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実施体制と実施内容

第 3 章 森林回復技術開発モデル林造成事業 1) 対象国の絞り込みと対象地域の選定

3) 実施体制と実施内容

国際緑化推進センター 仲摩 栄一郎 1.技術開発モデル林造成事業の実施体制

インドネシアにおける代表的な開発地である南カリマンタン州の石炭採掘跡地と東ヌサ テンガラ州の過放牧地を現地調査・実証活動の対象地域として選定した。

インドネシア林業省の流域管理・社会林業総局及び地方出先機関である流域管理署をカ ウンターパートとして現地調査・実証活動を実施することとした。上述の対象地の選定結 果に基づき、南カリマンタン州では民間企業2社の石炭採掘跡地(潜在酸性土壌)、東ヌサ テンガラ州では2つの村の住民による過放牧地(アルカリ性土壌)において、「森林回復技 術開発モデル林」を造成することとした(図 3-8)。

図 3-8.南カリマンタン州及び東ヌサテンガラ州における造林試験の実施体制

2.技術開発モデル林造成事業の実施方法

2.1 南カリマンタン州石炭採掘跡地

(1)試験造林樹種の選定

平成 23 年度は、南カリマンタン州の石炭採掘跡地の環境条件(気候、土壌)に耐性があ ると考えられる造林樹種を、現地周辺の生育状況、文献、分科会委員からのアドバイス及 び現地有識者及び地域住民の意見を参考にしてそれぞれ 8 種選定した。

南カリマンタン州では、気候的には、7~9 月に月間降水量 100mm を下回る乾期が存在す Oelnasi村

住民 慣習利用地

(過放牧地)

Nekbaun村 住民 慣習利用地

(過放牧地)

石炭鉱山会社 PT. Tanjung Alam Jaya

採掘跡地 石炭鉱山会社

PT. Antang Gunung Meratus

採掘跡地

東ヌサテンガラ州 ブナイン・ノエルミナ流域管理署 南カリマンタン州

バリトー流域管理署

インドネシア林業省 流域管理・社会林業総局

過剰農牧開発地(アルカリ性土壌)

石炭鉱山採掘跡地 (潜在酸性土壌)

合意書

るが、その他の 9 ヶ月間は月間降水量 100mm 以上の雨期であるため乾燥ストレス耐性はそ れ程考慮しなくてよい。ただし、造成対象地が石炭採掘跡の埋め戻し地であり、深層土壌 で埋め戻されるため土壌の物理性、化学性ともに劣悪である。土壌の物理性としては、通 常、埋め戻し時には土壌流亡を防止するため重機で転圧され固く締め固められ、通気性・

排水性ともに不良である。また、化学性については、腐植のほとんどない貧栄養土壌であ る。また、酸性硫酸塩土壌が発生する場合もある。そのような劣悪土壌に耐性のあると考 えられる樹種を選定した(表 3-3)。

表3-3.南カリマンタン州における造林樹種リスト(科名)

学名 和名・商業名 現地名

1 Acacia mangium (Fabaceae)

アカシアマンギウム

(マメ科) Akasia mangium 2 Anthocephalus cadamba

(Rubiaceae)

カランパヤン

(アカネ科) Jabon 3 Enterolobium cyclocarpum

(Fabaceae)

ゾウノミミ

(マメ科) Sengon buto 4 Fagraea fragrans

(Gentianaceae)

テンブス

(リンドウ科) Tembusu 5 Hevea brasiliensis

(Euphorbiaceae)

ゴム

(トウダイグサ科) Karet biji 6 Melaleuca cajuputi

(Myrtaceae)

カユプテ

(フトモモ科) Kayu putih 7 Swietenia macrophylla

(Meliaceae)

オオバマホガニー

(センダン科) Mahoni 8 Tectona grandis

(Verbenaceae)

チーク

(クマツヅラ科) Jati

(2)試験造林の植栽方法

上述の 8 樹種について、南カリマンタン州の石炭採掘跡地の環境条件(気候、土壌)に 最適な植栽方法を調査することを目的として、文献、分科会委員からのアドバイスならび に現地有識者及び地域住民の意見を参考にして、下記の通り植栽木の試験プロットを設定 し試験計画を作成した。

A.南カリマンタン州石炭採掘跡地

A-1. PT. Antang Gunung Meratus 社石炭採掘跡地(5.0ha)

モデル林造成対象地の埋め立て状況を調査した結果、下層土を用いて埋め戻す場合と、

下層土を用いて埋め戻した後、表層土を敷き詰める場合の 2 通りあることが確認された(写 真 1)。そこで、植栽方法の処理区は、表土の敷き詰め約 80cm(top soil dressing)のあ るなし、施肥及びマルチングを含む 5 処理区×8 樹種=40 試験区、5 回繰り返しとした。

造成予定地をトータルステーション測量し、各試験区、プロットの配置を規則的配置に より決定した(図 3-9)。

写真1.PT. Antang Gunung Meratus 社石炭採掘跡埋め戻し地 A-2. PT. Tanjung Alam Jaya 社石炭採掘跡地(3.5ha)

モデル林造成対象地の埋め立て状況を調査した結果、対象地の盛り土が粘土岩で転圧の ため締め固められており(写真 2)、リッピング(掻き起こし)が必要と判断した。そこで、

植栽方法の処理区はリッピング、客土、施肥の組み合わせにより 8 処理区×8 樹種=64 試 験区、3 回繰り返しとした。

造成予定地を GPS 測量し、各試験区、プロットの配置を規則的配置により決定した(図 3-10)。

写真2.PT. Tanjung Alam Jaya 社石炭採掘跡埋め戻し地

造林面積:

5.0ha

造林樹種:

8樹種(1~8、表3-3参照)

植栽間隔:

3m×3m

植栽密度:

1,111本/ヘクタール

植栽方法:

A:無処理区(コントロール)

B:施肥

C:表土の敷き詰め D:表土+施肥

E:表土+施肥+マルチング

施肥:

化成肥料

+有機質肥料(鶏糞堆肥)

繰り返し:

5回(Ⅰ~Ⅴ)

プロットサイズ:

植栽木:5本×5本=25本

プロット面積:

15m×15m=225m2

総プロット数

8樹種×5処理区×5回繰り返し =200プロット

図3-9.PT. Antang Gunung Meratus 社石炭採掘跡地(5.0ha)における造林試験計画図 A1 A2 A3 A4 A1 A2 A3

A5 A6 A7 A8 A4 A5 A6 B2 B3 B4 B5 A7 A8 B2 B6 B7 B8 B1 B3 B4 B5 A3 A4 A5 A6 B6 B7 B8 A7 A8 A1 A2 B1 - -B4 B5 B6 B7 A3 A4 A5 B8 B1 B2 B3 A6 A7 A8 A5 A6 A7 A8 A1 A2 B4 A1 A2 A3 A4 B5 B6 B7 B6 B7 B8 B1 B8 B1 B2 B2 B3 B4 B5 B3 - -C7 C8 C1 C2 C5 C6 C7 C3 C4 C5 C6 C8 C1 C2 D8 D1 D2 D3 C3 C4 D6 D4 D5 D6 D7 D7 D8 D1 E1 E2 E3 E4 D2 D3 D4 E5 E6 E7 E8 D5 E7 E8 C2 C3 C4 C5 E1 E2 E3 C6 C7 C8 C1 E4 E5 E6 D3 D4 D5 D6 C8 C1 C2 D7 D8 D1 D2 C3 C4 C5 E4 E5 E6 E7 C6 C7 D1 E8 E1 E2 E3 D2 D3 D4 C5 C6 C7 C8 D5 D6 D7 C1 C2 C3 C4 D8 E2 E3 D6 D7 D8 D1 E4 E5 E6 D2 D3 D4 D5 E7 E8 E1 E7 E8 E1 E2 - - -E3 E4 E5 E6 - -

-60 m 45 m

180 m

270 m

造林面積:

3.5ha

造林樹種:

8樹種(1~8、表3-3参照)

植栽間隔:

3m×3m

植栽密度:

1,111本/ヘクタール

植栽方法:

A:リッピング

B:リッピング+植穴客土 C:リッピング+施肥

D:リッピング+植穴客土+施肥 E:無処理区(コントロール)

F:植穴客土

G:施肥

H:植穴客土+施肥

施肥:

緩効性化成肥料(1本につき3粒)

+有機質肥料(牛糞堆肥)

繰り返し:

3回(Ⅰ~Ⅲ)

プロットサイズ:

植栽木:4本×4本=16本

プロット面積:

12m×12m=144m2

総プロット数

8樹種×8処理区×3回繰り返し =192プロット

図3-10.PT. Tanjung Alam Jaya 社石炭採掘跡地(3.5ha)における造林試験計画図

H7 H8 G4

G5 G6 G7 G8 H1 H2 H3 H4 H5 H6 F4 F5 F6 F7 F8 G1 G2 G3 G4

G3 G4 G3 G4 G3 E7

E8 F1 F2 F3 G1 G2 G3

G3 G4 G5 G6 G3 G4 G5 G3 G4

E8 F1 F2 F3 F4 F5 F6 F7 F8 G1 G2

H1 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 E1 E2 E3 E4 E5 E6 E7

F4 F5 F6 F7 F8 G4 G5 G6 G7 G8 E1

E2 E3 E4 E5 E6

C4 E7 E8 F1 F2 F3 B8 C1 C2 C3

D8 A1 A2 A3 A4

A1 A6 B3

A4 B1 B6

A5 B2 B7

E1 E2 E3 E4

E5 E6 A2

A7 B4

A3 A8 B5

A5 A6 A7 C5 C6 C7 C8 D1 D2 D3 D4 D5 D6 D7

B5 B6 B7 B8 C1 C2 C3 A8 B1 B2 B3 B4

D1 D2 D3 D4 D5 D6 D7

C4 C5 C6 C7 C8

A5 A6 A7 A8 B1 B2 B3 D8 A1 A2 A3 A4

C1 C2 C3 C4 C5 C6 C7 B4 B5 B6 B7 B8

D5 D6 D7 D8

C8 D1 D2 D3 D4 111m

204 m

144 m

111 m

2.2 東ヌサテンガラ州過放牧地(Nekbaun 村及び Oelnasi 村)

モデル林造成予定地は、過去は森林であったが、地域住民の伐採やその後の過剰な放牧 利用等によって草地化した場所である。モクマオウやヤシ類が散在している。

(1)試験造林樹種の選定

東ヌサテンガラ州では、気候的には、4~10 月の 7 ヶ月間が月間降水量 50mm を下回る乾 期であり、樹種の選定にあたっては乾燥ストレス耐性を考慮しなければならない。また、

造成対象地の土壌がバーティソルと呼ばれる粘土質の土壌であるため、土壌の物理性が不 良である。土壌の物理性としては、膨潤性粘土に富み乾季に深い亀裂(クラック)が発生 する。雨期には、通気性・排水性ともに不良となる。そのような条件に耐性があると考え られる樹種を現地周辺の生育状況、文献、分科会委員からのアドバイス及び現地有識者及 び地域住民の意見を参考にしてそれぞれ 8 種選定した。選定した(表 3-4)。

表3-4.東ヌサテンガラ州における造林樹種リスト(科名)

学名 和名・商業名 現地名

1 Aleurites moluccana

(Euphorbiaceae)

ククイノキ

(トウダイグサ科) Kemiri 2 Casuarina junghuhniana

(Casuarinaceae)

ヤマモクマオウ

(モクマオウ科) Kasuari 3 Enterolobium cyclocarpum

(Fabaceae)

ゾウノミミ

(マメ科) Sengon buto 4 Gmelina arborea

(Verbenaceae)

メリナ

(クマツヅラ科) Gamelina 5 Sterculia foetida

(Malvaceae)

ヤツデアオギリ

(アオイ科) Nitas 6 Swietenia macrophylla

(Meliaceae)

オオバマホガニー

(センダン科) Mahoni 7 Tamarindus indica

(Fabaceae)

タマリンド

(マメ科) Asam 8 Tectona gandis

(Verbenaceae)

チーク

(クマツヅラ科) Jati

(2)試験造林の植栽方法

土壌は、Vertisols に分類され、膨潤性粘土に富み乾季に深い亀裂が発生する問題土壌で ある。そこで、植栽方法の処理区は、土壌改良として、緩効性化成肥料、有機質肥料(牛 糞堆肥)、もみがら薫炭及びその組み合わせで 5 処理区×8 樹種=40 試験区、4 回繰り返し とした。

3.技術開発モデル林造成事業の実施結果

上述の試験造林計画に基づき、南カリマンタン州の石炭採掘跡地においては、PT. Antang Gunung Meratus 社において約 5.0ha、PT. Tanjung Alam Jaya 社において約 3.5ha の計 8.5ha の試験造林を 2012 年 3 月に実施した。

なお、東ヌサテンガラ州の過放牧地については、4 月から 10 月が乾期に当たるため、試 験造林の実施は、平成 24 年度の雨期の始め(11 月以降)に延期した。

4.試験造林地の植栽木の生育に関するデータ収集

植栽木の生育に関しては、生存率、成長量(樹高、地際直径)を下記の通り定期的に測 定することにより、生育状況を把握する(表 3-5)。

まず、初期値として植栽後 2 週間目に、生存率及び状態、樹高、地際直径を測定する。

また、植栽木の活着にとって最も重要と考えられる植栽直後の状況を、植栽後 2 週間、1 か 月そして 2 カ月と継続的に生存率を調査する。

植栽後 3 カ月目には樹高を測定し、その後、6 ヶ月目、1 年目と引き続き樹高及び地際直 径を測定することにより、植栽木の成長量を把握する。

表 3-5.植栽木の生育に関するデータ収集計画 生存率

及び状態 樹高 地際直径

植栽 2 週間後 〇 〇 〇

植栽 1 ヶ月後 〇 - -

植栽 2 ヶ月後 〇 - -

植栽 3 ヶ月後 〇 〇 -

植栽 6 ヶ月後 〇 〇 〇

植栽 1 年後 〇 〇 〇

上述の試験造林地の植栽木の生育に関するデータ収集は、南カリマンタン州の国立大学、

Lambung Mangkurat 大学林学部の協力を得て実施する予定である。

5.平成 24 年度の予定

平成 24 年度は、平成 23 年度に造成したモデル林の生育状況等を踏まえて、樹種選定や 植栽方法等を再検討し、南カリマンタン州の石炭採掘跡地において更に 10ha 程度、東ヌサ テンガラ州の過剰農牧開発地において新たに 8ha 程度の造林試験を実施する。

また、平成 23 年度に造成したモデル林の管理を継続するとともに、造林試験の結果を検 証するために上述の通り立木の生育に関するデータを収集する。

測定項目 測定時期