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遺族に対する対応

ドキュメント内 福島県立大野病院事件 (ページ 111-115)

(1)厚生労働省医政局の指針

厚生労働省医政局が平成15年9月12日に作成した「診療情報の提供等に関する指 針」(医政発第 0912001 号、文献 91)は、遺族に対する診療情報の提供について、以下 のことを要求している。

○ 医療従事者等は、患者が死亡した際には遅滞なく、遺族に対して、死亡に至るまでの 診療経過、死亡原因等についての診療情報を提供しなければならない。

○ 遺族に対する診療情報の提供に当たっては、3・・・の定めを準用する(注)。

(注)3の定め

<診療情報の提供に関する一般原則>

○ 医療従事者等は、患者等にとって理解を得やすいように、懇切丁寧に診療情報を 提供するよう努めなければならない。

○ 診療情報の提供は、①口頭による説明、②説明文書の交付、③診療記録の開示等 具体的な状況に即した適切な方法により行われなければならない。

(2)国立大学医学部附属病院長会議の提言

国立大学医学部附属病院長会議常置委員会の下におかれた医療安全管理体制問題小委 員会医療事故防止方策の策定に関する作業部会が2001年3月に発表した「医療事故 防止のための安全管理体制の確立に向けて(提言)」(文献 128)は、事故発生時の患者・

家族への対応について、以下のことを要求する。

患者・家族に対して行う説明は、医療側の考えを「理解させる」ために行うのでは なく、患者・家族が自ら「判断」できるようにするために行うものであり、そのため に十分な情報を提供するということである。

(中略)

患者・家族に説明するにあたり踏まえるべきと考えられる一応のポイントを以下に 掲げるが、あくまで参考であって、これに機械的に準拠すれば、即、適切な説明が行 われるというものでは決してない。大事なことは、患者・家族が自ら適切に理解し判 断を下せるために、提供する情報に過不足がないかどうか、伝え方に偏りがないかど うかということであり、こうした観点から検討して見れば、自ずと説明すべき内容も

「見えてくる」はずである。

・重要な事実を省かない。

・因果関係を省かない。

・明快に説明できないことがあれば率直にそのことを伝える。多少とも不明な点があ ることについては断定的な言い方はしない。

・当初の説明と異なる処置、当初の説明を越える処置をした場合はきちんと伝える。

・ミスの事実があれば、結果には影響を与えていないと考えられるものでも、包み隠

さずに伝える。

(3)事実関係

ア 事故当日の家族への説明 (ア) 証拠に表れた事実

① 担当医は、18時か19時頃、ナースセンターの脇にある小さな部屋にて、本 件患者夫、本件患者義父、本件患者義母、本件患者父の4名に対し、「申し訳あり ません。亡くなりました。今蘇生しています。」などと説明した(本件患者夫供述 調書、検甲28号証7~8項)。

② 担当医は、19時30分頃、遺体を手術室から、通常の病室よりも少し広めの 部屋に移し、手術の経過を説明しようと考えたが、家族以外の方らしき人がいた こと、口々に罵声を浴びせられるようなこともあったことから、その場での説明 を諦めた(第11回公判担当医質問調書42~56項)。

③ 担当医は、21時頃、改めて家族への説明を行っている。最初は口頭で説明を 始めたが、本件被害者父より「説明を文章で書いて欲しい」と要求されたことか ら、途中からカルテの空きスペースに内容を書き込みながら説明をしている(本 件患者夫供述調書、検甲28号証12項)。

④カルテに記載された説明内容(検甲16号証)

○ 前置胎盤管理目的に入院・管理、著変(-)、予定帝王切開へ

○ 途中経過のムンテラ不足について謝罪

当方としては、手術室ではスタッフ皆が動き回っている状態、病棟では 血液採取に追われている状態

○ きちんと主治医がムンテラすべきだったと謝罪

○ 予想を遙かに超える出血であった

○ 輸血準備はしていたが、足りず、注文、到着まで待機。

○ 全血輸血(採血をそのまま輸血すること)とGVHD(移植片対宿主病)

の関連

使用するかと〔ママ〕準備中にMAP到着したので、全血は使用しなか った。

○ 何かあったらZ病院の先生を呼ぶ予定だったが、呼ぶタイミングを逸し た

○ 手術記録、ムンテラ内容が記載されたカルテの頁をそれぞれ1部コピー して渡す

⑤第11回公判担当医公判廷質問に表れた説明内容(調書60項)

○ 順調に3000グラムの元気な女の子が生まれた

○ 胎盤は子宮後壁に存在していた

○ 上の方から剥離し、下のほうになったら癒着してきた

○ 出血が多くなって血圧が低下し、準備していた輸血や輸液を投与しても 足りなかったので、他に輸血を注文して、その注文した輸血が届いて血圧 が上昇して、それから子宮の摘出をおこなった

○ 子宮摘出を行っているときに、膀胱が少し傷ついてしまったので、その 修復を行って、膀胱の中に輸液を入れて、膀胱がきちんと治っているかど うか確認するための検査をしようとしたところ、突然不整脈がでて、心肺 蘇生をするような状態になってしまった

⑥本件患者夫供述調書に表れた説明内容(検甲28号証12項)

○ 胎盤をハサミで切ったりはがしていくときに出血が多くなった

⑦本件患者義母供述調書に表れた説明内容(検甲32号証3項)

○ 胎盤の下の方はもっと剥がれにくかったので、はさみを使って切ったら 沢山出血したので、輸血したけど亡くなってしまった

(イ) 判決の認定

「担当医は、午後9時ころ、麻酔医B、看護師とともに、本件患者の遺族に手術 経過を説明した」(判決26頁)

イ 12月26日の説明

12月26日、E院長、担当医、麻酔医B、病院事務長の4名は、被害者夫実家を 訪れて、本件事故の説明をした。

担当医の説明内容については、本件患者義父によると、以下のとおりである(本件 患者義父供述調書(検甲31号証6項)より抜粋)。

○ お腹から子供を取り出した後胎盤が剥がれにくい感じだったので、ハサミを 使って胎盤を剥がした

○ 通常は、はさみとか使わなくても、胎盤というのは、引っ張るだけでとれる

○ 胎盤の下の方を剥がすに従って、出血量が増えてきて、その出血が止まらな かった

○ そのため、輸血をしたものの、血圧が下がって死んでしまった

○ 助手の先生の出血の吸引が下手で出血が湧いてきている状態であれば、出血 が確かに多いと思った

ウ 翌年1月中旬の説明

翌年平成17年1月中旬、E院長及び事務長は、本件患者実家を訪れ、改めて説明 を行っている。

もっとも、本件患者義父供述調書(検甲31号証7項)には、「具体的な内容につい ては、はっきりとした説明がなかった」と記載されている。

エ 病院が作成した説明文書

遺族は、病院から説明を受けたときに、口頭では分からないので、文書で書いたも のをほしいと要望したところ、病院は、平成16年12月26日の担当医と麻酔医B の説明内容と、平成17年1月12日のE院長と事務長の説明内容(同文書によると、

説明相手は本件患者夫、説明場所は大野病院応接室となっており、上記ウの説明とは 別の機会と考えられる。)について文書にしたものを、後日、遺族に提出した。

そのうち、前者の説明文書(12月26日分)で、本件事故にとくに関係する部分 の記載内容は、以下のとおりである。なお、後者(1月12日分)については、事故 調査委員会の開催に関する説明がなされているだけであり、事故の内容に関する説明 はないので、ここでは引用しない。

○平成16年12月26日 担当医(産婦人科)の説明

「第一回帝切、前置胎盤のリスクはあったが、子宮下部横切開創付近(子宮前壁)への胎盤 付着は、横半分のみであったこと、胎盤付着のメインは後壁だったことにより、輸血血液準 備は5単位とし、何かある際は、Z病院のA医師に手伝いに来ていただくことにした」

「胎盤付着部を観察すると、後壁全面が胎盤で覆われた前置胎盤 胎盤用手剥離開始

途中より、後壁下部になるにつれて癒着傾向あり、クーパー(はさみ)にて剥離面を切開、

剥離する状態

終了まで、約15分経過(通常1分くらい)ここまでで出血量は約 5000ml

徐々に血圧低下認め、子宮内の所々よりじわじわ出血あったため、糸で止血操作繰り返すも、

止血せず、子宮後壁側、子宮頸部にタオルガーゼつめて、子宮を手で覆うように圧迫して、

全身状態が落ち着くまで待機へ」

○平成16年12月26日 麻酔医B(麻酔科)の説明 「胎盤剥離開始後により出血が増え、血圧が低下する。

→ 代用血漿、準備してあった濃厚赤血球を急速投与、昇圧剤投与。

準備してあった農厚赤血球〔ママ〕を使い切った後も、出血及びそれに伴う血圧低下が続く。

農厚赤血球〔ママ〕を追加オーダーするも、到着まで1時間以上かかるとのことから、近隣 の病院に問い合わせをするも在庫なし。★

→ 代用血漿、アルブミン製剤、院内在庫の新鮮凍結血漿(FFP)を急速投与。★

昇圧剤を持続投与。

病院職員より血液を採取(8人から計3000ml)

(ただし、新鮮血の使用は移植片対宿主病(GVHD)という極めて救命困難な合併症の危 険性が高いため、日赤からの農厚赤血球〔ママ〕が到着する前にどうしようもなくなって

ドキュメント内 福島県立大野病院事件 (ページ 111-115)

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