2. 化学的洗浄後の循環系でのレジオネラ属菌等の推移
2.3 研修施設
本施設の浴槽水用水は水道水である。男女浴槽は、別々のろ過系統としてお り、施設等の概要は表-2.2.5の通りである。ろ過器はカートリッジフィルタと 石英斑岩(麦飯石)をろ材とし、逆洗機能はない。半年毎にろ材の交換・洗浄 を行っている。表-2.2.6 が男子浴槽系統のレジオネラ属菌数等の変化である。
竣工以来 01 年度の試験前までは、過酸化水素洗浄等の循環系の洗浄は行って いなかった。03年12月に初めて過酸化水素洗浄を行った。01年度は循環系統 に設置した塩素供給装置にトリクロロイソシアヌル酸錠剤を投入し殺菌してい た。毎日午後に遊離残留塩素濃度を測定し、0.2mg/L以下の場合、有効塩素135g
男 子 女 子
90.0 30.0
47.6 12.0
31.2 7.7
2.9 3.9
消 毒 剤 の 種 類 消毒剤の 投入方 法 消 毒 剤 の 種 類 消毒剤の 投入方 法
塩素供給装置に投入して、自然溶解 ろ 過 器 循 環 量 [m3/h]
浴 槽 面 積 [m2]
循 環 回 数 [R/h]
ろ 過 器 種 類 カートリッジフィルタ + 石英斑岩
2002~03年度
(平成14~15年度)
電 解 次 亜 塩 素 酸 ポーラログラフ3極式塩素濃度計
で計測し、自動注入 2001年度
(平成13年度)
トリクロロイソシアヌル酸錠剤 ろ 過 装 置 運 転 時 間 帯 24 時間(女子は、利用期間のみ稼動)
浴 槽 系 統
浴 槽 使 用 時 間 帯 朝 と 夕方~夜
浴 槽 容 量 [m3]
所 在 県 宮 城 県
施 設 用 途 研 修 施 設
利 用 者 数 ( 入 浴 者 数 ) 約 20,000 人/年
竣 工 年 月 97年(平成9年) 2月
表-2.2.5 研修施設・浴槽の概要と殺菌消毒方法
を投入していた。
01年度の調査開始時の試験開始初日に、ろ過装置内のカートリッジフィルタ 交換と麦飯石の水洗いを行ったが、交換・洗浄前の浴槽水のレジオネラ属菌検 査結果は、不検出であった。塩素剤の投入量は毎日昼過ぎに残留塩素濃度を測
定して、0.2mg/Lを下回っている際にトリクロロイソシアヌル酸錠剤10錠(有
効塩素135g)を溶解タンク(塩素剤供給装置)に投入している。
塩素剤投入の判断の基準を0.2mg/Lとしているのは、浴槽表面に樹脂シート でカバーをした場合、残留塩素濃度をほぼ2時間は維持できることを根拠とし ている。測定期間中の平均塩素投入量は、測定初日~94 日目までが 80.4g、
初日~113日目までが11.0gであった。
試験開始52日後に浴槽から60CFU/100mLのレジオネラ属菌が検出された。
当施設の浴槽水管理は、データ採取や塩素剤投入量の検討を行うなど、比較的 良好になされている。しかし塩素剤 の投入は基準最低限の残留塩素濃度
0.2mg/Lを2時間維持できないと判断した場合に限って不定期に行われている。
結果として浴槽水換水のインターバルは長いものの、当施設のように比較的管 理の行き届いた部類に属する施設でも、頻繁にレジオネラ属菌の検査を行うと、
レジオネラ属菌が検出されることが判明した。
02 年~03 年度は、塩素濃度を自動制御し、電解次亜塩素酸を注入するよう に改修した。改修後、集毛器のぬめりを感じなくなった一方、ろ材の汚濁が激 しくなった。浴槽と循環系の汚れを剥離させているものと予想される。
女子浴槽系統の調査結果のデータの提示と考察の記載は、省略する。
2.4 まとめ
2000年(平成12年)12月に改正された「公衆浴場における衛生等管理要領」
と「旅館業における衛生等管理要領」(平成12 年12 月 15日 生衛発第 1811 号 厚生省生活衛生局長)には、「浴槽水の消毒に用いる塩素系薬剤は、浴槽水中の 遊離残留塩素濃度を 1 日 2 時間以上 0.2~0.4mg/L に保つことが望ましいこ と。」とあった。
しかし、1日2 時間だけの遊離残留塩素濃度の維持では、循環ろ過系統に生 物膜が生成しやすいことがわかった。また生成した生物膜によって塩素が消費
されることもわかり、長時間の遊離残留塩素濃度維持の必要性がわかった。
表-2.2.6 研修施設・男子浴槽系統での殺菌消毒方法の違いによる浴槽水と拭き 取り検査の変化
一般細菌 レジオネラ属菌 ATP 日目 CFU/mL CFU/100mL pmol/L
15 - 不検出
-29 - 不検出
-43 - 不検出
-57 - 6.0×10
-71 - 不検出
-85 - 不検出
-95 - 不検出
-113 - -
-30 不検出 不検出
-62 1.8×10 不検出
-99 5.9×10 不検出
-143 2.7×103 不検出
-168 4.1×104 不検出 4.0×10
181 1 不検出
-206 1.1×105 5.0×10
-240 3.9×102 不検出
-279 3.0×105 不検出
-317 - 不検出
-一般細菌 レジオネラ属菌 ATP アメーバ 日目 CFU/mL CFU/mL pmol/L 個/mL
15 不検出 不検出 4.4×102 不検出
29 7 不検出 不検出 不検出
43 不検出 不検出 不検出 不検出
57 8 不検出 不検出 不検出
71 不検出 不検出 不検出 不検出
85 7.4×106 不検出 4.1×103 不検出
95 1 不検出 不検出 不検出
113 - - -
-30 1 不検出 4.7
-62 - - -
-99 - 不検出 -
-143 不検出 不検出 8.9 不検出
168 - - -
-181 不検出 不検出 3.9
-206 不検出 不検出 1.8×10
-240 不検出 不検出 不検出
-279 - -
-317 - - -
-※ 拭き取り検査方法:浴槽系に浸漬したバイオフィルム試験片を定期的に「ふきふきチェック」
で拭き取り、試験水とした。
表中データは、その試験水中の値で示す。
シリコンゴムの試験片10cm2を拭き取り、滅菌水10mLに懸濁している。
(
〇 一 年 度) 塩 素 供 給 装 置 投 入
・ 自 然 溶 解 ト リ ク ロ ロ イ ソ シ ア ヌ ル 酸
(
〇 二~
〇 三 年 度) 塩 素 濃 度 制 御 電 解 次 亜 塩 素 酸
拭 き 取 り 塩素剤種類
投入方式
(調査時期)
(
〇 一 年 度) 塩 素 供 給 装 置 投 入
・ 自 然 溶 解 ト リ ク ロ ロ イ ソ シ ア ヌ ル 酸
(
〇 二~
〇 三 年 度) 塩 素 濃 度 制 御 電 解 次 亜 塩 素 酸
検査開始 からの日数
塩素剤種類 投入方式
(調査時期)
検査開始 からの日数
浴 槽 水
調査研究結果の成果によって、02年(平成14年)10月の「公衆浴場法第3 条第2項並びに旅館業法第4条第2項及び同法施行令第1条に基づく条例等に レジオネラ症発生防止対策を追加する際の指針」(平成14年10月29日 健発
第1029004号 厚生労働省健康局長通知)で「浴槽水の消毒に当たっては、塩素
系薬剤を使用し、浴槽水中の遊離残留塩素濃度を頻繁に測定して、通常 1L 中 0.2ないし0.4mg程度を保ち、かつ、遊離残留塩素濃度は最大1L中1.0mgを 超えないよう努めるとともに、当該測定結果は検査の日から3年間保管するこ と。」となった。