• 検索結果がありません。

生体内( in vivo )環境下における骨格筋細胞内 Ca 2+ -kinetics の可視化(研究課題 1 )

1.  背景と目的

筋線維の収縮-弛緩サイクルは,筋細胞内カルシウムイオン(Ca2+)濃度の変 化によって制御されている.弛緩状態の筋細胞内Ca2+濃度は0.1 µM以下に保た れているが(Armstrong et al. 1991),筋収縮時には一時的に濃度が増加し,筋収 縮のトリガーとしての役割を担っている.収縮後は Ca2+濃度が低下し,筋は弛 緩状態に戻る.筋の収縮機構のみならず,細胞内 Ca2+は多くのシグナル伝達経 路においてセカンドメッセンジャーとして機能しており,筋細胞内においても Ca2+濃度の変化をトリガーとして活性化する因子が多く存在している.このよう に,身体活動に貢献する筋の機能について考える場合,細胞内の Ca2+動態を知 ることが非常に重要である.これまでに多くの研究者が細胞内の Ca2+について の研究を報告してきたが,ほとんどは,主に生体外(in vitro)で行われた研究が 多く,“生きた”生体内(in vivo)Ca2+の振る舞いを追うことは技術的にも困難 であった.細胞内 Ca2+を測定するための初期の研究においては,イオン選択的 電極を用いた手法や細胞を磨り潰した懸濁液の成分を分析する手法などが行わ れてきたが,それらは非常に限定的な情報しか得ることができず,細胞情報の1 場面を切り出してきたものに限定されていた.

ところが近年になって発展してきた,特異的に蛍光を発するタンパク質や特 定のイオンと結合することで構造変化する蛍光物質を用いるバイオイメージン グ(蛍光イメージング)技法によって,細胞内の様々なイオンを直接的に可視 化する手法が確立されてきた(Tsien et al. 1982, Tsien et al. 1985, Cobbold and Rink.

1987).このことによって,in vitroで行われてきたCa2+の研究を,より生体内に 近い環境で測定することが可能になってきた.細胞内イオン動態の研究と共に 急速に発展してきたバイオイメージング技法は,目的とするイオンに応じた 様々な指示薬が開発され,生物学の分野において広く利用されていることから,

測定対象によっては非常に有効である.しかしながら,これらの研究手法に用 いられてきたのは主に単離細胞や培養細胞などといった生体から切り取られた 組織である.しかしながら,単一細胞や培養細胞では生体内における本来の環 境とは当然異なることが考えられ,筋細胞においては,発達した毛細血管血流 による酸素および代謝環境が特に大きく異なっていると考えられる(Stary and Hogan. 2000, Terada et al. 2003).筋の機能的な側面を検討するにあたり,より生 体内現象が統合された環境における実験系が必要であると考えられた.

これを解決する手法として,それまで主に血管形態や血流動態に関連した研 究において用いられることの多かった背部位の薄膜状筋である脊柱僧帽筋

(Fig.2)をイメージングの対象とする手法が考えられた(Toth et al. 1992, Toth et al. 1998, Ivanics et al. 2000).この筋は,最薄部位で筋線維数本分程度の厚さ

(300~500 µm)しか持たず,特徴的な形状による血管ネットワークが剥離後も

保持されるという特徴を持つ(Musch and Poole. 1996).したがって血流や神経 活動が維持されている状態においての顕微鏡観察が可能である(Gray. 1973).

そこで本研究では,筋細胞内 Ca2+の変化をより生体内に近い環境において検 討するため,in vivo での顕微鏡観察が可能な脊柱僧帽筋に蛍光カルシウム指示 薬を用いたバイオイメージング法を適用し,筋細胞内 Ca2+動態をリアルタイム に捉えることを目的とした実験系の確立を目指した.

2.  方法

・被験動物

本実験では,オスのWistar系ラット(日本SLC),体重200-300 g,8-12週齢 を用いた.全てのラットは室温20-24 ℃で12時間の明暗サイクルに管理された 飼育室において,餌と水をそれぞれ自由摂取できる状態で飼育した.全ての実 験は,電気通信大学動物実験指針に則って行われた.ラットは,ペントバルビ タールソディウム(大日本製薬,70 mg/kg i.p.)の腹腔内注入により麻酔した.

必要に応じて,麻酔は適時追加した.処置中のラットは,体温保持のために37 ℃ に維持されたホットプレート上に静置した.麻酔下において,右脊柱僧帽筋を,

組織に傷付けないよう慎重に露出し,表面を覆う結合組織なども可能な限り取 り除いた.脊柱僧帽筋に特徴的なアーチ状の細動静脈システムを維持するため に,筋の近位部において主となる供給動脈を残したまま筋を剥離した.筋は,

剥離する過程で筋と同等の大きさの馬蹄形針金リングに,安静時の筋長を維持 するよう縫合針と糸(Sigma)を用いて固定した(Fig.3筋標本写真参照).

・試薬調整

筋 は , 表 面 の 乾 燥 や 細 胞 の 崩 壊 を 避 け る た め に 常 に バ ッ フ ァ ー

(Krebs-Henseleit Buffer:KHB)によって保湿した.バッファーの組成は,132 NaCl, 4.7 KCl, 21.8 NaHCO3, 2 MgSO4, 2 CaCl2(mM)であった.バッファーは,95%

N2-5% CO2混合ガスによってpH 7.4に平衡化され,37 ℃に管理された恒温槽に

よって保温した.実験で用いた他の全ての薬品はKHBに溶かして用いた.蛍光 カルシウムプローブFura2-AM(Fig.4. Dojindo)は5 mMのストック溶液となる

ようにDimethyl Sulfoxide(DMSO: wako)に溶かし,細胞膜内へのプローブの浸

透を高めるため導入補助薬であるPluronic F-127(Molecular Probes)を最終濃度

Lash.  J Appl Physiol. 1994

Fig.3. 脊柱僧帽筋の模式図と筋標本の様子(Lash. J Appl Physiol. 1994一部改変)

1-[6-Amino-2-(5-carboxy-2-oxazolyl)-5-benzofuranyloxy]-2-(2-amino-5-methylphenoxy)ethane-N,N,N', N'-tetraacetic acid, pentapotassium salt

C

29

H

22

K

5

N

3

O

14

=831.99

関連したドキュメント