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総合的考察

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総合的考察

第t節結果のふりかえり

本論文の目的は、観光旅行者の心理・行動過程を明らかにすることで・あった。そのため、

旅行前・中・後という各段階において、従来の研究の問題点を克綴しながら、旅行者の心 理・行動内容を明らかにしてきた。総合的な考察を展開する前に、以下では本論文で明ら かにしてきたことを整理しておく。

(1 )線行前の段階

旅行前の段階に関しては、旅行者モチベーションを中心とした観光行動の生起に関わる 要因を明らかにするために、次の 3つの目的のもと研究を実施した。

第1の目的は、観光動機尺度を開発し、観光動機の構造を明らかにすることで、あった(第 2章)。日本人旅行者を対象とした調査の結果から、観光動機は、刺激性、文化見開、現地 交流、健康回復、自然体感、意外性、自己拡大の 7因子構造であることが認められた。ま た、観光動機を年齢層、訪問地域、旅行形態別にみると、若年層では刺激性と意外性、中 年層は健康回復、高年層は自然体感と文化見開の動機が高いとしサ特徴があることが分か った。訪問地域との関連については、アジアやアフリカといった地域への旅行者は刺激性 や文化見開の動機が、欧米地域への旅行者は自然体感の動機がそれぞれ高いことが認めら れた。旅行形態に関しては、偲人旅行者は現地交流と意外性の動機が、主催旅行者は文化 見聞や自然体感といった動機が高いという結果が得られた。

第 2の目的は、心理的要因に加えて、観光行動を促進、あるいは阻害する社会経済的要 因や対人的要因について明らかにすることで、あった(第3章

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JGSS‑2010のデータ分析か ら、高頻度で旅行をする人には、上層階層、高収入、大都市居住、高い会食頻度といった 特徴があるとともに、刺激や自己拡大を求めて旅行をする傾向にあることが示された。逆 にあまり旅行をしない人は、下層階層、低収入、高校卒以下、同居配偶者の不在といった

9 総 合 的 考 察

特徴があることが示された。

第3の目的は、観光地のイメージに関する従来の研究を概観し、理論的・方法論的問題 点を指摘するとともに、新たな概念枠組みを提示することであった(第 4章)。これまで、

観光地イメージは、対象地に対する個人の知識や信念、などの認知的成分で構成されるもの として扱われることが多かった。本研究では、情緒的な成分をモデルに組み込み、情緒的 成分と認知的成分から全体的イメージが形成されるとし、う統合的な概念枠組みを提唱した。

以上、旅行前の段階についての研究からは、観光行動の生起には、 push要因と pull要 因から成る旅行者モチベーションや、社会経済的要因や対人的要因が関わっていることが 明らかになった。

(2)旅行中の段階

旅行中の段階に関しては、観光経験の内容を明らかにするために、次の 3つの目的のも と研究を実施した。

第1の目的は、旅行者が撮影した写真から、観光経験の内容と魅力の対象を明らかにす ることであった(第 5章)。ゲストハウスに徳治していた旅行者を対象者とした調査の結果 から、観光地の魅力には fその土地ならではの魅力J

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個人的な魅力J

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旅行者ならではの 魅力jの3つのタイプがあることが分かつた。また、撮影された写真を経験内容にもとづ いて分類すると、文化的経験、対人経験、娯楽的経験、自然経験の4タイプに分かれるこ とが見出された。

第2の目的は、観光経験に対する評価構造とその規定要因を明らかにすることであった (第6章)。関西在住の大学生587名を対象とした調査結果から、情緒的評価の4因子構造(ポ ジティブ活性、ポジティブ不活性、ネガティブ不活性、ネガティブ活性)と、機能的評価の 4因子構造(自己拡大、関係強化、知識増進、健康回復)が確認された。また、同行者、観光 地タイプ、移動距離という 3つの要因が経験評価に与える影響を検討したところ、同行者 との旅行は、ポジティブ活性と関係強化についての評価を高め、一人旅は、ネガティブ不 活性、ネガティブ活性、自己拡大についての評価を高めることが示された。都市観光地と テーマパークへの旅行は、ポジティブ活性を高めるが、歴史観光地はポジティブ不活性と 知識獲得の評価を高めることが分かつた。そして、温泉観光地は、ポジティブ不活性と健 康回復の評価を高めることが示された。

第3の目的は、テキストマイニングを用いて、よい観光経験とわるい観光経験の内容を 明らかにすることで、あった(第8章)0593名を対象としたweb調査を実施し、これまでの

観光経験の中で最もよかった経験と最もわるかった経験について自由記述での回答を求め た。その結果、よい経験としては、緊張解消行動、娯楽追求行動、関係強化行動、知識増 進行動、自然体感行動の 5タイプが見出された。わるい経験としては、緊張発生(緊張解消 の負の側面)、娯楽不足(娯楽追求の負の側面)、関係不和〈関係強化の負の側面)の 3つのタ イプが見出された。

以上、旅行中の段階についての研究からは、観光経験の内容が明らかとなった。観光経 験の行動的側面については、写真調査法と自由記述法という 2つの異なる調査手法を用い たが、見出された観光経験の構造に違いはなかった。また、行動的側面、心理的側面の各 次元は、ともにpush要因である観光動機の次元に対応することが認められた。

(3)旅行後の段階

旅行後の段階に関しては、旅行満足とその規定昭を明らかにするために、次の2つの民 的のもと研究を実施した。

第1の目的は、観光経験に対する評価が旅行満足に与える影響を明らかiこすることであ った(第 7章)。情緒的評錨と機能的評価を統合した新尺度を作成して、 593名を対象とし たweb調査を実施した結果、観光経験に対する評価は、知識獲得、自然満喫、関係強化、

健康回復、関係形成、自己省察、新奇体験の 7因子構造であることが認められた。次に、

過去の旅行経験が少ない層では、健康回復、新奇体験、関係強化の評価が旅行満足に影響 を及ぼすことが示され、旅行経験が多い層では、知識獲得の評価のみが旅行満足に影響を 及ぼすことが示された。

第2の設的は、過去の旅行経験数と思い出に残る観光経験との関連を明らかにすること で、あった(第 8章)。対応分析の結果、年齢と旅行経験を重ねることで、よい観光経験は、

娯楽追求行動→関係強化行動→知識増進行動というように変化することが認められた。

このように旅行後の段階についての研究では、倍人の旅行経験の相違によって、旅行満 足につながる観光経験が異なることが明らかになり、年齢や経験に応じた最適な観光経験 があることが示された。

9 総合的考察

第 2節 観 光 旅 行 者 の 心 理 過 程

以下では、本論文で見出された知見を踏まえ、次の3つの観点から旅行者の心理過程に ついて考察する。 3つの観点とは、(1)実施前から実施後に歪る行動過穂、 (2)旅行者として 経験を積み重ねていく偶人内過程、 (3)人生移行という偶人内過程である。

(1 )犠光の行動過程における心理過程

観光行動の生起には、心理的要因、社会経済的要因、対人的要因の3つが影響している。

心理的要悶とは観光動機とイメージや魅力で構成される旅行者モチベーションであり、社 会経済的要因とは社会階層や収入や学療であり、対人的要因とは同行者の有無や家庭内に おける乳児や高齢者の存在である。

観光行動が生起するには、 push要因が先に働いて f旅行がしたしリという欲求が沸き 起こる。次にpull要因が働いて、その欲求を満たしてくれそうな自的地を選択するという プロセスが考えられる。それとは逆に、 pull要因が先に働くこともある。これは、テレピ 番組やウェブサイト、雑誌や広告などのメディアから提供される観光地イメージによって

「そこに行ってみたしリという欲求が沸き起こり、観光旅行をするとしづ意思決定がなさ れる場合である。これは、普段は意識されなかった動機や欲求が、メディアを通して得ら れたイメージによって顕在化するのだと考えられる。 push要因、 pull要因どちらが先立 つにせよ、これを限害する要因が存在すれば、観光行動を実行に移すことは国難になる。

たとえば、旅行をしたいという強い気持ちがあっても、時間的、金銭的な余裕がなければ、

それを実行に移すことは出来ないだろう。また、同行者が見あたらない場合や、乳児や介 護を必要とする高齢者が居るために自宅を離れられない場合にも、旅行を断念することが あるだろう。他にも、旅行の実行を限害する要因としては、外国語に対する不安や、地理 や歴史に関する知識不足の問題などが考えられるが、概して社会階騰が高ければ、それら は限害要因とはなりにくい。

居住地から遠く離れた観光地に出向くことによって、ポジティブな感情が喚起される。

これは、日常の個人的、対人的世界から逃れることが可能になるからである。そして、訪 問先では、活動する環境や向行者の存在が情緒的体験に影響を及ぼすことになる。旅行中 から旅行後にかけて、旅行者は訪問先でのさまざまな経験に対して評価を行っている。こ の評価には、宿泊施設やそこで受けたサーピスの質などに対する評価も含まれるが、旅行

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