(注1)アナーキースペース 空間がごちゃごちゃしていて、とりとめもない状態をいう。
(注2)アジトスペース 子どもの頃の秘密の場所とか秘密の小屋とか子どもだけの場所。
引用文献
(1)松浦均・西口利文 『心理学基礎演習Vbl.3 観察法・調査的面接の進め方』 ナ 伊仙シや出版 2008年 50頁
(2)仙田 満 『子どもとあそび 一環境建築家の眼一』 岩波出版 1992 19−20頁
(3)岩田純一 「協同性に学ぶということ」 『幼児の教育』 日本幼稚園協会 第106巻
終章 総合考察
本研究では、先行研究を基に2つの調査を行い、幼児期にふさわしい園庭環境を創造し ていく、保育者の園庭環境に対する意識を探ってきた。
各調査において、各保育者が考える重要となる視点の分類を行った。自由記述によるア ンケート調査では、園庭に対する意識の中で多かったのは、①「安全、安心」、②「自然、
季節感、四季」、③「運動」、④「広さ、スペース」であった。「安心、安全」「自然、季節 感、四季」についてはどの園からも記述があった。このことから、「安心、安全」について の意識や、「自然、季節感、四季」に出会わせてやりたいと思う、保育者の意識は高いこと が窺い知れた。また、「運動」「広さ、スペース」に関する記述は7園中5園もあり、園庭 環境において積極的に取り入れていこうとする姿が見受けられた。このように自由記述の 中からは、園庭環境に対する場の設定をいかに整えていくかということが、見出せた。園 庭環境においての基本的な考えが、如実に表れているように感じた。
その一方、自由記述の質問紙調査の中では、「共通理解、連携」についての記述は216 件のキーワード中、わずか3件であった。共通理解や連携に関するに関する意識の低さが 明確となった。園庭環境を活用していく中で、場の設定には関心があるが、場をどのよう にして生かしていくのかという活用方法を、具体的に考えている保育者が少ないことが明
らかになった。
このことを踏まえて、インタビュー調査を行った。インタビュー調査では7名の全員か ら、「共通理解や連携」についての考えを聞くことができた。その内容から「共通理解、連 携」が必要であり、積極的に取り組んでいかなければいけないという思いがあることが分 かった。しかし、7名中2名はその必要性は認識しているものの、具体的にどのようにし てそのような場をもっていけばいいのか、発言していけばいいのかわからないという回答 であった。園庭環境は共同で使用する場であることから、共通の意識を持って保育者が関 わることが非常に重要である。保育者は園庭環境に対して、「個」で対応するのではなく、
「集団」として関わり、様々な見方で、様々な思いを発揮することが求められている。
2つの調査により明確になったことは、園庭環境に対する意識に関して、重要と考えら れる点は「安全、安心であること」、「保育者の感性や感受性や組み込まれていること」、「保 育者間の共通理解、連携が図られていること」などである。
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図3に表したように、子どもたちの遊びの発見、発展、深まりは園庭環境の再構成によ って、より具体的になっていくのである。子どもたちの遊びの見通しをっけ、再構成する 方法や内容を保育者の感性や感受性によって行われなければならない。園庭環境の様々な 場に関して保育者同士が連携を取りながら、共通理解を広げ、そのことがより子どもにと
って遊びやすい場、遊びを広げやすい場、遊びたくなる場になっていくのである。
幼稚園教育要領(2008)によると、「幼稚園生活における幼児の発達の過程を見通し、幼児 の生活の連続性、季節の変化などを考慮して、幼児の興味や関心、発達の実情などに応じ て設定すること」、「環境は、具体的なねらいを達成するために適切なものとなるように構 成し、幼児が自らその環境にかかわることにより様々な活動を展開しつつ必要な体験を得
られるようにすること。その際、幼児の生活する姿や発想を大切にし、常にその環境が適 切になるようにすること」ωと記載されている。
このことから、園庭環境で遊ぶ子どもの姿から、遊び場の設定や、再構成をしていくこ とが保育者の役割が重大であることが分かる。園庭環境は子どもの遊びから変化していき、
そこに保育者が思いを注入し、初めて幼稚園・保育園の園庭環境へとなっていくのである。
子どもの遊びの発見、発展、深まり
園庭環境の再構成 保育者の感性や感受性、思い
ロ ロ ロ ロ
・「安全、安心」「運動」「自然」「友だち関係」 ・
慶 霧 蓼 1 コ ロ
;「広さ、スペース」など 1
■ ■
■ 圏 巳 鵬
保育者の共通理解、連携
図3−1 園庭環境に求められる、保育者の意識
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高橋(2009)は「子どもの主体性や自発的な遊びを中心とした保育を堅守しっっ、子ども にとって必要な力を促すための、保育者による意図的な学びの場の構成、遊びを展開させ るための積極的なかかわりは重要である。子どもの将来を見通し、生きるために必要な力 を精選し、十分に練られた計画と環境のもと、教師が様々な役割を果たすことが期待され る」ωと述べている。それは、子どもたちが普段接することの多い園庭環境を、保育者が どのようにコーディネートするかということであろう。保育者という環境をいかに活かし、
その中で子どもが様々な体験と触れ合えるようにするかというものは、保育者の意識によ って異なるのではないかと考える。
また高橋(2009)は、森の幼稚園と一般的な幼稚園とを比較している。「森の幼稚園が一般 の幼稚園と比較して、優れている点として、次の5点を挙げる。第1に森の中の不規則な 地形を歩くことで、幼児は様々な体の動きを体験し、運動能力を向上させる。第2に、広 い空間で活動することで、精神的に安定し攻撃性が少なくなる。第3に、グループ活動を 通じて、お互いに助け合うという仲間意識が育つ。第4に、幼児は自分自身で森の素材で おもちゃを作りだすようになり、自然と創造力や空想力などが培われる。また、動物や植 物との触れ合う中で、生物には命があることを学び、自然を大切にしょうという心が自ず
と育まれる。さらに、四季に応じた自然の美しさを体験し、感動すると共に、そこから観 察力が養われる。第5に、幼児は幼稚園での活動を民主的に決めるように教師に促される。
そのため自分自身で解決する方法を学ぶことができ、自主性や社会性が身に付く」②と5 つの要点をまとめている。このような視点を保育者がもっことによって、幼稚園や保育園 の園庭環境で活用し、森の幼稚園の要素をあわせもった園庭が作れるのではないかと考え
る。
石倉(2012)は、「保育者が自然材や道具の特性及びその関係性に隠れている幼児の表現行 為の潜在性をどれだけ捉えているかが表現の豊かにする援助へとつながり、幼児の育ちに 大きく影響する一因となる」(3)と述べている。園庭としての表現行為が表れる、自然材、
道具について述べ、保育者がそのことに気付く必要性を指摘している。また「保育者が幼 児に経験させたい内容について、いかに園庭環境を使えるか試行錯誤することで、今ある 環境を最大限に生かしていくことができるのではないだろうか」㈲とも述べている。
これらのことは、保育者が園庭環境を考える中で、考察を深めていかなければならない 重要なことである。森の幼稚園で実施されている活動や自然材や道具を使った活動などを、
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保育を幼稚園や保育園の園庭環境に配置して、または配置しようと努力し、園庭環境につ いてスポットを当てていくことにより、保育者の意識も変革していくのではないかと考え る。既存の幼稚園や保育園は森の幼稚園にはない「園庭」という環境を、独自に進化させ、
保育者の思いや感性を注入できる場があることをメリットとして捉え、より子どもにフィ ットした場を創造し、園庭環境を最大限に活かしていくことは、保育者の重要な責務であ
る。
園環境の中に、「保育室」「遊戯室」「廊下」「職員室」「園庭j「花壇」などの場所がある。
幼児期にふさわしい園庭環境とは、どの環境にも目を向けられる保育者自身の保育者力、
人間力があることが重要である。またそれらが共通理解や連携されることによって、さら なる園庭環境を構築していける人間関係にも寄与するものである。
保育者が園庭環境について熟考し、再構成し、そこで遊ぶ子どもたちの最善の利益につ いて考えることのできる場である。また子どもたちの遊びを発展し、発掘していける職員 同士の良い関係のある場である。職員が見やすい、管理しやすい場ではなく、より子ども の遊びのために思慮または考慮された園庭環境が求められている。
園庭環境の「環」という字は、「わ 輪状のもの」「めぐる とりまく、かこむ、まわる」
「めぐらす、とりかこむ」(4)という意味がある。保育者同士が手と手を取り合い、チーム ワークの輪を作り、子どもにとってどのような場が最適であるか皆で考え、再構成し、互 いに連携を取り合っていくことが重要である。保育者間のチームワーク作りが園庭環境を 充実させる要因である。
幼児期にふさわしい園庭環境とは、まず子どもの遊びをよく観察し、その面白さを保育 者が捉え、そのことを基底することである。すなわち、ふさわしい園庭環境とは保育者一 人一人が園庭への構成、感受性をお互いに共有していく保育者間の連携が重要であること が明らかになった。保育者一人一人の保育者力が組み込まれ、その保育者集団によって練
られた思いや考えを表出し、子どもと共に作り上げていく場であると言えよう。
今回の調査範囲はH県のN市、T町内の8園だけであったが、今後はH県内や他府県、
全国にも目を向け、園庭環境に対する保育者の意識について考察を深めていきたい。
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