第4章 ドイツの監査役会・監査役会の構成員制度
第2節 ガバナンス制度の概説
ドイツにおいても、上場株式会社(Aktiengesellschaft)の最高機関が株主 総会(Hauptversammlung)である点は、中国および日本と同様である95)。
92) 大江橋法律事務所編・前掲注(55)60-61頁。
93) 川口・前掲注(61)263頁。
94) ドイツにおけるガバナンス・コードは、諸外国と異なり、単なるソフト・ローではない。す なわち、株式法161条がドイツ版CGKの勧告を遵守しない場合の説明義務を定めているように、
ドイツにおけるガバナンス・コードは、ソフト・ローというよりも、制定法上の制度であると 位置付けることができる。
95) ドイツの上場会社における株主総会の権限は、次のとおりである(株式法119条1項)。すな わち、①監査役会における株主代表者の選任・解任、②対象表利益の利潤の運用、③取締役お よび監査役の責任の免除、④決算検査役の選任、⑤定款の変更、⑥資本調達および資本減少の
また、中国の董事会・董事および日本の取締役会・取締役と同様に、会社の 経営に関する権限を取締役(Vorstand)96)に与えている点も同様である。し かしながら、ドイツでは、監査役会(Aufsichtsrat)・監査役会の構成員
(Aufsichtsratmitgeliede)の地位および権限は、中国および日本と大きく異 なっている。すなわち、ドイツでは、取締役会の構成員の選任または解任は、
株主総会ではなく、監査役会が行うものとされている(株式法84条1項1文)。
この点で、監査役会は、取締役会の上位機関であると位置づけられ97)、会社 の運営を監督する監督機関としての機能を有している。
ドイツでは、共同決定法の規定により、株式会社に勤務する従業員が監査 役会の参加に関する制度が導入されている。すなわち、共同決定法が適用さ れる会社の監査役会は、株主総会で選任される監査役および、従業員の中か ら選任される監査役により構成される(株式法96条1項)。
監査役会の構成員は、3人である(株式法95条1文)。ただし、定款の定 めにより、3人以上の監査役を設置することもできる(株式法95条2文)。
この構成員の数は、資本金の規模に応じ、9人から21人までである(株式法 95条1項1文)。
ま た、 従 業 員 数 が10000人 以 下 で あ る 会 社 の 監 査 役 会 は、 株 主
(
Anteilseigner
)の代表者6人および従業員代表者6人の計12人で構成される(共同決定法7条1項1文1号)。従業員の数が10000以上20000人以下の 会社では、監査役会は、株主代表者8人、従業員代表者8人から構成される
(共同決定法7条1項1文2号)。さらに、従業員の数が20000人以上の会社は、
株主代表者10人、従業員代表者10人が監査役会の構成員として選出される(共
措置、⑦会社の設立、あるいは、会社の経営に対する検査人の選任、⑧会社の解散である。
96) ドイツでは、株式法76条および77条が取締役・取締役会の権限を抽象的に定めている。これ らの規定にもとづき、取締役は、具体的には次の三つの権限を有すると理解されている。すな わち、①会社の指導(Leitung)、②会社のビジネスの経営・管理(Geschäftsführung)、③会社 の代表者の権利(Vertretung)である。
97) ドイツの監査役会の権限については、取締役会の選任・解任および会社の経営の監督の2つ に分けられるとの理解が通説である。
同決定法7条1項1文3号)。
さらに、監査役会が6人の従業員で構成される場合は、そのうち4人は会 社の従業員でなければならず、2人は労働組合の代表者でなければならない
(共同決定法7条2項1号)。また、監査役会が8人の従業員で構成される場 合は、そのうち、会社の従業員は6人、労働組合の代表者を2人としなけれ ばならない(共同決定法7条2項2号)。さらに、監査役会が10人の従業員に より構成される場合には、そのうち会社の従業員は7人、労働組合の代表者 は3人でなければならない(共同決定法7条2項3号)。
以上のように、株式会社法に規定される監査役会の構成員の人数と共同決 定法に定められる構成員の人数は異なっている。このように株式会社法の規 定と共同決定法の規定が相反する内容である場合は、共同決定法の規定が優 先して適用される(株式法95条5文)。そのような条文の趣旨は、従業員の 中に、会社に関する知識、あるいは専門能力がある従業員がいれば、当該従 業員は、監査役会の独立性の確保、あるいは、客観的な決定を行うことに貢 献しうるということであると説明されている98)。
なお、監査役会には、これら会社内部の構成員のほか、会計検査の知識を 有する独立の構成員を設置しなければならない(株式法100条5項)。これは、
商法典264条99)の趣旨にもとづく規制である。
それらに加えて、どのような法律の規定により監査役会を構成しなければ ならないかにつき争いがあるか、または、これが明確ではない場合には、会 社の所在地を管轄する裁判所は、申立てにもとづき監査役会の構成員を決定 する権限を有する(株式法98条1項)。この申立てを行う権限を有する者は、
取締役会、各監査役、株主その他の者である(株式法98条2項)。会社が裁
98) Jan Lieder, The German Supervisory Board on Its Way to Professionalism, German Law Journal, Vol. 11, No. 2 (2010) p.146, https://germanlawjournal.squarespace.com/s/GLJ_Vol_11_
No_02_Lieder.pdf.
99) 監査役会の独立構成員は、商法典264条に規定される資料(資本会社の年度計算書および状 況報告書)を作成できる能力を有する者でなければならない(株式法100条5項)。しかし、当 該独立構成員は、特に、公認会計士などのような資格を持つことが必要ではないと考えられる。
判所の決定に従わない場合、新しい監査役会の構成は、裁判所が指定した法 律規定に従う(株式法98条4項1文)。これに関連して、地方裁判所は、官 報に当該会社の監査役会の構成に関する申立てがあったことを公開しなけれ ばならない(株式法99条2項1文)。もっとも、このような裁判所の決定に 対しては、異議申立てをすることが可能である。
なお、このような監査役会の構成員を決定する裁判は、会社の所在地を管 轄する裁判所で行われる。このような専属管轄の定めは、法定の裁判所の管 轄と労働裁判所の管轄の間の対立、あるいは、判決の矛盾を防止し、監査役 会の構成を速やかに形成することに貢献している100)。
第3節 監査役会の構成員の独立性に関する要件と学説