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―第2回 健康食品やサプリメントによる有害影響―

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1.はじめに

国が有効性・安全性を製品として評価して いる特定保健用食品(通称,トクホ)は別と して,一般に健康食品やサプリメントと呼ば れている製品は,あくまで一般食品の一つと いう位置づけで,その有効性はほとんど明確 でないと言っても過言ではありません。その ような製品の有効性は,大部分がプラセボ効 果かもしれないのです。それでも利用した人 が,良い効果を実感できて有害事象が起こら なければ,それらの製品の利用価値はあるで しょう。しかし,健康になろうと思って摂取 した健康食品で,有害影響を受けてしまうこ ともあります。健康食品やサプリメントにつ

いては,利用して良かったという情報(ほと んどが体験談)だけが認識されていて,有害 影響を受けたという情報はあまり知られてい ません。そこで今回は,健康食品やサプリメ ント(以下,健康食品として記載)による有 害事象についてご紹介します。

2.有害事象の特徴

健康食品による有害事象の頻度を明確に示 した報告はあまり見当たりませんが,平成21 年度の東京都福祉保健基礎調査1 )の結果に よると, 健康食品で「体調に不調を感じた 人」は利用者の約 4 %,その内訳は消化管症 状(下痢・腹痛)やアレルギー症状(発赤・

図Ⅱ-2-9 健康食品による体の不調(症状)[複数回答]

健康食品による体の不調による医療機関受診

図 1  健康食品による有害事象の発生頻度と医療機関の受診状況

(出典:平成21年度東京都福祉保健基礎調査)

健康食品による有害事象として多いのは,胃腸障害とアレルギー。体に不調を感じても医療機関を受診している人は少ない。

発疹,体のかゆみ)となっています(図 1)。

筆者が2009年にトクホ製品が関係した有害事 象について調査2 )したところ,その結果も大 部分が消化管症状でした。このような症状は 通常の食品でも認められているものです。と ころが健康食品で重篤な有害事象が起こる ケースがあります。それは,健康食品に過大 な期待をして医薬品を用いた治療を放棄した 時,あるいは健康食品と医薬品の併用による 相互作用によって,医薬品の主作用の減弱あ るいは副作用の増強が起きた時です。そのよ うな有害事象は,薬剤師が最も関心をもって いることなのですが,その実態はほとんど把 握されていません。その理由は,多様な名称 と品質の健康食品が,消費者の自己判断で利 用されているためです。現状の健康食品が関 係した有害事象の全体像を考えると,その問 題点は,製品自体の問題ならびに利用方法の 問題の 2 つに分けることができます。

3.製品自体が関連した有害事象

健康食品に医薬品成分を添加することは違 法であり,そのような製品の存在が発覚する と,製品はもはや健康食品ではなく,無承認 無許可医薬品として分類されます。無承認無 許可医薬品は有害事象も重篤で,国内外の行 政機関が摘発・公表しています。過去に摘発 された製品の情報を調べてみると,形状が錠 剤・カプセル,入手方法がインターネット経 由あるいは渡航先,添加されていた医薬品成 分が肥満抑制(例えば,シブトラミン)や強 壮・強精(例えば,シルデナフィル)などの 作用という特徴があります。また,違法製品 のほとんどは,利用者が有害事象を訴えた結 果,その存在が発覚しています。本来,健康 食品に対して,薬理作用の強い成分は利用さ れていないので,もし作用の強い製品があれ ば, 違法に医薬品成分が添加されていると 疑ってもよいかもしれません。

健康食品はあくまで食品の一つなので,科 学的知識を持たない人が製造・販売している こともあります。そして製造・販売者自身が 認識していない有害物質が,製品に含まれて いる可能性があるのです。最近,注目されて いる有害物質として,腎障害や尿路系の発が んに関連するアリストロキア酸を含む植物が あります。アリストロキア酸は,いわゆる漢 方薬として利用されていた一部の植物(アリ ストロキア属)に含まれており,国内外の公 的機関から注意喚起情報が出されています。

消費者は天然・自然という言葉から,安全・

安心をイメージしますが,これまでの長い歴 史の中で利用されてきた植物エキスにも,ア リストロキア酸のような有害成分が含まれて いるものがあるのです。天然・自然を標榜し たエキスについては,その規格基準のないも のが多く,製品中に含まれる個別成分の含有 量の不明なケースがかなり多いのです。製品 中の個別成分の含有量が明確でない点は,後 述する医薬品との相互作用の有無を想定する 時の大きな障害となっています。

4.利用方法が関係した有害事象

健康食品の製品自体に何ら問題がなくて も,有害事象が起こることがあります。それ は, 摂取した成分の影響を受けやすい「病 者,高齢者,妊婦,小児」といった人が利用 した時です。テレビなどの広告では,「小児 や妊婦も安心してご利用できる製品です」と 謳っていますが,実はそのような検証はほと んどされていません。人を対象とした研究の 実施には研究倫理審査委員会の承認が必要で すが,小児や妊婦を対象とした健康食品の安 全性試験が研究倫理委員会によって承認され ることはほとんどないでしょう。

また, 健康食品が医薬品と誤認・ 混同さ れ,「医薬品は副作用があるが,健康食品は 食品なので副作用はなく安全」 と解釈され

くすり 健康食品の問題点と薬剤師の役割

て,医薬品を用いた治療が放棄されるケース でも有害事象が起こります。国が安全性・有 効性を審査・許可したトクホも,あくまで食 品の一つであり,病気の治療・治癒の効果ま で期待することはできません。従って,例え ば高血圧症や糖尿病の患者が,トクホで治療 をしようとして,適切な医薬品の服用を中断 したり放棄したりすると,重篤な有害事象が 起きてしまう可能性があります。

さらに,健康食品が体質的に合わない人で は,アレルギーなどの有害事象が起こる可能 性があります。プロポリス,グルコサミン,

エキナセアなど,人気の高い天然素材でアレ ルギーを起こした事例が多数報告されていま す。最近明らかにされたα - リポ酸の摂取に よる低血糖発作3 )は,日本人において多く発 症するようで,これも体質が関連した有害事 象と言えるでしょう。

これまでに報告されてきた健康食品の有害 事例で特筆すべきことは,そのほとんどの製 品が,特定成分が濃縮された錠剤・カプセル 状として利用されている点です。ビタミンや ミネラルであっても,錠剤やカプセル状で摂 取することは,特定成分を効率的に摂取でき る一方で,必要以上に多量に摂取してしまう ため,それが有害事象につながることがある のです。錠剤・カプセル状の製品は,味・香 り・体積のある通常食品よりも医薬品との相 互作用を起こしやすいと考えてよいでしょ う。

5.医薬品と健康食品の相互作用

医薬品と健康食品の相互作用は,医薬品の 主作用の減弱や副作用の増強につながるもの で,有害事象の症状が重篤になる可能性があ ります。例えば,ワルファリンとの相互作用 では,血栓あるいは出血につながります。過 去に起きた健康食品による有害事象を調べて みると,有害事象は健康食品の摂取中断によ

り直ぐに改善しています。従って,有害事象 を受けたと想定された時は,先ず健康食品の 摂取を中断することが,最も賢明な対応法と 言えるでしょう。ただし,ワルファリンと健 康食品の相互作用では,有害事象の原因が不 明確な状況で健康食品の摂取中止という単純 な対応だけでなく,ワルファリンの用量を調 節するなどにより,重篤な状況を早急に回避 しなければならないこともあります。

健康食品の利用が増えるに伴い,薬剤師が 患者から健康食品と医薬品の相互作用の有無 について問い合わせを受ける機会が多くなっ ています。その際,薬剤師は過去の事例を文 献調査しますが,調べた文献中に情報がない からといって相互作用の可能性がないとは言 えないことに留意する必要があります。医薬 品と健康食品の相互作用についてはほとんど 不明で,その判断も現実的には極めて難しい のが実情です。その理由として,製品の品質

(特に特定成分の含有量)が不明確な点があ げられます。図 2に示したように,医薬品は ほとんどが単一の成分からできており,その 含有成分量も明確なので,医薬品間の相互作 用は 1 : 1 の対応で想定できます。一方,医 薬品と健康食品の相互作用については,医薬 品は単一成分でも,健康食品に約20成分程度 が含まれています。そして,一つの医薬品と 一つの健康食品の相互作用の可能性は約20通 りになります。患者の多くは,複数の医薬品 を服用し,しかも健康食品も複数摂取してい るという実態から,一人の患者における医薬 品と健康食品の相互作用の組み合わせは100 通り以上となってしまうのです。

別の健康食品と医薬品の相互作用の想定を 困難にしている理由として, 製品中の個別 成分量が曖昧な点があげられます。例えば,

St.  John s  wort(西洋オトギリソウ)は,薬 物代謝酵素 CYP3A4ならびに消化管の薬物 トランスポーターP-glycoproteinを誘導して,

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