ホウ素に関する作物栄養学的研究
下に示す規準 によって判断 した。
・
1)培
地のpH変
化 あるいはCa処
理 などによって生育 が著 しく停滞 した時,B含
有率 が高 くなる場合があった。しかし,こ れはBの 吸収・移動が促進 されたためとはみ なし得 ない。
2)培
地条件の変化 によって生育の著 しい停滞は起 こ らず,葉
のB含
有率が変化 した場合,Bの
吸収 あるいは 移動のどちらか,ま たはその両方が影響 されたと考える。3)2)が
認め られた場合,全
吸収量 に対する葉の蓄積 量の割合を比較 して,そ の値 に変動がなければ吸収が影 響 を受け,そ れが特 に大 きくなったり,あ
るいは小 さくなった場合は移動が影響 を受 けたと判断する。
4)も
し葉のB含
有率の変化の割合を,移
動量の変化 とい うことで,量
的に説明で きない場合は吸収 と移動の 両方が影響 されているとみなす。以上の基準 に従 えば
,作
物 によるBの 吸収・移動は培 地pH 4〜 7.5の範囲では,培
地pHの
影響 を受けず (第 14, 15表),また,培 地Ca濃
度が5〜1000ppmの 間では,少 な くともBが
積極的吸収 を受ける低B濃
度 においては,Ca
濃度の影響 を受けないと判断 される(第21,22表 ,第 8図沌 なお
,ダ
イズでは高pH(7.5)条
件でCa処
理濃度を種々 変化 させてもBの 吸収・移動は影響 を受けなかった。さらに,植 物体内におけるBの 生理的活性はCaに よっ
て強 く影響 を受 けるので
,適
切 なCa/B比
を保 つ必要 があるといわれているが:°各種作物の
B欠
乏・正常・過剰 それぞれの段 階 にある葉のCa/B比
(第10図,第
24表 より作成)をみ ると
,い
ず れの作物 において も,それぞれ の栄養状 態 におけるCa/B比
には非常 に大 きな巾 があ り,かつ 欠乏 ―正常間
,あ
るいは正常―過剰間でCa/B比
が 重 な り合 ってお り,Bの
活 性 の指標 として,Ca/B比
が重要 な意味 を持つ とは考 えられない。
実際の圃場条件 において も
,B久
乏が問題 となるメ犬況 で は,培
地B濃
度 は低 く,作
物 がBを積極的 に吸収 す ると考 えられ るので
,B欠
乏症 の発現 が,石
灰 質資材 の過 剰施与 によって誘発 され る主因は, さきに挙 げた作物的 要因(P39)で
はな く,石
灰質資材施与 に伴 う土壊 のB
固定量 の増加 にあると考 えられる。
4種
の上壊 を供試 してアズキを栽培 し,B吸
収 に対 する炭酸苦土石灰施与 の影響 を調べた結果 (第31,33〜35 表)を まとめ る(第11図 )と
,炭
酸苦土石灰施与 によ るア ズキのB吸
収 に対す る抑制効果 に大 きな土壊 間差 があ り,その効果 は黒 ボク≫沖積
I,沖
積 Ⅱ>砂
丘土壊 の順 で あ った。また
,土
壊 中の易動性Bと葉身のB合
有率 の間 には極 めて高 い正 の相関関係 があ り(第12図),石灰 質資材施与 によ り引 きおこされ るアズキのB吸
収抑制 は易動性Bの
ト
ト
0 100
1100
〆\\\\I
う\ 対 5100
ー
へ \ 洲
ヒ マ ヮ リ
テ ン サ イ
女 中
﹁ 340
0 200
ダ 0 400 2500 2600
撫 熙 照 ぺ\ \ \ 削 蛋 ・ ̲諷
0 400 800
Ca/BIヒ 38004000
ー
6900
鴫
ヽ
キ ウ リ
ト ウ モ ロ マ ン
200 500 700
第10図
各種作物のホウ素欠乏―正常一過剰段階での
Ca/B比
山内益 夫
砂丘土壊
2ppmB添
力口50ppmB添カロ
土壊 の易動性
B含
量 (mg/10g)第12図
土壊 中易動性 ホ ウ素 とアズキ葉身のホ ウ素 含有率の関係
減少
,い
いかえると土壊 によるB固
定量 の増加 に起因 し ていることが うかがわれ る。pH上昇 に伴 う土壊 の
B固
定量 の増加の原因 については,○黒ボク
×平中不責I
△沖積 Ⅱ
炭酸苦土石灰添加量 (ton/10a)
第11図
炭酸苦土石灰のホウ素吸収抑制効果の上壊間差異
書歪 甲 B 山︿ 一石 茎
・
︵ ppm
︶
現在定説 は得 られてはいない。 しか し
,本
実験結果 か ら も施与 された石灰 とBと が直接反応す るのではない と推 定 される。 そのため にB固
定量 に対す る石灰 質資材施与 効果 には土壊 間差 が存在す ると思 われる。上壌 のB固
定 の要因 として,上
壊粒子の表面積, リン酸吸収係数,有
機物合有率
,活
性 アル ミナ,活
性鉄 などがあげられているが
'°
これらのうち最後の二つが特に
pHの影響をうけ
やすいと考えられ
,両
者間のB固
定 に対する重要 さの程 度は,土
壊 によって異 なると考えられる。いずれにしても本実験の範囲では
,炭
酸苦土石灰施与 によるB固
定量の増加割合(第31,33〜 35表 )は,三
二酸 化物の含有率の高い土壊 (第30表)ほ
ど大 きかった。従 って,石
灰質資材施与により可給態Bが
減少する土壊で は,石
灰質資材施与 によ り作物体のCa合
有率は上昇 しB合
有率は低下 し, その結果, Ca/B比
が上昇する可能 性が高 く,B欠
乏発現可能性の有無 を判定する際 に,B
含有率 と共に
Ca/B比
も考慮することは,全
く無意味 とはいえない。
上壊 に施与 したホウ素の動態
実験
1
水不溶性ホウ素質肥料の上壊中における溶解 性実験方法
沖積I土 壊 と黒ボク土壊(第30表)を用い,低
pH区
(石灰,ようりん無施与)と 高
PH区
〔炭酸苦土石灰(マ中積I 4.3g/kg,黒 ボク9.78g/kg),よ うりん(マ中積12.3g/kg, 炭酸苦土石灰 (kg/10a)○黒ボク
△沖積I
y==40,9x―‑81.9 r=0,96(p<α 001)
ホウ素 に関する作物栄養学的研究
第37表
施与ホウ素の土壌中における溶解の経時変化 経
過
日
数 21 35 49 63 77 土壊 pH B質肥* pH
易 動 性
B量
(μg B/10g土壊)平 均
土標準偏差
FTE
低
pH BM**
ホ ウ砂
23.5 20.3 26.7 29 7 20 8 23.1 34.7 34.7 58.9 62.3 44.6 55.2
19,7 22 1 29.0 29 1 30,2 35.6 49,4 53.6 45.5
30 5 29。1 25.6=L4.3 4,7 41,7 35.1 31 7」L6.6 6.4 47 3 48.2 51.7」L6.2 4,7 沖
積
I
FTE
高
pH BM**
ホ ウ砂
10.5 19 6 17.8 19.8 12 3 26.1 31 4 32.8 47.5 56.2 53 6 48,7
21.2 22 6 17.5 30 6 32.9 27.6 45.1 51.2 43 9
22 3 18 2 18.8=L3.6 6.6 31,7 27.3 28.1=L6.4 6 9 45.2 46.7 48,1± 4.2 6 6
FTE
低
pH BM*キ
ホ ウ砂
12.6 12 2 13.6 19 9 13.7 14 7 19 6 34.0 20,7 22.6 27.0 30.3
21.4 17 5 19,0 29.4 33.4 32.3 30 5 28.2 29 9
19.8 19,7 17 3=L3.5 4 9 32.8 28.6 36 5± 8.3 5.6 28.3 30.6 27.6=L3.6 5 0 黒 ボ ク
FTE
高
pH BM**
ホ ウ砂
7.2 4.3 5.5 5 2 7.8 5。7 11.3 12.6 11 7 12.8 16.0 17.8
6.6 82 9,9
10.0 19.1 20 1 14 9 15 5 18 8
11.9 11.7 7.8=と2.8 6.4 19.3 20.2 14 9=L5.7 6.7 20.2 22.1 16.6=L3.4 6.6
*B ttB巴
料
**BMよ
うりん黒ボク5.4g/kg)施与〕を設け
,共
通肥料 として燐硝安加 里(552号)2g/kgを加 え,B処
理 としていずれも20ppm B 相当量のFTE注)(0.72g/kg),BMよ うりん潮(12.98g/kg), ホウ砂(0,182g/kg)を 施与 し,充 分に混和 し,ポ リエチレ ン製ポットに充填 した。通気用の穴をあけたビニールシ ー トでふたをし,畑
状態の水分 を保つ ように時々蒸溜水 を加え,13〜15週間室内に放置 し,そ
の間 1〜 2週 間毎 に試料を採取 して易動性Bの
分析 に供 した。実験結果
易動性
B量
は土壊別にみると(第37表平均値),い ずれ の処理でも沖積 I土 壊 が黒ボク土壊 より多かった。沖積 ェ土壊の易動性B量
は低pH区
で高pH区
よりわずかに多 かった。一方,黒 ボク土壊では高pH区
の易動性B量
は低pH区
より著 しく少 なかった。易動性
B量
の経時的な変動 をみると,沖
積 I土 壊ではFTEあ
るいはホウ砂区は碁回の変動が大 きく経時的な変 動は明瞭ではないが,BMよ
うりん区では21日目まで経 時的に増加 した。一方,黒 ボク土壊では,低pH区
ではい ずれのB処
理 においても35日 目まで経時的な増加傾向を 示 し,高
pH・FTE区
は7日 目が14日 目よりわずかに高 い値 を示 したが,14日 日以降91日 目まで漸増を示 し,高 pH oBMよ
うりん区は14〜21日日と49〜63日 目の間で急 激 に易動性B量
を増加 した。高pH・ホウ砂区では35日目まで経時的な増加を示 した。
以上のように,培 地
pH,使
用 B質 月巴料 によって,細 か な相違はあるが,水
不溶性B質
肥料の施与 による易動性B量
の増加は,沖
積I土 壊の方が黒ボク土壊 よりもすみ やかで,黒
ボク土壊では徐 々に増加す るとみなすことが で きる。また,B質
肥料別の易動性B量
を平均値でみると
,沖
積 Iで はホウ砂区>BMよ
うりん区>FTE区
の順 に大 ぎく,黒
ボクではホウ砂区≒BMよ
うりん区>FTE
区の順であった。
実験
2
各種ホウ素質月巴料の上壌中における動態 実験方法沖積 Ⅱ土壊 と黒ボク土壊 (第30表
)を
用い,底
に多数 の小穴を有す る15〃容のプラスチ ックバケツの底部 に厚 さ3 cmに石英砂 を敷 きつめ,こ
の上に第38表に示 したよ うな肥料 を混和 した土壌 を沖積 Ⅱでは 7 kg,黒 ボクでは6 kg充填 した。この上壌層の上部 に
,上
記肥料混和土壊に10ppmBオ ロ当量のホウ砂
,FTEあ
るいはBMよ
うりん をそれぞれ施与混和 した土壊 またはB質
肥料無施与の対 照土壊 を沖積 Ⅱ土壊では 6 kg,黒 ボク土壊では5 kgを上 乗せ し,計
16の処理区を設 けた。それ らを溶脱水 を捕集 す るためにa/2000ポ リエチ レン製ポ ッ トの上 に設置 し,屋外に放置 した。 6月10日ダイコン(赤九二十 日大根)
を各 4個体づつ播種 し, 7月13日まで適宜水道水 を潅水 脚注
)FTE:
く溶性BMよ
うりん :(マンガ ン
19.0%,ホ
ウ素9.0%)
く溶性 (マンガ ン
1.0%,ホ
ウ素0.5%,
りん酸20.0%,苦
±13.0%) 可溶性 ケイ酸20.0%74 山 内益 大
して栽培 した。 その間6月29日に硫酸 カリ(K201・2g/ポ ッ ト)を
,7月
1日 には燐石肖安加里552号(Nlg相
当量)を追月巴した。 ダイコン収穫後は裸地の まま放置 し, 6月
10日〜■ 月20日にわたって時 々捕水用の a/2000ポ ッ トに た まった溶脱水 を採取 し
,液
量 を測定 し,Bを
定量 した。また
,ダ
イコン収穫後 (7月27日)と11月 20日 に上層(B 施与層)と下層(B無施与層)に 分 けて上壌 を採取 し,風
乾細土 と した後
,常
法 によ り熱水可溶性 B° を測定 した。第38表
施肥設計 (g/ポ ッ ト)
土壊
土壌
pH憐
硝安加里 炭酸苦土石灰*
よ うりん**・ 土壊pHを約 7に するに必要な量
**i)ン
酸吸収係数の
5%相
当量 実験結果栽培 した ダイコンの収量(第39表)は沖積 Ⅱ・高pH・
FTE区 ,沖
積 Ⅱ・高pH・BM区
と黒 ボ ク・低pH・ ホウ 砂区が対照区 よ り低 かった外は,B質
月巴料施与区で増加した。Bの吸収量 は209(黒ボ ク・高pH・対照区)〜660
(沖積 Ⅱ・低pH・
BM区
)μg/ポ ッ トで,最
大451 μg/ポッ トの区問差 が認 め られたが,その差 は施与B量
(沖積 Ⅱ60mg,黒
ボ ク50mg)の
0。9%以
下 に過 ぎなかった。全実験 期間は150日間であ り,その中,最初の1カ月間 は ダイコ ンが栽培 されてお り
,こ
の期 間は適宜潅水 した 外■4mmの降水 があ り, その後の降水 も加 えると全降水 量 は ■oommであった。 その間のBの溶脱量(第13図)の 処理 間差 はホ ウ砂区 を除 き,各 B質
肥料施与区で共 通 の 傾 向 を示 し,沖
積 Ⅱ・低pH区 >沖
積 Ⅱ・高pH区 >黒
ボ ク・低pH区 >黒
ボ ク・高pH区
の順で あった。 しか し,ホ ウ砂区では沖積 Ⅱ・高
pH区
が沖積 Ⅱ・低pH区
よ り溶 脱量 は多かった。 また,B質
肥料別で は ホ ウ砂 区>BM
よ うりん区 ≫
FTE区
の順で,黒
ボ ク・高pH・FTE区
は 対照区 とほぼ同量の溶脱 を示 したに過 ぎなかった。ダイコン栽培跡土壌の
B無
施与層 (下層)の
熱水可溶 性B含
有率 (第40表)は ,沖
積 Ⅱ土壊 で はいずれのB質 肥料施与区で も対照区に比べ著 しく高 くなったが,黒
ボク土壊 で はホウ砂区 を除いて,その増加割 合 は小 さかっ た。 しか し,11月20日には黒 ボ ク土壌 で もいず れの
B質
肥料施与区で も,対
照区 に比べ高 いB含
有率 を示すよ う になった。 また,150日間放置後の黒 ボ ク土壊 の 易動性B合
有率 は各 区で差 力Ⅵヽさく(0.25〜0.57ppm B),移動 しやすい形の ものは少 な くなっていることが うかがわれ る。沖 積
Ⅱ 低
一R
黒ボク 低
一喬
第39表
ダイコンの収量 とホ ウ素吸収量
壊 pH B質肥料 全乾物重
富/ポツト
B合有率 ppm B
B吸収量
μg/ポット 土壊 pH (H20)
27
26
37
86
照 E M 砂 低
対
F T B
ホ ウ
14.2 17.2 17.7 15 7
383 447 660 568
56 54
6.8 沖 積 Il 5.6
文↓
F B
ホ
14.8 11.0 11.6
150
28 29 43 33
414 319 499 500
7.3
73 75
7.1 貝く
T E M*
ウ 砂
低
文↓
F T
B ホ ウ
12.6
155
17 3
122
352 512 432 403
5,4 5.4 5,8 5.5 照
E M 砂
黒 ボ ク 対
F B ホ
Rく
T E
M・
ウ 砂
116
16.4 15,0 13 5
209 426 360 351
6.9 6.9 7.0 6.8 18
26 24 26
*BMよ
うりん烏