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研究目的と内容構成

Ⅰ.本研究の目的

本研究の意義は、保育者が保育の現場で置かれている状況と、保護者が示す保育者への 役割期待を理解した上で、「子育て支援に関わる保育者支援プログラム(以下、「支援プロ グラム」と略す)」の開発を試みることである。また、保育者が支援プログラムに参加す ることを通して、保護者が示す保育者への役割期待を理解し、支援の見通しや自信(保育 者効力感)を向上させる契機となり得ることを明らかにすることである。保護者と保育者 の双方の立場や意向を理解することによって、保育者への役割期待の内容に合致した支援 プログラムの開発が期待できる。

現職保育者は、多忙な日常の保育や広範かつ多様な力量が保育者に求められる中で、集 団生活の中で子どもの障害や気になるところを発見することが多く、当該子どもの保護者 対応にも苦慮している場合が多い。このような現実の中で、保護者に必要な支援を展開し ていくためには、保育者に高い効力感が求められる。図1は、保護者と保育者の関係に沿 って本研究の全体像を示した。本研究では、第1章から第4章に7つの関連研究が組み込 まれる。図2は、子育て支援に関わる保育者の「保護者理解(保護者が示す保育者への役 割期待の理解)」「リフレクション」「子育て支援に関わる成功経験」「保育者効力感(見通 しや自信)」、及び保護者の「育児不安の軽減」とどのような関係にあるのか示したもの である。つまり図2は、本研究における基本的な仮説的モデルである。

図2において保育者は、支援プログラムを通して、①保護者が示す保育者への役割期待 を理解する。また、リフレクションによって、子育て支援に関わる過去の成功経験を想起 し、他の保育者にその成功経験を語ることによって喜びの感情を思い出し、保護者の育児 不安の軽減に繋がったことを認知する。さらに、自他の保育者の成功経験を観察しながら、

②明日への子育て支援の行動目標を設定し、行動目標を持って子育て支援を実践する。③ 保護者の育児の喜びとともに、育児不安の軽減と言う小さな成果の認知を積み重ね、子育

.

図1.本研究の全体図

図2.子育て支援に関わる保育者効力感と関連要因の仮説的モデル

注) 支援プログラムによる保育者への働きかけ, 推測される保育者効力感の向上までの過程.

    

リフレクション

      

③小さな成果の認知

①保育者への役割期待

保護者 保育者

②行動目標を設定した 子育て支援の実行

支援の蓄積 成功経験

子育ての喜び 育児不安の軽減

子育て支援に関わる 保育者効力感の向上 第1章

 研究の範囲と位置付け (研究の目的、問題提起、課題の設定)

第2章      第3章

保護者の育児不安と 子育て支援を促進する

保育者への役割期待 ための保育者支援プロ

       .グラムの開発と検証

対象:保護者 対象:保育者

第4章

研究の総括と今後の展望

(研究の到達点及び今後の課題)

子育て支援 保育者への役割期待

保護者 保育者

て支援に関わる保育者効力感(見通し・自信)が向上すると推測される。

Ⅱ.本研究の内容構造

1.本研究の対象と分析方法

表1は、第2章・第3章各節における、対象、時期、及び分析方法を整理したものであ る。以下、本節では、表1にしたがって第2章・第3章各節の分析方法と内容構造につい て説明する。

第2章では、保護者を対象として、保護者が示す保育者への役割期待を中心に解明する。

その際、保護者の就労の有無や園への満足度、育児状況等との関連について検討する。第 1節の対象は、日本国の近畿圏で暮らす保護者

772

名である。時期は、2013 年5月から 7月であり、キーワードは、保護者が示す保育者への役割期待である。また、第2節の対 象は、日本国の近畿圏で暮らす保護者

772

名である。時期は、2013 年5月から7月であ り、キーワードは、保護者の類型化である。さらに、第3節の対象は、保護者の育児不安 が高いと考えられるアメリカ合衆国カリフォルニア州(以下、「米国」と略す)に在住し、

子どもに発達障害がある、日本人保護者

58

名である。育児不安と就労との関係、園への

表1.本研究の第2章・第3章各節の対象と方法等

対象 人数 時期 方法・分析

【第2章】

第1節 保護者 ,772 2013年5月 質問紙法(因子分析、分散分析)

~7月

第2節 保護者

.

,772,,名 2013年5月 質問紙法(Ward法による階層的クラスタ分析)

~7月

第3節 米国在住日本人保護者 /58 2013年2月 質問紙法(分散分析) 日本国在住日本人保護者 338 ~4月

【第3章】

第1節 現職保育者 5,,名 2017年8月 開発と実践的介入

(保育所勤務) 10 質問紙法・半構造化面接法(質的分析)

第2節 現職保育者(実験群) 30 2017年8月 実践的介入

現職保育者(統制群) 47 12 質問紙法(分散分析、質的分析)

第3節 現職保育者(実験群) 30 2017年8月 実践的介入

現職保育者(統制群) 47,,名 12 質問紙法(分散分析、Ward法による階層的クラ スタ分析、質的分析)

満足度等を分析し、育児不安の様相を明示する。一部、日本国の地方都市で暮らす保護者

338

名との比較検討も行う。時期は、2013年2月から4月であり、キーワードは、育児不 安である。表1右欄には、各節の方法と主な分析法を示している。第1節は因子分析と分 散分析、第2節は

Ward

法による階層的クラスタ分析、第3節は分散分析による量的調査 データの分析を基にしている。

第3章第1節の調査は、支援プログラム実施前・研修後・実施後の各時に、質問紙調査 による予備調査を実施した。対象は、全員女性で、近畿圏の私立保育所勤務の現職保育者 5名である。また、支援プログラム実施後から2週間以内に半構造化面接を実施している。

第3章第2節・第3節の調査は、支援プログラム実施前・研修後の各時に、質問紙調査 を実施した。対象は、近畿圏の現職保育者

30

名(私立幼稚園勤務現職保育者

15

名・私立 保育所勤務現職保育者

15

名)である。研修日直後からの1か月間、保育者は自宅や勤務先 に冊子を持ち帰り、子育て支援に関する行動目標を設定し、毎日その1日をリフレクショ ンし、達成度を確認するというものである。また、研修日から1か月後に実施後調査、研 修日から2か月後に追跡調査を実施する。調査は、園長又は主任保育者を通して保育者に 質問紙を配付する。

第3章第2節・第3節の統制群候補に関するデータは、合計

47

名(私立幼稚園勤務現職 保育者

15

名・私立保育所勤務現職保育者

32

名)から成る。時期は、2017 年8月から

12

月である。全ての保育者に、1か月毎に3度の質問紙調査を実施した。統制群の保育者に は、実験群とほぼ同時期に同条件で質問紙調査を実施した。ここでの方法は、分散分析と 質的分析を用い、統制群と比較し検証を試みる。また、現職保育者の特性による効果の違 いも検討する。統制群の保育者は、支援プログラムに参加しておらず、研修直後の質問紙 調査を受けていない。

2.各章の研究内容

本研究の第1章では、「育児不安」及び「子育て支援」に関する研究の範囲と位置付け を明確化した。また、先行研究を概観した上で、研究の目的と内容構成を示し、用語を整 理した。第1節では、研究の背景を述べ、問題の所在と子育て支援に関わる先行研究の今 日的な課題を示した。第2節では、用語・概念を整理し、本研究での使用方法を定義付け た。第3節では、本研究の目的と内容構成について説明し、本研究の全体像と子育て支援

に関わる保育者効力感と関連要因との関係を示した。

先行研究の今日的な課題の解決に接近するため、第2章では、保護者の育児不安と保育 者への役割期待に注目する。併せて子育て支援に関わる保育者への役割期待の内容とは何 か、明らかにする。第1節では、保護者の育児不安と保育者への役割期待の内容との関係 を明らかにする。保育者への役割期待の内容を明示した上で、育児不安の程度によって保 育者への役割期待の内容が異なることについて論じる。第2節では、園に子どもを預ける 保護者の特徴を、保育者への役割期待の内容に焦点を当て、保護者の類型化を試みる。保 護者の典型的な類型を同定することで、保護者が示す保育者への役割期待を捉え、保護者 理解について論考することが妥当と判断できる。第3節では、米国に在住するとともに、

子どもに発達障害がある、いわば二重の子育て困難を抱えた日本人保護者に焦点を当て、

育児不安に関わる実証的な検討を加える。なぜなら近年の日本国は、米国のように、子ど もを取り巻く課題が多種多様で複雑化しているからである。例えば、育児不安を抱えた保 護者、発達障害を含む特別な支援を必要とする子ども、異なる文化を持つ親子等が増えて いる。親子の身近な専門職である保育者が、高い専門性を持ち、応答していくことが一層 強く求められるようになっている。そのため、本研究では敢えて米国在住日本人保護者と いう異なる文化で特別な支援を必要とする特徴を有する保護者の検討を通して、事例検討 ではなく、一定の量的分析を試みる。なお、第2章は、第3章における保育者支援プログ ラムの開発に対して、保育者への役割期待の内容を提示すると言う役割も有する。

第3章では、子育て支援を促進するための保育者支援プログラムを開発する。また、支 援プログラムを試行し、保護者が示す保育者への役割期待の理解が、子育て支援に関わる 保育者効力感や保育経験年数等と如何なる関係にあるのか、その効果を検証する。具体的 に第1節では、認知行動論的技法、リフレクション等を援用した支援プログラムを開発し 試行し、支援プログラムの効果について予備調査を介して検証する。第2節では、現職保 育者を対象に、支援プログラムの効果を統制群との比較において検証する。これにより、

支援プログラムが保育者効力感の向上に関与するかどうかを実証し、支援プログラムと保 育経験年数の関係について考察する。第3節では、子育て支援に関わる現職保育者の特徴 を解明する。保護者が示す保育者への役割期待の理解、保育者効力感、保育経験年数等を 用いて、階層的クラスタ分析により保育者の類型化を試み、支援プログラムの効果を推進 する要因を同定する。

第4章では、ここまでの研究を総括し、研究成果について述べる。また、これからの保