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第1 総 説

ドキュメント内 財政金融統計月報第720号 (ページ 30-38)

1 予算編成の前提となる経済情勢及び財政事情

⑴ 経 済 情 勢

東日本大震災により我が国の経済活動は深刻な打撃を受 け,マイナス成長が2四半期続くなど,23年度は厳しい状況 からのスタートとなった。その後,官民の総力を結集した復 旧・復興努力を通じてサプライチェーンの急速な立て直しが 図られ,景気は持ち直しに転じたが,夏以降は急速な円高の 進行や欧州政府債務危機の顕在化による世界経済の減速が,

景気の持ち直しを緩やかなものにしている。こうした状況に 対し,政府は累次の補正予算を編成し,復興への支援を図り つつ景気の下方リスクに先手を打って対処してきている。復 興需要を中心とする政策効果が景気を下支えすることから,

景気は緩やかな持ち直しが続くものと見込まれる。物価の動 向を見ると,緩やかなデフレ状況が続いている。消費者物価 は3年連続の下落となる。23年度の国内総生産の実質成長率 は,成長の発射台がマイナスであったことから,その後の景 気の持ち直しにもかかわらずマイナス0.1%程度となる。国 民の景気実感に近い名目成長率は,マイナス1.9%程度と見 込まれる。

24年度の日本経済は,本格的な復興施策の集中的な推進に よって着実な需要の発現と雇用の創出が見込まれ,国内需要 が成長を主導する。世界経済については,欧州政府債務危機 を主因とする世界の金融資本市場の動揺が,各国政府等の協 調した政策努力により安定化することを前提とすると,主要 国経済は減速から持ち直しに転じていくと期待される。これ は,我が国の輸出や生産にとって望ましい環境をもたらして いくと考えられる。こうしたことから,我が国の景気は緩や かに回復していくことが見込まれる。物価については,消費 者物価上昇率は GDP ギャップの縮小等により0.1%程度に なると見込まれる。GDP デフレーターは緩やかに下落する。

完全失業率は,雇用者数の緩やかな増加から低下する。こう した結果,24年度の国内総生産の実質成長率は2.2%程度,

各目成長率は2.0%程度と,実質,名目ともプラスに転じる。

先行きのリスクとしては,欧州政府債務危機の深刻化等を背 景とした海外経済の更なる下振れ,円高の進行やそれに伴う 国内空洞化の加速,電力供給の制約等が挙げられる。

(付表12「平成24年度経済見通し主要経済指標」参照)

⑵ 財 政 事 情

我が国財政は,23年度補正(第3号)後予算では公債依存 度が52.5%にも及び,国・地方合わせた長期債務残高が23年 度末において GDP 比191%程度となる見込みであり,主要 先進国中最悪の水準であるなど,極めて深刻な状況にある。

こうした厳しい財政事情の下,政府としては,「財政運営戦 略」(22年6月22日閣議決定。以下「財政運営戦略」という。)

で示された,基礎的財政収支について,遅くとも27(2015)

年度までにその赤字の対 GDP 比を22(2010)年度の水準か ら半減し,遅くとも32(2020)年度までに黒字化するとの目 標の達成に向けて取り組むこととしている。

2 24年度予算編成の基本的考え方

24年度予算編成に当たっては,「平成24年度予算編成の基 本方針」(23年12月16日閣議決定)に基づき,次のような基 本的考え方に立って編成することとした。(以下,「平成24年 度予算編成の基本方針」(全文は〔参考〕に掲載)からの抜 粋を基本としている。)

24年度予算においては,東日本大震災からの復興,経済分 野のフロンティアの開拓,分厚い中間層の復活,農林漁業の 再生,エネルギー・環境政策の再設計の5つの重点分野を中 心に,日本再生に全力で取り組む。あわせて,地域主権改革 を確実に推進するとともに,既存予算の不断の見直しを行 う。

その際,我が国財政への市場の信認を確保していくため,

「財政運営戦略」における財政健全化目標の達成に向け,行 政刷新会議の「提言型政策仕分け」等も活用しつつ既存歳出 の見直しを進め,「中期財政フレーム(平成24年度〜平成26 年度)」(23年8月12日閣議決定)に基づいて24年度予算編成 を進める。

3 24年度一般会計予算の規模等

⑴ 一般会計予算の規模

24年度一般会計予算の規模は,903,339億円であって,23 年度当初予算額に対して20,777億円(2.2%)の減少となっ ている。

なお,基礎的財政収支対象経費の規模は,683,897億円で

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あって,23年度当初予算額に対して24,728億円(3.5%)の 減少となっている。

(付表1「平成24年度一般会計歳入歳出予算の概要」参照)

⑵ 一般会計予算と国内総生産

一般会計予算の規模を国内総生産と対比すると,次の ようになる。

なお,24年度の政府支出の額は,120.3兆円程度であ り,23年度実績見込みに対して,0.4%程度の増加とな る見込みである。

⑶ 一般会計歳入予算

租税及印紙収入は,現行法による場合,23年度当初予 算額に対して14,000億円増の423,270億円になると見込 まれるが,個人所得課税,資産課税等の税制改正を行う こととしている結果,23年度当初予算額に対して14,190 億円(3.5%)増の423,460億円になると見込まれる。

ま た,そ の 他 収 入 は,23年 度 当 初 予 算 額 に 対 し て 34,427億円(47.9%)減の37,439億円になると見込まれ

る。

24年度における公債金は23年度当初予算額を540億円 下回る442,440億円である。

公債金のうち59,090億円については,「財政法」(昭22 法34)第4条第1項ただし書の規定により発行する公債 によることとし,383,350億円については,「平成24年度 における公債の発行の特例に関する法律」(仮称)の規 定により発行する公債によることとしている。この結 果,24年度予算の公債依存度は49.0%(23年度当初予算 47.9%,補正(第3号)後予算52.5%)となっている。

(付表2「平成24年度一般会計歳入歳出予算経常部門 及び投資部門区分表」参照)

4 重 要 施 策

⑴ 東日本大震災からの復興

「東日本大震災からの復興の基本方針」(23年7月29日東 日本大震災復興対策本部決定)等に基づき,23年度補正予算 に引き続き,24年度予算においても震災復興に全力を挙げる こととしている。また,復興事業に関する経理を明確にする ため,東日本大震災復興特別会計(仮称)を24年4月1日に 設置することとしている。

⑵ マニフェストの工程表に掲げられた主要事項

24年度予算において,マニフェストの工程表に掲げられた 主要事項のうち,主な施策は次のとおりである。

子ども手当(子どものための手当(仮称))

「児童手当法の一部を改正する法律」(仮称)による 改正後の「子どものための手当の支給に関する法律」(仮

(注)1 23年度の(A)欄及び(B)欄は,当初予算の計数である。

2 23年度及び24年度の(C)欄は,24年度政府経済見通しによる。(23年度は実績見込み,24年度は見通し)

(単位 億円)

一般会計(A)

(億円)

うち基礎的財政 収支対象経費(B)

(億円)

国内総生産(C)

(名目・兆円程度)

(A)/(C)

(%程度)

(B)/(C)

(%程度)

23 年 度 924,116 708,625 470.1 19.7 15.1 24 年 度 903,339 683,897 479.6 18.8 14.3 24年度の対前年度伸率 △2.2% △3.5% 2.0%程度 − −

1 租税及印紙収入

⑴ 現行法を24年度に適用する場合の租税 及印紙収入

⑵ 税制改正による増△減収見込額 イ 個人所得課税

ロ 資産課税 ハ 法人課税 ニ 消費課税 ホ 沖縄関連税制

(内国税計 ヘ 関税

⑶ 24年度予算額⑴+⑵ 2 その他収入

3 公 債 金

423,270

190 170 10 80

△70

△10 180)

10 423,460 37,439 442,440

合 計 903,339

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称)に基づき,家庭等における生活の安定に寄与すると ともに,次代の社会を担う子どもの健やかな育ちに資す る た め,3歳 未 満 の 子 ど も 一 人 に つ き 月 額15,000円 を,3歳以上小学校修了までの子ども(第1子・第2子)

一人につき月額10,000円を,3歳以上小学校修了までの 子ども(第3子以降)一人につき月額15,000円を,小学 校修了後中学校修了までの子ども一人につき月額10,000 円を支給するとともに,所得制限以上の者については,

中学校修了までの子ども一人につき月額5,000円を支給 することとしている。24年度予算では,給付費(国家公 務員分を含む)として,13,283億円を計上している。

高校の実質無償化

公立高校生のいる世帯から授業料を徴収しないことと するとともに,私立高校生等のいる世帯に対しては,公 立高校の授業料相当額(年額約12万円)の助成(更に低 所得世帯に対しては,所得に応じて約6万円又は約12万 円の上乗せ助成)を行うこととし,これらに要する経費 として,3,960億円を計上している。

戸別所得補償制度

我が国の食料供給力の維持・強化を図るため,22年度 から水田において主食用米を「生産数量目標」に即して 生産する販売農家等に対して,標準的な生産費と標準的 な販売価格との差額を交付するとともに,麦,大豆,米 粉・飼料用米等の戦略作物を生産する販売農家等に対し て主食用米並みの所得を確保しうる水準の交付金を交付 している。さらに23年度からは畑作物(麦,大豆,てん 菜,でん粉原料用ばれいしょ,そば,なたね)に対象を 拡大するとともに,農地の面的集積や畑の再生利用等の 取組を支援するための加算措置を設けることとした。中 山間地域等の条件不利地における生産条件不利を補正す るための交付金等と合わせ,6,183億円を計上している。

⑶ 予算の組替え・無駄の削減

「日本再生重点化措置」を活用した予算の組替え

「平成24年度予算の概算要求組替え基準について」(23 年9月20日閣議決定)において,「我が国経済社会を再 生し,国民一人ひとりが希望をもって前に進める社会を 実現するため,(中略)将来を見据え,新たな雇用の創 出を含め,我が国経済社会の再生に真に資する分野に予 算を重点配分する取組として,『日本再生重点化措置』

を実施する。」とされた。これを受けて,「予算編成に関 する政府・与党会議」による優先・重点事業の選定結果 も踏まえ,「日本再生重点化措置」として1兆578億円を 計上し,予算配分の重点化を図っている。

行政刷新会議における提言型政策仕分けの提言等の反 映

24年度予算編成においても,引き続き,行政刷新の継 続・強化を通じた歳出全般にわたる見直しを行うことと し,行政刷新会議においては,事業の無駄や非効率の背 景にある政策的・制度的な問題にまで掘り下げて提言を

行う提言型政策仕分けが実施された。24年度予算におい ては,この提言型政策仕分けの提言の反映により歳出の 見直しを行うなどにより,歳出全般にわたる見直しを 行った。

決算,決算検査報告等の反映

決算及び決算検査報告等の予算への反映については,

これまでも,積極的に取り組んできているところであ り,24年度予算においても会計検査院の指摘や決算に関 する国会の議決等を踏まえ,個別の事務・事業ごとに必 要性や効率性を洗い直し,その結果を的確に反映してい る。

予算執行調査の反映,政策評価の活用

予算執行調査は,事業・制度の必要性,有効性及び効 率性の検証を行っており,23年度においては,東日本大 震災の影響を考慮し,65件の調査を実施しているところ である。このうち予算への反映が直ちに可能な54件につ いて,その結果を24年度予算に的確に反映している。

また,各府省の政策評価に示された達成すべき目標,

目標を達成するための手段,どの程度目標が達成された かに関する事後評価等を精査の上,各事業の必要性,有 効性及び効率性を検証し,政策評価の結果を予算編成過 程の中で適切に活用している。

⑷ 税 制 改 正

24年度税制改正においては,成長戦略に資する税制措置,

税制の公平性確保と課税の適正化,地方税の充実と住民自治 の確立に向けた地方税制度改革,23年度税制改正の積残し事 項の取扱いといった,特に喫緊の対応を要する税制改正事項 を実施する。

具体的には,車体課税の見直し,研究開発税制の上乗せ特 例の延長,住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の拡 充・延長,給与所得控除の上限の設定など,所要の措置を講 ずることとしている。

⑸ 社会保障の充実

社会保障関係費については,高齢化等に伴って必要となる 年金・医療等の経費について,重点化を図りつつ所要額を確 保するとともに,恒久的な子どものための手当(仮称)への 移行を図ることとしている。また,経済成長や人材育成,安 全・安心社会の実現に資する,ライフ・イノベーションの一 体的推進や在宅医療・介護の推進,新卒大学生の現役就職支 援などの施策を充実することとしている。基礎年金について は,歳出予算(国庫負担36.5%分)と税制抜本改革により確 保される財源を充てて償還される交付国債により,国庫負担 2分の1を確保することとしている。

これらの結果,24年度の社会保障関係費は,23年度当初予 算額に対して23,177億円(△8.1%)減の263,901億円を計上 している。

まず,医療については,最近の医療費の動向,診療報酬・

薬価等の改定等の影響を織り込み,公費負担医療等を含め

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