第 4 章 ブラジルにおける超電導導入に関する情報収集
4.7 直流、交流超電導送電導入において考慮すべき事項
ブ国における直流送電システムは、
・ 送電容量が4,000MW以上であり、大容量であること
・ 大規模水力発電所と大需要地を連系する基幹系統であること
から、装置異常による送電システム停止時に系統に与える影響が大きいため、制御・
保護システムには高い信頼度が要求される。したがって、装置の単一異常によりシス テム停止に至らないようにすることが必要である。
超電導ケーブル 1)
a) ケーブルの絶縁性能
ケーブルは所要の絶縁性能を有する必要があり、開閉インパルス、短時間AC電 圧(数サイクル程度)に対する絶縁性能を持つ必要がある。これらは国際規格等 にもとづき実施されるものであるが、超電導ケーブルに関しては、現時点では規 格が定められていない状況にある。したがって、超電導ケーブルについては、そ の絶縁構造の詳細検討の後に、モデルケーブルを用いた破壊試験等で所要の絶縁 性能を検討することが求められる。
また、直流ケーブルの絶縁特性では、特に直流電圧に逆極性のサージ性過電圧 が重畳した場合、それまでに課電されていた直流電圧が影響して、ケーブル絶縁 体に侵入したサージ性過電圧以上の内部ストレスが加わることを考慮しなければ ならない。この直流電圧の影響度を示す係数として、バーダー係数というものが あり、これについても、モデルケーブルによる試験等で検討を行う必要がある。
日本での直流送電プロジェクトにおいては、80%程度という結果が得られたものも ある。
b) ケーブルの断熱性能
超電導ケーブルは、超電導状態を維持するため、-190~-200℃に冷却する必要が あり、外部からの熱の侵入を防止するための断熱構造が重要となる。ケーブル外 層に真空層を設けた真空断熱が一般に適用されているが、真空層の断熱特性が良 くなければ、外部からの熱の侵入量が増加し、冷却効率が著しく低下する。した がって、超電導ケーブルを長距離敷設する場合、ケーブルの断熱構造と性能につ いて、検討を行う必要がある。
(出典:調査団作成)
図 4.19 直流超電導ケーブルの構造
冷却装置 2)
c) 冷却装置のシステム構成
前述のとおり、超電導ケーブルは、超電導状態を維持するため、-190~-200℃に 冷却する必要がある。冷却には、冷媒のコスト等を考慮して液体窒素(沸点77K = -196℃)が使用され、冷却装置はこの液体窒素を超電導ケーブル内に循環させ、冷 却を行うものである。冷却装置の停止は超電導送電システムの停止につながるた め、冷却装置の信頼性について確保する必要がある。
最初に述べたとおり、冷却装置構成機器の単一の異常で冷却装置全体が停止し ないようにすることが必要であり、このため、構成機器それぞれに冗長性を持た せることが、信頼性向上の対策として考えられる。具体的には、液体窒素の循環 ポンプ等に予備機を設けることなどが対策として考えられる。
超電導層 絶縁層
超電導層 絶縁層
単心ケーブル 同軸ケーブル
断熱層 断熱層
(出典:調査団作成)
図 4.20 冷却装置のシステム構成例
d) 液体窒素の循環方法
超電導ケーブルを長距離にわたり敷設する場合、冷却装置は複数配置される必 要があり、これらは超電導ケーブルに沿って一定間隔で配置される。複数の冷却 装置による液体窒素の循環方法について検討する必要があるが、これは、適用さ れる超電導ケーブルのタイプ(単心ケーブル/同軸ケーブル、3相一括など)およ び送電システムの構成の選定後に検討されるものである。
(出典:調査団作成)
図 4.21 液体窒素の循環構成
超電導ケーブルから 超電導ケーブルへ 液体窒素循環ポンプ
常用器 予備機 常用機+予備機とする
Cooling system
10 km – 20 km
Cooling
system Cooling
system
(出典:調査団作成)
図 4.22 交流超電導ケーブルの液体窒素循環方式
(出典:調査団作成)
図 4.23 直流超電導ケーブルの液体窒素循環方式
e) 冷却装置の監視制御
前述のとおり、冷却装置の停止は送電システムの停止につながるほか、冷却装 置が停止した状態で送電システムの運転を継続する場合、重大な設備損傷を引き 起こす可能性があるため、冷却装置の健全性は常時監視される必要がある。各冷 却装置の必要な情報を制御個所に伝送することが考えられるが、具体的な監視項 目については、冷却装置の構成が決まった後に検討されるものである。
また、構成機器の常用機と予備機の切り替え等、冷却装置の遠隔制御が必要に なることも考えられる。この具体的な項目についても、冷却装置の構成が決まっ た後に検討が必要である。
f) 冷却装置への電源供給
冷却装置への電源供給については、外部電源からの供給、または分散電源から の供給が考えられるが、電源供給の信頼性および設備の簡素化等を勘案して、外 部電源からの供給とすることが適当である。前項で述べたとおり、冷却装置は常 時監視が必要であると考えられるため、状態監視のための情報伝送ケーブルが必 要であり、これにあわせて電源供給ケーブルを敷設する。外部電源からの供給距 離等については、冷却装置の設備容量の選定後に検討を行う。
変換装置 3)
長距離直流送電は、大容量で、かつ基幹系統に連系される送電線に適用されるため、
変換器の停止は系統に与える影響が大きい。よって、制御、保護システムには高い信 頼性が求められる。したがって、制御、保護システムの構成については、以下の事項 に配慮する必要がある。
・ 装置の単一異常によりシステム停止とならないこと
・ 2重の装置異常でも双極停止には至らないこと
・ 装置の単一異常により停止する制御・保護装置の範囲を少なくする
・ 上記の信頼性を維持したうえで、シンプルな構成として保守性に優れること
また、変換装置の基本的な運転、保護方式については以下のとおりである。
a) 制御方式
直流送電システムの基本制御には、定電力制御(APR)、定電流制御(ACR)、定電
圧制御(AVR)、定余裕角制御(AγR)がある。その機能概要は表 4.15のとおりである。
表 4.15 基本制御方式の機能概要
制御方式 機能概要
定電力制御(APR) 直流送電電力を一定に保つように制御を行う。交流電圧変動等によ る直流電圧または直流電流の変化による直流送電電力変化を検出し て、直流電流指令値の補正を行う。
定電流制御(ACR) 直流電流を一定に保つように制御を行う。常時は順変換器側のみで ACR 制御が行われ、逆変換器側の制御目標値は、順変換器側の制御 にしたがい決定される。
定電圧制御(AVR) 順変換器側の直流電圧を一定に保つように制御を行う。常時は逆変 換器側が動作する。
定余裕角制御 (AγR)
転流失敗を防止するため、転流余裕角がサイリスタバルブの特性か ら決まる規定値以下とならないよう制御を行う。
(出典:調査団作成)
b) 双極協調制御方式
直流送電システムに、変換器の双極構成が適用される場合、双極で協調を取り ながら運転される必要がある。双極協調制御方式の主な機能概要は表 4.16のとお りである。
表 4.16 双極協調制御方式の主な機能概要
制御機能 機能概要
電力配分機能 運転制御装置から出力される電力指令値と系統制御装置から出力される電 力補正値を合計し、各極の運転状態に応じて極ごとの電力指令値に配分を 行う。
電力逆相機能 最小運転電力設定値以下でも運転ができるように、I 極とII 極の潮流方向 を変えて運転を行う。
潮流反転機能 各変換器の運転モードの切り替え(順変換/逆変換)指令を行い、潮流反転 を行う。
(出典:調査団作成)
c) 保護継電方式
変換所保護装置の主な保護継電方式は表 4.17のとおりである。
表 4.17 変換所保護装置の保護継電方式
事故・異常現象 保護継電方式
極 保 護装 置
直 流側
直流回路の地絡・短絡 貯留不足電圧、直流過電流、直流差電流、交流電 流と直流電流の差動
制御系異常 直流過電圧、商用周波混入、直流不足電流など 交
流 側
交流地絡・短絡 交流不足電圧、交流過電圧 周波数異常 過周波数、不足周波数 インバータ負荷遮断 交流過電圧
群 保 護 装 置
変 換 器
アーム短絡
バルブ交流側地絡・短絡
交流電流と直流電流の差動
転流失敗 直流過電流+交流不足電圧 フローティング中の
変圧器直流巻線地絡
地絡過電圧
(出典:調査団作成)
4.7.2 環境への影響 法制度の枠組み 1)
a) ブ国の環境政策と環境法
ブ国の現行の環境政策の基本となっているのは、1981 年制定された「国家環境 政策、その目的、定義及び実施のメカニズムに関する1981年8月31日付法律6.938」 である。その目的は、社会経済発展、国家安全保障及び人命の尊厳保護を確保す るために、環境の質を保全、向上、回復が述べられている。その後、1988 年制定 された憲法において環境についての章が設けられ、環境が国民の共有財産であり 健全な生活に不可欠と述べられている。同章では、自然環境保全について、「すべ ての連邦の単位(連邦、州、市郡)において、特に保全されるべき土地とその生 態を指定し、それらの地域の変更および環境影響は法令によってのみ許可される」、 また、「アマゾン熱帯雨林(Floresta Amazônia)、大西洋海岸林(Mata Atlantica)、ブ 国南東部の山脈(Serra do Mar)、マットグロッソ低湿地帯(Pantanal Mato-Grossense)、
沿岸部(Zona Costeira)のような国家資産となる自然資源の利用については、法規
則に沿って、自然資源の持続可能な利用も含めた環境保全を確保しなければなら ない。」と述べられている。
国家環境政策の法律6.938において、ブ国の環境政策及び法規制の実施に係る枠 組みとして、国家環境制度(SISNAMA: Sistema Nacional do Meio Ambiente)が制定
された。SISNAMAには、連邦政府、州政府、市・郡政府の各レベルの環境担当の
行政機関あるいは財団法人組織が含められ、これらの組織が相互に連携、補完し つつ、国家環境プログラムを実施するシステムである。SISNAMAは、連邦政府審
議会(Conselho de Governo)を最上位機関とし、その下に環境改善・保護に関する
法令の審議・環境政策の策定を行う諮問・審議機関としてブラジル環境審議会
(CONAMA:Conselho Nacional do Meio Ambiente)、中央機関としての環境省(MMA:
Ministério do Meio Ambiente)、実施機関として、開発事業における環境面での許認
可を担当するブラジル環境・再生可能天然資源院(IBAMA:Instituto Brasileiro do Meio Ambiente e dos Recursos Naturais Renováveis)、そして、2007年にIBAMAから 一部分離独立した機関で連邦政府の保護区制定・管理を管轄するシッコ・メンデ ス生物多様性院(ICM-Bio:Instituto Chico Mendes de Conservação da Biodiversidade)、 対象事業において、環境規制を実施する州政府の環境担当機関、地元機関として
市・郡(cidades/municípios)レベルの環境担当機関というように示されている。
CONAMAは、国家の環境政策の実施のための規則・基準の策定等を行っている。
SISNAMAにおいて連邦政府レベルの審議機関として、環境大臣が長を務め、環境
省事務次官が事務局長となり、本会議、環境政策員会、アドバイザリーグループ、
技術審議会、ワーキンググループから構成され、環境政策を検討し、決定する機 関である。審議会メンバーは、連邦政府機関は、IBAMAや国家水資源局(ANA:
Agência Nacional de Águas)をはじめとして、その他の省庁からの代表者、各州政
府や連邦政府直轄区の代表者、市・郡政府機関の代表者 8 名、労働者組織、市民 組織からの代表者22名、企業組織から8名、その他、本会議で指名されたメンバ