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第 3 章 貧困に影響を与えている要因

3.2 地政学的要因

3.2.1

地雷と

ERW

2

章で述べたとおり、地雷および

ERW

は、人的被害だけでなく、貧困の発生に関わる問 題に密接に関連した負の社会経済的影響を及ぼしている。

L1S 2002

によれば、地雷および

ERW

は、地雷・ERW汚染地域に居住している人々の生計

に対し、深刻な影響を与えている。表 3-4は、L1S 2002で、地雷・ERW汚染地域に住民を 対象に行った、地雷の影響に関する住民の意識調査の結果をとりまとめたものである。人々 にとって、最も深刻な問題は、地雷/ERWの存在によって農地や農業生産へのアクセスが制 約を受けていることである。同時に、農業生産を制約されている人々は、汚染地区におい て食料の採集を行わなければならない状態に追い込まれており、地雷・ERWの犠牲者とな

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る危険にさらされている。さらに、生計手段が欠如していることから、子どもを含め、人々 は地雷や

ERW

をくず鉄として売って収入を得ようとして、誤って被害を受ける危険が生じ ている。

表 3-4:村における地雷・ERWの社会経済インパクト(2002年)

社会経済インパクト 合計 非常に深刻 深刻 それほど深刻ではない 十分な住宅用地がない 1,006 (61.3%) 362 (22.0%) 399 (24.3%) 245 (14.9%) 十分な農地がない 1,046 (85.7%) 767 (46.7%) 444 (27.0%) 194 (11.8%) 人的被害が多すぎる 1,283 (78.2%) 243 (14.8%) 258 (15.7%) 782 (47.6%) 家畜の損失 929 (56.6%) 55 (3.3%) 172 (14.8%) 701 (42.7%) 水へのアクセスが困難である 790 (48.1%) 47 (2.8%) 112 (6.8%) 631 (38.4%) 採集活動への影響 1,201 (73.2%) 96 (5.8%) 215 (13.3%) 890 (54.2%)

(出所)Kingdom of Cambodia and Cambodian Mine Action Centre, “Five-Year Strategic Plan 2010-2014”, p.4, Table 2.

これらより、地雷除去や不発弾の撤去は、被害のリスクおよび汚染地区の貧困リスクを軽 減・排除するに当って、重要な課題となっている。カンボジア政府は、カンボジア地雷処 理庁(CMAA:Cambodian Mine Action Authority)を

2000

年に設立し、こうした課題に取組 んでいる。また、地雷除去は、NSDPおよび

CMDG

にもその目標として掲げられている。

CMAC

を含む、地雷除去実施機関は、技術調査、除去、地域住民に対するリスク教育など の活動を熱心に行っている。

1992

年から

2008

年の間に、地雷および不発弾が除去された面 積は、476.50 平方キロメートルに上る。また、地雷除去活動により、同期間において、80 万個以上の対人地雷(APMs:

anti-personnel mines)および 1.9

万個以上の対戦車地雷(ATMs:

anti-tank mines)が撤去された。また、 1992

年以降に解体された不発弾は、

170

万個に上る。

表 3-5:カンボジアにおける地雷処理の達成状況(1992-2008)

成果 CMAC RCAF MAG HALO 合計 除去面積(km2 227.37 170.64 26.43 52.06 476.50 対人地雷の処理数 404,523 161,636 47,405 200,634 814,198 対戦車地雷の処理数 7,657 8,337 585 2,530 19,109 不発弾の処理数 1,370,028 100,168 140,317 130,318 1,740,831

(出所)Kingdom of Cambodia and Cambodian Mine Action Centre, “Five-Year Strategic Plan 2010-2014”, p.17 Table 4.

(注) RCAF:カンボジア王国軍(Royal Comabodia Armer Force MAG:Mine Advisorty Group。地雷除去を専門とするNGO HALOHALO Trust。英国に本部を置くNGO

(出所)Cambodian Mine Action Center, “Annual Report 2008” (2008), p.1, Figure 1

図 3-4:カンボジアにおける地雷・ERW汚染マップ(2008年)

地雷除去および不発弾による正のインパクトとしては、多くの人々が再定住や生産活動に 利用できる土地へのアクセスを得られるようになったことや、地雷や不発弾の爆発により 被害者となることが防止されたことが上げられる。CMAC の報告書19によれば、CMAC は

およそ

4,500

の地雷原における除去を行い、地方政府を通じて人々に土地を引き渡した。こ

れにより、地雷除去の直接的な便益として、117,900以上の世帯が生計のための安全な土地 を手に入れることができ、

138,800

人の学生が安全に通学できるようになった。さらに、

500

万世帯以上が、地雷除去のプロセスにおいて間接的な便益を受けている。

しかしながら、カンボジアにおいては、依然として汚染が疑われる土地の

90%が残ってお

り、地雷除去および不発弾処理の継続的な取組みが、貧困削減の重要な課題の一つとなっ ている。

3.2.2

自然災害

カンボジアにおいては、国民の大多数が天水農業に依存し、季節性の洪水氾濫を受けやす

19 Cambodia Mine Action Centre, “Ten Years: Achievement and Perspective: 2000-2009-2014”, p.7

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い河川などの地域に居住しているため、特に、貧困層は自然災害に対して脆弱である。

2000

年に発生した大規模な洪水は、カンボジア史上、最も甚大な被害をもたらしたと言われて おり、コメを含む農業生産や農村インフラ、家屋に損害を与え、全体で

44.4

万ヘクタール、

すなわちほとんどの州の半数以上の農地が影響を受けたと見られている。

また、旱魃、凶作および自然火事などの自然災害も、農村貧困層の生計に影響を及ぼして いる。

貧困層は、こうした自然災害による損害を緩和する、また、損害に対応する能力に乏しい ことから、自然災害によって更に深刻な貧困状況に陥るリスク、脆弱性が高い。