(1) 知的財産権に関する独占禁止法の現状
ア、華為技術有限公司がインターデジタル・テクノロジー・コーポレーション等を訴えた独占禁 止法違反紛争事件
(ア) 市場における支配的地位の濫用の件3
一審原告:華為技術有限公司(以下「華為」という)
一審被告:InterDigital Technology Corporation(以下「IDC技術」という)
InterDigital Communications,Inc.(以下「IDC通信」という)
InterDigital,Inc.(以下「IDC公司」という)
(3社合わせて「IDC」という)
上訴人(一審原告、被告):華為、IDC
番 号
類
別 一審 二審
1 法 院
広東省深セン市中級人民法院 広東省高級人民法院
(2011)深中法知民初字第858号 提 訴 日 :2011年12月6日 判決が下された日:2013年2月4日
(2013)粤高法民三終字第306号 上訴が受理された日:不明
判決が下された日 :2013年10月21日
2 代 理 人
不明 華 為:徐 静(北京市金杜律師事務所)
趙 燁(北京市金杜律師事務所)
IDC技術:胡 斌(上海市方達律師事務所)
廖婷婷(上海市方達律師事務所)
IDC 通信:雲劭君(上海市方達(深セン)律師事務 所)
廖婷婷(上海市方達律師事務所)
IDC公司:佘軼峰(上海市方達律師事務所)
祁 放(上海市方達律師事務所)
3 訴
訟
原告華為:
①IDC は、独占に係る民事上の不法行為を
上訴人華為:
原審の関連判決を取り消し、IDC その抱合せ販売
3 http://www.ipsusong.com/huaweiidc306.htm
請 求
直ちに停止せよ。これには、高すぎる価格設 定行為の停止、差別的価格設定行為の停 止、抱合せ販売行為の停止、不合理な取引 条件の付加行為の停止及び取引の拒絶行 為の停止を含む。
②IDC は、華為の経済的損失2,000 万人民 元を連帯して賠償せよ。華為は、さらに入手 しうる証拠及びIDCの権利侵害が続くことに よる損失に基づき、賠償額を増額する権利を 留保する。
③IDCは、本件の訴訟費用及び華為が合法 的権利を保護するための合理的な支出(調 査費用、公証費用、弁護士費用等を含む)を 負担せよ。
行為を直ちに停止し、特許の抱合せ販売行為を直 ちに停止するよう判決を変更せよ。
上訴人IDC:
華為の上訴請求を棄却せよ。
4 判 決 結 果
①IDC は、華為に対して実施している高すぎ る価格設定及び抱合せ販売という独占に係 る民事上の不法行為を直ちに停止せよ。
②IDCは、本判決の効力発生日から10日以 内に、華為の経済的損失 2,000 万人民元を 連帯して賠償せよ。
③華為のその他の訴訟請求は棄却する。
上訴棄却、原判決維持。
一審事件受理費 141,800 人民元は、被告 IDCが負担する。
二審事件受理費141,800人民元は、上訴人華為が 2,000人民元を負担し、上訴人IDCが139,800人民 元を負担する。
(イ) 標準必須特許の実質許諾料率の件4
上訴人(一審被告):InterDigital Technology Corporation(以下「IDC技術」という)
InterDigital Communications,Inc.(以下「IDC通信」という)
INterDigital Patent Holdings Inc(以下「IDC特許」という)
IPR Licensing Inc.(以下「IPR」という)
(4社合わせて「IDC」という)
被上訴人(一審原告):華為技術有限公司(以下「華為」という)
4
http://www.gdcourts.gov.cn/ecdomain/framework/gdcourt/jndbijapddnebboelcfapbecpepdnhbe.jsp?
wsid=LM4300000020140417024309113155&sfcz=0&ajlb=5
番 号
類
別 一審 二審
1 法
院
広東省深セン市中級人民法院 広東省高級人民法院
(2011)深中法知民初字第857号 提 訴 日 :2011年12月6日 判決が下された日:2013年2月4日
(2013)粤高法民三終字第305号 上訴が受理された日:不明
判決が下された日 :2013年10月16日
2 代 理 人
不明 華 為:徐 静(北京市金杜律師事務所)
趙 燁(北京市金杜律師事務所)
IDC通信:胡 斌(上海市方達律師事務所)
廖婷婷(上海市方達律師事務所)
IDC 技術:雲劭君(上海市方達(深セン)律師事務 所)
廖婷婷(上海市方達律師事務所)
IDC特許:佘軼峰(上海市方達律師事務所)
祁 放(上海市方達律師事務所)
IPR :胡 斌(上海市方達律師事務所)
廖婷婷(上海市方達律師事務所)
3 訴 訟 請 求
原告華為:
①公正、合理的かつ非差別(FRAND)的な 条件でIDCが中国における標準必須特許に ついて華為に許諾する実質許諾料率及び料 率の範囲を確定せよ。
②IDC は、本件の全ての訴訟費用を負担せ よ。
上訴人IDC:
①原審判決を取り消し、華為の全ての訴訟請求を 棄却せよ。
②華為は、本件の一審・二審の全ての訴訟費用を 負担せよ。
4 判 決 結 果
IDC は、中国における標準必須特許及び標 準必須特許の出願について華為に許諾し、
実施許諾料率は、関連製品の実際の販売価 格により計算し、0.019%を超えてはならな い。
上訴棄却、原判決維持。
一審事件受理費1,000 人民元は、被告 IDC が負担する。
二審事件受理費1,000人民元は、上訴人IDCが負 担する。
ア、2015年2月の中国国家発展改革委員会による高通(クアルコム)に対する独占禁止法に 関する懲罰金を課された事件について
(ア) 案件概要
a. クアルコムについて
米国法人Qualcomm Inc.(中国語:「高通公司」以下「クアルコム」という)は、世界第1位の携帯
電話に提供する半導体サプライヤーであり、携帯電話製造上必要な標準規格必須特許(製品に 不可欠な中核特許)を数多く有している。クアルコムの売上は、248.66 億米ドル5であり、中国にお
いて761.02億人民元6であり、中国での売上がクアルコムの全世界での売上の49%を占めている。
また、クアルコムの売上高の約3割は知的財産関連の収入である。
国家発展改革委員会(以下「発改委」という)によれば、クアルコムは、中国の関連の無線通信 端末市場において 100%の市場占有率を占めており、市場競争はない状態であるとのことである。
そこで、クアルコムが市場における支配的地位を濫用しているとして、発改委による独占禁止法 違反の調査の対象となっていた。
b. 経緯
発改委は、クアルコムに対し、市場における支配的地位の濫用による独占禁止法違反行為に ついて、2013年11 月頃から調査を開始したと発表している。発改委の報道7によれば、調査の具 体的な内容は、概ね、以下の通りとのことであった。
①ロイヤリティの基準を、チップの価格ではなく携帯電話完成品の卸売正味販売価格としてい ること。
②標準必須特許と非標準必須特許の抱合わせ許諾。
③相手方の特許について、無償での逆供与を要求。
クアルコムは、自社チップを使用する顧客Aに対し、顧客Aが保有する特許について自ら に無償で逆供与させ、他の顧客Bに対して、クアルコムがA の代わりにAが保有する特許 の実施料を請求していた。
④期限切れ特許に対するロイヤリティの徴収(特許リストの提供拒否)。
⑤チップメーカーに対する特許実施許可の拒絶。
c. 発改委の処罰決定
5 クアルコムHP:http://investor.qualcomm.com/secfiling.cfm?filingID=1234452-13-483
6 中华人民共和国国家发展和改革委员会行政处罚决定书 发改办价监处罚[2015] 1号
7 発改委HP:http://jjs.ndrc.gov.cn/gzdt/201407/t20140711_618477.html
発改委は、2015 年 2 月 9 日にクアルコムに対する処罰を決定した8。発改委は、クアルコムが
CDMA、WCDMA、LTE の無線通信標準必須特許許可市場とベースバンドチップ市場における
支配的地位を有しており、以下のように市場における支配的地位を濫用し、独禁法第 17 条第 1 項、第5項に違反したとして、発改委は独禁法第45条第2項、第47条に基づき、クアルコムに対 して、同社の2013年度の中国市場における売上高の8%に相当する計60.88億元の過料に処し た。また、同時に発改委は、クアルコムによる包括是正措置は、発改委の改善要求を満たすもの であったとした。
<支配的地位濫用行為>
① 不公平に高額な特許ライセンス料の徴収
クアルコムは、中国企業に特許をライセンスする際に、特許リストの提供を拒絶し、権利期間 の切れた特許をそのまま特許ポートフォリオに含めてライセンス料を徴収した。同時に、クアル コムは、中国のライセンシーに対してその保有する関連特許を同社に無償で逆供与するよう要 求し、ライセンス料から逆供与した特許の価値を控除し、又はその他の対価を提供することを 拒絶した。このほか、かつて非標準必須特許の一括ライセンスをやむなく受け入れた中国のラ イセンシーに対し、クアルコムは、やや高めのライセンス料率を維持するとともに、携帯電話完 成品の卸売正味販売価格に従い特許ライセンス料を徴収した。これらの要素により、ライセン ス料が高すぎるものとなっていた。
② 正当理由のない無線通信の非標準必須特許ライセンスの抱き合わせ許諾
クアルコムは、性質の異なる無線通信の標準必須特許と無線通信の非標準必須特許を区 別せず、かつそれぞれを対外ライセンスせず、無線通信標準特許ライセンス市場における支配 的地位を利用し、正当な理由なく無線通信の非標準必須特許ライセンスを抱き合わせ許諾した。
これにより、中国の一部のライセンシーは、クアルコムから無線通信の非標準必須特許ライセ ンスの取得を強いられた。
③ ベースバンドチップの販売における不合理な条件の付加
クアルコムは、特許ライセンス契約の締結及びこれにつき争わないことを中国のライセンシー がベースバンドチップの供給を受ける条件とした。潜在的なライセンシーが上記の不合理な条 項を含む特許ライセンス契約を締結しない場合、又はライセンシーが特許ライセンス契約につ いて紛争を生じ、かつ訴訟を提起した場合、クアルコムはいずれもベースバンドチップの供給を 拒絶する。
<クアルコムによる包括是正措置>
クアルコムは、発改委に対して、以下の是正措置を提出した。
(1)中国国内で使用するために販売する携帯電話について、携帯電話完成品の卸売正味販売 価格の65パーセントの基準で特許ライセンス料を徴収すること;
8 発改委の実際の発表は2015年2月10日。