帰還モジュールは再突入の約 23 分後に着陸します。再突入から着陸までの流 れは以下のとおりです。
⑦ 着陸 1 秒前に帰還モジュールの小型ロケット(衝撃緩和ロケット)を噴射。こ れにより地上にタッチダウン時には秒速 1.5m 以下の降下速度に減速。
図3.5-3 メインパラシュートを展開した帰還モジュール(左) 図3.5-4 衝撃緩和ロケットを噴射して着陸する帰還モジュール(右)
図3.5-5 ソユーズTMA宇宙船の着陸予定地の例(矢印の方向から帰還) 注:ミッション毎に着陸地は多少移動します。
【ソユーズ宇宙船の軌道離脱に備えた訓練】古川宇宙飛行士のTwitterより
「ソユーズ宇宙船が国際宇宙ステーションから離脱し、地上に帰還する部分のシミュレーシ ョン訓練。宇宙飛行において、最も危険性が高い時期のひとつのため、様々な異常事態に対 処できるよう、繰り返し行う。
ソユーズ宇宙船の軌道離脱噴射が鍵。すなわち、ソユーズ宇宙船の姿勢を制御し、決められ たタイミングで、決められた時間の噴射を行う必要がある。噴射が少な過ぎると、大気圏突 入角が浅くて大気に弾かれ、噴射が多過ぎると大気圏突入角が深くて速度が上がりすぎ、空 力加熱で機体破壊の恐れもある。
そのため、正常な軌道離脱噴射を妨げるような様々な異常事態への対処を訓練する。赤外線 を使って地球の縁をとらえるセンサーの故障で、船長が手動でソユーズ宇宙船の姿勢を制御。
軌道離脱噴射開始前に、メインで使用するデジタルループが故障しアナログループへ移行。
軌道離脱噴射エンジン用燃料タンクを加圧するヘリウム系に漏れが発生。軌道離脱噴射中に は、メインの軌道噴射エンジンが停止し、バックアップのエンジンを点火して噴射を継続。
その他、帰還モジュール内への酸素漏れ、などなど。3人のクルーで力を合わせて乗り切る。」
【ソユーズ宇宙船の大気圏突入に備えた訓練】古川宇宙飛行士のTwitterより
「手動で揚力をコントロールするソユーズ宇宙船帰還モードの訓練。帰還モードは4種類あ る。1番目は、通常使われる自動で揚力をコントロールするモード。それが使えない場合、2 番目の手動揚力コントロールモードを使用することがある。実際の飛行ではまだそれが使わ れたことはないという。
よく誤解されるが、弾道飛行モードはロール軸のスピンで姿勢を安定させる一種の安全モ ードであり、「失敗」ではないのである。クルーには最高8-9G程度(通常は最高4G程度)の 高い負荷がかかるものの、安全に帰還している。
3番目のモードは弾道飛行。過去に何回か実際に起こっている。1番目と2番目のモードが 使用不可の場合に使われる。
4番目のモードはバックアップ弾道飛行モード。弾道飛行モードで必要な角速度センサーが 故障した場合に備え、別系統の角速度センサーを使うもの。訓練ではしばしば起こるが、実 際に起こったことはない。
というわけで、手動揚力コントロールモードでのソユーズ宇宙船帰還のシミュレーション 訓練。画面の情報を見ながら先を予想し、左右のボタンを押して揚力をコントロールする。」
3.6 ソユーズ宇宙船の捜索・回収
ソユーズ宇宙船(帰還カプセル)は、予定した帰還地点から約 20 ~ 30km の範 囲に着地します。しかし、弾道モードで帰還した為に予定地点よりも約 400km も手 前に着地し、捜索・到着が遅れた例もあり、そのような状況でも素早く捜索部隊が 到着できるよう、事前に捜索計画が設定されるようになりました。
捜索は、予定の着地地点と、弾道モードで帰還した場合の着地点のどちらにも 向かえるように、捜索部隊の最適な配置・展開が行われます。
捜索には10機以上のMi-8ヘリコプターが投入され、捜索範囲を広くカバーでき るように航空機も使用します。また地上では、支援部隊が水陸両用車 (All-terrain
vehicle: ATV) とオフロード車に乗って配置・展開します。帰還カプセルの降下が
確認された場合は直ちに全チームが着地点へ向かいます。
ソユーズ宇宙船のカプセルからはVHFビーコンが発信されているため、近くに 捜索部隊がいれば、この信号をもとにパラシュート降下中のカプセルを発見し、着 地後直ちにカプセルのハッチを開ける準備に移ることができます
(2012年の30Sから はGLONASS/GPS受信機の搭載を開始したため、帰還地を把握しやすくなりました)。また、
カプセルを視認することが可能な距離であれば、クルーとの音声交信も可能です。
しかし、ミッション毎に状況が変わり、無線が通じないブラックアウト期間を終えた パラシュート降下中でも音声交信がほとんどできない場合や、ノイズがひどく通信 不能になる場合もあります。また現地からの簡易的な衛星中継に使うインマルサ ット衛星システムでは伝送容量に限りがあるため、衛星中継車が到着するまでは 高画質な映像は得られません。
着地したカプセルは、パラシュートが風であおられた場合は横倒しになってしま いますが、問題はありません(約半数は横倒しとなります)。
もし着地後も捜索チームの到着が遅れてしまった場合は、クルーは船内に装備 しているイリジウム衛星電話を使って、モスクワの管制センター等と連絡をとること が出来ます。
【弾道モードでの着陸】
ソユーズ宇宙船の帰還カプセルは、姿勢制御装置のトラブルやモジュールの分離 トラブルなどに見舞われた場合でも弾道モード(無制御状態)で安全に着地する ことが出来ます。
無制御状態の場合は、着地点が予定よりも約400km手前になり、クルーが受ける 加速度も最大で8-10Gという厳しいものになりますが、これまでに何度も無事に 帰還しています。
最近では、ソユーズTMA-1, TMA-10, TMA-11で弾道モードでの帰還となりまし た。TMA-10と11の事例は、モジュール分離用の火工品のトラブルが原因であっ たことが判明し、TMA-12からは再発防止のための改良が加えられました。
コラム付録3-1