本章においては、調査に基づき会議の活性化に関わる問題点が、 「委 員の自由な意見交換の機会が確保されている・」および、 「委員の自主研 修会が活発に開催されていない」ことの2点ととらえ考察を深める。
1,会議運営の問題点
1)委員の自由な意見交換
間7 委員が自由に意見の交換をする場を設けていますか。
『ハイ』 『イイエ』
の質問に対する回答で、
『ハイ』の回答は、67 教育委員会で回答全体での比率は98.5
%である。
『イイエ』の回答は、1 教育委員会である。
大規模教育委員会は100%の肯定回答である。回答全体は委員が自 由に発言できる機会を確保していることを示す。教育委員会の会議は、
合議制の執行機関であるので構成員である教育委員が自由に意見を述べ られる機会が保証されなければ成立しない。委員が自由に発言しエキス パートである教育長をコントロールする制度の趣旨が生かされているこ
とは評価すべきである。問題は会議運営における議事のすすめ方である。
一一 35 一
議事が一方的に事務局の提案のみで委員会がそれを消極的に審議し決定 するようでは委員の意見が活かされたとはいえない。委員が職務責任を 自覚し議事を審議決定するとともに議案の決定段階で積極的に関わるこ とである。そのために議事順序における 協議 の項または その他 の項で次回の議題の確認をすべきではなかろうか。積極的に意見発表の 機会を確保する姿勢がなければ会議が活性化するとは考えられない。す なわち、行政資料では〔2〕、市町村教育委員会からの回答結果が、会議 では、教育長報告、議案の承認などが多くて討議の時間が不十分とされ ている(表4)。 『会議の在り方』の中で委員の意見発表の機会の確保 は重要なファクターとなるので論を深めたい。教育委員会の活性化1こ関 する調査協力者会議の報告では、教育委員会の会議の運営について「・
・・ ?c事態が常に活発に開催され、会議においては充実した審議が行 われ、そして、それに基づいて適切な意思決定が行われなければならな い。」と述べている。 「活発」は質問、意見発表、動議提出を指すもの と考える。 「充実」は時間を十分に取って、十分な資料に基づいて意見 交換をすることであろう。「適切」は制度の趣旨を踏まえ、役割に基づ いて、権限を行使し、を意味するのであろう。また、教育委員会の活性 化についての通知(2〕で文部省教育助成局長は、教育委員会の運営等と
して「ア.… 今日の様々な教育課題に迅速かっ的確に対応できるよ う、定例会はもとより、臨時会や委員協議会などの方式を積極的に活用 すること。イ.教育委員会の会議においては、教育に関する基本方針の 決定等、長期的、計画的な教育行政の課題に積極的に取り組むこと。」
と通知している。定例の会議は月1回程度の回数で開催されている。臨 時会は会議が適切な権限行使をするには行政事務上数回は必要だろう。
意思疎通と学習のため委員協議会を定例会と同様程度開催すれば長期的 一 36 一
な課題を取り上げ積極的に審議が可能と考えるが、会議回数の増大は委 員にとっても事務局にとっても複雑な問題があると予想される。委員が 関わる会議時間、委員に対する費用弁償、委員が非常勤制度など問題が ある。行政資料では(1〕、会議の状況について、 「あまり活発でない」
「活発でない」を回答した理由として、委員会の会議時間が報告・承認 案件に偏り実質的な論議の機会が少ないとしている。市町村教育委員会
で465、回答全体の32%(表4)が時間の確保ができないとしてい
ることは当然の実態と考える。また前記報告では、その対応として教育 長に事務委任を増やすことなど述べているが、事務委任を増大させるこ
とは委員会の職務権限に問題が生ずる心配がある。一例を上げれば、兵 庫県下人口2万2千の夢前町教育委員会の事務委任の内容を検討すれば、
「学校教育・社会教育の一般方針、学校、公民館などの設置・廃止、1 件5万円以上の財産取得、教員人事の方針、職員の任免の内申、服務の 一般方針、教育機関の長の任免、学校などの敷地の選定、1件5万円以 上の工事の計画、教育委員会規則の改廃、議会の議決を要する議案の意 見の申出、社会教育委員などの委嘱、教員研修の一般方針、児童・生徒 の学校の区域の設定」を除いて、教育長に委任している。審議時間を軽 減するため、これちの重要な事務のどれを教育長に委任するとしても教 育委員会の機能に問題を生ずるのではないだろうか。意見交換の機会の 確保には極めて解決困難な要因があると考えられる。
文部省の教育委員会の活性化事例集「活力ある教育行政を求めて」第 1分冊の教育委員会組織の充実によれば、
・栃木県西方村、 (人口 6,490)の取り組みの報告で、会議の定 例化を取り上げている。具体的展開として、①県と地域の事業を踏まえ て年間行事を作成、②年間10回開催し予想される議題をあげて定例会 一 37 一
に研修内容を組み入れた。極めて大きな改善を実践している。会議の定 例化を今、1995年置行っている実態である。臨時教育審議会で活性
化が指摘されて(1987年)8年後である。
・大津市教育委員会は、人口26万余りで女性委員1名あり委員会で、
改善の取り組みとして、報告事項・議案説明の簡略化をし、協議会を活 用し、会議終了時刻を明示し委員間の討議時間の確保をした。また、会 議の平均時間の2時間5分を長すぎると報告している。その他終了時刻 の明示など会議時間の長さだけでなく議題の内容も改善していることは 評価すべきである。改善前は月2回であったことから以前は会議の時間 が相当浪費されていたと予想できる。
・人口26万の下関市教育委員会では、会議が形式的しマンネリ化して いることから委員会会議は出席者全員のディスカッションの場であるべ
きとして討議を起こし、発展的な改善点を見出したと報告している。会 議で一部の委員のみ活発に活動していた実態があったと予想される。
・兵庫県下人口2万2千の夢前町教育委員会の平成5年度実態では、定 例会の年間開催回数12回、所要時間平均2時間20分、教育長報告年
間平均25.5件、報告内容は学校教育83件、社会教育65件、議会 関係18件、事務局関係41件あり、議事数の平均が1.75件、協議
案件が年間平均2件である。この実態であれば適切な会議時間を1時間30分とすればかなりの整理が必要である。教育長報告は整理できると しても、約2件の議事は1時間近く時間を要する。その上、協議2件あ り、委員長の司会進行の技術と委員の協力意識が求められると考えられ る。これら会議所要時間に偏りがある中で委員の自由な意見交換の機会 を設定することは困難と考える。
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問7の回答は委員の自由な意見交換の機会が確保されているとされて いるが、教育委員会制度の趣旨である民意の吸収・伝達・実現のために はより充実した意見交換の機会が設定されなければならないのではない だろうか。委員が必要であると認識すればたあらわず動議の提出をし、
積極的に議案決定に関わることである。
教育委員会が本来の機能を果たす道筋は、教育委員会の会議において 委員が民意を確実に生かすことにある。そのために委員が自由に意見を 述べまた、必要と考えるだけの機会と時間が十分に確保されなければ活 性化への活力には到底ならないと考える。
2)委員の自主研修会の開催
問15 あなたの教育委員会で行政上の課題のために、独自 に教育委員の研修会を開いたことがありますか。
『 ハイ 』 『 イイエ 』
問 15の質問の答えで、
『ハイ』の回答は、42 委員会で全体の比率は61.7%である。
『イイエ』の回答は、25 委員会で、比率は36.7%である。
規模別にみると比較的小規模委員会が自主研修会を開催している。課 題の増大が理由か、課題の理解の困難性があることが理由か、または、
課題に取り組む姿勢に差があるのか不明である。市町村教育委員会にと 一 39 一一
っての研修の必要性は、会議における委員の自由な発言の機会の設定に 次いで重要な課題である。臨時教育審議会第2次答申では、 「… レ イマンである教育委員が教育行政の運営に関して、適切な判断と決定を 行うたあには、現行制度の理念、当面する教育及び教育行政の諸課題に 関する深い理解と知識や教育行政の当事者としての自覚が必要である。
このたあ教育委員の研修のあり方などについて改善・充実を図る必要が ある。」と述べ、適切な判断および決定をするための制度の理念、教育
・教育行政への理解と知識を求めている。また協ヵ者会議の報告では、
「… 今後、新任の教育委員に対する研修実施や研修内容の充実につ いて一層の改善を進める必要がある。」と述べ、新任委員を対象に取り 上げ、研修会開催と内容の充実を求めている。行政調査資料によれば【1
〕、市町村教育委員会の活性化に関する都道府県教育委員会の取り組み 状況として、市町村教育委員の研修会の実施は、40.4%(図12)
ととらえている。また、組織運営の改善・充実について、市町村教育委 員会が今後、カを入れていきたいこととして「会議の充実」をあげた市 町村教育委員会の数は11で、6.6%である(表5)。その内容は、
実質的な論議の確保、委員と:事務局との連携等を上げている。文部省の 実施する研修会は新任委員に対して1年1回、1泊2日を開催している。
平成5年度実施した内容は、第1日目午前は開会行事、午後は、基調講 演と事例発表、第2日目午前にパネルディスカッションまたは分科会と なっている。講演の講師は文部省の関係者、事例発表はほとんどが教育 長で、パネラーは大学教授、文部省関係者とその他教育長がなっていて、
教育委員による問題提起は全くない。基調講演は文部省の担当者の説明 解説で、分科会などの事例発表は教育長、指導主事が多く委員の発表は ない。新任委員にとっては先輩委員の体験や提言を求めたいのではない 一 40 一