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近年の企業は地球環境問題対策や社会的な貢献活動など、環境経営に積極的である。持 続的な発展に向け、企業活動全般にわたって環境経営が関連しているからである。

企業活動は自社のビジネスモデルに自然資本を投下している。しかし、これまで、自然 資本の利用量と再利用量に関する情報開示量はほとんど見られていない。自然資本は企業 活動に伴って変化する量や影響度によって外部報告される必要性があるが、そのような概 念はない。地球環境と自然資本の維持では環境管理会計の管理対象範囲に含める必要性が ある。

生態系と生物多様性の経済学(The Economics of Ecosystems and Biodiversity, TEEB)

16の 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト リ ー ダ ー で あ る Pavan Sukuhdev(2013) に よ れ ば 、 著 書

『Corporation 2020 Transforming business for tomorrows world』で、会計システムの 変革について、「企業が引き起こす外部性の広がりを現時点では把握できない、ビジネスは 評価できないものは管理できない」(Ibid., p.154)。また「財務報告に正と負の両方の外部 性を反映させ、経済・社会・環境への影響だけでなく、資源採取の制限や規制に対するリ スクがわかる」(Ibid., p.154)必要性があり、「こうした枠組みを国際的に作り上げること は簡単でなはないかもしれないないが、不可能ではない」(Ibid., p.154)とし、Pavan Sukuhdev(2013)は資源を有料化する可能性もあると述べている。Pavan Sukuhdev(2013)

の指摘するように、確かに、所有者のない資源を管理することは負の外部性を軽減する。

これは管理下にある資源を使用するという概念に基づくならば、利用者が管理・測定・評 価の対象と捉えることが可能であるといえるのではないだろうか。既に世界各国で資源の 枯渇が懸念されていることからも、地球上の資源が取引の対象物になる可能性は高いとい えるのではないだろうか。

IIRCは<IRフレームワーク>の中で「6つの資本」ダイアグラムで、経営と資源の関 わりについて、自然資本を次ぎのように定義している。「組織の過去、現在、将来の成功の 基礎となる物・サービスを提供する全ての再生可能及び再生不可能な環境資源及びプロセ

16)「生態系と生物多様性のもたらす経済価値への理解を深め、価値を適切に計算するたえの経済的ツー

の提供を目指した研究のことで、UNEP 主導の下、ドイツ銀行のエコのミストであるパバン・スクデ フ氏を研究リーダーとしてドイツ政府が中心となり実施している。2010 年の生物多様性条約 COP10 において最終報告書が発表されている」(経済産業省, 2015, p.422)

-筑波由美子- 63 ス」(IIRC, 2014)であるとし、以下の資源を含んでいる。

・空気、水、土地、鉱物及び森林

・生物多様性、生態系の健全性

環境・CSRレポート等で開示される非財務情報は、企業の多岐にわたる環境経営に伴い 年々情報量が増加していることが指摘されている。その一方で「国内外で非財務情報の開 示の動きが加速している」(村井, 2016, p.148)といわれるように、非財務情報の重要性が 高まりより主要な非財務情報を見極めていくことが必要になってきたと考えている。その 情報の一つとして考えられるのが自然資本である。

自然資本は管理・測定が困難であることや、貨幣換算できるものと物量情報に分かれる。

自然資源を会計という概念から捕らえるには、環境管理会計手法の一つである自然資本会 計がある。環境管理会計の役割として自然資本を捉えることが可能な自然資本会計の可能 性が期待されるものと考えている。

第1節 環境管理会計の役割と期待

環境省はリオ+20において、金融機関が「自然資本宣言」を採択したことや、自然資本 への影響を経済価値で評価し国家会計や企業会計に取り入れる動きが見え始めたことから、

国内外の環境会計、自然資本会計を取り巻く現状について調査が行われている。

環境省は、自然資本を次のように捉えている。自然環境を国民の生活や企業の経営基盤 を支える重要な資本の一つとしてとらえており、自然資本は、森林、土壌、水、大気、生 物資資源など、自然によって形成される資本(ストック)であり、自然資本から生み出さ れるフローを生態系サービスとして考えており、自然資本の価値を適切に評価し、管理し ていくことが国民の生活の安定と企業の経営の持続可能性を高めることにつながる(環境 省, 2015)としている。

-筑波由美子- 64 1-1 環境省の『環境会計ガイドライン』の改訂に向けて

近年、自然資本が注目されるようになり、企業活動と資本との関連性を捉えようとする 動きが見え始めた(環境省, 2015)。

私達の暮らしで必要な飲料や水、気候の安定などは自然の恵みによって支えられている が、これらの自然の恵みを的確に計る共通の物差しというものがない(同上書)。環境管理 会計においても同様の課題である。地球環境は経済や社会の発展とトレードオフの関係に ある。所有者のいない自然資本は外部不経済を受けてもそれを元の状態に戻す概念はない。

自然資本は価値が適切に評価されず、企業の事業活動にとっても無料または安価に使える 資源であり、過剰に利用されても測定・管理されていなければ、事実を把握することはで きない。村井(2016)は、企業の財務情報は企業本来の価値や長期的な成長を評価するこ とはできないとしている。このことは、非財務情報が企業報告に不可欠な報告書とされる 理由でもある。

IIRC は、企業活動に「6つの資本」(財務、製造、知的、人的、社会・関連、自然)が 導入されていることを示しているが、全ての資本を管理対象として測定・管理していくこ とは困難である。環境省の『環境会計ガイドライン』(2005)は発行から10年が経過して いる。企業の環境管理会計情報の開示を促進してきたが最終改定以降、改定に向けた現状 を把握する目的として文献調査ヒヤリング調査及び有職者意見交換会を実施している。環 境管理会計情報に関する新しい会計分野として自然資本会計に関する報告書をまとめた

『平成 27 年度環境会計・自然資本会計のあり方に関する課題等調査検討業務』(平成 28 年1月29日)を発行している。

環境会計ガイドライン改定に向けた方向性と論点は次ぎのように述べられている。環境 会計ガイドライン改定の方向性は、「統合報告や効率的な環境保全の取組みに関する国際的 な情報ニーズの高まりを鑑み、自然資本会計の要素を入れずに現行の環境会計ガイドライ ンの有用性を高める」(同上書, p.71)ことである。論点は、「①環境会計に取り組むこと の現代的な意義とステークフォルダーニーズの明確化」と「②情報提供者・利用者の利益 性向上(同上書, p.71)である。

①の開示メリットについて、「外部機能上は、統合報告が求められる状況において、環境 投資や費用等の情報が将来的なパフォーマンスと密接な関係を持つような場合に、環境会

-筑波由美子- 65 計情報が見込まれる。特に、エネルギー集約的な産業や革新的な環境配慮型製品の製造販 売を行う企業、あるいは水資源に関するリスクが見込まれる企業などは、関連する環境コ スト情報によって、自社の戦略や実績の裏付けを行うことができるため、投資家の関心に 適う非財務情報開示を行えるメリットがある」(同上書, p.71)。「内部機能としては、実際 に環境会計をコスト削減やリスク回避に活用している企業が少数ながらもあるため、こう したメリットやそれを得るための具体的な活用方法を明らかにすることが望ましい」(同上 書, p.71)。

②の情報提供者・利用者とは、「従来、環境会計は企業の環境報告書やCSR報告書にお いて開示されることが多かったが、非財務情報開示をとりまく環境変化に応じ、こうした 媒体を通じた外部への環境会計情報の開示を取りやめたり、情報量を絞ったり、冊子媒体 からウェブサイトのみでの開示などへ切り替えたりする企業が増えてきている。しかし、

こうした開示のあり方は、環境会計と環境パフォーマンスや企業の戦略・目標、将来的な 財務的パフォーマンスとの関連性と示すという点では不十分なことが多く、情報利用者と して価値のある情報となりにくい」(同上書, p.72)。以上が環境省の環境会計ガイドライ ン改定に向けた方向性と論点である。次に自然資本会計の国内導入の方向性は、「これまで に国内で一定程度定着してきた環境会計とは切り離した形で自然資本会計の目的や意義を 明確化し、ステークホルダーがそのメリットを享受でき、また自然資本の接続可能な利点 や産業の競争力強化に資する形で自然資本会計を導入・普及させることを目指す方向性で ある」(同上書, p.72)というように、事業活動と自然資本との関連性を高める動きか明確 になってきている。自然資本会計の国内導入論点は、①「自然資本会計の目的や意義の明 確化」、②情報提供者と利用者双方のリテラシー向上、③「国際的な取組みとの連携」、④

「国内の関連施策との整合性確保」という4つの項目が挙げられている。

①について、「企業が事業活動と自然資本の関係性を理解し、その正負のインパクト発生 の所在やそのことがもたらすリスクや機会、事業活動あるいは社会にとっての重要性を特 定し、それらの情報を経営意思決定に有効に活用し、もって自社および社会の持続可能性 の向上や競争力強化に役立てるという、自然資本会計の本来の目的や意義、期待される効 果などを明確化することが望ましい」(同上書, p.73)とされる。

②について、「明確化された自然資本会計の本来の目的や期待される効果、具体的な活用 の好事例などを広く国内企業等に向けて発信することが望ましい」(同上書, p.73)とされ

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