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中国・日本・ドイツの監事・監査役・監査役の構成員の独 立性に関する要件

ドキュメント内 雑誌名 同志社法學 (ページ 55-69)

第5章  中国の監事会・監事制度への示唆

第2節  中国・日本・ドイツの監事・監査役・監査役の構成員の独 立性に関する要件

1 監事・監査役・監査役会の構成員の資格166)

⑴ 監事・監査役・監査役会の構成員についての欠格事由

 中国では、法人が会社の監事になれないとする欠格事由を設けていない。

これに対して、日本およびドイツでは、法人監査役は否定されている。その 趣旨は、いずれも、法人が監査役に就任すると、当該法人と会社との間の利 害関係(例えば、業務関係やビジネス上の関係)がある場合に、監査役とし ての独立性に影響を与える可能性があるということである。中国においても、

法人監事を認めると、日本およびドイツと同様の問題が生じることが考えら れる。したがって、中国において、法人は監事になることができないという 条件を追加することが適切であると思われる。

⑵ 兼任規制

 中国の監事の独立性については、以下のように、董事からの関与が問題と なりうる場面が三つ存在する。

 1) 在任中の欠員

 第一の問題として、中国の会社法では、監事に欠員が生じた場合に、監事 会の人数が法定の数を下回るに限り、監事会の請求により、補欠監事を選任

166) 本稿における問題の各国の法制度の紹介について、中国法(5-7頁)、日本法(14-18頁)、

ドイツ法(28-30頁)を参照。

することができるとされている(中国会社法52条2項)。しかし、この規定は、

監事に欠員が生じても、法定の人数を上回る数の監事がいる場合には適用さ れないという欠陥がある。したがって、董事から監事会に仮監事として派遣 するという結果を招きやすい。このような董事から監事への関与を制限する ために、後で説明する日本とドイツの制度が参考になる167)

 2) 横すべり監事の問題

 第二の問題として、退任した董事がそのまま監事として選任される問題(い わゆる「横すべり監事」の問題)がある。日本の横すべり監査役は、この問 題に類似する。日本では、横すべり監査役を禁止する規定はなく、判例上も 許容されていると解されている。これに対し、学説においては、いわゆる自 己監査の状況が生じ、監査役の監督機能を損なうとして、横すべり監査役を 認めるべきではないとする見解も有力である。このような横すべり監査役に 関して指摘される自己監査の問題は、中国の横すべり監事にも同様に当ては まると思われる。監事は、その監督機能を十分に果たすために、過去にした 董事としての職務を監督するのみならず、自分の職務と関連する他の董事の 職務も監督することが要求される。他の董事は、監事からみて元同僚にあた る。このような場合に、横すべり監事と元同僚との利害関係から、監事が適 切に董事の職務を監督することができないのではないかという疑問が生じ る。したがって、中国においては、横すべり監事は禁止されるべきであると 思われる。

 3) 退職者が監事として選任される問題

 第三の問題は、一度会社を退職した董事が監事として選任されることの問 題である。

 監事は、その職務として経営の監督を行う際に、情報収集を通じ、会社運

167) 当該問題の検討については、本稿の45-46頁を参照。

営の実態を把握しなければならない。そのため、元董事を監事として選任す ることにはメリットも認められる。しかし、同時に、監事の独立性を確保す る観点からは、元董事の監事とほかの監事の間には、かつて同僚関係にあっ たことによる利害関係が存在することも考慮されなければならない。この点 に関しては、ドイツの法規制が参考になると思われる。すなわち、ドイツで は、特定の株主による派遣の場合を除き、取締役を退任して2年を経過しな い者は、監査役会の構成員として選任されることができないとされている(株 式法100条4項)。また、ガバナンス・コードでは、取締役であった者を2名 以上監査役会の構成員に選任することは望ましくないことが勧告されている

(ドイツ版

CGK

5.4.2の3)。このように、ドイツでは、独立性を確保する観点 から、元取締役の監査役会の構成員選任に対して一定の制限が設けられてい る。このようなドイツの規制は、退任董事に関して同様の問題を抱えている 中国においても、参考にする価値があるだろう。

⑶ 社外監事の「社外性」要件

 中国会社法には社外監事に関する規定はなく、現時点では、取引所規則な どのソフト・ローによる規制に委ねられている(上証・CG・方針29条)。監 事会の独立性を確保するには、社外監事の利用が有効であり、その設置が促 進されるべきである。そこで、強行法規である会社法においても、社外監事 に関する規定を設けるべきであると思われる。もっとも、社外監事の利用は、

必ずしも監事会の独立性の強化に結び付くとはかぎらない。監事会の独立性 を実効的に確保する観点からは、監事会の構成員のうち一定数を社外監事と することを強制するだけでは足りず、「社外性」の要件(社外監事の資格要件、

欠格事由など)をどのように定義するかが重要である。

 この点について、日本では、たとえば、過去10年以内に取締役、従業員で あった者は、社外監査役とならないとする(日本会社法2条16号イ)。この ような10年という期間(いわゆる「安全期間」)は、2014年の会社法改正に おいて定められたものである。もっとも、中国においてこの同様の規制を設

けることは、現時点では難しいと思われる。中国では、ソフト・ローにより 社外監事の導入が推奨されているにもかかわらず、強行法規である会社法に 社外監事に関する規定が存在しない状態が続いてきた。そのため、上場会社 における社外監事の導入が遅れているだけでなく、学説の議論も進展してい ない状態が続いている。このような状況で社外監事の設置を強制し、10年と いう安全期間を設けると、社外監事の要件を満たす者が著しく減少し、社外 監事の利用コストが上昇するなどの問題が生じるおそれがある。そこで、ま ずは、10年よりも短い安全期間(たとえば「5年」)を設定し、上場会社が 社外監事を設置しやすい環境を整備することで、社外監事の実効性と監事会 の独立性を確保する法政策を採用すべきであると思われる。

 第二に、日本法では、2014年の会社法改正により、取締役などの役員の二 親等以内の親族が社外監査役に就任することはできないとされていることも 参考になる。この規制は、2014年の会社法改正で、10年の安全期間と併せて 導入されたものである。中国の会社においては、特に、社外監事は董事など の会社の管理者と一定の人間関係があることが多い。そのため、社外監事が 監督機能を果たすことができないのが実態である。このような日本法におけ る社外監査役の定義は、中国において、社外監事の定義・条件を明文化する 際に参考となるであろう。

2 監事・監査役・監査役会の構成員の選任168)

⑴ 株主の代表者

 中国の監事会における株主代表者の選任は、大株主および董事からの影響 を受けることが多い。このような問題に関しては、日本とドイツを参考に、

大株主および董事の影響力を排除する方法を検討する必要がある。

168) 本稿における問題の各国の法制度の紹介について、中国法(7-10頁)、日本法(18頁)、ド イツ法(30-35頁)を参照。

 1) 大株主からの影響(大株主の派遣権)

 中国では、会社の株主代表の監事を選任する場合に、ドイツと同様に大株 主からの影響を受けている実態がみられる。しかし、ドイツ株式会社法によ る大株主に派遣権を与える理由は、大株主の持株比率が大きいほど、株価の 変動による影響が大きく、株主が安心して投資することができないからであ る。このような理由で、大株主にかかる派遣権を与えるなどの特例が認めら れている。

 ただし、問題は、当該派遣権を有する株主の範囲である。中国の会社法お よび関連規定には、大株主に関する定義が存在しない。そのため、会社にと って都合の良いように、定款で大株主の範囲を定めるおそれがある。そうす ると、株主代表の監事の独立性を害するおそれが高くなる。これに対して、

ドイツ法では、派遣権は、持株比率25%以上である株主にのみ与えられるの で、派遣権を特定の株主に与えるとしても、そのような株主の影響は制限さ れている。中国の会社法にも、ドイツ法のような規定を設けることで、大株 主の定義を明確にし、監事の独立性を確保すべきである。

 2) 董事からの影響

 中国の会社法では、監事の選任議案に関する問題が2つある。第一に、監 事の選任について議案を作成する機関に関する明文規定がない。第二に、監 事選任の議案に対して、監事会の同意が必要であることも規定されていない。

したがって、その議案の決定を董事に委ねることが可能であり、監事の独立 性を害するおそれがあると思われる。これに対して、日本法では、監査役の 同意がなければ監査役の選任議案を提出することはできない(日本会社法 343条1項)。これは、監査役に議案に対する拒否権を与えることにより、監 査役の独立を確保することを目的としている。このような同意権は、中国の 監事制度にも参考になる部分が多いと思われる。もっとも、中国に同様の制 度を導入した場合、監事と董事の馴れ合いの状況がさらに悪化にする可能性 があることも否定できない。なぜなら、董事と監事を事前に協議を行えば、

ドキュメント内 雑誌名 同志社法學 (ページ 55-69)

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