第 4 章 鳥取県湖山池における微生物食物連鎖の役割に関する考察
4.2. 研究方法
本研究では,年間の水温変化に応じた食物網動態変化を解析した.水温計算に関する熱収 支モデルおよび水温項を考慮した食物網モデルについて以下に示す.
(1) 熱収支モデル
本モデルの水温計算は,気象条件による水面を通じた熱収支を考慮して計算した.
気象条件により生じる水面での熱収支
は,日射により受ける熱量(全天日射量s kcal m2 day-1),長波放射L,潜熱e,顕熱cについて式(8)のようにモデル化した.
ar
s
y
L
e
c
1 1 exp (式 8)ここで,
ar :水面反射率 0.06
:水面吸収率 0.5
:減衰係数 1.0
L :長波放射(kcal m-2 day-1) Swinbank の式より
e・c :潜熱・顕熱(kcal m-2 day-1) Rohwer の式などの経験式(岩佐,1995)
・Rohwer の式
a s
a s s
W v a s c
e
e e
T T T
C L e e
W
0 . 000308 0 . 000185 269 . 1
・Swinbank の式
L 0 . 97 k T
W4 0 . 937 10
5T
A6 1 . 0 0 . 17 C
2
ここで,
W :風速(m s-1) Ts :表面水温(℃) Ta :気温(℃)
es :表面水温での飽和水蒸気圧(mmHg) = 4.58×exp(0.0633Ts) ea :気温での飽和水蒸気圧(mmHg) = 4.58×exp(0.0633Ta)
:相対湿度(0~1) LV :蒸発潜熱(kcal kg-1) CW :水の比熱(kcal kg-1 K-1)
(2) 温度項を考慮した食物網モデル
水温変化に応じた食物網動態の年間変動を表現するため,摂取,死滅,呼吸排出の各 生物活動に対して水温項「(水 温-20), 1.05」を乗じた.また,植物プランクトン増殖 速度Gについては,増殖最適水温(珪藻類を主体としたマイクロ植物プランクトン:10℃,
藍藻類を主体としたナノ・ピコ植物プランクトン:25℃)を考慮し,水温変化に応じた 増殖特性を考慮した(式 9).
Ai t Ai
Ai
F C
DIP K
G DIP
G
(式 9)
3
) 1
e x p (
Ai Ai
t
T
T T
F T
ここで,
G :植物プランクトンの増殖速度(day-1) GAi :植物プランクトンの最大増殖速度(day-1)
i=1 はマイクロ植物プランクトン,i=2 はナノ・ピコ植物プランクトン.
DIP :リン濃度(gP m-3) KAi :リン半飽和濃度(gP m-3)
CAi :植物プランクトンバイオマス(gC m-3) Ft :水温に関する増殖制限項
T :水温(℃)
TAi :増殖最適水温(℃),TA1=10℃,TA2=25℃.
4.2.2.計算条件
(1) 湖山池の諸元とモデル地形
解析対象とした湖山池は平均水深 3m 程度の浅い富栄養汽水湖であり,数本の河川が流 入し,流出河川を通じて日本海と結ばれている.湖内水質は,流域からの汚濁負荷流入 により,近年の塩分導入試験以前はアオコ発生等の環境悪化が顕在化していた.
本研究では,過去,顕著なアオコ発生が見られた年(平成 15 年)を解析対象期間とし た.湖内を1ボックスとしてモデル化した.流出河川では,湖内水位と海域潮位の関係 および水門開閉状態によって湖水流出と海水遡上が時々刻々と変化するが,本研究では 簡単化のために水門操作と海水遡上は考慮せず,流入量と等しい湖水が流出することと した.
湖山池の諸元を表 4-1,位置図を図 4-2に示す.
表 4-1 湖山池の諸元
湖面積 6.8 km2
平均水深 2.8 m
栄養塩段階 富栄養(T-P:0.045mg L-1 注) 注)池中央部表層H15年平均値
湖山池
● 湖山池
(2) 気象条件
モデルの水温計算に関する気象条件は,湖山池近傍の観測データとして,湖山アメダ ス,米子測候所,鳥取地方気象台の観測データ(気象庁)を設定した.
設定した気象条件の出典を表 4-2,設定された気象条件を図 4-3に示す.
表 4-2 気象データの出典
項 目 データ出典
気温(℃) 湖山アメダス
全天日射量(cal m-2 day-1) 米子測候所
相対湿度(%) 鳥取地方気象台
風速(m s-1) 湖山アメダス
雲量(0-1) 鳥取地方気象台
項 目 気温(℃)
全天日射量(cal m-2 day-1) 相対湿度(%)
風速(m s-1) 雲量(0-1) -5
0 5 10 15 20 25 30 35
1/1 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 10/1 11/1 12/1
気温(℃)
0 100 200 300 400 500 600 700 800
1/1 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 10/1 11/1 12/1
日射量(cal m-2 day-1 )
0 20 40 60 80 100
1/1 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 10/1 11/1 12/1
相対湿度(%)
0 5 10 15 20
1/1 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 10/1 11/1 12/1
風速(m s-1 )
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
1/1 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 10/1 11/1 12/1
雲量(0-1)
図 4-3 気象条件
(3) 流入条件
湖山池への流入水量および負荷量は,鳥取大学(2009)で設定されたタンクモデルにより 算出された湖内総流入量および流量-負荷量関係式(L-Q 式)により算出された DIP・DOC 負 荷を設定した(図 4-4,図 4-5).なお,本モデルで設定された流入水量および負荷量は,鳥 取大学(2009)における各流入河川および流域設定値の合計としている.
0 5 10 15 20 25 30
1/1 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 10/1 11/1 12/1
流量(m3 s-1 )
0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12
1/1 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 10/1 11/1 12/1
DIP(gP m-3 )
0 1 2 3 4
DOC(gC m-3 )
リン 炭素
図 4-4 湖山池流入水量と負荷
60 80 100 120 140 160
1/1 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 10/1 11/1 12/1
流入負荷C:Pモル比
図 4-5 湖山池流入負荷の C:P 比
4.2.3. 微生物食物連鎖の役割に関する考察方法
微生物食物連鎖の役割に関する考察では,各モデル化要素のバイオマスとその構成割合,
上位栄養段階生物(本研究では動物プランクトン)へのエネルギーフロー,栄養塩再生から,
生食連鎖との対比も含めて,微生物食物連鎖が果たす役割について考察した.
4.3. 微生物食物連鎖の役割に関する考察