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石炭採掘跡地の土壌モニタリング計画

第 3 章 森林回復技術開発モデル林造成事業 1) 対象国の絞り込みと対象地域の選定

4) 石炭採掘跡地の土壌モニタリング計画

国際緑化推進センター 大角泰夫・仲摩栄一郎 京都大学大学院農学研究科 森林科学専攻 熱帯林環境学分野 太田誠一

1.目的

インドネシアで進められている炭坑開発は露天掘りで行われるのが普通である。すなわ ち埋蔵されている炭層までの地層をはぎ取り、その下に存在する石炭を採取する、というも のである。インドネシアの法律では採炭後は速やかに埋め戻し、森林回復を行うことと定 められている。埋め戻しに使う材料は炭層の上部の採炭時にはぎ取られた地層を使うのが 普通である。

これらの埋め戻しの材料中には海成堆積物が多く含まれ、その中には強いH2O2反応を示 すものもあり、明らかにPyrite(FeS2-黄鉄鉱)と同定される硫黄化合物が存在することが確 認された。このような硫黄化合物は暴露された場合、

FeS2+15/4O2 = Fe(OH)3+2H2SO4

という一般化された化学式にしたがって硫酸が形成されるとされている。すなわち、酸性 硫酸塩土壌(Acid Sulphate Soil-ASS)の形成である(写真-1)。この酸性硫酸塩土壌は時と

してpH1~3という極めて低い酸性となり、森林回復に大きな障害となる。そのため、炭坑

会社によっては埋め戻し後の森林回復を容易にするために元々の土壌表層のPyriteを含ま ない材料を別途採取し、それより下層から炭層までと炭層間の地層を埋め戻し材料に使い、

この別途保存したPyriteを含まない採炭前の表層をかぶせる方法を使っている(写真-2)。

写真 ‐1 潜在的酸性硫酸塩土壌 (ASS)

• 存在地 :

海岸地帯の平坦地

• 植生 :

マングローブ林(汽水性) 及びMelaleuca等湿地林(低海 抜淡水性)

• 土壌 :

硫黄化合物の存在( Pyrite‐

黄鉄鉱(100cm以下)及びJarosite‐

鉄明ばん石(40~90cmの黄色鉱物))

• FAO 分類による関連土壌:

thionic Fluvisol(硫黄型沖積土壌), eutric Histosol(富栄養型泥炭土壌) dystric Histosol(貧栄養型泥炭土

壌)

Thionic Fluvisol in  Mecong Delta

埋め戻し材料の酸化に伴う強い酸性は予備的観察から採炭後の埋め戻し直後には発生し ておらず、埋め戻し当初は堆積時の海成環境を反映してアルカリ性である。その後時間の 経過とともに酸性化することが予備調査で明らかになった。また、類似の材料にもかかわ らず、場所によって酸性の程度が異なる。酸性化する材料の多寡がこの原因となっている ことも伺われた。さらに、元々の埋め戻し材料が粘土質でしかも緻密であり、埋め戻し時 に大きな重機で平準化されるために強く圧密される。そのため、材料の透水性がきわめて 不良で、植え孔が降水時にはバケツのように過湿状態になり、植栽する際に根腐れを発生 する。加えて、硬堅でもあるので植栽木の根の伸張に影響を与えることが推察される。

これらのことから森林再生を進めるためには次の事項について明らかにすることが必要と 判断した。すなわち、

1) 埋め戻し材料がいつから酸性化するのか?

2) 材料の違いによる酸性化の違いの存在は?

3) 材料の酸性化が土壌中でどの深さまで進むか?

4) 通常反応で形成されるH2SO3ではなく、H2SO4という段階に進むきっかけ?

等について検討が必要と判断し、そのため、酸性化のモニタリング及び対象地の潜在酸性 化物質の分布調査を行うこととした。

2.モニタリング対象地の選定

モニタリング対象地は森林回復技術の解明のためのモデル林造成が予定されており、鉱 山会社の協力体制が重要である。予備調査の結果、PT. Antang Gunung Meratus社とPT.

Tanjung Alam Jaya社からの協力が得られることとなり、両社の管理地を対象地とするこ

ととなった。これらの地点が設定されたことにより、2010年掘削の新鮮な堆積物によって 埋め戻されたAntang Gunung Meratusプロットと2003年に堀上げられた材料によって 2010年に改めて埋め戻されたTanjung Alam Jayaプロットという異なった歴史の材料で の土壌変化がモニターできることとなった。

炭坑会社に求められる森林回復対象地は、[埋め戻しされた場所]と[炭坑を掘り進んだ際 に形成される斜面]、さらに[斜面上部の旧森林地区で採炭の際に伐採された場所]の 3 地点 である。これらの中で炭坑会社が最も重点を置く場所としては、埋め戻された場所である。

この埋め戻しされた場所で、Pyrite のような潜在的酸性化物質を含まない表土が被覆さ れた場所では森林回復は容易に行われており、多くはAcacia mangium とEnterorobium

cyclocarpum を中心とした外来早生樹の植栽地となっている。一方表土被覆が行われず、

酸性化物質が暴露されている場所では写真のように裸地化しており、植栽が困難であるこ とが類推される(写真-3)。

これらの炭坑跡地の取り扱い区分について、現状までの観察によれば、図3-11のように 模式化される。

写真‐2 炭層上部の地層

灰黒色の海成の堆積物らしき層と、陸上での堆積 が予想される黄色がかった層が存在する。右奥の 掘削面のように地層は必ずしも水平ではなく、傾 斜している場合の方が多い。特に灰色~灰黒色の 地層の多くは30%H2O2による反応がきわめて顕著 で、pyriteの存在が強く推察される。

いずれの層も転石は少量含まれているが、ほとん どは粘土サイズのきわめて細粒の粒子より成る非 固結堆積物から構成されている。

写真‐3 採炭後放置された跡地

PT. Gunung Sambong会社採炭地で、2003年に採 炭された残滓。非常に酸性が強く、水たまりで

pH1.7が観測された。たまり水は赤色~赤黒色で、

一部はJarosite(鉄明ばん石)と予想される黄色結 晶が見られる。山地の中の黒色部分の土塊内部 は依然アルカリ性であるが、土壌の地表部は酸 性が強く、pH3以下であることが多い。土壌は緻 密で硬く、強酸性が加わるためか樹木の生立は 全くない。

Pond Hill Top

Steep cut slope Gentle cut slope

Hill Top Reburied 

+covered  flat  (by top soil) 

Reburied  +uncovered flat

Reburied 

+uncovered slope

Water

Figure 1      Sites for soil monitoring in coal mining areas

この模式化されたカテゴリーの中で、埋め戻された場所が最も広く、酸性化の可能性が

図 3-11.

高い場所である。したがってこの図のなかの、「埋め戻し平坦面+被覆地(表土被覆)」及び「埋 め戻し平坦地(表土被覆なし)」が森林回復には最も重要な対象地で、モニタリングが最も必 要な地点である。対象地図の両側に例示した切削面は、通常は急斜面で森林回復の対象と はなりにくい場所である(写真-2参照)。また、同じく両側に示した丘陵上部面は元来の表土 が存在する場であるので、特に酸性化は生じない。したがって、切削斜面と切削斜面上部面 については酸性化のモニタリングからは外してよいと考えられる。

対象地は埋め戻し材料が非固結硬化物質からなり、埋め戻し時の重機の圧密・破砕による 硬化に加えて、埋め戻し材料が有機物など空隙をもたない材料であるため、埋め戻し地は 極めて緻密、硬堅となっている。対象地にはモデル林を植栽することとなるが、硬堅過ぎ て植栽が困難であること、さらに緻密であることから植え孔の排水が滞り、植栽木の根腐 れが発生しやすい。そのため暗渠排水の効果を観察するためにリッピングを行うことがPT.

Tanjung Alam Jaya社の対象地において計画された。このモニタリングにおいても、リッ

ピングによる通気性の改善に伴う酸性化をモニターするためにリッピング地と非リッピン グ地における酸性化について検討する。

以上の論議から、土壌モニタリングは酸性化が予想される埋め戻し地において行うこと とし、次のポイントで実施することとした。

PT. Antang Gunung Meratus地区では今年度掘削の新鮮な素材を用いて埋め戻しが行わ

れ、同時に表土被覆が行われる予定であるので、①表土被覆地、②表土被覆なしの 2 区分 でモニタリングプロットを設定する。一方、PT. Tanjung Alam Jaya地区は2003年に採炭 が行われ、その後緑化が行われず、写真-3 のように採炭残滓が積み上げられた状況であっ た。その後炭坑を地域政府機関が買い取り、当時の材料を用いて昨年度埋め戻しが行われ た。採炭当時の採炭地表土は別途保存されなかったので、ここでは表土素材を現地で調達 することは不可能である。したがって、表土被覆は計画されていないが、試験を推進する 際には植え孔に表土を使う方法が計画されている。この際の表土は近くの産地から調達す ることとしている。また、対象地の土壌はきわめて硬堅ではあため、リッピング試験を行 うこととしており、①リッピングなし、②リッピングありの 2 区分でモニタリングプロッ トを設定する。

3.モニタリングプロットの設定 3.1 モニタリングプロット設定の考え方

対象地は人工的に埋め戻された場所で、いろいろな地層の混合物で、極めて不均質に分布 すると考えられる。ただ、大きな重機によって一時にまとめて埋め戻されているので、類 似の材料が小面積ではあるがまとまった形で埋め戻されていると予想される。したがって、

小面積のプロットを設定し、その中で変化を解析する方法が適切と考えられる(図3-12)。プ ロットの繰り返しは、不均質な材料を勘案し、可能な限り多点とする。

モニタリングはこの小面積のプロットで継続的に行う方法で進める。さしあたりは定法 による湿潤試料の水pHを測定することとし、一部の試料については冷蔵保存して、その他