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知的障害者のスポーツ活動におけるボランティアの

負担感の構造と活動継続の意思

- 28 - 第一節 目的

知的障害者は、これまで身体障害者スポーツに比べて目を向けられてこなかったという 社会的な背景と、それによる制度の不備からくる経済的要因・物的環境要因・人的環境要 因によってスポーツ活動への参加が阻害され、余暇活動としてスポーツ活動を積極的に選 択することが難しい状況に置かれている。このような背景から、知的障害者のスポーツ活 動は、これまで国によってではなく、日本知的障害者スポーツ連盟やスペシャルオリンピ ックス日本などの民間・非営利活動組織によって支えられてきた(渡邊,2006)。言うなれ ば、知的障害者のスポーツ活動を普及させたい発展させたいと願う、保護者やボランティ アの力によって活動が展開されてきたのである。

近年、地域のスポーツクラブや団体におけるボランティアの重要性が取りざたされてお り、我が国の代表的なスポーツ組織・団体の半数がボランティアを活用している現状があ る(仲澤, 2002)という。ボランティアはスポーツ組織において人的資源として重要な役割 を担っており(松岡・小笠原,2002)、ボランティアが果たすことのできる役割は大きく幅 の広い活躍が期待されている(野村,2002)。

しかし、ボランティアによって支えられている活動は、活動を続けていく上で十分なだ けのボランティアを確保できなければ運営の基盤が大きく揺らいでしまう。VanYperen

(1998)が指摘するように、ボランティアの活動からの離脱やそれによる新たなボランテ ィアの勧誘は課題となっており、それらを解消するためにはボランティアと組織の関係を 多角的にとらえ、知見を蓄積させる必要がある(北村ら,2005)。これらのことから、スポ ーツ活動に参加するボランティア指導者が置かれている環境をよりよいものにするために は、ボランティアの実態について把握する必要があるといえる。

ボランティアがよりの実態として、参加動機や継続意欲はスポーツ組織がマネジメント を行う際に欠かすことのできない、重要な視点であるといえ、松本ら(2004)は、障害者 スポーツ団体を支えるボランティアを対象とした参加動機と活動継続意欲との関連につい て検証し、参加動機に応じた適切な教育プログラムの重要性を説いた。また、田引は、参 加動機がボランティア参加による満足度に一定の影響を与えていることを明らかにし

(2005)、スポーツボランティア活動への参加動機と活動経験にも一定の関係性があること を報告した(2008)。さらに長ヶ原(1991)は、地域スポーツイベントにおけるボランティ ア活動の継続意欲を規定する要因に言及し、社会的な関心よりも、ボランティア活動その ものやスポーツへの興味といった、個人的関心に基づく参加動機の方がより継続意欲が高 いことを報告した。

このように、スポーツ活動に参加するボランティアの、参加動機や継続意欲といったポ ジティブな側面についてはこれまで多く研究されてきたが、活動場面における具体的な「負 担感」についての研究は進められてこなかった。Weiss,et al.(1984)が、指導者としての 役割と生活領域での役割における葛藤が原因でボランティア指導者の離脱が増加している ことを報告し、松尾ら(1994)は集団の継続化に伴いボランティアでありながら指導への

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過度な没頭が余儀なくされ、結果他の生活領域とのアンビバレントな関係を生起すること を報告したが、いずれも、直接のボランティア活動の場面において、具体的にどのような 事象が負担感を生じさせているのかについては言及されていない。

ボランティアの参加動機を尊重し、継続意欲を促進しようとすることは重要だが、同時 に、離脱につながるような要因を把握し事前に解消するという、離脱回避の視点も求めら れるのではないだろうか。

よって本研究は、知的障害者にスポーツ指導をしているボランティアが抱える負担感の 構造について分析し、ボランティアの参加実態について検討することを目的とする。

- 30 - 第二節 方法

第一項 方法と調査対象

知的障害者にスポーツ活動を提供する「スペシャルオリンピックス(以下 SO)」におい て、主にスポーツ指導をしているボランティアを対象として質問紙調査を行った。SOは知 的障害者に日常的なスポーツプログラムと、その成果の発表の場である競技会を年間を通 じて提供する国際的な非営利活動組織である。回答の妥当性を考慮し、対象者を、SO活動 の本部組織であるSO日本に登録されているスポーツ指導ボランティアに限定した。

対象者については、質問紙の内容が直接的なスポーツ指導に関するものであるため、事 務作業や広報活動といった直接的なスポーツ指導を行わないボランティアは除外した。ま た、SO日本に登録しているスポーツ指導をおこなうボランティアが 25名以上確認できる 地区組織を通じて、当該地区のスポーツ指導ボランティアに配布した。SO活動は47 都道 府県にて展開されているが、活動年数や規模、適正なスポーツプログラムを提供できるか どうかといった信頼性などから、「地区組織」と「設立準備委員会」とに分けられている。

「設立準備委員会」はSOの名称を使用できるが、正式な地区組織としてはまだ認められる 段階にないことを示しているため、提供される日常のスポーツ活動の運営においてより信 頼のおける「地区組織」を対象とした。また、ボランティアが、SO公認のスポーツ指導者 として登録するためには、SO活動の理念や使命、知的障害についての基本的な知識、当該 地域において開催される競技のルールや指導方法についての講義を受けることが前提とな っている。これら全ての受講が完了した後、最低でも、1回2時間のスポーツプログラムに、

5回以上スポーツ指導者としての参加が求められ、全てを満たしたボランティアのみが、SO 日本に登録できるシステムがある。知的障害やスポーツ指導者についての知識・経験が、

ある程度保証されているボランティア数が多い方が、より適切なスポーツ指導が行われて いることが予想されたため、SO日本への登録しているスポーツ指導ボランティアの人数も、

条件に加えた。

調査期間は2009年7月17日から8月31日まで。配布総数980部、回収数は437(回 収率44.6%)であった。

- 31 - 第二項 調査内容

調査内容に関しては、大きく、①基礎項目、②参加動機について、③負担感を生じさせ る要因について、④活動継続の意思について、の4つを設定した。

①基礎項目は、性別、年代、職業、SO 以外でのボランティア頻度、SOでの活動経験、

現在のスポーツ活動状況、これまでのスポーツ活動状況、SO 以外での障害者の存在、SO における役職経験の有無であった。

SO での活動経験については、「1年未満」「1年以上 3年未満」「3年以上 5年未満」「5 年以上7年未満」「7年以上10年未満」「10年以上」の選択肢の中から回答を得た。SO日 本の活動が今年で15周年であり、地区組織として10年以上活動を展開している地区が少 ないので、最も経験の長い選択肢が「10 年以上」であっても不都合は生じないと判断し設 定した。

職業が「学生」と回答した者のみ、現在通っている学校の種別、学年、専門として学ん でいる内容、将来就きたい職とSO活動との関連性について質問項目を設定した。一方、社 会人に対しては、現在の職、最終学歴、現在または過去にSOの活動内容と関連した職に就 いたことがあるかどうかについてもうかがった。

②参加動機については、29項目の選択肢を設定し、考えと近いものから順に最大3つま で選んでもらい回答を得た。この項目は、松本(2004)、田引(2005,2008)など、ボラン ティアの参加動機に関する先行研究を参考にし、設定した。

③負担に感じる要因については、ボランティアとしてスポーツ指導を行う際に負担感が 生じる要因について26の質問項目を設定し、各質問項目ごとに「とても負担に感じる(5)」

「負担に感じる(4)」「どちらともいえない(3)」「負担に感じない(2)」「まったく負担に 感じない(1)」の5件法で評価をしてもらった。

④活動継続の意思については、過去に辞めたいと思ったことがあるかどうか、継続参加 している理由はなにか、もし転居した場合の参加意思はどうか、について質問した。

なお、SO においては、知的障害者を「アスリート」、保護者を「ファミリー」と呼称す るのが一般的であり、回答者の答えやすさを考慮し、質問紙においては上記の表現を用い ている。実際の質問紙は資料の通りである。

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