4.1. 災害対応ロボットに必要な電子部品の放射線耐性について
4.1.3 移動ロボット用機器の耐放射線性能評価に関する先行研究
験は多くなく,財団法人製造科学技術センター(MSTC) [98]と,永谷ら [99]
により報告されている程度に留まっている.電子部品に対する放射線耐性を確 認した主な実験結果の一部をTable 4-1に示す.ここで,電子機器の放射線耐性 があることは,ロボットの連続稼働時間が延びる事を意味する.放射線耐性は一 般的に「積算線量(Total dose)」と「吸収線量率(Absorbed dese rate)」で表 され,積算線量は放射線が電子機器に対して影響を与えた総量(Gy)を示し,
吸収線量率は単位時間当たりの放射線によって,機器に吸収されるエネルギー 量(Gy/h)を示す.これらの値が大きいほど放射線耐性があることになる.
製造科学技術センターの試験では,CCDカメラ(4台),赤外線カメラ(1台), モータ制御回路,CPU制御回路,ノートパソコン(4台)を対象にトータルドー ズ効果と,シングルイベント効果について評価された(Table 4-1(a)).実験中の様子
をFig. 4-2に示す.トータルドーズ効果は,ガンマ線照射装置にて実験が行われ,吸
収線量率10 [Gy/h]の環境で,2時間の作業を想定し,積算線量が20 [Gy]以上で
の動作確認を目標として実験が実施された.しかし,機器がこの線量率以下で影 響を受ける可能性もあることを考慮して,照射は低線量率(1 [Gy/h])から開始 された.さらに,線量率10 [Gy/h]で2時間の照射で異常がない場合は,約40 [Gy/h]ないし約80 [Gy/h]で最大積算線量200 [Gy]まで照射することが計画され た.この結果,ガンマ線照射試験では,Table 4-1 (A)に示す,CCDカメラ,赤外 カメラ,モータドライバ,CPUボードおよびコントローラのいずれも20 [Gy](10
[Gy/h]×2 [h])の照射では異常は発生しないことが確認された.
また,千葉工業大学および東北大学らによる共同開発の災害対応ロボット
Quinceに搭載された,汎用電子部品で構成された電子回路(PCボード等)につ
いて,日本原子力研究開発機構高崎研究所のコバルト60照射施設で,トータル ドーズ効果を対象に,東北大学らにより照射試験が実施された.実験の様子を
Fig. 4-3に示す.その結果,約200 [Gy]まで放射線照射に耐えられることが確認 されている.また,同時にQuince用センサ,モータドライバ等を200 [Gy]まで 照射した結果,LRSなどについて,照射中に故障が確認されている.LRSの積算 線量と吸収線量率の結果をTable 4-1 (B)に示す.この実験では,製造科学技術セ ンターの実験において50 [Gy]付近でノートパソコンが故障した事例から,当初
は50[Gy]付近での故障を前提に100 [Gy]までの試験を想定されていた.しかし
100[Gy]の試験後も故障が確認できなかったために,200[Gy]が最終目標とされ
た.これらの実験で目標とした,積算線量と吸収線量率をTable 4-2に示す.(製 造科学技術センターが実施した実験の,線量率・照射時間の目標設定値の設定意 図については確認ができなかった.)
さらに,原子力施設向けのロボットや,放射線の影響を受けることを考慮した ロボットを対象に,それらの積算線量と吸収線量率について調査した.その結果,
国内外の40台のロボット(非公開情報含む)を確認することができ,この中で積 算線量の限界値の記載があるロボットが25台,吸収線量率の限界値の記載があ るロボットは9台(うち,積算線量と並記が7台)であった(Fig. 4-4).積算線量 と吸収線量率の内訳をTable 4-3に示す.
国内では,2001年に製造科学技術センターらにより開発された「原子力防災 支援システム」では10 [Sv/h](Gy/h)の環境において2時間以上での動作を目標 とした開発がされており [110],積算線量の耐性が10~10,000[Gy](一部部品交 換前提)であるロボットが開発されている [111] [112].
Table 4-1: Experimental results in the previous studies (A) MSTC, (B) Tohoku UNIV. et.al.
Sensor Total dose [Gy]
Absorbed dose rate [Gy/h]
CCD Camera
(total of 4 camera) 119-231
Infrated Camera 110
Motor driver 222
CPU board 100
Laptop PC
(total of 4 PC) 23-93
Sensor (LRF) Total dose [Gy]
Absorbed dose
rate [Gy/h] Time
UXM-30LN-P 229 40 5h
URG-04LX 124 40 2h49m
UTM-30LX 225 40 5h
From Experiment (B) From Experiment (A)
1 10 40 80
Fig. 4-2:Experimental by (A)MSTC. [98]
(LES)
Fig. 4-3: Experiment by (B) Tohoku Univ. et.al [99]
(a) Tracked vehicle Quince:
Fukushima version.
(b) Device configuration for gamma-ray irradiation test.
(c) CPU board with some electric devices and CCD camera.
(d) Overview of gamma-ray irradiation test.
(a) METI, Manufacturing Science and Technology Center
“Nuclear Accident and Robotics Project, 2001” Total dose 20[Gy], Absorbed dose rate 10[Gy/h]
(b) MEXT, Japan Atomic Energy Agency
“Remote Surveillance Squad, 2001” Total dose 20[Gy],
Absorbed dose rate 10[Gy/h]
(c) CYBERNETIX MENHIR Total dose 10,000[Gy], Absorbed dose rate 100[Gy/h]
Fig. 4-4:Robots with Radiation resistance (a) [113], (b) [114], (c) [110]
Table 4-2: Experimental condition of the previous studies (A) MSTC, (B) Tohoku UNIV. et.al.
Total dose [Gy]
Absorbed dose rate [Gy/h]
Total dose [Gy]
Absorbed dose rate [Gy/h]
Time [h]
1 100 20 5
10 200 20 10
40 200 40 5
80
(A) Experimental conditon (B) Experimental condition
20 200
4.2. 災害対応ロボットに必要な耐放射線性能の評価方法の検討