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化学的洗浄後のろ過器内でのレジオネラ属菌等の推移

ドキュメント内 入浴施設の実態調査から見る課題 (ページ 36-40)

3.8×108CFU/100mLのレジオネラ属菌が分離された。日帰り入浴施設では、02 年度以降にろ過器の直前に電解次亜塩素酸を注入するように改修して、ポーラ ログラフ式残留塩素濃度計で濃度管理をするようになった。その結果、レジオ ネラ属菌は分離されたものの、かなり微生物の発生が少なくなった。塩素濃度 の管理が重要であることを示唆する結果を得た。

写真-2.3.1に示すように01年度の測定前は約6年間使用したろ材が砂塊化 しており、ろ材を交換した。その後、約2年半経過した時点でのろ材は初期状 態に近く、サラサラした状態を保っていた。

研修施設は、ポーラログラフ式残留塩素濃度計で濃度管理をするようになっ てからのデータである。逆洗のできない石英斑岩とカートリッジフィルタでも、

レジオネラ属菌は不検出となっている。

3.3 まとめ

これまでろ過器は、レジオネラ属菌等の温床と考えられてきた。本調査を実 施したのもそのような意図である。

砂式ろ過器に充填されているろ過砂の中には、微生物が増殖するとともに、

菌体表面にグライコカリックスと呼ばれる粘液性物質を体外に産出する。微生 写真-2.3.1 砂式ろ過器から取り出したろ材の砂塊

物と粘液性物質が混在、結合して、膜状物である生物膜(Biofilm)を形成する。

ろ過器を定期的に逆洗しても生物膜の形成を阻止することは難しく、砂の粒子 を固め、写真-2.3.1のようなマッドボールとかライスボールと呼ばれる砂塊が 形成される。

生物膜はレジオネラ属菌の温床となるが、砂塊にもレジオネラ属菌が生息し ている可能性が高い。ろ過砂の上部表面に水道(みずみち)ができている場合 は、下部には大きな砂塊が形成されていると推測できる。塩素濃度を常時一定 以上に維持していれば生物膜は生成し難いため、砂塊もできにくいとされてき た。

「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」(平成 15年7月25日 厚生労働省告示第264号)に、「ろ過器内は、湯水の流速が遅 くなり、最も生物膜や汚れ等が付着しやすい場所であるため、1週間に1 回以 上、ろ過器内に付着する生物膜等を逆洗浄等で物理的に十分排出すること。併 せて、ろ過器及び浴槽水が循環している配管内に付着する生物膜等を適切な消 毒方法で除去すること。また、ろ過器の前に設置する集毛器は、毎日清掃する こと。」とある。厚生労働省告示も、ろ過器は、レジオネラ属菌の温床という考 えに基づいている。

この調査とは別に医学系の研究者が、ろ過器内でのレジオネラ属菌の調査を した。ろ過器の直前に塩素を添加しても、砂式ろ過器内の中心部で、レジオネ ラ属菌を絶滅することは困難であることを示唆した。2000年(平成12年)12 月の厚生省通知「公衆浴場における衛生等管理要領」で、塩素をろ過器の手前に 注入することで、ろ過器の内部を消毒することになったが、意味を余り持たな いとしている。

ここで、研究者によって2つの考え方がある。片方は、ろ過器を使わないこ とがレジオネラ属菌対策には不可欠であるという考え方である。もう一方は、

2000年にろ過器の手前に塩素を注入することで、ろ過器からレジオネラ属菌を 追放しようとしたが、実際には無理で、生物ろ過を復活させようという考え方 である。前者は、家庭用 24 時間風呂を調査した研究者が傾倒している。後者 は、自らの研究と考察が至らなかった反省も含めて医学系から工学系までの研 究者が主張し始めている。

生物膜が全くない砂式ろ過器では、濁度はろ過できても有機物が除去できな い。しかし、生物ろ過だと有機物除去ができる。現在活動中の空気調和・衛生 工学会 給排水衛生設備委員会 浴槽水等の保全および計測小委員会(主査:関 東学院大学 野知啓子)で行った実験結果が表-2.3.2である。実験結果である。

地球環境時代の今日、古から人間の生活や自然環境で培われてきた生物ろ過の 必要性を再考すべき時かもしれない。つまり、ろ過器イコール危険という短絡 的な考察を改めるべき時期に差し掛かっている。

砂ろ過法 生物砂 ろ過法

活性炭 600g

生物活性炭

200g 生物ろ過法

最小値 -196 -163 26 83 85

最大値 -38 66 75 100 100

中央値 -115 -20 55 100 100

9 28 25 37 29

N  数 DOC 除去率

[%]

ろ過法

(社)空気調和・衛生工学会 給排水衛生設備委員会 浴槽水等の保全および計測小委 員会 配布資料

表-2.3.2 ろ過方式の違いによるDOC除去率(模擬浴槽水)

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