第 4 章 ブラジルにおける超電導導入に関する情報収集
4.6 直流、交流超電導送電の導入可否
ブ国においては、前述のとおり、今後の電源開発では電源地と需要地が遠く離れる ため、長距離送電による対応が不可欠となっている。
ブ国における長距離直流送電の導入に関して、前述したとおり、交流送電と比較し ての送電損失低減のほか、系統安定度の確保、短絡容量増加の抑制について効果があ る。また、送電電力(送電線潮流)を任意に制御できることも、広大なブ国の電力系 統の運用、制御において利点である。
長距離直流送電に超電導技術を導入した際の利点として、以下の事項を考えること ができる。
送電損失低減
図 4.13に、交流ケーブル、直流架空線、直流超電導ケーブルそれぞれの送電距離と
送電効率の関係を示す。
直流送電の場合でも、1,000kmを超える長距離送電の場合、送電損失は10%程度に達 する。これに対して、超電導送電を適用した場合、送電損失を2%程度低減することが 可能である。
送電距離が 300~400km を超えるあたりから直流送電の効率が交流送電を上回るよ うになり、1,000kmを超える送電距離から直流超電導ケーブルが直流架空送電線に対し て優位となる。
ブ国では、長距離の大容量送電が必要とされており、送電容量は4,000MWを超える ものが適用されている。したがって、超電導送電適用による送電損失低減の費用効果 は大きい。
(出典:調査団作成)
図 4.13 送電距離と送電率の関係(試算ベース)
機器の低電圧化
一般的に、送電容量の大容量化をはかるためには、送電電圧を高電圧化し、送電電
く送電容量の大容量化が可能となる。したがって、大容量化のための超高電圧機器の 開発が不要となるほか、機器電圧の低減により周辺機器を含めた装置の絶縁距離を短 くできることより、全体として機器の小型化ならびに設備設置スペースの縮小が可能 となる。
表 4.12に直流送電設備について、電圧毎に比較したものを示す。DC±800kVに比べ
て、DC±300kVの設備は、布設用地の幅が約4分の1、鉄塔重量が約2分の1となり、
用地取得が容易であることや鉄塔重量減による基礎の縮小など、低電圧化によるメリ ットがうかがえる。
表 4.12 直流送電設備の電圧毎の比較(目安)
±300kV ±500kV ±800kV 導体と構造物間の必要最小距離(m) 1.3 3.06 6.81
絶縁ガイシの個数(個) 18 30 48
上記の場合の絶縁ガイシ一連の長さ(m) 3.22 5.20 8.17 相間中心距離(m) 6.0 9.3 14.3 布設用地幅(m)※
※導体の振れ、構造物との離隔、コロナ放電、磁 界の影響を考慮
76 138 280
鉄塔高さ(m) 44.3 50.8 61.8
鉄塔の重量(ton) 6,676 8,727 11,570
(出典:CIGRE: Impacts of HVDC Lines on The Economics of HVDC Projects)
自然環境による影響の低減
超電導ケーブルはケーブル周囲が 2 重の金属管で覆われている。この金属管は接地 されており、大地電位にあるため、電気的に安全性が高い。また、超電導ケーブルは 地中もしくは地表に敷設されるため、架空送電線と比較して、落雷や降雨等の自然環 境の影響を受けにくい。
架空送電線の場合、平均的な鉄塔の高さは50m 程度であるが、アマゾン地域に敷設 するときは樹木伐採を行わないことから、樹木上の離隔を確保するため、70m~80mの 高さの鉄塔を建設する必要がある。鉄塔の高さをかさ上げした分、自然環境による影 響を受けやすく、落雷による停電や、強風による鉄塔倒壊のリスクも大きい。したが って、超電導送電を適用することによるメリットは大きい。
リオマデイラの直流送電(Rio Madeira-Araraquara DC600kV, 2,400km)での聴き取りで は、送電停止1分あたり65,000レアルのペナルティが課せられるとのことであり、送 電停止を回避するため、定期的な巡視や点検を十分に実施しているということである。
環境影響の低減
従来のケーブルの絶縁方式として、絶縁油を用いた油浸ケーブル、および架橋ポリ エチレンを用いた XLPE ケーブルがあげられる。油浸ケーブルの場合、絶縁油の漏洩
や、漏洩油への引火など自然環境への悪影響が発生するリスクがある。また、XLPEケ ーブルの場合は、絶縁に使用される架橋ポリエチレンがリサイクルできない産業廃棄 物として処理される必要があることから、環境負荷が大きくなる。
一方で、超電導ケーブルは、金属、紙、液体窒素とすべてリサイクル可能な材料で 構成されており、また液体窒素は漏洩しても環境負荷にならないことから、超電導ケ ーブルの適用により環境への負の影響の可能性を低減することが可能である。
送電線敷設用地の縮小
超電導ケーブルの周囲が接地された金属管で覆われており、安全性が高いこと、お よび、ケーブルの電気抵抗がゼロであることから、敷設ルート選択の自由度が高い。(一 般的に、送電線ルートは送電損失を低減するために最短ルートを選定することが多い。) よって、道路、橋梁、鉄道線路の側方に敷設が可能である。アマゾン地域に送電線を 敷設する場合、既設の道路で既に開かれているルートを利用することにより、送電線 用地取得による環境社会影響を最小化することが可能となる。
建設および運用コスト
超電導送電線の建設コストを架空送電線の建設コストと比較したとき、同一の送電 ルートで考えた場合、架空送電線の建設コストのほうが小さくなる。ただし、超電導 送電線は、送電ルートの選択にある程度の自由度を持たせることができることと、送 電線敷設のための用地が縮小できることから、用地取得に関するコストを低減するこ とが可能である。また、前述のとおり、送電損失を低減することができ、運用コスト を低減することが可能である。現状では、入札において、送電損失低減を入札価格に 反映することにはなっていないが、今後、送電損失低減によるコスト低減分を入札価 格に反映するための検討を行うことが考えられている。
また、直流超電導送電と交流超電導送電の、試算ベースでのコスト比較は以下のと おりである。送電距離が短い場合、直流超電導送電に必要となる変換装置のコストの 分、直流超電導送電のコストが大きくなるが、送電距離が長くなると、直流超電導送 電が交流超電導送電と比較して送電損失が小さいことより、直流超電導送電のコスト が小さくなる。
ローカル系統(独立系統)の接続について
独立系統はその大部分がブ国の北部地域に存在しており、ブ国の電力総消費量の2%
超を占める。Acre、Amapa、Amazonas、Rondonia およびRoraima の各州は、独立系統 により電力供給が行われている。また、Para 州の大部分は全国相互接続系統(SIN)によ り電力供給がなされているが、一部は独立系統により電力供給が行われている。
これら独立系統における電力需要は、家庭による需要が多くを占めるが、Amazonas 州においては、Manaus工業地区による工業用の負荷が半分近くを占めている。
これら北部地域での独立系統における電力供給は水力発電と火力発電により行われて おり、発電設備容量の 80%はディーゼル火力発電である。したがって、これら独立系 統を全国相互接続系統に接続することができれば、ディーゼル火力発電を削減するこ とが可能となり、気候変動対策としてのインパクトをもたらすことが可能となる。ま た、電力供給の信頼性の向上にもつながるものである。
アマゾン地域における送電線布設は、森林や河川横断等の技術的な課題を伴うほか、
自然環境への負の影響の可能性を慎重に考慮する必要がある。
また、昨今の環境意識の高まりから、長距離送電線の建設は、環境規制面等から、
益々、困難となってきており、高効率で環境社会面への負の影響の可能性を低減可能 な新たな送電技術として、長距離直流超電導送電技術の活用が期待されている。
(出典:PNE2030) 図 4.15 単独系統の相互接続
前述のとおり、ブ国では、電力需要の増加に対して、今後も水力発電の開発が進め られる計画であり、これら水力発電による電力をリオデジャネイロやサンパウロ等の 大都市の需要地に送電するため、長距離の直流送電の検討と開発は、今後も行われて いく見通しである。また、電力の有効利用の観点から、送電損失の低減についても今 後必要性が高まっていくと考えられる。これらを考慮すると、直流超電導送電の導入 の必要性は高まるものと考えられる。
図 4.16 直流超電導送電導入の必要性
(出典:調査団作成)
2,000kmの直流送電線で4,000MWの電力を送電する場合の(Belo Monte-Rio de Janeiro 間の直流送電線に相当)、架空送電線と超電導ケーブルとの送電損失を比較すると、概 略以下のとおりとなる。
表 4.13 架空線と超電導ケーブルの送電損失比較
架空送電線 超電導ケーブル
送電損失 5% 1%
送電損失 200MW 52MW*1
年間送電損失 1,752GWh 450GWh 電気料金換算*2 788百万レアル 203百万レアル
*1: 送電損失は冷却装置での損失(冷却装置の動力)を含む
*2: 電気料金換算値0.45レアル/kWh(2016年ANEEL家庭用料金平均)
(出典:調査団作成)
4.6.2 交流超電導送配電の導入可否
現状、ブ国の大都市においては、需要が増大するとともに、OFケーブルの老朽化に 伴い油漏れが発生する等、送配電線ケーブルの取替需要が生じている。
しかしながら、大都市においては住宅地の開発が進んでおり、布設スペースの制約 面などから、市街地の変電所に送配電するための送配電線ルートの確保が非常に難し くなっている。
このため、図 4.17に示すように、現状のケーブルより少ないスペースで電力輸送が 可能であり、また、例えば、必要な電力を154kVからより低い66kVで送電でき、都市
水力開発 長距離直流送電線
送電損失低減
超電導送電導入