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社会起業家の概念

ドキュメント内 日本と中国の社会起業に関する比較研究 (ページ 39-49)

第二章   社会起業の 日中比較

3.1.1  社会起業家の概念

社会的企業あるいは社会起業の担い手は、社会起業家(ソーシャル 0ア ン トレプ レ ナー)と呼ばれている。その言葉は、

19世

60年

代か らの社会変革について、文学の 中で初めて使われた。1980年 代初、イギ リス、アメリカな どで、社会起業家に関す る 学校や研究センターなどが成立す るにともない、この新 しい言葉は、より広 く知 られ

るよ うにな り、社会の広範囲で使われるよ うになつた。

時代の変遷 とともに、社会的企業の概念はさまざまになされてきた。例 えば、以下 のよ うなものである。

① 「社会起業家は、社会、環境、経済、そ して精神面での影響 を考えて決断す る」

ものであ り、 したがつて、「人を助ける、この惑星を癒すためにとる行動の基準 とな るものを意味する」 とい う価値観 を持 ち、「また、人の問題 について考える場合、社 内の人間だけに留ま らず、ビジネス とい う枠や 自分 と直接の利害関係 とい う枠を超 え た」人を対象 としている(『社会起業家の条件』マーク・アル ビオン、

14頁

)。

② 「ソーシャル・アン トレプ レナー

(社

会的企業家)は、今解決が求められている社 会的課題(例えば、福祉、教育、環境等)に取 り組み、新 しい ビジネスモデル を提案 し、

実行す る社会変革の担い手である。言い換 えれば、彼 らはフィランソロピー活動やチ ャリテ ィ活動 を超 えて、社会的 ミッシ ョンと収益事業を結びつけた 「新 しい仕組み」

を提案できる能力 をもつ人々である。」(『ソーシャル0エンタープライズー社会的企 業の台頭』、121頁)。

③「社会起業家 とは、独立 して会社を起 こす人だけを指 しているわけではない。NPO や行政の職員 として働いている人 も、サラ リーマンとして会社に勤めている人も、社 会起業家 とされる可能性はある。組織の しが らみや偏った帰属意識のプ レッシャーに 負けずに、「社会をよくしよう」 とい う志の下に、価値のある新 しい仕事にチャレン

ジ して さえいれば、立派な社会起業なのだ」(『社会起業家一社会責任 ビジネスの新 しい潮流』、

5頁

)。

以上の観点か らは、次の点をまとめることができる。社会起業家 とは、社会や環 境、経済等の社会課題の解決を志 し、自身の価値の実現 を通 じて、新 しい事業体 をつ

くろ うとす る人のことである。そこでは、自身の価値観が重要であ り、利益の最大化 を 目論む ことが 目的ではない。そ して、社会問題へ取 り組むためにビジネス手法が用 い られ、社会変革(ソーシャル 0イ ノベーシ ョン)の新事業が展開 されるのである。

3.1.2 

社会起業家の特徴 と条件

社会起業家は、商業を通 して資源 を利用 し、社会問題 を解決す るための持続可能 な 発展 を可能 とす るよ うな組織 を創 る人である。また、社会起業の中で、核 心的な役割

を担 う。

ヤー ク.アル ビオ ンは、社会起業家の新 しい価値観について、透 明性、持続可能性 、 責任 とい う

3点

を挙げてい る。そめ どれ もが、社会起業型 リーダー になることめ必要 な条件で ある。

ここでの透 明性 とは、 リーダす として、誠実 に信頼 を得 るなかで、企業文明を体現 しつう、企業管理 に携 わることを意味 している。持続可能性 とは、環境へ の配慮や資 源再利用 な どを通 じて、社会 問題 を有効 に解決 しなが ら、会社 を経営す ることを意 味 してい る。責任 とは、社会的責任 を果 たす うえでの力である。「社会責任 のあ り方 は 形 も規模 もさま ざまだが、端的にいえば、自分の利害を超 えた ところに関心 を寄せ る

こと」 とされ る。

これ らの条件 を想定 した場合 、社会起業家 にな るためには、三つの特性 が考 え られ る とい う。それ は、心を一つに して協力す る「コンピタンス」 鮨ヒカ)、 他人 と自身 を 共通 して考 える 「コンパ ッシ ョン」(共)、 心か らや りたい ことを大切 にす る「コシ

ッ トマ ン ト」(当事者意識)で ある。

① コンピタンス:有能 な社会起業家 は、価値観 に基づ いた意思決定を行 ないなが ら、企業理念や価値観 を実践に移す。

② コンパ ッシ ョン

:共

感性が高 く思いや りの ある社会起業家 は、組織 の意思決 定 の影響 を受 けるすべての個人のニーズを尊重 し、すべての人 に とつて最善の行 動 を とる。

③ コ ミッ トメン ト:3食い当事者意識 を持 つた社会起業家 は、組織や地域 において、

自分が本 当にや りたい ことや心か ら願 うこ とを夢み る。 しか も、関係者全員 が ワクワク し、意義深 く、励 ま され るよ うな形 で実現す る。

(『社会起業家 の条件』69‑94頁)

また、町 田洋次 は、社会起業家が三つの段階 を経てか らなる とい う意見 を述べ る。

初 めの段階は、事業 を行 う基本的な資金 を用意す ること、次の段階は、人材 と資源 等 企業が経営す ることが必要な要素 を用意す ること、最後 の段階は、事業が社会問題 を 解決 して、社会的 目的を実現す ることである。町 田は社会起業家 の条件 を以下の よ う

に示 してい る。

① リー ダー シ ップがあること、組織 の使命 を定めて、そのために人々 を動員す る。

② ス トー リー 0テ ラーであること、彼 らは 自らの使命 を人々に伝 えることに長 け てい る。

③「人」のマネ ジメン トができること、社会起業家に とつて、最 も重要 な資源 は、

スタ ッフ、援助者 、ユーザーたちの知恵 とアイデアである。

④理想家であ リオポチ ュニス ト(ご都合主義者)で あること、彼 らは、常に自らの 理想 を語 るが、計画や戦略の上 に単にあ ぐらをかいてい るわけではない。

⑤ア ライアンス(同盟)の 構築者であること、彼 らは多 くの場合、自分 の持つてい る資源 だけでは、活動 を続 けてい くことができない。必ず、彼 らの活動をサ ポ ー トす る、広いネ ッ トワー クを持 ってい る。

(『

社会起業家― 「よい社会」をつくる人たち』、 37‑40頁

)

さらに、斎藤慎は、社会の変革と社会的な役割から考えて、社会起業家の特徴を以

下のようにま とめている。

①「地域 コミュニティや世界の多様な二■ズに応える社会的な使命感 を根底に抱 きなが らも

(事

業を実践す る過程では、巧にビジネス・テクニ ックを応用 して い く。」つま り、 ビジネスの手法 を通 じて、各地域で さまざまな社会需要に対

して、社会責任感 を持つている事業を起 こす。

② 「資本力は弱いなが らも、時代を鋭 くとらえたアイデアや創造性にあふれた組 織 を作 る」。すなわち、各種資源 を循環再利用 して、新 しい創造性 を持つ組織

を作 る。

③ 「パー トナーシップを重視す る。縦割 り型組織の弊害に悩ま され る大企業や政 府 とは異な り、同 じ価値観 を共有す る組織 と有機的に結びつ き、相乗効果 を考 えなが ら、 目的を達成す るためのネ ッ トワークを実現 してい く」。それは、共 通認識の仲間同士 と協力 して、社会問題に対 して、社会的な協力 とネ ッ トワー

クを作つていき、コミュニケーシ ョンを うまく実現す ることである。

④「労働 を収入の手段 としてだけではなく、自己実現の手段でもあると考える」。

すなわち、自分の考 えに基づき、ビジネスを通 じて、かつ最大利益 を追求す る ことなく、 自身の人生価値 を実現す ることである。

⑤ 「事業の所在地の地元住民か ら、遠 く離れた発展途上国の国民までを、利害関 係者(ステークホルダー)と 見な し、彼 らの価値観に根 ざした商品やサービスを 提供する。株主に対す る責任 を最優先課題 とし、利益を上げ配当した従来的な 企業の指導者 とは一線 を画 している。」社会的責任感 を持 ち、利潤 を有効的に 利用す るなかで、各地域の需要に応 えてい く。

⑥長期的な効果 を重視す る。た とえ短期的な利益を犠牲にす ることがあつて も、

長期的な恩恵を選ぶ ことで、最終的にはステークホルダーの満足が得 られる と 確信 している。それは、自身価値 とビジネスが持続可能な発展を追求する日標

を立てることといえる。

(『社会起業家―社会責任 ビジネスの新 しい潮流』、

27‑29頁

)

参考文献:

『 社会起業家一社会責任 ビジネスの新 しい潮流』

『 社会起業家一 「よい社会」をつ くる人たち』

『 社会起業家の条件』

3.1.3日本社会起業家 と中国社会起業家 の例

日本社会起業家の例 :(特活)ばれ つ と/(株)ば れ つ と

「ばれつ とは絵 を描 く道具です。ばれつ との上で さまざまな色が出会い新 しい色 を生 み出 しています。私たちは色 を人に置 き換 えて、いろい ろな人たち (障害の有無・性 別0人種 に関係 な く

)が

出会 い交流す ることで新 しい可能性 を生み 出 していきたい と 願 つています。特定非営利活動法人ばれ つ とは、就労 。暮 らし・余暇な どの生活場面

において障害のある人たちが直面す る問題 の解決 を通 して、すべての人々が 当た り 前 に暮 らせ る社会の実現 に寄与す ることを 目指 し活動 しています。」(NPO法人 「ばれ

っ と」ホームペー ジか らの引用)

2002年

3月 25日 に設 立 され、福祉増進 と国際協力活動 を 目的 としてい る。理事長 は相馬宏昭である。

3‑l NPO法

人 ばれ つ と組 織 と事 業 の構 造 図 NPO法 人ばれつとの組織と事業を支える人たち

目的達成のための │ 広報・啓発事業

つうしん発行 ホームページ作成 各種イベン ト企画実行

余暇活動を 障古のある人たちと 共に行う余暇活動事業

たまり場ばれつと

社員(会)総

役員(理事、監事)

  

障古のある人たちの 就労支援事業

おか し屋ばれつと 第一工房・第ニエ房

<ばれっとの各種会議>

・理事会(四半期)

・事務局会議(毎)

・つうしん編集会議に 月)

各セクション会議(随,

●会計データ人ヵポ ランティア

陣審のある人たちの 地域生活支援事業 えびす.

│ │

ばれつとホーム     ばれつとの家

(ケアホーム 緊急一時保護事業)

●料理ポランティア

●代首アルバイト

0い こつとサl・ット●会(理き委員会)

国際支援 交流・研修事業

ばれつと インターナショル・

ジャバン

:iiサ1阜 :す:7:7子

テ イ ア

 ::::::::子

   

・井 当

211ラ

ン テ ィ ン

(DIPO法

人ばれつとホームページ

:http:/ん w.npo― palette.or.jp/about/outline.html)

中国社会起業家 の例

:愛

徳パ ン屋

愛徳パ ン屋 は、知的障害者 の職業訓練 のために、愛徳慈佑院・愛徳基金会 の社会サ ー ビスセ ンターが管理 と支援す る非営利組織 である。それ は、知的障害者 の就職支援 を促進 しなが ら、公益項 目に基づいて企業 の形で事業 を行 つてい る。主な商品は、ヨ ー ロッパ風パ ン、ニ ッポン風パ ン、手作 り月餅 、クッキー、中華お菓子、誕生 日ケー キな どである。

2002年

か ら、愛徳慈佑院が南京地域 の知的障害者 たちのために、サー ビス提供 を始 めた。続 けて、

2007年

には、知的障害者 の職業訓練 のために、愛徳パ ン屋 が設立 され た。

2009年

、郎振 中氏は愛徳パ ン屋 の顧 問 として、商品の開発 を始 めた。これ を契機 に愛徳パ ン屋 は商業的にも発展 して きた。

2010年

11月 、郎振 中氏 は企業 の総責任者

として、愛徳パ ン屋 の社会的企業化 を行 つた。

愛徳パ ン屋 の管理構造 は、取締役一総責任者 の制度 を通 じて、公益 と市場両方 を運 営す るものである。取締役 は、公益方面に責任 を持 ち、総責任者 は市場方面の運営 を す る。運営は、パ ン屋 で原料 を生産・販売す ること、事業の一部か ら得 られた営利 で

コス トと日常支出、就職支援、職業訓練な どを賄 うことによつてな されている。

日本 と中国の社会起業 にお ける相違 を以下の表 にま とめてみ よ う。。

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