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2014年中国法院50の典型的知的財産事件

2014 年、各級人民法院での知的財産権事件の既済件数は11 万件である。今年も、最高人民 法院により50件の事件を典型事例として選出されたが、その中には、特許関連事件12件、著作 権関連事件12件、商標権関連事件10件、不正競争関連事件11件、独占禁止関連事件1件、ノ ウハウ関連事件3件、といった構成である。以下は、特に重要であるものを取り上げて紹介・検討 する。

(1) 知的財産民事事件

ア、専利権侵害紛争事件

8. フランス SEB 社 vs 広東旗峰公司の発明専利権侵害紛争上訴事件〔広東省高級人民法院

(2013)粤高法民三終字第279号民事判決書〕

【コメント】

本件は「専利法」第70条に規定されている合法的由来の抗弁に関する証明責任の分配を明確に した事例である。

合法的由来の抗弁が成立するために、権利侵害製品の使用者、販売者が善意であること及び権 利侵害製品が合法的由来から取得することの二要件が必要である。第一要件の証明責任は権 利者にある。権利者は権利侵害者がその使用、許諾販売または販売する製品は権利侵害製品と 認識しまたは認識すべきと証明しなければ、権利侵害者は善意であると推定される。第二要件の 証明責任は権利侵害製品の使用者、販売者にある。また、合法的由来の抗弁は使用者、販売者 を保護するだけではなく、すべての権利侵害製品の販売ルートを判明し、権利者の利益を最大限 保護する制度の目的から、たとえ権利侵害製品の使用者、販売者が直接に権利侵害製品の製造 者から製品を購入し、そして、その製造者が別途に判明されたとしても、使用者、販売者はなお自 ら製造者から権利侵害製品を購入したことを証明する必要がある。証明が不十分な場合、第二要 件の成立ができなく、合法的由来の抗弁による損害賠償責任の免除が受けないこととなる。

イ、著作権帰属、侵害紛争事件

13.アップル社vs麦家の情報ネットワーク伝播権侵害紛争上訴事件〔北京市高級人民法院(2013)

高民終字第2619号民事判決書〕

【コメント】

ネットワークサービス提供者の権利侵害責任に関する解釈を示した事例である。

ネットワークサービス提供者が、ネットワークユーザーがネットワークサービスを利用して情報ネッ トワーク伝達権を侵害していることを明らかに知り、又は知り得べきでありながら、削除、非表示、

リンク切断等の必要な措置を講じておらず、又は技術サポート等の幇助行為を提供した場合に は、人民法院は、それが権利侵害幇助行為を構成するものと認定しなければならない。

上記「知り得べき」を構成するか否かを認定するとき、権利侵害の具体的事実は明らかであるか 否かに基づき、ネットワークサービス提供者の備えているべき情報管理能力、ネットワークサービ ス提供者が著作物、実演、録音録画製品に対して選択、編集、修正、推薦等を自発的に行ったか 否かなどの要素を総合考慮して認定すべき、また、ネットワークサービス提供者がネットワークユ ーザーが提供した著作物、実演、録音録画製品により直接的な経済利益を取得する際、人民法 院は、ネットワークサービス提供者が当該ネットワークユーザーの情報ネットワーク伝達権侵害に つき比較的に高い注意義務を負うべきだと認定しなければならないと判示した。

本件は、ネットワークサービス提供者であるアップル社がネットワークユーザーとの契約で固定比 例の直接的な対価を約束したため、アップル社が高い注意義務を負うべきだと判断された。

また、本件は、アップル社が侵害アプリケーションを通じて直接的に利益を取得するので、ネットワ ークユーザーの権利侵害状況を知りえべきであるため、「情報ネットワーク伝達権条例」22条で定 められる損害賠償責任を負わない場合に該当しないと判断された。

ウ、商標権侵害紛争事件

26. NBA Properties, Inc. vs特易購商業(青島)有限公司の商標権侵害紛争上訴事件〔山東省高 級人民法院(2014)魯民三終字第143号民事判決書〕

【コメント】

本事件は、商品の販売者と商標権者との間の商標権侵害事件である。

NBA公司は、特易購公司が自ら経営する「楽購ショッピングモール」内でNBA公司の商標権を侵 害するスポーツシューズ(以下は「係争商品」という)を販売していることを発覚した。当事者間で は、係争商品が NBA 公司の商標権を侵害していることについて、異論はない。問題は、①生産 者ではない特易購公司がNBA公司に対して損害賠償責任を負うべきかどうか、②損害賠償金額 の確定、である。

特易購公司は、係争商品が楽購ショッピングモール内に設けられた廊坊市金海順達公司の専門 販売センターで販売されており、自分が係争商品は権利侵害商品とは知らなかったため、商標法 56 条 3 項により、損害賠償責任を負わない、と主張した。また、二審で、係争商品の値段が正規 品よりはるかに低いため、消費者の混乱を来す可能性はないと、さらに主張を追加した。

しかし、第一審の青島市中級人民法院と第二審の山東省高級人民法院が、両方とも特易購公司 の主張を支持しなかった。山東省高級人民法院によると、NBA 公司が提供した証拠により、NBA 公司が持つ商標がとても知名度が高く、特易購公司がグローバル小売企業の傘下にある会社と して、長年のスーパーマーケットチェーン店を管理する経験を有し、その商標を認識しているはず である。また、係争商品の値段があまりにも低いため、特易購公司として、合理的な注意さえ払え ば係争商品が権利侵害商品であることを発見できたはずであるが、係争商品が促販品であった ため、商標の検査を行わなかったことが明らかに特易購公司の過失である。よって、特易購公司 が損害賠償責任を負う。

賠償金額について、NBA公司は賠償金額の計算と立証が困難であることを理由に、商標法56条 2項を適用して50万人民元の損害賠償を請求した。青島市中級人民法院が、商標法56条2項と

「商標民事紛争事件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」16 条を根拠に、特易購 公司の主観的過失、係争商品の品質の低下と販売価格の低さ、そして、これらの事情がNBA公 司の商標及び名誉にもたらした悪影響等の事情を総合的に考慮したうえ、損害賠償金額を40 万 人民元と確定した。第二審の山東省高級人民法院が一審の判断を支持した。

本事件は、商品の販売者が商標権者に対して商標権侵害による損害賠償責任を負う典型的な事 例である。また、商標権者にとって商標権侵害による損害の金額の立証が困難な場合には、法院 が裁量権を行使して損害賠償の金額を確定することについても、これからの実務にとって参考に なると考える。

エ、不正競争、独占紛争事件及びその他

30.合一情報技術(北京)有限公司 vs北京金山安全ソフトウェア有限公司らの不正競争紛争上訴

事件〔北京市第一中級人民法院(2014)一中民終字第3283号民事判決書〕

【コメント】

ビデオ広告ブロック機能付きのブラウザを提供する行為が不正競争と認定された事件であり、競 争関係の要件及び技術中立原則と反不正競争の関係を示した。

競争関係の存在は、不正競争行為認定の前提条件である。競争関係の認定は、経営者が同業 競争関係にあるかどうか又は実際に競争が存在するかどうかにより決めるのではなく、経営者の 経営行為に他人に損をさせて自分の利益を図る可能性により決めると判示した。具体的には、競 争関係が以下の二つの要件を満たさなければならない。一つは、経営者の行為が他の経営者の 利益に損害をもたらす可能性の存在であり、もう一つは、当該経営者が当該行為により現実的又 は潜在的な経済的利益を獲得することである。

技術中立原則の中立というのは、「技術自体」の中立であり、技術の「使用行為」の中立ではない と判じした。即ち、技術中立原則により、ある特定の技術自体が違法技術と認定することはできな いが、当該技術の使用行為が反不正競争の関連法律規定を違反した場合は、不正競争行為に

認定することができる。

(2) 知的財産行政事件

ア、専利権授権・権利確定事件

43.国家知識産権局専利復審委員会vs 王偉耀、福田雷沃国際重工股份有限公司の実用新案専

利権無効行政紛争再審申請事件〔最高人民法院(2013)知行字第92号行政裁定書〕

【コメント】

本件は、特許権無効宣告手続において、特許再審査委員会が当事者の請求によらずに、請求さ れたもの以外の事項に対して職権に基づき無効審査をする権限の有無に関する事件である。

判決によれば、特許権無効宣告手続において、特許再審査委員会が全面的審査義務を負わず、

請求された範囲内に審査を行うものとし、職権に基づく審査は「特許審査指南」に定められた3 つ の場合に限定されるものとする。

まず、特許法 45 条により、国務院特許行政部門が特許権付与を公告した日から、いかなる単位 又は個人も、その特許権の付与が本法の関係規定に適合しないと認めた場合は、特許再審査委 員会にその特許権の無効宣告を請求することができるとされるため、特許権無効宣告手続は請 求人による請求に基づき行われるものとする。かかる請求原則に基づき、特許権無効宣告手続 が請求により行われ、特許再審査委員会は当事者が請求した範囲、提出した理由及び証拠のみ に対して審査を行うため、全面的審査の義務を負わないものとする。また、請求原則により、請求 人は、その請求及び理由・証拠の全部または一部を取り下げることができ、この場合に、特許再 審査委員会は法的根拠がない限り、取り下げた部分を継続して審査を行うことは許されない。

そして、「審査指南」において、職権に基づく審査に関する具体的な事項が列挙されているが、か かる事項は請求原則の例外として、特許再審査委員会に職権に基づく審査の権限を付与すると 同時に、職権に基づく審査の範囲を制限するものである。すなわち、特許再審査委員会が上記列 挙した事項のみに対して、職権に基づく審査を行うものとする。