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2.6.6 毒性試験の概要文

2.6.6.8 その他の毒性試験

2.6.6.8.1 免疫毒性試験

ICH S8ガイドラインに従って,反復投与毒性試験及びがん原性試験について評価したとこ

ろ,カナグリフロジンによる明らかな免疫毒性を示唆する所見は認められなかった.更に,

薬学的性質,類似構造物質の免疫毒性,薬物の分布,臨床試験における所見などに照らし,

免疫毒性試験は不要と判断し実施しなかった.

2.6.6.8.2 毒性発現の機序に関する試験

カナグリフロジン水和物のラットを用いた反復投与毒性試験においてみられた胃のびらん 及び過骨症,並びにラットを用いたがん原性試験において発現頻度の増加がみられた3種の 腫瘍について発現機序を検討する目的で表 2.6.6.1-1に示した試験を実施した.実施した試

謝関連マーカー測定,剖検及び病理組織学的検査とした[2.6.7.17C.2].

その結果,血液生化学検査では投薬群で血清カルシウムはDay 3から低値となり,リンは Day 0及びDay 1では高値,Day 3及びDay 7では低値であった.グルコースはDay 1から低 値であった.また,投与期間を通じて尿量は高値傾向であった.尿中カルシウム排泄量(ク レアチニン補正値,以下同様)はDay 3から高値となり,その程度は経時的に増大した.リ ン及びグルコース排泄量は,Day 1から高値であった.そのほかの所見は,反復経口投与毒 性試験と同様であった.

骨代謝関連マーカーについては,骨形成マーカーである血清中オステオカルシンはDay 1

から,BAPはDay 7から低値であり,骨吸収マーカーである血清中酒石酸耐性酸性ホスファ

ターゼ(以下,TRAP5b)はDay 1から,尿中DPDはDay 1及びDay 14に低値であった.ま た,血清中25(OH)DはDay 1では高値であり,Day 3から1,25(OH)2Dとともに低値であった.

病理組織学的検査では,Day 3から膝関節における軽微な骨梁の増加が観察された.Day 14 まで観察したところ,同変化は,胸骨,腰椎ではみられなかった.また,骨の代謝にかかわ る細胞のうち,破骨細胞について,酵素染色を実施して観察したところ,海綿骨に局在する 破骨細胞のサイズの減少傾向が認められた.

以上のことから,ラットにカナグリフロジン水和物を投与することによって誘発される過 骨症は,骨における形態学的変化に先立ち,若しくは並行して骨代謝関連マーカーが変動し ていることが明らかとなった.

2.6.6.8.2.2.2 ラットの週齢に関する検討

[資料番号:4.2.3.7.3-3(参考資料),試験番号:TOX8707] ラットの反復投与毒性試験においてみられた過骨症の発現が週齢によって異なるかを確認 するため,SDラットの8週齢(骨代謝が活発な成長期),又は6ヶ月齢(成長がほぼ終了し ている時期)の雌各10例に,カナグリフロジン水和物の150/100 mg/kg/日(無水物換算)を 4週間反復経口投与した.対照群には0.5% HPMCを投与した.なお,150/100 mg/kg/日群に ついては,150 mg/kg/日の投与量で投与を開始したが,6ヶ月齢のラットがDay 5に1例死亡 したことから,Day 6に投与量を100 mg/kg/日に変更した.検査項目は,一般状態,体重,摂 餌量,血液学的検査(血液凝固検査含む),血液生化学的検査,尿検査,尿生化学的検査,骨 代謝関連マーカー測定,剖検及び病理組織学的検査(骨形態計測含む)とした.更にTK測 定群を設けて,初回投与日(Day 0)及びDay 27にTK測定を実施した[2.6.7.17C.3].

その結果,血液生化学的検査では,血清カルシウム及びグルコースは投薬した8週齢及び 6ヶ月齢ラットともに低値,若しくは低値傾向を示し,リンは8週齢ラットのみ低値傾向で あった.尿検査では尿量及びグルコース排泄量(クレアチニン補正値,以下同様)は8週齢 及び6ヶ月齢ラットともに高値であった.カルシウム及びリン排泄量は,8週齢ラットで高 値であり,6 ヶ月齢ラットでも高値傾向であったが有意な差ではなかった.そのほかの所見

2.6.6 毒性試験の概要文

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骨代謝関連マーカーでは,8週齢ラットの投薬群で 1,25(OH)2D,25(OH)D,PTH,インス リン,オステオカルシン及びI型プロコラーゲンN-プロペプチド(以下,PINP),並びに尿

中DPD/Creが低値であった.6ヶ月齢ラットの投薬群では,25(OH)D,カルシトニン,PTH,

インスリン,オステオカルシン及びPINPが低値であった.

病理組織学的検査では,8週齢ラットで大腿骨及び胸骨において過骨症が観察されたが,6 ヶ月齢ラットでは過骨症はみられなかった.骨形態計測では,8 週齢のラットの投薬群で骨 梁の骨質量,骨梁の厚さ,及び骨梁数が高値であり,それらの数値の変動に応じて骨表面積

/骨質量及び骨梁の間隔が低値となった.類骨に関連したパラメータに明らかな変化はみら れなかった.また,骨梁及び石灰化した骨梁の骨質量の増加率がほぼ同等であることから,

石灰化に影響はないことが示唆された.6 ヶ月齢ラットの投薬群では骨表面積/骨質量の高 値,並びに骨梁の厚さが低値であったが,そのほかのパラメータに変動はみられなかった.

TK測定の結果,Day 0のカナグリフロジンの曝露量(AUC0-)は,6ヶ月齢群が8週齢群 よりも約4倍高い値を示した.また,Day 0の血中からの消失(t1/2)は,6ヶ月齢群が8週 齢群よりもやや遅い傾向であった.Day 27では,採血時点不足により血中からの消失を適切 に評価することができなかった.反復投与後の曝露量(Cmax及びAUC0-24h)は,8週齢群と6 ヶ月齢群とでほぼ同等の値を示した.

以上のことから,カナグリフロジン水和物を8週齢ラット(骨代謝が活発な成長期)に投 薬すると,6 ヶ月齢ラット(成長がほぼ終了している時期)に投薬した場合と比較して骨代 謝関連マーカーの変動が顕著であり,大腿骨の組織学的検査では8週齢ラットでは過骨症が 認められたが,6ヶ月齢では認められなかった.また,骨形態計測結果から,8週齢ラットで みられた過骨症の石灰化過程には異常はみられないことが明らかとなった.

2.6.6.8.2.2.3 ラットを用いた45Caの吸収と排泄に関する試験

[資料番号:4.2.3.7.3-4(参考資料),試験番号:FK7547] カナグリフロジン水和物投与によるラットの体内カルシウム動態を検討するため,SD ラ ットの雄10例に,カナグリフロジン水和物100 mg/kg/日(無水物換算)を2週間反復経口投 与した.対照群には0.5% HPMCを投与した.その間,投与初日(Day 1)及びDay 14に放 射性カルシウム(45Ca)で標識した塩化カルシウム(45CaCl2)をカナグリフロジン水和物と 同時に投与してその尿中及び糞中への排泄量を測定した.また,同様にSDラットの雄6例 に,カナグリフロジン水和物の100 mg/kg/日(無水物換算)又は0.5% HPMCを2週間反復 経口投与し,絶食及び非絶食条件下での血清中の総カルシウム濃度及び45Caの濃度(総カル シウム濃度との比)について測定した[2.6.7.17C.4].

その結果,Day 1及びDay 14のいずれにおいても投与した45Caの多くは糞中に排泄された が,カナグリフロジン水和物投与により対照群と比較して尿中の排泄量はDay 1で約3倍,

Day 14では約21倍となった.また,血清中45CaのAUCは,絶食・非絶食のいずれにおい

てもDay 1及びDay 14ともに対照群と比較して高値を示し,tmaxはやや遅かった.

以上の結果より,カナグリフロジン水和物はラットにおいて消化管からのカルシウム吸収 を投与初日から増大させ,反復投与後もその影響は持続することが明らかとなった.また,

尿中へのカルシウム排泄を増加させ,反復投与によってその程度が増大することが明らかと なった.

2.6.6.8.2.3 ラットがん原性試験にみられた腫瘍発生の機序検討試験

ラットを用いたがん原性試験において投薬に起因して発現頻度が増加した副腎髄質腫瘍,

腎尿細管腫瘍及び精巣間細胞腫について,それらの腫瘍発生メカニズムを検証するために機 序検討試験を実施した.腫瘍発生に関与すると考えられるカルシウムインバランスについて の検証と,精巣間細胞腫の発生に関与すると考えられるホルモンインバランスを確認するこ とを目的として試験を実施した.

2.6.6.8.2.3.1 ラットにおけるカルシウムインバランスに関する予備試験

[資料番号:4.2.3.7.3-5(参考資料),試験番号:TOX10043]

[資料番号:4.2.3.7.3-6(参考資料),試験番号:TOX10086]

[資料番号:4.2.3.7.3-7(参考資料),試験番号:TOX10085]

[資料番号:4.2.3.7.3-8(参考資料),試験番号:TOX10087] カナグリフロジン水和物でラットに惹起されると想定しているナトリウム-グルコース共

輸送体 1(以下,SGLT1)の阻害による糖質吸収不全と続発するカルシウムインバランスに

ついて検証する目的で,以下の予備試験(GLP非適用)を実施した[2.6.7.17C.5].

検討内容は,①消化管のSGLT1阻害による糖質吸収不全が生じない条件として,飼料中の 糖質をグルコース/ガラクトースからフルクトースに替え(フルクトースは促通拡散型糖輸

送担体5(以下,GLUT5)を介して体内に吸収される[6][7]),カナグリフロジン水和物を

投与する方法[4.2.3.7.3-5 及び 4.2.3.7.3-6],②飼料中のカルシウム濃度を下げることによっ てカルシウムの摂取量を減じ,消化管からのカルシウム吸収を抑制する方法[4.2.3.7.3-7],

③カナグリフロジン水和物の皮下投与により消化管における曝露量を少なくして消化管の

SGLT1阻害が生じにくい条件とする方法[4.2.3.7.3-7]及び④カナグリフロジン水和物の投薬

時間と摂餌時間を十分に分離し,SGLT1阻害による消化管からの糖質吸収不全が生じないよ うにする方法[4.2.3.7.3-8]とし,いずれも投与期間は4週間とした.

これらの予備試験の結果,①フルクトース飼料,②低カルシウム飼料及び③反復皮下投与 については,生体内のカルシウムインバランスを改善する傾向がみられたことから,長期反 復投与による影響を確認する目的でフルクトース含有飼料を給餌したラットを用いた6ヶ月 間反復経口投与試験[4.2.3.7.3-9]及び低カルシウム飼料を給餌したラットを用いた6ヶ月間 反復経口,又は皮下投与試験[4.2.3.7.3-10]を実施することとした.

一方,④投薬と摂餌の時間分離では,経口投与されたカナグリフロジン水和物と摂食され

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