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トータルバイオマスにおよぼす影響

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第 3 章 細菌が食物網動態におよぼす影響についての考察

3.3. 細菌が食物網動態におよぼす影響

3.3.1. トータルバイオマスにおよぼす影響

食物網モデルと生食連鎖モデルのトータルバイオマスを図 3-2に示す.トータルバイオマ スは栄養塩段階とともに上昇し観測値(Gaedku & Straile ,1994;Sommaruga,1995;Blomqvist et al.,2001;Auer et al.,2004;Eyto and Irvine,2005;Havens et al.,2007;Özen et al.,2013)の範囲内に収まっているが,極貧~中栄養塩段階で生食連鎖モデル,富栄養段階 で食物網モデルが上回り,過栄養段階では生食連鎖モデルが上回る関係となっている.

食物網モデルと生食連鎖モデルの大きな違いの一つに細菌による有機物分解能の変化があ り,分解能変化は含有されるリン再生速度の違いとして現れ,それは生物生産につながるも のと考えられる.

両モデルの有機物分解速度(無機化速度)を図 3-3に示す.食物網モデルの細菌による有 機物分解速度(=細菌排出速度÷有機物濃度)は,有機物を摂取する細菌の現存量(自身の 活性状態,他生物との相互関係によって変化)と非同化率(1-同化率)によって変化し,極 貧栄養から中栄養段階にかけて上昇,富栄養段階以上で減少に転じており,栄養塩段階の違 いによりオーダーが異なる.一方で,生食連鎖モデルの有機物分解速度は,当然のことなが ら各栄養塩段階で一定である.両モデルの分解速度の関係性は栄養塩段階によって異なるが,

トータルバイオマスのそれとは一致していない.

両モデルのリン再生速度を図 3-4および図 3-5に示す.なお,図 3-4の[ ]数値は食物網 モデルの細菌再生割合,【 】数値は生食モデルの有機物分解再生割合を意味する.また,生 食連鎖モデルの有機物分解によるリン再生は,有機物が一定速度で分解され含有リンが水中 回帰することとしている.

両モデルのリン再生速度は,極貧~中栄養および過栄養段階で生食連鎖モデル,富栄養段 階で食物網モデルが優位となっており,トータルバイオマスと同じ関係性であることがわか る.また,食物網モデルのリン再生速度は,その 6 割程度を細菌が占めており,リン再生に もっとも貢献している.

なお,リン再生速度の優位関係は有機物分解速度のそれとは異なっている.食物網モデル では,従属栄養生物の呼吸(有機物の無機化分解)にともない放出されるリン排出率(バイ オマスあたりのリン排出量)が,ともに変化する生物 C:P 比と餌資源 C:P 比の関係によって 増減することによるものと考えられる.

以上より,食物網モデルにおける細菌の存在は,栄養塩段階に応じたリン再生速度の変化 として現れ,それは水界のトータルバイオマスに影響をおよぼすものと考えられる.

0.001 0.01 0.1 1 10

極貧栄養 貧栄養 中栄養 富栄養 過栄養 バイオマス(gC m-3 )

食物網モデル 生食連鎖モデル 観測値

図 3-2 栄養塩段階に応じたトータルバイオマスの変化

0.001 0.01 0.1 1

極貧栄養 貧栄養 中栄養 富栄養 過栄養 有機物分解速度 (day-1 )

食物網モデル 生食連鎖モデル

図 3-3 栄養塩段階に応じた有機物分解速度の変化

1.E-07 1.E-06 1.E-05 1.E-04 1.E-03 1.E-02 1.E-01 1.E+00

極貧栄養 貧栄養 中栄養 富栄養 過栄養

リン再生速度(gPm-3 day-1 )

[67]

[58]

[59]

[63] [56]

【18】

【27】 【40】

【55】

【88】

食物網モデル(捕食者) 食物網モデル(植物)

食物網モデル(細菌) 生食モデル(捕食者)

生食モデル(植物) 生食モデル(有機物分解)

図 3-4 栄養塩段階に応じたリン再生速度の変化. [ ]数値は食物網モデルの細菌再生割合,【 】数

値は生食モデルの有機物分解再生割合.

食物網モデル(捕食者) 食物網モデル(植物)

食物網モデル(細菌) 生食モデル(捕食者)

生食モデル(植物) 生食モデル(有機物分解)

0.E+00 1.E-05 2.E-05 3.E-05 4.E-05 極貧栄養

0.E+00 2.E-04 4.E-04 6.E-04 貧栄養

0.E+00 5.E-04 1.E-03 2.E-03 中栄養

0.E+00 2.E-03 4.E-03 6.E-03 富栄養

0.E+00 5.E-02 1.E-01 2.E-01 過栄養

極貧栄養

貧栄養

中栄養

富栄養

過栄養

リン再生速度(gP m-3 day-1

生食モデル(有機物分解) 生食モデル(植物) 生食モデル(捕食者) 食物網モデル(細菌) 食物網モデル(植物) 食物網モデル(捕食者)

図 3-5 各栄養塩段階のリン再生速度

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