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環境性・経済性の両者を対象とした BAS 評価手法の開発

ドキュメント内 胡 浩 (ページ 41-44)

2.1 目的と従来研究

近年、我々を取り巻く環境問題はより重大な問題として扱われている。経済 社会活動の拡大や生活様式の変化により廃棄物処理や資源枯渇など地球規模へ と多岐にわたり、その対策として循環型社会の構築が掲げられている 2-1)

こうしたなかにあって、地域の生活や生産活動に伴い、さまざまな形で廃棄 物が排出されている。そして現在一般廃棄物発生量の 8 割近くが焼却処理され ている 2-2)。この廃棄物をエネルギーとして活用することは、化石燃料の消費抑 制や CO2などの排出抑制に貢献する一つの手法といえる。すなわち、ごみ焼却 処理施設で大量に発生する焼却排熱を、発電用や周辺地区の冷暖房・給湯用熱 源として有効に活用したり、ごみを加工して固形燃料化し、燃料として利用す ることにより、省エネルギーを推進することが可能となる。このように廃棄物 発電は、①エネルギーの安定供給の確保に貢献する石油代替エネルギーとして、

②最終処分場の延命につながる埋立量の削減として、③エネルギー問題、地球 環境問題、地域社会問題の改善に貢献するものとして意義あるものと考えられ ている。また、焼却施設から排出される残渣においても適正な処理・有効利用 といったことが求められている。これまでに残渣の減容化を目的として、灰溶 融・ガス化溶融処理方法が多くの自治体に採用されてきた 2-3,4)。こういった従 来技術に加え、残渣をセメント原料として利用する灰水洗技術も、最終処分場 の延命に有効となる新たな処理・技術として考えられている。資源循環型社会 において、上記のような廃棄物を資源として有効利用する技術が地球環境保全 に果たす役割は大きくなっていくと言える。

こういった枠組みの中で、廃棄物処理の責任を受け持つ地方自治体が、今後 各自治体において最適となる広域化処理計画等の策定を進めていく上で、環境 負荷の定量的な評価やその削減に伴う費用の推定を行う必要がある。具体的に は、自治体では廃棄物処理を取り巻く様々な条件の変化、また処理基本計画の 立案のために、従来の処理方法の一部または大幅な見なおしを行うことが考え られ、事前に施策に対して環境性・経済性の両者を考慮した評価を行うことが 必要とされている。一般廃棄物処理システムは、ごみの排出段階から収集・輸 送・中間処理・リサイクル・最終処分等の多岐にわたるプロセスで構成されて いることから、それに対応した評価手法の構築が必要である。

その際、環境負荷を定量的にはかる尺度が必要となるが、その試みとしてラ イフサイクルアセスメント(LCA)が注目されている。LCA は、製品およびサ ービスなどが環境に及ぼす資源・エネルギーの消費や各種の負荷を原料採取-

生産-流通-使用-リサイクル・廃棄にわたるライフサイクルを通じて、いわ ゆる「ゆりかごから墓場まで」にわたって、定量的に分析・評価する手法であ る 2-5)。LCA は環境問題を客観的且つ効果的に処するために有効なものである が、その手法に関しては各国で開発が試みられ 、国際的にも ISO において標準 化が図られているものの、未だ定まった手法といったものは存在しない。

ここで、廃棄物処理システムを対象とした環境負荷とコストの評価・提案に

関する既往の研究を調べた 2-617)。北海道大学の羽原氏、松藤氏らが LCA 的な 観点から広域化のコスト、エネルギー消費量等の変化を分析し、評価を計算す る実用プログラム H-IWM の Excel 版の開発を行っている。荒井氏らがごみ処理 システムの広域化計画について、費用関数の推定および埋立処分量を考慮した 最適化モデルの分析を行った。藤井氏らがコストとエネルギー消費量の観点か ら広域化のメリットとデメリットの分析を行った。しかし、既往の研究では、

環境面について、そのほとんどがエネルギーの消費または排ガスといった単一 指標での評価にとどまっている。評価対象プロセスの各段階におけるインパク トカテゴリー間にはトレードオフが存在する場合がある。その解消および生態 系への影響、水質汚染等のカテゴリーを含めた統合的な視点からの評価・分析 が欠けているといえる。

そこで、本研究においては、これまでに、インパクトアセスメント手法の一 例と して アン ケー ト 調査 によ るカ テゴ リ ー重 要度 をも とに 、 統合 化指標 ELP

(Environmental Load Point)2-18)を提案している。LCAは主に製品に関してその 適用が進められているが(Product Life Cycle Assessment:PLCA)、今後は技術 分野に関しても適用する必要があると考えられるため、LCA をエネルギー関連、

廃棄物処理などの技術分野にも拡張させ、発電やごみ処理等の施設に適用し新 技術導入時における環境影響を評価する、技術のライフサイクルアセスメント

(Technology Life Cycle Assessment:TLCA)手法として開発 2-19)、TLCA 手法の 向上を目標に研究を行ってきた。図 2.1 に示すように、この TLCA の概念を用 いて統合化指標 ELP を導入して、廃棄物処理や資源循環におけるコスト 縮減方 策の実効性評価と 3R・エネルギー回収・適正処理効果の検証を可能とする評価 ツールとして「BAS 評価ソフト」を開発することを目的とする。

図2.1 BAS評価手法の開発の必要性

2.2 BAS評価手法の開発コンセプトと全体のフロー 2.2.1 開発コンセプト

BAS 評価手法は、収集・回収-中間処理-輸送-最終利用・最終処分の一連 の廃棄物処理・リサイクルシステムを LCA、LCC(Life Cycle Costing)の観点 から環境負荷・経済性を包括的に評価する手法である。環境負荷評価は、LCA の考え方を廃棄物処理・リサイクル技術に応用した TLCA の考え方に基づき、

筆者らが別途で研究開発を行っている統合化指標 ELP を導入して評価を行う。

TLCA の概念は図 2.2 に示す。プラントの建設から撤去・リサイクルと、機器 などの資源採取から廃棄・リサイクルを通しての投入・排出が人体や生態系な どに及ぼす環境負荷を定量的に評価する方法である。

廃棄物処理システムの広域化が進んでいく中で、地域レベル、国内レベル、

さらには国外連携レベルでの BAS を検討していくことが必要となる。BAS 評 価手法は、図 2.3 に示すように、自治体等の関係者が現状の廃棄物処理システ ムの現状把握や改善検討、新たな処理システムの策定を行う際の環境負荷・経 済性の実効性評価ツールとして開発することを目的としている。 また、「BAS 評価手法」をパッケージングしてソフトウェアとして「BAS 評価ソフト」の作 成を行う。その際、以下に示す特長を有するソフトとして開発を行った。

① LCA・LCC の観点から収集・回収から最終利用・最終処分まで一連の一

般廃棄物処理システムを評価範囲としていること。

② 評価の基盤となる焼却・溶融等の環境負荷データ(処理規模に応じた投 入/排出量、発電効率等)が、プラントメーカーの設計・計画値に基づき データベース化されていること。

③ 上記の観点から、評価シナリオごとのリサイクル率、エネルギー回収、

最終処分等に関する指標が算出可能であること。

④ さらに、筆者らが開発した環境負荷統合化指標 ELP(Environmental Load Point)を適用することでより総合的な評価・考察が可 能としていること。

資 源 の 採 取

材 料・ 燃 料 等 の 製 造

機 器 等 の 生 産

流 通

・ 使 用

・ 消 費

廃 棄

・ リ サ イ ク ル 機器

建設 運用・保守

撤去・

リサイクル

環境への排出

廃棄物 廃熱

など 大気への排出物 水域への排出物 土壌への排出物

音・振動・臭気

環 境 影 響

人体影響 地球環境 生態影響 労働環境 空間消費 景観変更など 資源・エネルギーの投入 プラント

技術のライフサイクル

人間の健康 生態系の健全性 持続的発展 環 境 目 標

投入

定量評価

排出

枯渇性資源・

エネルギー 更新性資源・

エネルギー 無尽蔵資源・

エネルギー 再生資源・

エネルギー

図2.2 TLCA の概念

ドキュメント内 胡 浩 (ページ 41-44)