7−1 原材料受入工程
原材料のメタル材は、協力企業から所定の寸法に切断した状態で納入される。物流と材 料取りについて改善を提案する。
7−1−1 物流改善
本工程には、次の物流上の問題点があり改善が必要である。
(1) 材料は倉庫に入庫、一時保管され、プレス職場に出庫する。
材料倉庫とプレス職場は距離があり、物流に難がある。
(2) 納入荷姿は木箱詰めである。したがい開梱作業が必要である。
(3) 内部のメタル材には、防錆油が過剰に塗布されている。プレスの初工程では一枚一 枚防錆油を拭き取る必要がある。
1) 材料の直納化
材料の受入れ場所を、プレス職場とし、協力企業に直納させる。
実施の前提条件として、JIT(必要なときに必要なものを必要数だけ納入させる)の考 えに基ずく調達体制が必要であるが、材料倉庫が縮小できるし、材料入出庫に関する 運搬工数が削減できて効果が大きい。
2) 業者間通い箱の設置
頑丈な木箱には、ふたが、しっかりと釘付けされ、内部は油付けである。これは材料 を長期に保管することを前提にした梱包荷姿である。
しかし現代は JIT の時代である。材料を長期に保管しない対策を別途処置することと し、材料をすぐ使える状態で納入させるべきである。したがって協力企業の納品には 通い箱を使用する事とし、木箱梱包をやめるべきである。
昨今の通い箱は、規格化、軽量化され使いやすくなっている。さらに折りたたみが 可能なものがあり、運搬・保管スペースが従来の1/4に縮小できるものがあり、物流コ スト低減と流通の合理化に役立っている。木箱梱包から通い箱になれば、納入時毎回 製作していた木箱梱包費が削減され、かつ社内の開梱作業がなくなるなど、コスト削 減に大きな効果がある。図7−1−1に折りたたみ通い箱(コンテナ)の一例を、図 7−1−2にその専用台車を示す。
3) 防錆油塗布の廃止
必要なときに必要数だけ納入させ、かつ材料をプレス職場に直納させる様になれば材
料保管のリードタイムは大幅に短縮されるので、過剰な防錆油の塗布は不要でなる。
これにより、協力企業側の過剰な塗布作業、当該公司側のプレス工程で実施している 一枚一枚防錆油を拭き取る作業が不要となる。
図7−1−1 折りたたみ通い箱の一例
図7−1−2 折りたたみコンテナの専用台車
7−1−2 材料の切断しろの改善
現状の材料には切断代が付いており、プレス工程で所定の寸法に仕上げている。しかし、
協力企業でも長尺のメタル材から納入寸法に切断しており、この作業は、双方で重複して 作業している事になる。関係者は、この重複して作業する理由として、主とし長尺のメタ ル材から納入寸法に切断するときの長さ決めの精度が悪いことを上げている。
これらは、切断時の寸法決め治具や、切断機のストッパーをつける等の対策により切断寸 法の工程能力を向上させることが可能と考えられるので、当該公司と協力企業と協力して 切断しろの改善を推進するよう提案したい。
7−2 機械加工工程(カット・プレス)
当該公司の機械加工職場は、プレス職場、機械加工職場、研削職場に分かれており、典 型的な Job shop 型の生産方式である。生産数量から見てライン生産方式に変換する必要が ある。また各工程のサイクルタイムが短く、正味切削時間より付帯作業時間の比率が多い のが特色といえる。
したがって本工程の近代化には、しっかりとした IE(Industrial Engineering)による 作業研究にもとづき改善を進めないと効果が得にくい。本項では、先ず作業効率化の近代 的な進め方を説明し、続いて個別事項についての改善案を提案することにする。
7−2−1 作業効率化の近代的手法
一般に、生産現場で消費される生産時間は、基本的に必要な時間(有効時間)と不適切 な製品設計や非効率な作業方法によって創生される余計時間および生産計画のまずさや作 業者の技能、経験の不足によって生じる無効時間に分けられるが、作業の効率化はこの中 の余計時間と無効時間をいかに削減、除去するかの活動である。
1)作業効率化の阻害要因
上記でのべた余計時間と無効時間を合わせたものを非有効時間と呼び、その発生要因 は以下のようなものがある。それぞれの要因に対して分析と改善が必要である。
(1) 製品設計に起因するもの
これは必要以上に厳しい公差や精度などに伴って発生する余計時間である。
(2) 作業方法に起因するもの
不都合な工程の設定、不適切な設備の選定、間違った作業者配置、不適当な作業配 分、不適当な作業動作などがある。
(3) 機械・設備の管理、運用に関するもの
機械設備の故障による停止、日程計画の不備からくる作業待ち時間、ラインバラン スの悪さからくる手待ち時間などがある。
(4) 作業者の技能・意欲に起因するもの
加工不良、ペースダウン、怠慢、欠勤など形で現れる無効時間である。
2)無理・無駄(ロス)の排除
次の改善活動では、作業効率化の阻害要因を別の呼び方で強調している。
(1) TPM活動の「設備の6大ロス」
TPM(Total Productive Maintenance)活動では、設備の有効稼動を阻害する要因 として次の6つをあげている。
a) 故障ロス(設備停止)
b) 段取りロス(段取と調整による不稼動)
c) 工具交換ロス(工具寿命)
d) チョコ停ロス(空転させる、チョクチョク停止)
e) 速度ロス(速度低下)
f) 不良ロス(不良品をつくるロス)
(2) JITにおける「生産の7大ロス」
JIT(Just In Time)の活動では、次の7つの無駄の追放を掲げている。
a) 作り過ぎの無駄(生産計画)
b) 在庫の無駄(生産方式)
c) 運搬の無駄(レイアウト)
d) 不良を作る無駄
e) 加工の無駄(不必要な部位の加工)
f) 動作の無駄(非効率な作業内容)
g) 手待ちの無駄(作業バランス)
3)方法改善手法(M.E. Method Engineering)
生産システムに存在する問題によってどのような阻害要因が発生しているか、またそ の問題がどのような原因により引き起こされているかを明確にする手法として方法改 善手法(M.E. Method Engineering)がある。
方法改善手法(M.E. Method Engineering)では次の手順により問題点の発見〜現状 分析、改善案の作成を行う。
(1) 問題現象の発見
対象とする生産システムに関する情報を収集し問題を一覧表にまとめる。また問題 ごとに技術的にどの程度まで解決可能か、また経済的に意味があるかを検討する。
(2) 現状分析
問題あるいは現象が発見されたら、さらに詳細な情報を集め、これらを分類・計量・
評価して現状を把握する必要がある。このために工程分析や動作分析、稼動分析な どの手法がある。
(3) 真の問題点の抽出
上記で摘出された現状から本質的な問題かどうかの検討を行う。本質的な問題でな い場合は、(1)の見直しをする。
(4) 改善の方向付け
抽出された問題点について生産システムのどの部分(レベル)を改善するか検討す る。一般に次の6つのレベルが上げられるが下に行くほど改善の規模が大きくなる。
a) 動作レベル
b) 作業レベル c) 治工具レベル d) 設備レベル e) レイアウトレベル f) 設計レベル
改善のレベルが決まれば、次に何を目標にして改善を行うか、改善の方向付けをす る。改善案の方向は次の4目標に集約されるが、その優先順位は方針的にきめる。
競争の激しい昨今では経費と品質が優先されるであろう。
a) 疲労の軽減…楽に b) 品質の向上…良く c) 時間の短縮…早く d) 経費の節減…安く (5) 制約条件の調査
次に改善案の制約条件・評価条件について調査を行う。複数の代替改善案に対する 評価基準が必要である。
(6) 改善案の作成・評価・選定
ここで改善案の作成を行う。(2)で行った現状分析は現状を肯定して分析・記録を行 ったが、ここでは、全てを否定、あるいは本来の「目的・機能」に立ち返って考慮 すると改善案を導きやすい。一般的に5W2H、ECRSの原則などの手法を使う。
(7) 改善計画の立案
選択された改善案について実施計画を作成する。
(8) 改善計画の実施
4)M.E.における各種原則と改善着眼点
上記改善の実施計画立案に際しては、次の原則を改善着眼点として実施する。
(1) 動作経済の原則
動作経済の原則とは、作業に於ける人的資源の有効活用に関する原則で、人間のエ ネルギーを無駄なく有効な作業へ転換するために無駄・むら・無理のない作業を実 現しようという経験的法則である。4つの基本原則と各基本原則を具体化するため の改善着眼点としてまとめられている。
a) 仕事をするときは両手を常に同時に使うこと。
手の動きを観察する。
① 両手は各動作を、同時に始めて同時に終わるようにする。
② 両手の動作は、同時に反対方向に、しかも対称的経路になるようにする。
③ 対象物を長時間保持するには保持具を使う。
④ 簡単な、または力を要する作業には、足を使う器具を利用する。