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留保 利益水準 と配当 政策の 関係に関 する実 証結果

ドキュメント内 企業のペイアウト政策に関する実証研究 (ページ 32-36)

第 2 章 留 保利益 とペイア ウトの コミット メント

4. 実証分 析

4.2 多重回 帰分析

4.2.1 留保 利益水準 と配当 政策の 関係に関 する実 証結果

前節の分析から本章の仮 説1~3と一致した 結果が得られたが、ペイア ウトに関わる様々 な要因 をコン トロ ール してい ない という 点で 問 題が残 ってい る。4.2 節 では この問 題を考 慮して、多重回帰分析を行 うことにする。最 初 に本章の仮説 1を検証す るために、 業績不 振に直面した企業を対象に ロジット分析を行 っ た。従属変数は Div_dumで あり、本章の仮 説1を支持するのであれば 、留保利益 率 (Retaint -1) が Div_dumに正 の効果を与えると 予想 される。なお推計方法の選 択は Hausman検 定に 依拠しており、検定の結果 、すべての推計

式 ((1)、(2)) ついて固定効果モデルが採択され た。

32

業績不振企業を対象としたロジット分析の結果

2-6 は 、 業 績 不 振 に 直 面 し た 企 業を 対 象 と し て 行っ た ロ ジ ッ ト 分 析 の 結 果を 表 し て い る 。 推計 方 法 の 選 択 は 、hausman検 定 に 基 づ い て お り、( )内 はz値 を 表 し て い る 。変数 の 定 義 は、表21に 提 示 さ れ て い る 。

推計方法 固定効果ロジットモデル

従属変数 Div_dum

(1) (2)

係数 オッズ比 係数 オッズ比

Retaint-1 4.050**

(2.80) 57.379 1.866**

(2.44) 6.466

ROA 21.113**

(2.87) 1.48e+09 25.204***

(6.95) 8.83e+09

Extra 0.534

(0.09) 1.706 3.553

(1.19) 34.920

Extra_dum 0.951**

(2.14) 2.587 0.778**

(2.85) 2.176

Risk 21.462

(1.44) 2.09e+09 4.602

(0.78) 99.673

MtBr 1.436**

(2.16) 4.204 0.429**

(2.39) 1.535

LnSales 1.322**

(2.29) 3.752 0.600**

(2.54) 1.822

CD 0.575

(0.18) 1.777 -2.803

(-1.61) 0.061

Leverage -12.428***

(-3.57) 4.01e-06 -3.693**

(-2.44) 0.025

Financial -2.200

(-0.42) 0.111 2.255

(0.93) 9.537

SOP -0.702

(-1.01) 0.495 0.163

(0.43) 1.178

Year dummy Yes Yes

Market dummy Yes Yes

Industry dummy Yes Yes

Wald統計量 68.96*** 213.82***

N 318 949

***: 1%水準で有意;**: 5%水準で有意;*: 10%水準で有意

推計結果は、表 2-6 に提示され ている。推計 式 (1) から明らかなように、赤字企 業に

おいて Retaint-1の係数は 有意に正 であり、本 章 の予想と一致していた 。こ の結果は、業績

不振時に留保利益率の高い 企業は減配・無配 を 行う可能性が低いことを意 味している。ま

たRetaint-1のオッズ比 は57.379 を示し ており、業績不振時に留保利益率が 1単位上昇した

33 場合、無配・減配を実施し ない確率が無配・減 配 を行う確率よりも約60倍高くなることを 表している。推計式 (2) は業績不振企業のう ち 今期の 1株当たり営業利益 が前期の 1株当 たり配当額を下回る企業を 対象としている。そ の結果は赤字企業の場合と 同様に、Retaint-1

がDiv_dumに対し有意な 正の影響を及ぼし てい た 。以上より業績不振時に留 保利益率を多

く保有する企業は減配・無 配を避けるという 考 えが支持され、本稿の仮 説 1と整合的であ ると解釈できる。

2- 7

配当のコミットメントに関するロジット分析の結果

27 は 、 配 当 の コ ミ ッ ト メ ン ト に 関 す る ロ ジ ッ ト 分 析 の 結 果 を 表 し て い る 。 推 計 方 法 の 選 択 は 、 hausman検 定 に 基 づ い て お り 、( )内 はz値 を 表 し て いる 。 変 数 の 定 義 は 、 表21に 提 示 さ れ てい る 。

推 計 方 法 固 定 効 果 ロ ジ ッ ト モ デ ル

従 属 変 数 Div_dum

(1) (2) (3) (4)

係 数 オ ッ ズ

係 数 オ ッ ズ

係 数 オ ッ ズ

係 数 オ ッ ズ

Retaint -1

1.066

(6.97)*** 2.905 1.017

(6.68)*** 2.764 1.047

(6.89)*** 2.849 0.928

(6.22)*** 2.530 Retaint -1×

Redink_1 1.381

(3.35)*** 3.980 Retaint -1×

Redink_2 1.360

(5.04)*** 3.896 Redink_1 -0.769

(-6.70)*** 0.463 -1.292

(-6.46)*** 0.275

Redink_2 -0.030

(-0.40) 0.971 -0.605

(-4.42)*** 0.546

ROA 19.005

(16.13)*** 1.79e+08 19.027

(16.11)*** 1.83e+08 22.564

(19.56)*** 6.30e+09 22.238

(19.18)*** 4.55e+09

Extra 1.367

(1.21) 3.925 1.700

(1.48) 5.472 1.009

(0.91) 2.743 1.374

(1.21) 3.950 Extra_dum 0.139

(1.87)* 1.149 0.145

(1.95)* 1.156 0.119

(1.60) 1.126 0.131

(1.76)* 1.140

Risk -4.305

(-3.63)*** 0.014 -4.481

(-3.72)*** 0.011 -4.757

(-3.94)*** 0.009 -4.824

(3.96)*** 0.008

MtBr 0.010

(0.29) 1.010 0.008

(0.24) 1.009 0.003

(0.08) 1.003 0.004

(0.11) 1.004 LnSales 0.229

(2.94)*** 1.257 0.223

(2.86)*** 1.251 0.215

(2.78)*** 1.240 0.208

(2.66)*** 1.231

CD 0.628

(1.33) 1.874 0.679

(1.43) 1.973 0.577

(1.21) 1.781 0.608

(1.27) 1.836

***: 1%水準で有意;**: 5%水準で有意;*: 10%水準で有意

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配当のコミットメントに関するロジット分析の結果 (続き )

推 計 方 法 固 定 効 果 ロ ジ ッ ト モ デ ル

従 属 変 数 Div_dum

(1) (2) (3) (4)

係 数 オ ッ ズ

係 数 オ ッ ズ

係 数 オ ッ ズ

係 数 オ ッ ズ

Leverage -2.433

(-5.51)*** 0.088 -2.442

(-5.50)*** 0.087 -2.426

(-5.50)*** 0.088 -2.502

(-5.65)*** 0.082 Financial 1.035

(1.67)* 2.816 0.996

(1.60) 2.708 0.950

(1.54) 2.586 1.009

(1.62) 2.742

SOP 0.004

(0.03) 1.004 0.002

(0.02) 1.002 0.010

(0.08) 1.010 0.017

(0.14) 1.017 Year

dummy Yes Yes Yes Yes

Market

dummy Yes Yes Yes Yes

Industry

dummy Yes Yes Yes Yes

Wald

統 計 量 1615.25*** 1627.38*** 1568.46*** 1595.73***

N 11,408 11,408 11,408 11,408

***: 1%水準で有意;**: 5%水準で有意;*: 10%水準で有意

表 2-7 は、すべてのサン プル企業を対象に Div_dum を 従属変数とした ロジット分析を 行った結果を提示している。Hausman検定の結 果、すべての推計式 ((1)~(4)) ついて固定 効果モデルが採択された。 推計式 (1)と(3) に注目すると Retaint-1と Div_dum の間に有 意 な正の関係が観察されてお り、サンプル企業 全 体として留保利益率の高く なるほど減配・

無配を避ける傾向にあるこ とを示唆している 。推計式 (2) についてみると、業 績不振ダミ ー (Redink_1) の 係 数 は 有 意 に負 で あ り、 業 績不 振 企 業は 減 配・ 無 配を 実 施 する 確 率が 高 いことを意味している。加え て留保利益率と業 績不振ダミーの交差項 (Retaint-1×Redink_1) は1%水準で有意に正を表し、オッズ比は3.980であった。推計式 (4) に関しても推計 式 (2) と同じように、Redink_2 とDiv_dumの間に有 意な負の関係が表れていた。また 推計式 (2) の よ う に 留 保 利 益 率 と 業 績 不 振 ダ ミ ー の 交 差 項 (Retaint-1×Redink_2) の 係 数 も 1%水 準 で 有意に正を示し、オッズ比は 3.896 となって い た。これらの結果から、業 績不振時に留保 利益率の高い企業が減配・ 無配を回避する可 能 性は減配・無配を実施する 可能性よりも約 4 倍高いと解釈できる。よ って本章の仮説 1 を 支持するように、業績不振 時に留保利益を 多く保有する企業は減配・ 無配を実施しない 傾 向にあると判断できる。

35 最後に、留保利益率 (Retaint -1) について検討を加える。推計式 (1)~(4) について Retaint -1

の係数は一貫して有意に正で あった。この結果 は先述した Life-cycle仮説 (DeAngelo et al.,

2006) を支持しているとも解釈 できる。Life-cycle仮説によ れば、成熟段階 に位置している

企業は留保利益を原資とし て配当を支払う可 能 性が高いとされている。本 章では Life-cycle 仮説の可能性をコントロー ルするために、企 業 の成長性を表す代理変数と して 時価・簿価

比率 (MtBr) を推計に加えた。しかしMtBrを加 えても、すべての推計を通 じて 留保利益率

の係数は有意に正を示して いた。また仮に Life-cycle仮説 を支持するのであ れば、MtBrと

Div_dum の間 に負の関係が観察 されると予想さ れる。しかしながら MtBr の係数は有 意性

を満たしておらず 、Life-cycle仮説 が想定する よ うな負の関係はみられなか った。以 上の点 を踏まえると、Life-cycle 仮説が支持される 可 能性は低いと考えられる。

コントロール変数につい ては、Riskの係数は 推計式 (1)~(4) を通して1%水準で有意に マイナスである。この結果 は先行研究と整合 的 で、 キャッシュフローのボ ラティリティが 強 い 企 業 は コ ミ ッ ト メ ン ト の 強 い 配 当 を 支 払 わ な い 側 面 を 表 し て い る (Chay and Suh, 2009; Jagannathan et al., 2000)。またすべて の推 計式を通して LnSalesと Div_dumの間に正 の関係が観察され、大企業 ほど配当を実施す る 可能性が高いという先行研 究と一致した結 果が得られている (DeAngelo et al., 2004; Fama and French, 2001)。

ドキュメント内 企業のペイアウト政策に関する実証研究 (ページ 32-36)