第五章 記録型 DVD におけるデバイスメーカーのあり方 1、記録型 DVD の競争シナリオ
1.2 競争の8つのシナリオ
現在、これら記録型DVDのメディアが規格間競争を展開している。この規格間競争は、DVDの デファクト・スタンダード化実現に対して重要な競争である。この規格間競争のシナリオを分析し、
シナリオごとの競争の姿を明確にする。当論文では、記録型 DVD を追記型と書換え型に分類した。
競争シナリオの分析では標準化ができていない書換え型 DVD に的を絞る。現在の書換え型 DVD の 種 類 は 、 DVD − RAM 、 DVD-RW 、
DVD+RW の3種類の規格がある。この3 種類の規格の競争は、全部で8種類の シナリオが考えられる。ひとつだけの規 格が勝ち残る「一人勝のシナリオ」の3種 類と、お互いが協力し合う「共存のシナリ オ」が4種類、全く異なる規格に変わる
「消滅のシナリオ」1種類である。この競 争のシナリオを表 34 にまとめた。
「一人勝ちのシナリオ」は、どれか1つ
のが規格間競争に勝ち、デファクト・スタンダードを勝ち抜くシナリオである。しかし、1999 年に 3 種 類の規格が登場して以来、買い控えが起こり、パソコン用途において記録型 DVD の普及せず、従
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表 34 記録型 ( 書き換え型 ) DVD 競争のシナリオ
G F E C
B D H
A
×
○
○
○
×
○
×
DVD+RW ×
×
○
○
×
○
×
○
DVD-RW ×
×
○
×
○
○
×
×
DVD-RAM ○
共存(グループ化) 消滅
シナリオ 一人勝
フォーマット
8つのシナリオの可能性 =実現している。
一人勝シナリオの崩壊と将来の脅威
「共存」「延命」シナリオが必要
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来の CD-R/RW と再生専用 DVD-ROM の複合型ドライブである「COMBO ドライブ」が開発され、
薄型のパソコンを中心に急速に普及して行った。この複合型「COMBO ドライブ」の普及は、特にノ ートブック型や省スペース型パソコンの人気が出始めていた時であり、複合型ドライブのコンセプ トがマッチした。この理由は、今までのディスクトップ タワー型のパソコンには複数のドライブを搭 載できるが、薄型・小型パソコンにはドライブが 1 台しか搭載できないためである。以降「COMBO ドライブ」は、TSR の調べによると、パソコン用途で 2002 年に 22,300 千台に達し、光ディスクドライ ブの 10%を占めるまで普及したことになる。この複合ドライブは、記録型 DVD ドライブに影響を与え ていった。CD-R/RW の記録再生の必要性と、複数の記録型 DVD が記録再生できるドライブの開 発を各社手がけるようになった。そしてついに 2002 年に記録型 DVD 複合型ドライブが開発された のである。このため、パソコン用途では、単独規格競争をする「一人勝ち」シナリオが消え、他の記 録型 DVD 規格と手を組む「共存シナリオ」に変わってきている。
「共存のシナリオ」は、4 種類ある。2 つの規格と共存するシナリオが 3 種類、そしてすべて共存 する 1 つのシナリオである。現在、既に商品化しているシナリオは、DVD−RAM と DVD+RW の 2 種類の規格が共存する 1 つのシナリオ以外は、実現している。そのため生き残りのシナリオは、共 存、4 つのシナリオの中で如何に差別化を図れるかがポイントになってきている。D として示した DVD−RAM と DVD−RW の複合ドライブは、2002 年の発売された。このドライブを対応しているメ ーカーは松下電器産業と HLDS(Hitachi-LG Data Storage, Inc .Korea)であり、採用パソコンメーカー は、4 社ある。F で示した DVD-RW と DVD+RW のドライブはソニー1 社であり採用 PC メーカーも 一社である。
しかし東芝、NEC、なども開発を進めており、参入メーカーは確実に増える。また G で示した 3 種 類の規格がすべて記録再生できるドライブは、HLDS が商品化を発表しており 2003 年度中には商 品化がされる見込みである。今後は、「企業戦略と技術」により、どの共存シナリオに乗るかで、決 まると思われる。
図35 光ディスクと半導体メモリ価格
0.01 0.1 1 10 100
メディア容量(単位:バイト)
1M当たりの価格(単位:円)
DVD-R DVD-RAM DVD-RW DVD+RW CD-R CD+RW SDカード メモリスティック 512M 650M 4.7G
2003年6月 市場調査 各社平均価格
「消滅のシナリオ」は、「企業戦略と技 術」で DVD 規格からユーザーの要求を 満たす別の規格に置き換わることを意 味する。現在考えられるのは、携帯小 型機器には半導体メモリーを使用した メディアが有力であり、SD メモリーカー ドやメモリースティックといった規格の メディアである。課題は価格と容量にと なる。容量あたりの価格は図 35 のとお り で あ る 。 半 導 体 メ モ リ ー は 、 実 売
512M が最大で 30,000 円前後、書換え型 CD は 650M の容量で 100 円前後、書換え型 DVD が 4.7G
(片面)の容量で 500 前後円である。容量1M 当たりの価格を比較すると、半導体メモリーは光ディ スクメディアと比較すると 2 桁以上の違いがある。つまり、価格と容量面から見て、半導体メディア
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は、まだ小型携帯の限られた 分野でのみ使用されるメディア と見られる。しかし、第 4 章の 規格競争の勝因分析によって も明らかなように、単に価格が 安いから規格競争に勝てるの もではなく、ユーザーがメディ アの価値を見出せることがで きれば、規格競争に勝てるチ ャンスがある。この点は注意し たい。
一方、小型携帯分野以外の ジャンルでは、青色ダイオード
を使用した高容量光ディスクが、2002 年の 5 月に商品化された。記録型 DVD と Blu-ray の規格を 表 36 に記載し、違いを明らかにする。青色ダイオードを使用する「Blu-ray」規格は、405nm と短波 長の光を使用するため小さな記録ピットに記録再生でき、波長 650nm の赤色ダイオードを使用し ている DVD 規格より記録密度が向上し容量が増える。「Blu-ray」規格の容量は片面で 25G バイ トあり DVD より 5 倍以上の容量を持つことができる。この規格は、2003 年からスタートする地上波 デジタルハイビジョン放送を 2 時間記録できる規格である。今後の、高品位放送の記録媒体として 大きな期待を寄せている。この次世代の青色ダイオードを使った規格も既に、東芝、NEC が中心 に規格化が進められている「AOD (Advanced Optical Disc)」規格があり、早くも規格間競争が始まっ ている。この青色ダイオードを使用した高容量メディアが、次世代 DVD として最も有力であろう。
表36 書換え型DVDとBLU-RAY規格の仕様比較
ソニー・日立・松下 等9社 Blu-Ray アライアンス 0.120μm 0.32μm
36Mbps 405nm 23〜27G Blu-Ray
0.27μm 0.27 μm
0.28 μm 最小記録マーク長
4.7GB 容量
径12cm×厚1.2mm 大きさ
DVD+RWアライア ンス DVDフォーラム
DVDフォーラム 規格グループ
フィリプス、ソニー 他 パイオニア・シャー
プ他 東芝・松下・日立
他 主なメーカー
0.74μm 0.74μm
0.615μm トラックピッチ
11.08Mbps 11.08Mbps
22.16 Mbps 転送レート
655nm 650/635nm
650nm レーザー波長
DVD+RW DVD-RW
DVD-RAM 項目
以上のように DVD のデファクト・スタンダードを脅かす規格が既に誕生しており、DVD の課題解 決は急務である。つまり、如何に「共存シナリオ」に加え、将来から来る新規格に備え「延命のシナ リオ」を描き推進するかが記録型 DVD のデファクト・スタンダードの化への重要な課題である。
この「共存のシナリオ」と「延命のシナリオ」の課題を掘り下げてみる。
まず、共存のシナリオである。共存のシナリオは、どの規格と協業し生き残りをかけるかである。
2 種類、ないしは 3 種類の規格を記録再生できるドライブを短時間で開発しファミリー造りをするこ とになるが、「企業戦略と技術」両面を解決する必要がある。企業戦略上は各企業の思惑があり、
分析することは難しいが、DVD は、パソコンやポスト VTR といった異なったジャンルで共通に使用 することが可能なため、この DVD を使用し、AV 機器とパソコン機器の融合など他のジャンルにま たがる新しい用途の開発がされると予測できるため、各企業間の戦略は広範囲にわたることが予 測できる。すなわち、DVD を通じマーケットの拡大が期待できるといえる。
次に技術的な課題だが、短期間での開発には、開発から量産製造まではかなりの時間と投資と、
リソースが必要になることは明白であり、協業企業間の補完業務が重要になる。規格競争の勝因 を分析し得た「ビジネスパートナーの創造」には、3 つのポイントを発見した。一つ目は、機関デバ
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イスの供給によるセット開発である。
先行開発者には既に基幹デバイス がそろっている。実はこの基幹デバ イスの開発こそが記録型 DVD のドラ イブ開発に重要で、今のところ、半導 体、光学部品、などが供給されない とセットを開発することができないの が現状である。この基幹デバイスを 供給することにより、協業企業がセッ トを発売することができる。
2 点目は、事業化が実現できるま
での間、先行開発者からセットの OEM 供給を受け、時間を作り、その間で自社開発を進める方法 である。この OEM の意義は、それ以外に、複数の企業から同一規格が発売されることでユーザー に安心感を与えることができる。さらには、OEM 元はセット OEM 供給をすることで生産数を上げ、
研究開発等の投資を回収できるのである。規格を広める上では有益な方法である。3 点目は、複 合化すると評価するメディアの種類が増加し、評価・検証に膨大な時間を費やすことになるが、協 業化企業間同士で評価・検証することでより確実な検証ができるようになる。
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表37 シナリオの分析
◎
○
◎ ー 1、技術革新:容量、スピード、価格 2、新規格:DVDオーディオ等 3、新市場開拓:ビデオカメラ等 4、コンビニエンス
延 命
◎ ー ー
○ 1、基幹デバイスの供給
2、事業補完体制(OEM供給等)
3、メディア互換評価協力 4、マーケット拡大:AVとPC等
共 存
デバイ ス メーカ
内 容 論 点
*DVDデファクト・スタンダードの鍵の4つのポイントから分析。
1、ネットワーク外部性、2、顧客満足、3、パートナー造り 4、技術革新
山田英夫氏によると成長期の戦略でオープン化志向が強まると指摘している。このなかで、「補 完事業で儲ける」とある。記録型 DVD は開発時期から、成長期にかかる時期にあり、複合化ドラ イブの開発により、記録型 DVD の事業を成長させるために、先行開発者がとる戦略としては有効 性が高いといえる。
「延命のシナリオ」は、デファクト・スタンダードを確保した後、将来の新規格に移り変わる時間を 創造し、できるだけ長期間にわたりビジネスを継続していく戦略である。ポイントは 4 点あると分析 した。ひとつは、技術革新で将来にわたりユーザーが求める機能を先取りし、充実させることであ る。たとえば、「Blu-ray」規格のように、高容量化や記録再生スピードを向上させアクセス性をよく することである。高容量化は困難だが、スピードを上げる取り組みは進んでいる。DVD-R の記録 スピードは 2 倍速から現在は 4 倍に上がり、現在 8 倍速の開発が行われている。(CD 換算で 50 倍速以上に相当)このスピード向上は、レーザーダイオードの高出力化(100mW 以上)や回転制 御技術など高度な技術を要求される。
2点目は新しい規格を生み出すことである。CD が規格を延命したとき記録型メディアである CD-R や CD-RW を生み出したように新しい規格を生み出し、現規格を延命しながらかつ拡大する ことが必要である。現在 DVD‐Audio 規格が高品位音楽用メディアとして、開発されている。同様に CD も SA-CD の規格で対抗している。このように DVD の規格を新たに生み出すことである。
3点目は、新しい用途を開発することである。現在あるメディアを利用し新たな用途を創造する ことである。DVD ビデオカメラがその代表的な機器である。日立製作所と松下電器産業は協業に より新型の小型 DVD ビデオカメラを生み出した。第 2 章で触れたように、DVD−RAM 規格の利点
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