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産業構造と雇用機会

第 3 章 貧困に影響を与えている要因

3.1 国内要因

3.1.2 産業構造と雇用機会

1994

年から

2004

年にかけて、カンボジアは高度経済成長を享受した。成長の原動力は、工

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業セクター、特に、衣料である。衣料セクターの

GDP

への貢献は、2.0%から

45.6%と大き

く拡大した。また、GDP シェアは

35%前後と変化は見られないものの、サービスセクター

も、GDPへの貢献度を

2.6%から 45.6%に増加させた。他方、農業セクターは、GDP

シェア および成長率ともに低下させていることから、GPDへの貢献度も

49.3%からマイナス 8.7%

に激減した。

表 3-2:主要セクターによる成長への貢献度(1994-2004年)

GDPシェア(%) 年成長率(%) GDP への貢献度(%)*

セクター

1994 2004 1994 2004 1994 2004

農業 45.9 30.9 9.9 -2.0 49.3 -8.7

工業 13.6 28.9 14.2 16.1 20.0 56.3

製造業 8.0 21.8 9.0 17.4 7.9 45.3

衣料 0.9 16.3 25.1 24.9 2.0 45.6

アグリビジネス 5.2 3.3 8.2 -3.4 4.7 -1.6

サービス 35.4 34.4 0.6 9.2 2.6 40.7

ホテル・レストラン 2.6 4.7 19.5 23.6 5.0 12.5

GDP 100.0 100.0 9.2 7.7 100.0 100.0

(出所)World Bank, “Cambodia Halving Poverty by 2015? Poverty Assessment 2006” (2006), p.57, Table 4.1

(注)GDPへの貢献度は、各年のGDP成長率を100%として、年成長率に前年のGDPシェアを乗じて算 定している。

雇用を見ると、農業セクターは、依然として、カンボジアの労働力の

70%以上を吸収する

重要な産業である。特に、農村部においては、およそ

85%の労働力が、生産性の低い、自

給自足的農業に従事している。農業セクター全体として、カンボジア経済に貢献する力を 低下させていることから、農業以外に生計手段を持たない農村貧困層が、貧困から抜け出 すことを困難にしている。

他方、都市部の労働人口は、農村の労働人口に比べて、より高い収入を得られる工業ある いはサービスセクターにおける雇用機会がある。都市部の労働力の

80%以上が、工業ある

いはサービスセクターに従事しており、都市部における貧困者比率は農村部に比してかな り低い水準である。

郡レベルでの雇用と貧困の関係に関する詳細な分析は行われていないが、雇用機会が貧困 の水準に密接に関係していることが伺われる。例えば、最も貧困率の低いプノンペンでは、

工業およびサービスセクターに従事している割合が最も高い。また、貧困率が高い

Tonle Sap

部や高原/山岳部の州においては、およそ

80%の労働人口が農業に従事している。

また、カンボジアにおいて、工業およびサービスセクターにおける雇用機会は限定的であ るため、雇用機会の地域間格差が世帯間の不平等の原因となっている。そのため、政府は、

長期的に、農業に従事している労働力をより付加価値の高い製造業やサービスセクターに 移行させるための取組みを行っている。

「2008年国勢調査」によれば、前回の国勢調査が行われた

1998

年時点と比べて、都市化率

1998

19.1%から 23.28%に拡大している。これは、都市部における自然増に加えて、

農村部から都市部への人口流入が要因として挙げられる。その結果、カンボジアでは、公 的な「都市部」の指定地域が拡大された18。そうした国内人口移動は、都市部における労働 市場と都市貧困に影響を及ぼしているものと推察される。

表 3-3:セクター別雇用シェア(2008年)

(%)

コード 貧困者比率(2004年) 1次産業 2次産業 3次産業

- カンボジア 4.6 72.2 8.6 19.2

- 都市部 24.73 14.0 25.3 60.7

- 農村部 39.18 84.9 4.9 10.2

プノンペン

12 Phnom Penh 4.6 5.3 32.6 62.1

平野部

03 Kampong Cham 37.04 83.7 3.8 12.5

08 Kandal 22.24 61.6 19.2 19.2

14 Prey Veng 37.20 88.7 2.4 8.9

20 Svay Rieng 35.93 85.7 3.8 10.5

21 Takeo 27.71 87.6 3.8 8.7

Tonle Sap

01 Banteay Meanchey 37.15 70.1 7.1 22.8

02 Battambang 33.69 76.6 5.0 18.4

06 Kampong Thom 52.40 86.3 2.5 11.2

17 Siem Reap 51.84 72.9 6.3 20.8

04 Kampong Chhnang 82.4 4.8 12.9

15 Pursat 39.57

83.8 2.5 13.6

海岸部

07 Kampot 29.96 86.1 2.7 11.2

18 Preah Sihanouk 47.1 14.9 38.0

23 Kep 78.9 4.5 16.6

09 Koh Kong

23.18

63.6 6.9 29.5

高原/山岳部

05 Kampong Speu 57.22 81.5 9.0 9.5

10 Kratie 82.2 3.7 14.1

11 Mondul Kiri 77.9 4.5 17.6

13 Preah Vihear 85.6 1.9 12.5

16 Ratanak Kiri 85.0 2.6 12.4

19 Stung Treng 79.8 3.5 16.7

22 Otdar Meanchey 81.3 3.0 15.7

24 Pailin

46.11

70.3 4.8 24.9

(出所)Ministry of Planning National Institute of Statistics, “General Population Census of Cambodia 2008” (2010)

(注1)第1次産業:農業、林業、漁業

2次産業:鉱工業、製造業、電気、ガス、水道、下水、廃棄物処理、建設等

3次産業:卸売業、小売業、運輸・倉庫、ホテル・飲食店、情報・通信、金融・保険、不動産、

行政、社会保障、教育、保健、その他サービス業

(注2)都市部の貧困者比率は、プノンペンを除く、その他の都市部の貧困者比率

18 カンボジアでは、コミューンの人口統計上の特性により「都市部」を定義している。

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