第五章 記録型 DVD におけるデバイスメーカーのあり方 1、記録型 DVD の競争シナリオ
3. ドライブ開発の変化 3.1 国際競争の激化
光ディスクドライブの業界において中心となる国は、日本、韓国、台湾、欧州の一部で、アジア 3 国の各メーカーがはげしくシェア争いを展開しているのが特徴である。1999 年の 3 国の構成比は 金額ベースでは、日本勢が 66%、台湾勢が 18%、韓国勢が 16%の構成、生産台数では日本勢 が 50%、台湾勢が 27%、韓国勢が 23%の構成で、日本が業界をリードしてきた。しかし、2002 年 においては、金額ベースで日本勢が 40%、台湾・韓国勢が各 30%の構成。生産台数ベースでは 日本勢が 25%、台湾勢は 39%、韓国勢は 36%の構成になり、3 年間で日本の構成が、金額額ベ ースで、26 ポイント、台数ベースで 25 ポイントそれぞれダウンし構成比が半減した形だ。
また生産拠点は、すべてが日本を含むアジア地区で生産されており、2002 年実績で中国が、
54%と最大の生産国である。2 位が韓国で 12%、3 位がインドネシアで 11%である。(以上統計資 料は TSR の調査資料による)
ここのポイントは、日本メーカーのシェアが 3 年間で半減と急速に落ち込んでいることである。
パソコン用光ディスクドライブの開発生産の特徴は、日本で開発されて商品が数年の時間を経
49 - 4
て韓国や台湾のメーカーが開発生産する構図がある。最近の傾向としては、韓国、台湾が生産立 ち上げをする時間が短縮されており、先行開発者のメリットが薄くなってきている。特に DVD−
ROM ドライブでは、日本が量産立ち上げしたのが、1996 年であるが、総生産で韓国に追いつかれ たのが 2002 年の第 3 四半期でこの間約 6 年間の時間がある。CD-RW については、1997 年であ り、台湾に総生産で抜かれたのが 2002 年第一四半期でこの間約 5 年弱である。
さらに複合型 COMBO ドライブにおいては 2001 年に日本で商品化されたが 2004 年の前半抜か れる可能性も出てきており、この間はわずか 3 年である。新規格の商品が出るたびに韓国・台湾 の各メーカーの開発スピードを上げている。しかし、新しい規格はすべて日本発である。DVD に規 格も日本メーカーが中心とした DVD フォーラムで決定された規格であり、CD-RW も同様ソニーが 中心となり規格化したのである。また商品複合型 COMBO ドライブは、規格そのものは新しくない が、従来の、DVD-ROM と CD-RW の複合化のアイディアと商品化は日本のメーカーである。
また、光ディスクドライブを種別するときにはドライブのサイズも重要になる。デスクトップ型のパ ソコンのタワー型に使われるサイズをハーフハイトサイズと呼ばれ、厚みが 41.3mm に統一されて いる。またノートブックや薄型のパソコンに使われているのがスリムサイズと呼ばれ、厚みが 12.7 mmに統一されている。日本が得意としているのが小型精密加工組み立て技術で韓国・台湾勢に 差をつけているこの薄型スリムサイズのドライブである。このドライブの生産数の比率は 2002 年 の光ディスクドライブの 18%を占めており、日本のメーカーは 67%の構成を確保している。また日 本のメーカーは、2003 年に入り、さらに薄い 9.5mm 厚のウルトラスリムタイプの規格を作り、商品 化した。この商品は日本メーカーが 100%の比率を保っており、今後生産数の増加が予測されて いる。
特許の面でも、DVD 関連特許の多くは日本企業が有しており、最近になり、DVD プレーヤーや パソコン用の DVD ドライブ
で中国や台湾メーカーに 対しライセンス料の支払い を命じるケースも増えてき ている。
11
CD-ROM
DVD-ROM CD-R/RW・COMBO
DVD-RAM DVD-RW、+RW
時間
技術発展
図40 光ディスクドライブの日本と台湾・韓国間競争の流れ
日本 台湾・韓国
時間確保重要:国際競争激化!
短時間 技術革新
以上のように、国際競争 力を保ち勝ち続けるため には、技術革新による新 規格の特許化と、新製品 の早期開発および製品化 の連打が生命線になる。
そのためには記録型 DVD を早く普及させることが重 要である。
50 -
3.2 開発リードタイムの短縮化
以上のように、新しい規格を日本企業が作り、先行開発者のメリットを生かしてきたが、近年韓 国・台湾勢の技術力が増し、短期間で開発ができるようになった。この理由はいくつか考えられる が、最近の傾向として
① 日本企業収益力低下で投資抑制傾向
② 企業リストラによる技術者の海外流出
③ 合弁・業務提携など(HLDS Hitachi-LG Data Storage, Inc.が顕著な例:2000 年 11 月日立と韓 国 LG 社が合弁会社設立)
があげられる。このような傾向の中で国際競争力を高めていくためには、短期間で製品を開発し 販売することが必要になる。一企業だけが生き残るというシナリオでなく、日本の国力を高め雇用 を確保するためにも、「共存のシナリオ」を明確に戦略化した、国内企業同士の協業化が重要に なる。開発リードタイムの短縮には、さまざまな方法が取り入れられる。当第五章の「競争の 8 つ のシナリオ」の項で「共存のシナリオ」に 4 つのポイントを上げた。
① 基幹デバイスの供給
② OEM による事業の補完
③ メディア検証の協力体制
④ マーケットの拡大
この 4 つのポイントを日本企業が共同で行い開発リードタイムの短縮と市場の開発を実現すること が、国際協力を勝ち抜くために必要である。
3.3 記録型 DVD のグループ化の流れ
記録型 DVD の普及の課題は「共存のシナリオ」と「延命のシナリオ」の実践にある。このシナリオ の背景は記録型 DVD の複合化もしくはすべて読み書きするマルチ化の流れであり、如何にすれ ば記録型 DVD の複合化とマルチ化が実現できるかは「共存シナリオ」の 4 つのポイントに答えは ある。
このシナリオは、今現在どのように進みつつあるか検証する。すでに図 34 に示したとおり協業 化は製品としてはできていないのが現状だが、技術的に見て 2 つの流れがある。この流れをパソ コンの業界と、DVD レコーダーの業界が顕著に現れているので分析してみる。
1 つの流れは、DVD−RAM 規格を中心にした、DVD−RW と DVD+RW を記録・再生するマルチ 化の方向である。パソコン業界では、HLDS と松下電器産業が中心になり、DVD-RAM 規格の商 品を製品化しているが、TSR 社の報告によるとファミリー化の流れはできつつある。HLDS 社は 3 規格すべてを読み書き可能なマルチドライブを 2003 年内に商品化する報告がある。また先行 2 社に対し日本国内メーカーは TEAC、韓国メーカーは Samsung らが協業化の動きをとっているよう である。一方、DVD レコーダーの分野では、松下電器産業、東芝が DVD−RAM 規格のレコーダー を 2002 年で 53%シェアを確保しさらに 2003 年はシェアを伸ばし、GFK 社の調査によると、日本国
51 -
内では 70%付近まで大きくシェアを伸ばしている。さらに東芝は DVD-RAM と DVD−RW の両規格 を記録再生できる DVD レコーダーを発表した。
2 つ目の流れであるが、パソコンの業界で優位性を保っているパイオニアを中心とする DVD−
RW とリコーと NEC を中心とする DVD+RW のファミリー化の流れである。TSR 社の調査によると 2002 年の実績でパソコン業界では DVD-RW は 46%を占め、DVD+RW は 35%をしめている。さら に 2002 年後半からソニーが商品化した DVD±RW という記録型 DVD の複合ドライブが 3%を占 め、両規格で 84%を占めている。この中でも東芝、Samsung および台湾勢を含めファミリー化が進 んでいる。また、DVD レコーダーの分野でも同様でソニーが 2003 年内に DVD±RW の複合型 DVD レコーダーを商品化すると発表。日本ではパイオニア、シャープが DVD−RW 規格のレコーダーを 対応。欧州ではフィリプスが DVD+RW 規格のレコーダーを販売している。
整理すると、1 つは DVD-RAM→DVD−RW との複合化→マルチ化の流れ。2 つ目は DVD−RW と DVD+RW それぞれから→DVD±RW の複合化の流れになっていることがわかる。
これらはすべて、基幹デバイスの供給および OEM の対応およびマーケットの共同拡大をしてい る姿であり、まさに「共存のシナリオ」を実践している例である。
3.4 技術的課題分析
これらの 2 つのグループ化は、技術的な課題があるためと分析する。DVD−RAM と DVD−RW および+RW のメディアの構造的違いにより、記録再生の技術が異なるためである。各規格の違い を表 41 にまとめた。ここで技術的な違いをメディアの構造面から説明する。縦軸に項目としてあげ るが、主な違いについては 3 点について取り上げ説明する。
まず、一点目は、読み込み回転制御の違いである。DVD−RAM のメディアの構造で記録する 場所は、メディアの内側から外側に 34 個のゾーンがもうけてあり、そのゾーンごとに記録を行うよ うに設計されている。そのためにゾーンごとに速度を一定にして記録再生するため回転スピードを 制御する。ZCLV(ZCLV : Zoned Constant Linear Velocity)という制御を行う。一方、DVD-RW と+RW は、
内周から渦巻状にトレースする構造のため、内周から外周までの回転を一定に保つように制御し 記録再生する CAV(Constant Angular Velocity)方式や内周から外周までの線速度を一定に保つ CLV(Constant Linear Velocity)を採用している。このため斯く規格により回転制御の方法が異なるの である。
2 点目は記録トラックの違いについてである。記録型 DVD メディアの表面には、山と谷のトラック が作られている。レーザの当たる方向から見て山がグルーブと呼び、谷をランドと呼ぶ。DVD-RW と DVD+RW の記録トラックはグルーブだけに記録をする方式である。これに対し DVD−RAM は 谷と山つまりランドとグルーブの両方に記録をする方式である。各々の記録トラックの幅は
DVD-RW と DVD+RW は同じ 0.74 ミクロンであるが DVD−RAM は 0.615 ミクロンと他の規格と異な る。また DVD-RAM の記録面にはランドとグルーブの段差があるため、記録のトラッキング制御方 法が異なるのである。
52 -