国際緑化推進センター 仲摩 栄一郎
1 ) インドネシアにおける石炭生産の現状
1.インドネシアの石炭生産量、輸出量、国内消費量の現状
アジア太平洋地域の石炭需要の増大により、インドネシアの石炭生産量は、1990 年の 1,050万トン、2000年の7,644万トン、そして2010年には2億7,516万トンとここ20年 で約27倍に飛躍的に増加した(表5-1)。
2011年の予想生産量は3億2,700万トンであり、生産量の年間増加率が1.5%であると想 定すると、2014年には3億4,200万トンまで増大する見通しである。石炭の国内消費量は、
2011年の予想消費量 7,900万トンから徐々に上昇して、2014年には1億400万トンに達 する見通しである。したがって、石炭の輸出量は、今後4年間、概ね2億4,000万トンの 水準を維持する見込みである(インドネシア共和国エネルギー・鉱物資源省鉱物・石炭総 局)。
表5-1.2004~2010年におけるインドネシアの石炭生産量、輸出量及び国内需要量
年 生産量(トン) 輸出量(トン) 国内消費量(トン)
2004 132,352,025 93,758,806 36,081,734
2005 152,722,438 110,789,700 41,350,736
2006 193,761,311 143,632,865 48,995,069
2007 216,946,699 163,000,000 61,470,000
2008 240,249,968 191,430,218 48,926,681
2009 256,181,000 198,366,000 55,790,000
2010 275,164,196 208,000,000 67,000,000
出典:インドネシアエネルギー鉱物資源省鉱物・石炭総局(2011)
2.インドネシアの石炭輸出量の現状
2010年時点で、インドネシアは石炭生産量の約75%を、主に日本、インド、韓国や台湾 等に輸出している。2010年のインドネシアの石炭輸出量は、2億800万トンで世界第2位 となっており、インドネシア経済において重要な輸出資源の1つである。このうち約17%
が日本へ輸出されており、我が国にとって重要な輸入国となっている。
なお、石炭輸出量の第1位はオーストラリアで3億5,200 万トン。一方、世界一の石炭 生産国である中国はわずか4,700万トンで第7位となっている。
残る約 25%が国内需要である。国内需要の最大手は電力産業で約 8割を占めており、次
にセメント産業が約 1 割、残りを繊維、紙パルプ等のその他の部門が占めている。インド ネシア国内では、最近の経済発展によりエネルギー危機の状態にあり、さらなる電気エネ
ルギーを必要としており、今後、国内消費量は徐々に増加する見通しとなっている。
3.インドネシア国内での石炭生産の現状
インドネシアでは様々な国内企業によって石炭生産及び開発が行われているが、拠点が カリマンタン島に集中している。中でも特に活発なのが東カリマンタン州と南カリマンタ ン州である。
本事業で実証調査の対象地域とした南カリマンタン州の石炭潜在量(ポテンシャル)は、
資源量が計122億6356万トン(11.7%)、埋蔵量が36億436万トン(17.1%)で、南スマ トラと東カリマンタンに続いて第3位となっている(2011年エネルギー鉱物資源省)。
4.南カリマンタン州の石炭生産の現状
南カリマンタン州は天然資源が豊富なことで知られ、森林や漁業といった再生可能資源 だけなく、鉱物資源(特に石炭や鉄鉱石)も埋蔵されている。1970 年以降、これまで 30 年以上もの間、過剰な森林開発が行われてきた結果、森林資源は深刻な破壊を受けた。2000 年以降は、石炭生産が活発となり、その生産量は右肩上がりで増えている。
南カリマンタン州の石炭生産量は、2008年時点で約9,000万トン(インドネシア全体の 石炭生産量の約 35%)であり、経済におけるリーディングセクターの一つとして主要産品 となっている(図5-1)。
図5-1.南カリマンタン州の石炭生産量の推移(2011年エネルギー鉱物資源省)
南カリマンタン州におけるこの非常に大きな石炭のポテンシャルは、特に石炭鉱業部門 への投資において、投資家達を引きつけている。表 5-2 にあるように、2007 年だけでも 248,481.82ヘクタール、つまり55,639.52 km2ある南カリマンタン州の0.23%の面積が、
鉱業用に使用されている。
百万トン
年
表5-2. 2007年南カリマンタン州における鉱業エリア面積
No. 土地利用 単位(ヘクタール)
1 鉱業許可発行面積 228,556.25
2 採掘開業面積 8,810.22
3 再生面積 6,239.57
4 再緑化された土地 3,431.54
5 設備とインフラ 1,444.01
合計 248,481.82
出典:www.kalselprov.go.id(2008年)
5.南カリマンタン州における石炭生産の経緯と現状
1980年代中ごろ、南カリマンタン州では200ヘクタール程の鉱業権において、農業協同 組合(KUD)による小規模な石炭採掘事業がすでに行われていた。この鉱業権を取得して いた農業協同組合は、Usaha Karya Cempaka,、Maduratna Pengaron、Bersama Binuang 農業協同組合である。この事業は、1982年の鉱業技術理事会と地方事務所による採掘事業 がベースとなっている。採鉱自体は1984年に開始された。おそらく、これが南カリマンタ ン州の石炭採鉱の始まりである。小規模で価格も低く、採鉱もまだセミメカニックという 状態であった。
1989年、数社のセメント会社が、燃料として南カリマンタンの石炭を使用し始めた。こ うして石炭需要は高まり、市場原理に従って価格も徐々に上がっていった。当時の鉱業権 保有者がこの巨大な石炭需要を満たすことが出来なかったため、地元住民による許可なし の採掘がほぼ全地域で行われるようになった。この採掘者達は、後に無許可採掘者(略称:
「PETI」、許可なし金採掘Penambangan Emas Tanpa Ijinからの略語)と呼ばれるよう になった。
これまで、南カリマンタン州では、許可を保有している幾つかの大規模企業及び中小企 業と、無許可採掘者が石炭事業を行ってきた。この許可を取得済みの石炭採掘企業は、中 央政府から出される石炭鉱業事業契約(PKP2B)を持っている企業、もしくは各地方政府 から出された鉱業権許可を持っている協同組合から成り立っている。
南カリマンタン州で操業を行っている石炭鉱業事業契約(PKP2B)を取得済みの鉱業企 業には、PT. Adaro Indonesia、PT. Arutmin Indonesia、PT. Bantala Coal Mining等が挙 げられる。地方分権、地方自治が開始されて以来、インドネシアでは各地方がそれぞれの 収入向上を競い合っている。既存のデータによると、南カリマンタン州における県政府は、
2010年末までに 410もの鉱業許可を出している。その内訳は、鉱業業務契約(KK)許可 が6件、鉱業権(KP)363件、石炭鉱業事業契約(PKP2B)41件である。南カリマンタ ン州において石炭鉱業許可が出された面積は、930,292ヘクタールであり、わずか3,753,052 ヘクタールしかない州全体の面積の24.79%にも及んでいる(図5-2)。
図5-2.南カリマンタン州における石炭鉱区 出典: www.kalselprov.go.id
表5-3. 南カリマンタン州における石炭鉱業企業事業協定(PKP2B)
No. 企業名 活動 面積
(ha) 地域 備考 1 PT. Arutmin Indonesia 採鉱・生産 59,217 Kotabar,Tanah
Laut,Tanah Bumbu
第一世代 2 PT. Adaro Indonesia 採鉱・生産 35,782 Tabalong, Balangan 第一世代 3 PT. Bentala Coal Mining 採鉱・生産 2,095 Balangan 第二世代
建設 32,005 4 PT. Bahari Cakrawala
Sebuku 採鉱・生産 5,871 Kotabaru 第二世代
5 PT. Antang Gunung
Meratus 採鉱・生産 22,433
Banjar, Tapin, Hulu Sungai Selatan, Hulu Sungai Tengah
第二世代
6 PT. Jorong Barutama G 採鉱・生産
建設 7,341
12,770 Tanah Laut
Tanah Laut 第二世代 7 PT. Bara Multi Sukses
Sarana 採鉱・生産 6,625 Banjar, Tanah
Laut,
Banjarbaru 第三世代 8 PT. Kadya Caraka Mulia 採鉱・生産
探鉱 1,575
3,053 Banjar 第三世代
9 PD. Baramarta 採鉱・生産
探鉱 1,621
5,865 Banjar 第三世代
10 PT. Sumber Kurnia Buana
採鉱・生産
探鉱 10,920 Banjar, Tapin 11 PT. Tanjung Alam Jaya 採鉱・生産
探鉱 1,232
8,877 Banjar 第三世代
12 PT. Kalimantan Energi Lestari
採鉱・生産
探鉱 6,261 Kotabaru 第三世代
13 PT. Senamas Energindo Mulia
採鉱・生産 実行可能性調査 探鉱
10,000 25,830 13,250
Kotabaru Kotabaru Kotabaru
第三世代 14 PT. Bina Bangun Banua 実行可能性調査 6,960 Banjar, Tapin 第三世代 15 PT. Borneo Indobara 実行可能性調査 24,100 Tanah Bumbu 第三世代 16 PT. Mantimin Coal
Mining
建設
探鉱 8,280
12,327
Tabalong, Balangan Balangan,Teng ah
第三世代
17 PT. Bara Pramulya Abadi 探鉱 56,980 Tabalong 第三世代 18 PT. Wahana Baratama Mining 実行可能性調査 7,811 Tanah Laut, Tanah Bumbu 第三世代 19 PT. Lianganggang Cemerlang
開発 探鉱
236
1,855 Tanah Laut
Tanah Laut 第三世代 20 PT. Interex Sacra Raya 探鉱 9,710 Tabalong 第三世代 21 PT. Eka Satya Yanatama 探鉱 51,010 Tanah Bumbu, Kotabaru 第三世代 22 PT. Multi Tambang Jaya Utama 探鉱 80 Tabalong 第三世代
23 PT. Terrarex 総合調査 664 Tabalong 第三世代
24 PT. Tohar Antareja 総合調査 4,404 Tabalong
合計: 総合調査: 5,068 ha、探鉱: 258,028 ha、実行可能性調査: 80,341 ha、
建設: 47,441 ha、製造/採鉱: 170,973 ha
出典: www.kalselprov.go.id 注:データが確認出来たのは、24の石炭鉱業企業事業協定(PKP2B)保有者分についてのみ
6.南カリマンタン州における石炭生産の経緯と現状
上述の通り、石炭埋蔵量が確認された地域において、中央政府や地方政府が、企業や協 同組合に対し鉱業許可を発行している。問題視されているのが国有林保護国有林地域での 工業件許可であり、これまでに、南カリマンタン州の保護国有林地域87,411ヘクタールの 土地に対して229の鉱業許可が、県知事によって出されている。
南カリマンタン州の土地利用区分と石炭鉱区を重ねてみると、たしかに、保護林のなか に石炭鉱区が存在していることがわかる(図5-3)。
図5-3.南カリマンタン州における土地利用区分と石炭鉱区
(南カリマンタン州Lambung Mangkurat大学林学科作成)
そ の 他 の 土地利用 自然保護 区
ダム湖 転換生産 林 生産林 保護林 石炭鉱区 主要道路 主要河川