• 検索結果がありません。

2.6.6 毒性試験の概要文

2.6.6.6 生殖発生毒性試験

2.6.6.6.1 受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験

2.6.6.6.1.1 ラットを用いた受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験

[資料番号:4.2.3.5.1-1,試験番号:TOX8562]

雌雄ラットの受胎能及び着床までの初期胚発生に対する影響を評価するために,SD ラッ トの雌雄各24例に,カナグリフロジン水和物の4,20及び100 mg/kg/日(無水物換算)を雄 は交配前4週から雌の受胎確認まで,雌は交配前2週から妊娠7日(妊娠0日=交尾成立日)

まで反復経口投与した.対照群には0.5% HPMCを投与した.検査項目は,一般状態,体重,

摂餌量,性周期検査,器官重量,剖検及び精子検査とし,雌は妊娠14日に帝王切開し,雄は 雌の受胎が確定した時点で剖検した[2.6.7.12A].

いずれの投薬群においても死亡例はなく,100 mg/kg/日群では軟便が認められた.雄では4

及び20 mg/kg/日群でも軽度に体重増加量が低値であったが,100 mg/kg/日群では投与期間を

通じて体重及び体重増加量の低値が持続して認められたことから毒性と判断した.雌では

100 mg/kg/日群で妊娠0~7日の体重増加量が低値であったが,妊娠8~13日の体重増加量に

は差がなく,妊娠子宮重量を除いた補正体重増加量にも差が認められなかったため,投薬に よる影響ではないと判断した.また,すべての投薬群で薬理作用に基づく変化として摂餌量 の増加が投与期間を通じて認められた.

剖検では,投薬に起因した変化として,すべての投薬群の雄で用量増加に応じた盲腸・結 腸の膨満及び膀胱拡張の増加がみられたが,雌ではみられなかった.これらの所見について

は SGLT1 の阻害に基づく消化管内でのグルコースの異常発酵に起因した変化と考えられる

が,20 mg/kg/日以下の用量では軟便,下痢に至っていないことから,毒性学的意義は低いと 判断した.

100 mg/kg/日群の雌では妊娠黄体数,着床数及び生存胚数に統計学的に有意な低値が認め られた.妊娠黄体数については背景データの範囲内の軽度な変化であり,性周期への影響を 伴っていないことから,着床数及び生存胚数の変化も含め投薬に起因するものではなく,偶発 的な変化と判断した.また,妊娠子宮重量の有意な低値も認められたが,上記理由による偶 発的な生存胚数の低値に起因するものであり,毒性学的意義はないと判断した.性周期,交 尾所要日数,交尾率,受胎率,吸収胚数及び着床前・着床後死亡率に投薬の影響は認められ なかった.

100 mg/kg/日群の雄では精子運動性の低下及び異常精子率の高値が軽度に認められ投薬の 影響が疑われたが,交尾率・受胎率に影響はみられなかったことから,毒性学的意義はない と判断した.4及び20 mg/kg/日群では精子の運動性,濃度及び形態に異常はなかった.

以上の結果より,本試験における無毒性量は,雄親動物の一般毒性に対して100 mg/kg/日 群で明らかな体重増加抑制が継続して認められたことから20 mg/kg/日,雌親動物の一般毒性 及び雌雄の授胎能及び着床までの初期胚発生を含む生殖機能に対して得られた所見は,いず れも薬理作用に関連した変化,若しくは毒性学的意義の低い変化と考えられたことから,無

毒性量は100 mg/kg/日と結論した.

2.6.6.6.2 胚・胎児発生に関する試験

2.6.6.6.2.1 ラットを用いた胚・胎児発生に関する試験の用量設定試験

[資料番号:4.2.3.5.2-1(参考資料),試験番号:TOX8035]

本試験はラットを用いた胚・胎児発生に関する試験の用量設定試験として実施した.SD ラットの雌各8例に,カナグリフロジン水和物の 10,50及び250 mg/kg/日(無水物として 9.80,49.0及び245 mg/kg/日)を妊娠6日から妊娠17日(妊娠0日=交尾確認日)まで反復 経口投与した.対照群には0.5% HPMCを投与した.このほか,250 mg/kg/日を妊娠16日か ら妊娠20日まで経口投与する群を設定した.検査項目は,一般状態,体重,摂餌量及び器官 重量とし,妊娠 21 日に母動物を帝王切開して胚・胎児発生への影響について検討した

[2.6.7.11].

10及び50 mg/kg/日群では,投薬初期に軽度な体重増加量及び摂餌量が低値であった.250

mg/kg/日群では脱水,泌尿器部周囲の湿潤,軟便及び排便減少が認められ,2例が死亡,2例

が瀕死期解剖となった.同群では顕著な体重及び摂餌量の低値が認められ,着床後死亡率が 非常に高く,生存胎児が極少数しか得られなかった.250 mg/kg/日を妊娠16~20日に投与し た群では母動物の体重及び摂餌量が低値となり,1例が死亡,1例が瀕死期解剖となった.胎 児には体重の低値と骨化不全が認められた.

以上の結果に基づき,ラットを用いた胚・胎児発生への影響に関する試験の用量は,10,

30及び100 mg/kg/日とした.

2.6.6.6.2.2 ラットを用いた胚・胎児発生に関する試験

[資料番号:4.2.3.5.2-2,試験番号:TOX8327]

SDラットの雌各23~24例に,カナグリフロジン水和物の10,30及び100 mg/kg/日(無水 物として9.80,29.4及び98.0 mg/kg/日)を妊娠6日から妊娠17日(妊娠0日=交尾成立日)

まで反復経口投与した.対照群には0.5% HPMCを投与した.検査項目は,一般状態,体重,

摂餌量及び剖検とし,妊娠21日に母動物を帝王切開して胚・胎児発生への影響について検討 した[2.6.7.13A].

いずれの投薬群においても投薬に起因した死亡,一般状態の変化はみられなかった.100

mg/kg/日群では,投薬期間を通じて体重増加量が低値であり,妊娠6~9日で顕著であった.

10及び30 mg/kg/日群でも,妊娠6~9日及び10~13日の体重増加量が低値となり,妊娠10

~13 日には統計学的に有意であった.母体の妊娠子宮重量を除外した補正体重増加量は 30

及び100 mg/kg/日群で統計学的に有意な低値であった.また,摂餌量は,投薬期間を通じて

10及び30 mg/kg/日群では高値,100 mg/kg/日群では低値であった.投与期間終了後,100 mg/kg/

2.6.6 毒性試験の概要文

32

いずれの投薬群においても,妊娠黄体数,着床数,早期・後期吸収胚数,生存胎児数,着 床前・着床後死亡率,胎児体重及び性比に投薬に起因する変化は認められなかった.

胎児の外表及び内臓検査では,投薬に起因する変化は認められなかった.胎児の骨格検査

では,100 mg/kg/日群で中足骨の未骨化及び痕跡状過剰肋骨の発現頻度が有意に増加し,妊

娠中の母体の体重増加抑制と関連した変化である可能性が考えられた.また,後述するラッ トを用いた出生前及び出生後の発生,並びに母体の機能に関する試験において100 mg/kg/日 群の F1 出生児の機能発達にはカナグリフロジンの直接的な影響は認められていない.これ らのことから,本試験で認められた中足骨の未骨化及び痕跡状過剰肋骨は母体毒性に関連し て胎児に一過性に発現する二次的な変化であり,毒性学的意義は低いと判断した.

以上の結果より,母動物に対する無毒性量は,30 mg/kg/日以上の群で補正体重増加量が低 値を示したことから10 mg/kg/日,胚・胎児発生に対する無毒性量は投薬に起因すると考えら れる直接的な影響を認めなかったことから100 mg/kg/日と結論した.

2.6.6.6.2.3 ウサギを用いた5日間反復投与用量設定試験

[資料番号:4.2.3.5.2-3(参考資料),試験番号:TOX8036] 本試験はウサギを用いた胚・胎児発生に関する試験の用量設定試験の予備試験として実施

した.New Zealand Whiteウサギの雌各3例(非妊娠)に,カナグリフロジン水和物の10,

50及び500 mg/kg/日(無水物として9.80,49.0及び490 mg/kg/日)を5日間反復経口投与し た.対照群には0.5% HPMCを投与した.また,初回投与日(Day 0)及びDay 4にTK測定 を実施した[2.6.7.11].

いずれの投薬群にも死亡例はなかった.500 mg/kg/日群では,体重及び摂餌量が低値であ り,便の減少(無便含む)が認められた.血液学的検査では好酸球数及びリンパ球数の低値 が,血液生化学的検査ではナトリウム,カリウム,クロール及びカルシウムの低値,並びに リン,トリグリセリド,尿素窒素,クレアチニン及び総ビリルビンの高値が,剖検では消化 管内のガス及び水様内容物の増加が認められた.

TK測定の結果,全身曝露量(Cmax及びAUC)はおおむね用量に応じて増加した.Day 0

とDay 4の曝露量比較では,10及び50 mg/kg/日群では反復による曝露量の変動はなかったが,

500 mg/kg/日群ではDay 4の方がDay 0と比較して高い曝露が認められた.

以上の結果に基づき,ウサギを用いた胚・胎児発生への影響に関する試験の用量設定試験 の用量は,25,100,200及び300 mg/kg/日とした.

2.6.6.6.2.4 ウサギを用いた胚・胎児発生に関する試験の用量設定試験

[資料番号:4.2.3.5.2-4(参考資料),試験番号:TOX8147] 本試験はウサギを用いた胚・胎児発生に関する試験の用量設定試験として実施した.New Zealand Whiteウサギの雌各4~5例に,カナグリフロジン水和物の25,100,200及び300 mg/kg/

日(無水物として24.5,97.9,196及び294 mg/kg/日)を妊娠6日から妊娠19日(妊娠0日

=交尾成立日)まで経口投与した.対照群には0.5% HPMCを投与した.検査項目は,一般 状態,体重,摂餌量,器官重量及び剖検とし,妊娠28日に帝王切開して胚・胎児発生への影 響について検討した[2.6.7.11].

200 mg/kg/日までの投薬群では,死亡はなく,排便減少を示した200 mg/kg/日群の1例を除

いて,投与に起因する一般状態変化も認められなかった.300 mg/kg/日群では,便減少,若 しくは無便を経て,妊娠16日に1例が死亡し,他の4例は一般状態の悪化により瀕死期解剖 を実施した.すべての投薬群で,投与初期(妊娠6~8日)に体重減少がみられた.200 mg/kg/

日群では,摂餌量は軽度に低値であった.着床前及び着床後の死亡率の高値とそれに伴う生 存胎児数が低値であったが,胎児体重への影響はみられなかった.

以上の結果に基づき,ウサギを用いた胚・胎児発生に関する試験の用量は10,40及び160 mg/kg/日とした.

2.6.6.6.2.5 ウサギを用いた胚・胎児発生に関する試験

[資料番号:4.2.3.5.2-5,試験番号:TOX8326] New Zealand Whiteウサギの雌各14~19例に,カナグリフロジン水和物の10,40及び160 mg/kg/日(無水物として9.80,39.2及び157 mg/kg/日)を妊娠6日から妊娠19日(妊娠0日

=交尾確認日)まで経口投与した.対照群には0.5% HPMCを投与した.検査項目は,一般 状態,体重及び摂餌量とし,妊娠28日に母動物を帝王切開して胚・胎児発生への影響につい て検討した.また,妊娠6日及び19日にTK測定を実施した[2.6.7.13B].

160 mg/kg/日群の1例で著しい体重減少がみられたため妊娠25日に安楽殺した.また,同

群の1例が妊娠28日に早産した.10及び40 mg/kg/日群では,投薬に関連する死亡及び瀕死 はなかった.160 mg/kg/日群では,排便減少・無便が投与期間中及び投与期間終了後に高頻 度で観察され,同群の3例に赤色の腟分泌物がみられた.

160 mg/kg/日群では,投薬初期に体重及び摂餌量が著しく低値であり,体重増加量につい

ては投薬期間中も継続して低値で推移した.10及び40 mg/kg/日では,妊娠6から8日に体 重減少がみられたが,その後の投薬期間の体重には影響はなかった.投薬期間終了後,40及

び160 mg/kg/日群の体重増加量は高値であった.

いずれの投薬群においても,妊娠黄体数,着床数,早期及び後期吸収胚数,生存胎児数,

着床前及び着床後死亡率,胎児体重,並びに性比に投薬に起因した変化は認められなかった.

また,胎児の外表,内臓及び骨格検査でも投薬に起因した変化はなかった.

TK測定の結果,妊娠ウサギの全身曝露量(Cmax及びAUC0-24h)は投与量の増加に伴い増加 した.曝露量の増加比は投与量の増加比より高い傾向を示した.妊娠6日(初回投与時)と 妊娠19日(反復投与後)の曝露量を比較した場合,10及び40 mg/kg/日群のAUC0-24hで反復 投与によりやや増加した以外は,明確な曝露量の変動はなかった.

関連したドキュメント