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甘味物質の選択性向上

5.1 まえがき

前章までは、 従来の脂質膜センサを用いて味を再現性よくかっ高精度で測定 できるかについて、 測定方法の開発を述べた。 本章では, 脂質高分子膜の電荷

密度を調整することで, 非電解質である甘味物質に対する選択性の向上を目指 した. 従来の脂質高分子膜の電位測定では, 非電解質の甘味物質への感度は,

電解質の味物質の感度に比較して 1/5--- 1/10と低く 両者が混合されたサンプ ル中では, 甘味の信号を特徴抽出することが難しかった. 他方 脂質高分子膜 のインピーダンス測定では, 脂質高分子膜を用いた非電解質の検知の可能性が

示唆されたものの, 応答再現性の点で課題が残っている[16,17J. 本研究では,

膜電位計測を用いて, 膜中の脂質の量と各基本味物質の感度の関係を調査し,

甘味物質に対する選択性向上の可能性を探った[44J.

5.2 実験方法

5.2.1 測定系

測定にはアンリツ製SA402味認識装置を用いた(図5. 1) . 本装置は検出部,

オートサンフラ一部及ぴデータ処理部により構成されている. 検出部では, そ れぞれ脂質高分子膜を貼ったセンサ プローブと参照電極とのセンサ部により脂 質高分子膜の膜電位を検出する. オートサンプラ一部では, パソコンからの制

御により自動測定を行い, 測定精度を高めている. データ処理部では, 検出部 からの信号をA/D変換してパソコンに取り込む.

脂質高分子膜は脂質とその支持材としてのポリ塩化ピニル 80m gをテトラヒ ドロフラン 10m 1に溶かし, シャーレ上で乾燥させた. その結果, 厚み10μm の無色透明の フィルム上のものが得られた. 脂質高分子膜の略称、, 使用した脂 質及び混入量を表1に示す. 従来我々が使用している脂質高分子膜では, 可塑

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剤としてジオクチルフェニルフォスフォネートを用いているが, この可塑斉IJ中

こは電荷を持つ不純物があり, この不純物により膜の特性が影響を受けること が分かっている[39-41J. そこで今回は, この影響を除くため敢えて可塑斉IJを 使用しないで膜を作成した. また, 膜のインピーダンスを下げて膜の安定性を 図る目的で, 従来我々が使用している脂質高分子膜の約1/10--- 1/20の厚みにし た. この膜の強度を保つ目的で , 膜のプローブ内部側に膜の補強剤として多孔 質フィルタを装着した(図5.2)

センサプロープの構造を図 5.2 に示す. センサプローブはプローブ本体, 脂 質高分子膜, 多孔質フィルタ(脂質高分子膜の支持用) , Ag/AgC 1電極,

内部液(3.3M K C 1飽和Ag C 1 )から構成されている. 参照電極は, 一般 のp Hメータに使用されているものと同様の機構であり, プロープ本体, A g / A g C 1電極, 内部液(3.3M K C 1飽和Ag C 1) , 3.3M K C 1寒天から 構成される.

図5.1 味認識装置S A 4 0 2 (アンリツ社製)

表5.1 使用した脂質

略記号 脂質名 混入量

T Trioctyl methyl ammonium 5 m g chloride

C Dioctyl phosphate 5 m g B T:C=1:2 5 m g

Ag/AgCl電極

脂質高分子膜

多孔質支持材

図5.2 センサプロープ断面図

5.2.2 測定条件

表5.1 に示す脂質を用いて, 膜中の脂質含有量をパラメータとして各基本味 に対する感度比較を行う. 人の感じる領域は味物質毎で異なり, その領域でセ

ンサの応答を調べた. 応答感 度 をこの 領域の中間の濃 度における “感 度 (mV/decade) " で評価した. 感度は最小二乗法でグラフの傾きより求めた.

用いた基本味物質と感度を評価した濃度を表 5.2に示す. シ ョ糖以外は全て電 解質の味物質である. なお, 渋味は厳密にはいわゆる基本味ではなく広義の味 に属するものであるが, 食品の味の重要な要素なので, 渋味物質に対する測定

も行った. 膜中の脂質の含有量は, 表5.1に示す量に対して1倍, 1/10倍, 1/100 倍, 1/1000倍の4段階に変化させた.

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表5.2 使用した基本味物質

味 j容j夜 感度測定点濃度(mM) 甘味 シ ョ糖 300

塩味 N a C 1 100

酸味 酒石酸 3

旨味 MSG 3 0 苦味 キニーネHCl o .1 渋味 タンニン酸

5.3 実験結果

5.3.1 脂質の含有量の最適化

膜中の脂質の含有量に対する各味物質の感度の変化を図 5.3に示す. シ ョ糖 以外の電解質への感度は, 脂質の濃度を下げると急激に下がる傾向が見られる が, シ ョ糖の感度の減少は緩慢である. そこで 各基本味毎の感度を規格化し

て, シ ョ糖の感度とその他の電解質の味物質の感度の比較を行う. 規格化は,

各基本味毎の感度の絶対値の( 6つの味質にわたる)和を1とした. その結果 を図 5.4に示す. シ ョ糖に対する規格化した感度がlに近づく程 シ ョ糖に対 する特異性が大きいことを意味している.

脂質の含有倍率が1の場合は, シ ョ糖の感度は他の味物質に比べ低いが, 含 有倍率が0.1以下からこの関係は逆転する. 特にT膜中の脂質含有倍率が0.1 の場合, シ ョ糖に対する特異性が大きいことが分かる.

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1E-3 0.01 0.1 1E-3 0.01 0.1

C膜中の脂質含有倍率 B膜中の脂質含有倍率

. サyカロース

o u 』昆 o NaCI

A酒石酸

\l MSG

B 楽キニーネ

E

ロルニン酸

�-20 割制E 官担

起一30

L

1E-3 0.01 0.1

T膜中の脂質含有倍率

図5.3 脂質含有倍率と応答感度

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0.3

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