読むことのできる層を対象に、粘菌の生態について、詳しく知ってもらうためのコンテンツ である。
コンテンツを制作するにあたり、まず初めに書籍やWEなBどで粘菌の性質についての情報収 集を行った。[1][2][3][4]そして、コンテンツをどのような媒体、レイアウトで展示するのかを考え た。その結果大きな紙1枚に写真と文章を載せるとこが理解するに当たって最善であると考えた。
次に載せる写真を探した。私たちプロジェクトメンバーで育てている粘菌の写真を自分で撮り、自 分では撮ることができない顕微鏡を使わなければいけないような写真は、WEBのサイトで許可を もらい、使用した。文章は書籍やWEBから得た知識を元に考え、最終的には、粘菌の研究をな さっている、中垣教授に添削してもらった。そして完成させた文章が以下の5つの形態に分けられ る。(図4.10)
図4.10 モックアップ展:ライフサイクル
1つ目は、アメーバ状細胞についてだ。”胞子からアメーバ状の細胞が生まれると、周りにいる
バクテリアなどを食べて成長し、分裂して増えていきます。このアメーバには性があり、2つの細 胞が接合(受精に相当)すると接合体になります。この接合体は、互いに融合したり成長したりし て大きくなり変形体に成長していきます。”という文章を載せた。
2つ目は変形体だ。これに関しては”変形体は、巨大なアメーバ状の運動体です。別の個体と出 会うと自然に融合してさらに大きな変形体に成長します。変形体は、約1分周期の収縮運動を繰り 返しながら扇状に広がり、ゆっくりと流れながら進んでいきます。”という文章を載せた。
3つ目は菌核だ。これは”水分や栄養が不足したりすると菌核(皮体とも呼ばれる)という休眠体 になります。休眠体はカラカラにひからびていて、変形体のように移動しません。環境が好ましく なるとまた変形体に戻り、活発に移動して餌を食べ周ります。”という文章を載せた。
そして4つ目は子実体だ。これには”変形体は、環境が悪くなると1ミリメートル程の粒状に集 まり、ごく小さなキノコのような姿になることがありあります。これは子実体です。子実体には沢 山の胞子(配偶子)が詰まっています。胞子は風や水などに運ばれてあちこちに飛んでいき、新た な生活を始めます。”という説明文をつけた。最後は胞子だ。これには”子実体の外皮が破けると 胞子は風や水などに運ばれてあちこちに飛んでいきます。飛んでいった胞子が好適な環境を迎える と、そこからアメーバ状細胞が生まれて、新たな生活を始めます。”という文章を載せた。
これらの文章は私たちが粘菌の知識を深めていく中で培った知識や、このコンテンツを作るため に学んだ知識を元に制作した。また、円形にそれぞれの形態を紹介したのとはほかに、円の中心に は、簡単ではあるが粘菌とはどういう生き物なのかを紹介することにより、動物性、植物性という 二面性を持っていることを知ってもらうようにデザインした。そしてその文章は”粘菌とは、微生 物などを捕食して成長していく”動物的”な面と、胞子を作ることによって子孫を残していくとい う”植物的”な面を併せ持つ不思議な生物です。見た目はカビ等の菌類の様ですが、それらとはまっ たく違う性質を持っています。”という文である。
それらサイクルの各形態と共に載せた写真は変形体、菌核、子実体に関しては育てたものを撮影 した写真をしようしたが、胞子、アメーバ状細胞に関してはenkuu様[4]の粘菌日誌というサイ トから許可を得て使用させていただいたものである。胞子、アメーバ状細胞を撮影するためには何 倍もの拡大写真をとることになり、私たちではどうしても撮影することができなかったため、イン ターネットから使わせていただいた。
デザインに関しては展覧会のコンテンツの統一性を図るために黄色で色を揃えた。また、各ライ フサイクルの形態の特徴をイメージした。(図4.4)たとえば菌核であればパキパキとした固まって いる様子をあらわしている。このことによってぱっと見ても大体の様子を理解することができると 考えた。また、色と同じように、旅するミュージアムのロゴマークをコンテンツ全体で位置を合わ せ載せていることにより、展覧会に一体感を持たせた。(図4.11)
コンテンツを展示する媒体に関しては、前期はポスター形式で壁にA3用紙8枚分の大きさで計 画をたて、展示してみたが、それでは可搬化する際にどのように運搬用に包装するかが難しかった ため、後期ではイーゼルにA1サイズのパネル形式のコンテンツをたてかけるようにした。このこ とで運搬も可能になり、展覧会の設置で位置の微調節をするときも一々張りなおさなくてもよくし た。(図4.12)
(※文責:新井場有華)
図4.11 ”粘菌ライフサイクル” デザイン
図4.12 粘菌ライフサイクル