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生活 (1)日常生活

- 6 - 新潟焼山(1974 年)

3.1  生活 (1)日常生活

日常生活において特に大きな影響として挙げられるのが、火山灰の除去作業であった。火山灰 は放置すると風や自動車の走行によって空中に舞い上がるため、こまめに除去しなければならな い。散水によって除去するために水道の使用量が増大した。降灰除去作業では、島原市シルバー 人材センターのお年寄り達が活躍した。シルバー人材センターの契約金額の内、3分の

1

以上は 屋外での火山灰の除去費用であった。

また、降灰のために屋外に洗濯物を干せないこともしばしばあり、家庭では室内に干したりあ るいは乾燥機の使用などの対策をせざるを得なかった。その他、ガス湯沸かし器、空調機、自動 車、カメラなどのセンサーに火山灰が付着するために誤作動や空気取り込み口の目づまり、モー ターなどの回転部の故障が生じた。また、火山灰の堆積により太陽熱給湯機の能力が低下した。

島原市では、屋外の公衆電話機の故障が増えた。故障は、電話機内に入り込んだ火山灰がテレフ ォンカードやコインを読みとるセンサーに付着して起こる。これに対しては

NTT

長崎支店は島 原半島内

8

箇所に、電話機内に送風し火山灰の侵入を防ぐ仕組みをもつ「ファン付き公衆電話 機」を試験的に導入した。桜島の火山灰による電話機のトラブルのため

NTT

鹿児島支店が開発 したもので、

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万円程度コスト高になるが、故障の頻度は減少し、その効果が確認された。小 中学校、高等学校などの教育施設では、降灰対策として空調機の整備、プール上屋の建設、プー ルクリーナーの整備、グランド等の降灰除去、散水設備の整備などがなされた。

- 11 -  (2)

住宅面では、火山灰の侵入を防ぐために窓を開けられないことが大きな問題となった。火山灰 は人の出入りや小さな隙間から家の中に入り込み部屋の中をざらつかせ、これによって電気製品 が故障するなどの影響も出た。また、屋根の雨どいが火山灰の重さによって曲がったり、詰まっ て雨水が流れない状況も出た。雨どいの清掃は素人には危険であるため専門の業者に依頼する場 合もあり、負担増の1つとなったようである。シルバー人材センターは当初、雨どいに詰まった 火山灰の除去を行っていたが、危険ということで中止となった。

(3)交通

交通面では、火砕流の発生によって、大量の降灰で視界が不良となったために道路が通行止め になったり、あるいは徐行を強いられたりする影響が出た。火砕流の発生によって県道愛野―島 原線の下折橋町〜北千本木町が度々通行止めになり、国道

251

号、国道

57

号も一時閉鎖された。

また、路面に積もった火山灰によってスリップ事故につながったり、あるいはバイクや自転車な どで転倒したりすることもあった。このためバイクや自転車に乗る人が減少した。行政は降灰が あるごとにロードスイパー、散水車によって道路の降灰の除去を行った。火山灰による信号機、

遮断機などの誤作動及び車両のエンジン故障もあったため、鹿児島や阿蘇の降灰対策を基に漏電 対策や除去対策が行われた。

島原警察署や島原地区交通安全協会などは自動車が巻き上げる火山灰によって沿道の歩行者や 作業をしている人達が迷惑せずにすむよう、ドライバーヘスピードを控えた思いやりのある気配 り運転を心がけてもらおうとチラシを作り「ゆっくり走ろう気配り島原」キャンペーンをした。

3.2

健康

火山灰は、生活環境を悪化させるだけでなく皮膚粘膜に付着し刺激するなどの健康への影響を 生じる。火山灰は粒径が小さいために呼吸器系の奥まで侵入し、より重度な障害をもたらす危険 性がある。図

4

は島原市保健衛生課が行った普賢岳噴火災害と健康対策に関するアンケートの集 計結果の市民配布用のチラシである。これを見ると、特に眼の症状・喉の症状で

6

割以上の人が

「噴火後に悪くなった」と訴えている。症状の主なものとして、「眼が痛い・ころころする」、

「喉がいがいがする、声がかすれる」、「咳、たんがでる」などが挙げられている。この項目は、

火山灰が皮膚粘膜や呼吸器系に付着したことによる影響が大きいと考えられる。これに対する健 康対策としては、「眼鏡やゴーグルの着用」、「耳まで隠れるような帽子の着用」、「マスクの 使用」、「うがいの励行」などが挙げられている。噴火当初は、火山灰に対して多くの人が防御 対策を行っていたが、噴火活動の長期化とともに、対策をしている人は少なくなっていったよう である。この原因としては、火山灰に対する慣れや夏期の暑さの中でのマスクや帽子の着用が苦 痛なためとも考えられる。また、雲仙普賢岳噴火災害の健康影響調査は、長崎大学医学部を中心 に詳しい調査が行われている。

出典:⑥高橋和雄・荒巻博志(1994):降灰が市民生活に及ぼす影響について

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噴火以降死亡者数が増加する地域は富士山東麓の東西方向では、降灰量の多い西部の地区である。

ところが、南北方向では降灰量の減少する御殿場市からその南方の裾野市にかけての地区で死亡 者は増加する。この理由として菊池(1989)は被災地の住民が降灰がほとんど無かった現在の裾 野市方面に移動し当地で死亡したためと推定した。

2)家屋・農作物への影響

御殿場市史編纂委員会(1981)によれば宝永スコリアの降灰量と家屋や農作物の被害との関係は 以下の通りである。火山灰が

1m

以上堆積した地区では家屋の多くが倒壊した。このうち、火山 灰が

3m

余り堆積した須走村では

75

軒の家屋のうち

38

軒が倒壊し、残りの

37

軒が火山レキの熱 で焼失した。火山灰が

15cm

以上堆積した農地では翌年の収穫が皆無であり、30cm以下の地区で も復興の目途がたつのに

10

年を要した。さらに、50cm〜1m堆積した農地では生産力が噴火前の レベルに回復するのに

15

45

年かかり、

2m

余り堆積した柴怒田村では

98

年後の

1805

年でも、

復旧した農地は噴火前の

23

%にしかすぎなかった。この他、山や谷に堆積した火山灰は雨と共 に酒匂川をはじめとする大小の河川に流入して洪水が頻発したため、足柄平野をはじめとする下 流域では土砂による農地の埋積などの被害が起きた。このような洪水は噴火後

10

年以上の間続 いた。

出典:⑩宮地直道

(1993)

:富士火山

1707

年噴火の推移と噴出物の特徴

- 13 -  a.

ライト兄弟による人類初の動力飛行は

1903

年に行われた。その約

40

年後の

1944

年、イタリ ア・ベスビオ火山近傍の飛行場で火山灰による世界最初の大規模航空機災害が記録されている。

(Lloyd,1990)。この時の被害は、火山灰が機場に堆積し機体表面のガラス部分に傷がつき、

操舵面(繊維製)は熱で焼け落ち機体尾部は火山灰の重量で接地する、というもので、結局駐機 中の

B-25

型機

88

機全機が廃棄処分にされた。

その後外国では

36

年間火山灰による大規模航空機災害は報告されなかったが、1980年の米国・

セントヘレンズ火山噴火以降、堰を切ったように火山灰被害が報告され始め、爾来、今日に至る 十余年間は被害報告が相次いでいる(表

12.2)。一方、日本国内においては 1973

年以後時折被 害が報告されているが、ウィンドシールド(windshield:操縦室前部の風防ガラス)損傷が主た る被害となっている(表

12.3)。

火山灰による航空機災害の中で特筆すべきは、1982年インドネシア・ガルングン火山噴火に 伴い発生した英国航空

B747

型機全エンジン停止事故である。この事故は飛行中に全エンジンが 停止するという、B747型機運航史上でも初めてのきわめて特異な事故であった。英国航空機は 満身創痍の状態となったが、機長らの懸命の操縦が奏効しエンジンが始動、かろうじてジャカル タ航空に緊急着陸している。だがその

3

週間後にもシンガポール航空

B747

型機が同じくガルン グン火山の火山灰に遭遇し、

4

基のうち

3

基のエンジンが停止、うち

1

基だけが始動し、結局

2

基のエンジンでこの時も幸いジャカルタ航空に無事緊急着陸している。

これらの事件は死者・けが人こそ出なかったものの関係車を震撼させ、同時に航空機が火山灰 に対し無力であることを世界の関係者に認識させた。

ICAO

International Civil Aviation

- 14 - 

出典:⑪小野寺三郎

(1997)

:火山活動と航空機の運行

- 15 -  6-2-3

人口林地は有珠山の中腹〜山麓以遠に分布していたが、その大部分はトドマツ及びカラマツ 造林地で、ほかにアカエゾマツなどが植裁されていた。

1977

78

年の噴火に伴う森林被害面積

11300ha

のうち天然生林を除く

44%、5000ha

が人工林の被害であった。これらの被害は降灰深

1cm

以上の地域で見られたもので、樹種別には堆積深の大小にかかわらず、カラマツの被灰によ る被害が最も激しく、ついでトドマツ、アカエゾマツの順となった。カラマツでは降灰付着によ る幹の倒伏折損、湾曲倒伏が多く見られ、ほかに葉の変色落葉、枯死などが著しく、これ対しト ドマツでは幹折れや湾曲倒伏に比べ、火山灰付着による枝葉の枯死が顕著であった。アカエゾマ ツは樹冠部に降灰が付着堆積したものの、幹の湾曲倒伏はトドマツより少ないなど、全体として 火山灰被着の被害に対し最も強い抵抗性を示した(表

6.2

参照)。

被害は林齢

35

年(樹高

17m、胸高直径 29cm)の樹木にも発生したが、全体に林齢が高いほど