第1節 大学における研究活動と研究体制の整備 1 研究活動
(1)論文等研究成果の発表状況 現状
ここでは、研究業績を著書(単著・共著)、原著論文(欧文・和文)、その他(訳書・一般向け解説 記事)に分けて記述・分析する。素資料は別添の個々の教員の教育・研究業績である。
先ず、研究活動を概観するため、平成11〜15年度における学部・学科等ごとに、これら業績の 総篇数を第6.1表に示す。経済系については、学部と研究科を別個に、そして、学部の2学科(経 済学科と経営学科)はひとまとめに扱い、一方、生物資源、看護福祉の2学部については、学部と研 究科をまとめ、代わって、2つの学科(同一分野の専攻を含む)を独立に扱うこととした。これは、
学部と研究科の関係が、これら3領域で異なっていることを考慮したものである。このように括り直 した学部・学科等の教員組織を、以下では、単に「組織」と呼ぶことにする。
なお、平成15年度の業績については、原稿のとりまとめが年度途中であったため、資料が完全で ないことに留意する必要がある。
第6.1表 平成11〜15年度の学部・学科等別の総研究業績数
学部・学科等 教員数 H11 H12 H13 H14 H15 合計 篇/教員 指数*
経済系・学部 28 44 55 41 35 31 206 7.4 84 経済系・大学院 8 8 12 17 13 24 74 9.3 106 経済系・合計 36 52 67 58 48 55 280 7.8 89 生物資源・生物資源 26 66 53 70 58 52 299 11.5 132 生物資源・海洋生物 22 58 54 51 45 29 237 10.8 123 生物資源・合計 48 124 107 121 103 81 536 11.2 128 看護福祉・看護 27 37 51 35 49 26 198 7.3 84 看護福祉・社会福祉 22 46 45 34 35 38 198 9.0 103 看護福祉・合計 49 83 96 69 84 64 396 8.1 92 学術教養センター 25 22 35 34 25 32 150 6.0 69 情報センター 3 6 5 4 13 2 30 10.0 114 地域経済研究所 4 8 7 10 8 18 51 12.8 146 総計 165 295 319 296 281 252 1443 8.7 100 指数** — 102 110 102 97 87 100 — —
*:総計の教員当たり篇数を100とした指数
**:年当たりの総篇数を100とした指数
点検・評価
まず、本学の過去5年間の研究活動の変化を、業績の年間総篇数から見てみる。先述したように平 成15年度の業績はすべて出揃っていないので、平成11〜14年度における変化のみに注目すると、
この間の年間変動幅は13%(最低は平成14年度の97に対し、最高は平成12年度の110)に 過ぎない。従って、この期間における本学の研究面での活動にはほとんど変化が生じていないといえ る。
これに反し、組織間には大きな開きがみられる。しかし、組織によって著書が比較的多いところ、
あるいは、欧文の論文が顕著に多いところなど、業績の形態に差違が認められる。そこで、業績の種 類別に5年間の成果を第6.2表にまとめてみた。
第6.2表 各学部・学科等の研究業績の種類別の篇数(平成11〜15年度の累計)
学部・学科 教員数 著書 原著論文 その他 スコア1)スコア/ 指数
単著 共著 欧文 和文 教員/年
経済系・学部 28 10 40 11 95 50 246.5 1.76 78 経済系・研究科 8 9 10 10 42 3 118.5 2.96 131 経済系・合計 36 19 50 21 137 53 365.0 2.09 90 生物資源・生物資源 26 2 23 238 27 9 433.0 3.33 147 生物資源・海洋生物 22 0 32 140 63 2 322.0 2.93 130 生物資源・合計 48 2 55 378 90 11 755.0 3.15 139 看護福祉・看護 27 7 31 14 130 16 240.5 1.78 79 看護福祉・社会福祉 22 6 40 13 110 29 234.0 2.13 94 看護福祉・合計 49 13 71 27 240 45 474.5 1.94 86 学術教養センター 25 3 26 32 72 17 182.5 1.46 65 情報センター 3 0 0 6 12 12 27.0 1.80 80 地域経済研究所 4 0 22 0 24 5 59.5 2.98 132 総計 165 37 224 464 575 143 1863.5 2.26 100
1) 単著書はx 5、共著書と欧文論文は x 1.5、和文論文は x 1.0、その他は x 0.5 に重み付けした評価値
研究業績は、上述のように多様な形で刊行される。その上、同じ著書でも単著と共著では一人の著 者の貢献度はかなり異なる。原著論文にあっては、欧文(とくに英語)で刊行されたものは国際性が あるが、和文論文の読者はほとんど国内に限られるので、両者の間に学術情報としての価値に開きが ある。「その他」にまとめられる業績も多様であり、訳書、調査・研究報告書(一部、科学研究費補 助金に対する報告書を含む)、啓蒙的記事などを含んでいる。
そこで、研究業績の評価に当たっては、個々の業績の内容に応じた重み付けを行う必要がある。こ れにはいろいろの手法が考えられるが、広く共通の評価を得たものはない。ここでは、自己点検者(学 長)の経験から、和文論文を基準の1とし、単著書には5倍、共著書と欧文論文には1.5倍、「その 他」には1/2倍の重み付けをして評価することにした。この重み付けがいろいろの問題を含んでい ることは論をまたない。論文ひとつをとっても、内容の軽いものから極めて充実したものまで、質的 に多様である。同じことは他のカテゴリーの業績にもすべて当てはまる。しかし、業績の総篇数から の評価に比べれば、ここで採用する評価法は、明らかに業績の質的評価に一歩踏み込んだものといっ てよかろう。
このような重み付けを行って、組織ごとに研究業績のスコアを求めた(第6.2表の右3列目)。こ の値から、教員当たり・年間当たりのスコアを計算した(同表右2列目)。組織間にかなり大きな差 異が見られるので、それが一目して分かるように、全平均を100とした指数を算出した。この結果、
9組織は、指数が147の生物資源学科、130〜132の経済・経営学研究科、海洋生物資源学科、
地域経済研究所の3組織、94の社会福祉学科、78〜80の経済学部、看護学科、情報センターの 3組織、65の学術教養センターの5グループに別れた。これは、ここに採用した評価法に基づく、
各組織の研究業績に関わる内部評価の序列である。もちろん、研究に関わるウエイトはそれぞれの組 織によって異なり、組織の全体的機能をこの指標から計ることは適切でない。
もう一点、研究業績の国際性について述べる。国際性を表す1つの指標として、原著論文に占める 欧文論文の比率を取ってみる。この指標について、高い順に並べると、生物資源学科90、海洋生物 資源学科69、情報センター33、学術教養センター31、経済・経営研究科19、社会福祉学科1 1、経済学部10、看護学科10、地域経済研究所0、全学では45であった。生物資源学部の2学 科が突出して高く、情報センターと学術教養センターが中位のグループを形成した。これら4組織は いずれも、教員のほとんどが自然科学系であったり、一部教員がこの分野を専門としているものであ る。この指標から見る限り、本学の自然科学系の研究者は、研究業績の発表に関して国際性指向が強 く、経済、看護、社会福祉の諸分野では、国内向けの情報発信が中心になっていることが分かる。こ の傾向が、全国的にどうなっており、本学の個々の専門領域が、全国的な傾向に比較してどういう特 徴をもっているかを明らかにすることは、第3者評価に対するアピールからは1つの重要なポイント であるが、残念ながらこの比較に利用出来る適切な資料が手許にない。
ここでは、業績発表の国際性を全原著論文に占める欧文論文の比率で計った。本学は、開学当初か ら環日本海の学術交流を1つの特徴として謳ってきた。事実、本学には、中国や韓国籍の教員が多く、
また日本国籍教員にも東アジアの経済や政治を研究の中心に置く者も少なくない。これら分野の研究 業績が和文で発表された場合、当然、近隣諸国の研究者によって論文の原著や訳文が読まれる場合が 少なくないと思われる。和文論文の学術情報としての国際性は、ここで採用した国際性評価法ではま ったく考慮されていない。世界的な論文引用のデータベースがあればその利用も可能であるが、残念 ながら和文論文までも含む、このようなデータベースは構築されていない。これが、研究情報発信の 国際性を欧文論文の割合という簡便な指標で評価することを試みた理由である。
将来の改善・改革に向けた方向性
上記で、発表形態について重み付けした研究業績評価や、欧文論文の比率からみた情報発信法の国 際性についての自己評価を試みた。何れの評価法も問題を含んでいるが、このことを認めた上で、な お、学内の教員組織間に、研究業績に関して、かなりの差異が存在しているといえる。
そこで、個々の教員の研究意欲を高めるための1つの措置として、競争的教員研究費の予算化を県 に求めた。これは、年々の教員研究費の削減を補完する意味も併せもっている。平成16年度からは これが実現することとなったため、内部研究費の運用面から教員の研究意欲を高めることがある程度 可能になるものと期待している。
(2)国内外の学会での活動状況 現状
平成11〜15年度における国内外の学会での活動状況を知るため、別添の「専任教員の教育・研 究活動」を素資料に用い、全国規模の国内学会等の会長・役職(理事・評議員等)・委員、国・国立 機関等の委員等、及び国際学会の委員等を務めたものを集計した。その結果を、第6.3表に示す。
ここでは、地域的な学会における活動は除外した。また、地域機関における活動のうち、福井県・北 陸地方に関するものは「地域貢献」のところで述べる。
第6.3表 専任教員の国内外の学会における活動状況(平成11〜15年度)
学部・学科等 教員数 国内学会 国・国立 国際学会 合計 数/
会長 役員 委員 機関委員等 委員等 教員 経済系・学部 27 1 7 0 1 0 9 0.33 経済系・研究科 8 1 6 1 6 0 14 1.75
生物資源・生物資源 26 1 16 1 3 1 22 0.85 生物資源・海洋生物 22 1 15 8 4 1 29 1.32 看護福祉・看護 27 1 11 8 1 0 21 0.78 看護福祉・社会福祉 22 0 6 4 0 0 10 0.45 学術教養センター 25 0 1 1 1 1 4 0.16 情報センター 3 0 1 2 2 0 5 1.67 地域経済研究所 4 0 0 0 6 0 6 1.50 合 計 164 5 63 25 24 3 120 0.73
点検・評価
この5年間に、助手を含めた全教員の4人に3人まで(ただし、一人で複数の役職を担ったものが いるので、実数は少し下回る。)が全国的な学会等で評価され、その中心メンバーとして貢献してき た。この数値は、1地方の、しかも設立後10年を経過したばかりの公立大学としては、大いに評価 に値するものと考える。しかし、国際的評価となると、決して高くはなく、5年間にたった3名の教 員が国際学会の委員等を務めたに過ぎない。
また、学部・学科等の組織別にみると、全国的な評価に関し、多少の差違が認められる。事例の総 数が少ないので、細かい分析は意味をなさないが、それでも、全国的学会における認知度に関し、経 済・経営学研究科、情報センター、地域経済研究所、生物資源学部の両学科及び看護福祉学部看護学 科に比べ、他の組織は多少評価が低いといわねばならない。このような認知度の違いの一部は教員の 年齢に関係していることが、各組織の年齢構成との概観的比較から示唆されるが、ここでは、詳細な 分析を省略する。
将来の改善・改革に向けた方向性
それぞれの組織に属する教員が、研究の質を高めることによって学会等での認知度が自然に高まる。
これには、教員の意識改革が一義的に重要であるが、前項で述べた研究のモチベーション向上の方策 なども有効であると考えている。
(3)大学・学部等として特筆すべき研究分野での研究活動状況 現状
大学・学部・学科としてまとまって挑戦している研究分野としては、経済学部の東アジア研究、経 済・経営学研究科の地方公共政策研究、生物資源学部の新有用生物資源の開発研究、及び地域経済研 究所の地域経済活性化の研究をあげることができる。東アジア研究については、環日本海学会を中心 に研究活動を展開しており、「北東アジアの未来像̶ 21世紀の環日本海」(福井県立大学北東アジ ア研究会編、1998年)や「北東アジア経済入門」(本学6教員編著、2000年)等の成書のそ の成果にあげることができる。地方公共政策研究は、地方公共政策学会を中心に活動し、本学教員を 中心として学会誌「地方公共政策研究」を刊行し、研究成果を「自治体経営と住民自治」(福井県立 大学地域経済研究所、2002年)、「現代のまちづくり」(丸善、2000年)、「行政評価の現実と 理論」(福井県立大学地域経済研究所、2003年)等の成書を世に送り出してきた。
新有用生物資源の開発研究については、作物や海洋生物資源の開発に関するバイオサイエンス及び バイオテクノロジーの新規性の高い研究業績を多数海外の一流学会誌に発表してきた。地域経済活性 化の研究は、その成果が「データでみる地域経済入門」(ミネルボア書房、2003年)、「超優良企 業の経営戦略」(同友館、2003年)、「現代の商店街活性化戦略」(創風社、2004年)等の成書