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監査役会の構成員の独立性に関する要件と学説 1 監査役会の構成員の資格

ドキュメント内 雑誌名 同志社法學 (ページ 37-52)

第4章  ドイツの監査役会・監査役会の構成員制度

第3節  監査役会の構成員の独立性に関する要件と学説 1 監査役会の構成員の資格

判所の決定に従わない場合、新しい監査役会の構成は、裁判所が指定した法 律規定に従う(株式法98条4項1文)。これに関連して、地方裁判所は、官 報に当該会社の監査役会の構成に関する申立てがあったことを公開しなけれ ばならない(株式法99条2項1文)。もっとも、このような裁判所の決定に 対しては、異議申立てをすることが可能である。

 なお、このような監査役会の構成員を決定する裁判は、会社の所在地を管 轄する裁判所で行われる。このような専属管轄の定めは、法定の裁判所の管 轄と労働裁判所の管轄の間の対立、あるいは、判決の矛盾を防止し、監査役 会の構成を速やかに形成することに貢献している100)

第3節 監査役会の構成員の独立性に関する要件と学説

束される構成員、あるいは、会社の定款にもとづき指名される構成員には適 用されない。

 監査役会の構成員の積極事由については、①完全的な法律行為能力を有し ている自然人のみであることおよび、②ドイツ民法103条の同意の留保に置 かれていない者であることの2つである(株式法100条1項)。

⑵ 兼任規制

 監査役員は、当該会社の従属会社の法律上の代表者(取締役)101)にならな い(株式法100条2項1文2号)。すなわち、会社の監査役会の構成員は、従 属会社における法律上の代表者を兼任して業務執行をすると、当該構成員は、

著しく独立性を欠くことになるからである。そのため、コンツェルン型の会 社に関しては、従属会社の代表者を兼任することが禁止される102)

⑶ 冷却期間

 また、取締役は、原則として、その退任後2年間は、監査役会の構成員と なることができない(株式法100条2項1文4号)。ただし、持ち株比率25%

以上を有する株主に指名される場合は、取締役の退任後2年を経過していな い場合であっても、退任した取締役は、監査役会の構成員として選任される ことができる103)。もっとも、ガバナンス・コードは、監査役の独立性を保 護する観点から、退任した取締役が監査役に就任することに消極的な立場を

101) 当該条文における代表者(Vertreter)は、株式法78条1項1文により、取締役は会社の法 律上、あるいは、法律上以外の代表者であると規定されている。また、同項2文により、会社 の取締役が会社の経営機能の喪失の場合に、監査役会は会社の代表者になる可能性もあると規 定されている。しかし、当該状況においても、監査役会は取締役を代替することを意味しない。

たとえば、取締役の経営機能を喪失としても、監査役会は、会社に意思表示(Willenserklärungen)

を渡し、また、書類を送達することができるが、会社の経営に参加することができないと考え られる。

102) Habersack, Fn (100),§100, Rdn.27.

103) Jean J. du Plessis・Bernhard Großfeld・Claus Luttermann・Ingo Saenger・Otto Sandrock・Matthias Casper, German Corporate Governance in International and European Context, 2ndEdition,SpringerHeidelbergDordrechtLondonNewYork, (2012) pp.105-106

とっている104)。すなわち、取締役の退任後2年を経過しない者が監査役に 就任する場合、その数は2人以上とならないようにすることを勧告する(ド

イツ版

CGK5.4.2の3)。このような勧告の意義は、監査役会の構成員の独立

性を保護することができると思われる。

⑷ 独立の構成員

 監査役会には、計算書の作成および会計検査の知識を有している独立の構 成員を1人以上設置しなければならない(株式会社法100条5項)。独立の構 成員とは、利益相反についての客観的な判断に影響を与える可能性のあるビ ジネス、または家族その他の親戚、会社、支配株主もしくは経営陣から独立 した者である(2005年2月15日

EU

委員会勧告105)13.1)。しかし、ドイツ版

CGK

の5.4.2の2文の対象は、株主の代表者のみであると考えられている106)。  これに対し、上記

EU

委員会勧告は、次のような場合にも独立監査役とし ての要件を満たすとしている。すなわち、①会社の業務を執行しない者もし くは会社と関連する取締役ではない者、またはそのような地位に過去5年間 に就いていない者、②会社または関連会社の従業員ではない、また地位に過 去3年間に就任していない者、しかし、上位経営陣に属しない業務をしない、

あるいは、監督をしない者は、法律に認められる従業員代表システムにより、

また、十分な保護設置を提供する場合に、監査役として選任されることは例 外である。(同

EU

委員会の勧告の付録Ⅱの1の

b

)。しかし、

EU

委員会の 勧告には法拘束力がない。

104) Habersack, Fn (102), Rdn.37.

105) Commission Recommendation of 15 February 2005 ‘on the role of non-executive or supervisory directors of listed companies and on the committees of the supervisory board’, Official Journal of the European Union.25.02.2005

106) Jean J. du Plessis, Fn (103), p. 104.

2 監査役会の構成員の選任(Bestellung)

⑴ 株主の代表者

 株主代表者である監査役の選任は、株主総会で行われる(株式法101条1 項1文前段)。監査役会の構成員を派遣する権利は、会社の定款の定めがあ る場合にのみ、特別株主107)、または特別株式を持っている株主にのみ授け ることができる(株式法101条2項1文)。当該特別株式が記名株式である場 合に、当該株式を有する株主が監査役会に派遣権を有し、会社の同意を得た うえで株式が譲渡されることを認めることができる(株式法101条2項2文)。

当該監査役会の構成員を派遣することができる株式は、種類株式にならない

(株式法101条2項3文)。また、法律または定款の規定にもとづき、監査役 会の構成員を派遣する人数は、監査役会の総人数の3分の1が上限である(株 式法101条2項4文)。

 株式法101条の立法目的は、株主総会が監査役会の構成に影響力を与える ことであるとされている。

 通常の株主総会決議による選出は、次のとおりである。

 第一に、株主総会に監査役会の構成員の選出に関する議事を提出され、当 該選出の議案に関して告示が行われる。さらに、どのような規定に従って監 査役会を構成するかが記載される108)。当該議事日程と同時に、監査役会の 議席の配置と、欠員の生じている監査役会の議席に係る監査役会の選出提案 が告示される(株式法124条3項1文)。また、当該選出議案を提出する権限 は、取締役には与えられていない。これは、監査役が、監査役会の選任につ いて取締役会に影響を及ぼすのは望ましくないからである109)

 第二に、定款の定めがある場合にのみ、特定の株主に監査役の派遣権が認

107) LG Essen, 29 .06 .2007-45 O 15/07により、当該特定の株主とは、会社との「特別な関係」

を有する株主のことであるとされる。この特別な関係には、金銭的な関係だけではなく、たと えば当該会社の創業者など、会社との人間関係も含まれる。

108) Micheal Hoffmann-Becking, Münchener Handbuch des Gesellschaftsrechts, Band 4, Aktiengesellschaft (Verlag C.H. Beck München, 4 Auflage, 2015),§101, Rdn.34.

109) Hoffmann-Becking, a.a.O, Rdn.36.

められる(株式法101条2項)110)。このような定款授権は、原始定款または 事後の定款変更のいずれによっても可能である。具体的には、派遣権を有す る株主を定款に明記する方法、あるいは、一定以上の持株数を有する株主に よる派遣を定款に明記する方法の2つである111)。また、定款には、監査役 会の株主に選出される者の議席に配慮して、3分の1を上限に、株主の代表 者を派遣することを定めることができる112)。これに加えて、派遣権を有す る株式は、会社の同意を得た上で譲渡することができる(株式法101条2項 2文)。派遣権者と被派遣者の関係は、前者が後者と報酬を約束するかどう かにしたがって、ドイツ民法典675条による法律行為の委託契約関係である か、あるいは、662条による委任契約関係であるか判断される。しかしながら、

被派遣者は、既存の法律関係に左右されないと考えられている113)。また、

被派遣者の監査役としての独立性を保護するために、派遣権を有する株主が 被派遣の監査役会の構成員との報酬を約束しないということについて、定款 に定めることができる114)。派遣される監査役は、株式会社法における特別 の規定により、法人上の法律契約関係に基づいて職務を行うが、その法律上 の地位については、株主総会の決議による選出される監査役会の構成員の地 位と同様であると考えられている115)

 ところで、監査役会の構成員に欠員が生じた場合を想定した規定が存在す る。

 監査役が監査役会を欠席する場合であっても、その代理人を選定すること はできない(株式法101条3項1文)。しかしながら、監査役が病気により長 期にわたり監査役会を欠席することや、死亡するなどにより、欠員が生じる

110) Hoffmann-Becking, a.a.O, Rdn.48.

111) Hoffmann-Becking, a.a.O, Rdn.49.

112) Hoffmann-Becking, a.a.O, Rdn.50.

113) Habersack, Fn (100),§101, Rdn.46.

114) Hans-Jonachim Mertens/Andreas Cahn, in Zöllner/Noack (Hrsg.) Kölner Kommentar zum Aktiengesetz, Band2/2, (Carl Heymanns Verlag, 3Auflage, 2013),§101, Rdn.73.

115) Habersack, Fn (113), Rdn.50.

ことが考えられる。このような場合に備え、あらかじめ補欠監査役を選任す ることが認められる(株式法101条3項2文)。当該補欠監査役を選任する場 合は、他の監査役会の構成員の選任と同時に行われる(株式法101条3項3文)。

 これに対して、監査役の欠員が実際に生じてから監査役を選任(補充)す ることもできる。すなわち、監査役の欠員が生じ、監査役会の定足数を満た さなくなった場合に、取締役、監査役、または株主の申立てにより、裁判所 は、定足数を満たすまで、監査役を選任しなければならない(株式法104条 1項1文)。また、監査役会の構成員の数が法律または定款に定められる数 を下回る状態が3ヶ月以上続く場合、裁判所は、申立てにより、欠いている 数の監査役を選任することができる(株式法104条2項1文)116)。ただし、

やむを得ない場合に、裁判所は、申立てにより、その「3ヶ月」の期間を満 了する前であっても、監査役を選任することができる(株式法104条2項2 文)。なお、当該裁判所の決定に対しては異議申立てをすることができる(株 式法104条2項4文)。

 これらの規制は、裁判所を第三者機関として監査役会の補欠構成員の独立 性を確保し、監査役会の独立機能を確保することを目的としている117)。と くに、監査役会の構成員の選任に関する裁判所への申立義務は、取締役に課 される(株式法104条1項2文)。しかし、監査役会の欠員の状況に対し、適 時に、裁判所の補助なしに、監査役会が監査役会の決議要件を満たすために 必要な監査役を補充する場合には、取締役は、このような申立義務を免除さ れると考えられている118)

⑵ 従業員の代表者

 共同決定法9条1項は、監査役会における従業員の代表者の選任について、

116) なお、これらの法律上の規制に関連して、ガバナンス規準では、裁判所による監査役の選 任は、次回の株主総会までにすべきであることが勧告されている(ドイツ版CGK5.4.3の2文)。

117) Mertens/Cahn, Fn (114),§104, Rdn.3.

118) Habersack, Fn (100),§104,Rdn.17.

ドキュメント内 雑誌名 同志社法學 (ページ 37-52)

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