5. SAM の導入計画
5.2. 体制及び方針決定
5.2.1. 現状の整理と利用方針、購入方針などの検討
現状を把握した後に実施すべきことは、効果的、効率的にSAM を行うために現状を整理し、
変更すべき点、改善すべき点などを洗い出し、ソフトウェアの利用や購入などSAMに関わる基 本的事項についての方針を検討することである。
なお、一般にこれらの検討はスコープの検討と合わせて実施することも多いため、実務的には 基本的な方針とスコープを合わせて検討することも考えられる。ここでは検討すべき事項を明確 にするため分けて記載している。
(1)ソフトウェアの利用方針
現状を把握すると、様々なソフトウェアが、様々な部署で利用されている状況がわかる。多種 多様な利用は、管理が煩雑になったり、ファイルの互換性や操作性から利用面で混乱を招いたり するなど管理上望ましくない。そこで、組織全体でソフトウェアをどのように利用していくかを 検討しておく必要がある。
具体的には、次のような観点での検討が考えられる。
① 組織として利用すべきソフトウェアか否か
利用されているソフトウェアには、セキュリティ上の問題から利用すべきではないようなソフ トウェアや下記の標準化や契約形態の見直しなどで集約した方がよいと思われるソフトウェアが あると考えられる。そこで、組織として利用すべきソフトウェアについての方針(考え方)を明 確にしておくことが望まれる。ソフトウェアの中には各部署に管理や購入を任せるというものも
あると思われるが、その場合でも方針に従った利用が行われるよう明確にしておくことが必要と なる。個人所有のソフトウェアの利用や個人所有のPCでのソフトウェアの利用などが行われて いる場合もあるので、それらの対応についても検討しておくことが望ましい。また、利用すべき ソフトウェアの検討にはバージョンの統一などの観点も含まれる。検討のポイントとしては次の ようなものが考えられる。また、利用すべきでないソフトウェアを明らかにしておくことも望ま れる。
z セキュリティ上の観点(情報漏洩、セキュリティパッチ・保守可能性、現状システムと の相性、トラブル状況など含む)
z データの互換性、操作の互換性
z 利用状況(実質的に使われていないもの、業務上不要なものなど)
z コストの観点
z 下記標準化、契約形態の見直しによるもの
② 標準化(ソフト、ハード、業務プロセス)
ソフトウェア、ハードウェアが多種多様なものが利用されている場合、その種類や使われ方に 応じた管理が必要になるなど、管理の負荷やコストが大きかったり、部署ごとに異なっている場 合など異動すると操作が変わる、あるいはファイルの互換性がないなど利用上の問題が生じる可 能性もある。こうした問題に対応するために、標準化を検討することが望まれる。
なお、標準化は、SAM を効率的、効果的に実施するために望ましいものであるが、組織の事 業活動への影響についても充分配慮して検討することが必要である。標準化としては、ソフトウ ェアの標準化、ハードウェアの標準化、SAM 管理手続(業務プロセス)の標準化などが考えら れる。
業務の種類、利用部署、場所など幾つかの観点で分類し標準とすべきものを検討する。標準は 一つというものではなく、状況に応じ複数の標準が設定される場合もある。ただし、標準のパタ ーンが多すぎると管理が煩雑になるなどの問題が生じるのでバランスを考慮し検討することが必 要である。また、標準の設定としては、ソフトウェア、ハードウェア、SAM 管理手続などそれ ぞれについて行う場合、組み合わせて行う場合が考えられるので状況に応じて適宜設定すること が望まれる。
③契約等形態
ソフトウェアを利用する場合、例えばパッケージとして購入、プリインストールで購入、ボリ ュームライセンス契約により購入、インターネットからダウンロード、CD-ROM で提供など、
その購入、提供、契約の形態は様々なものがある。こうした状況はやはり、管理上は非効率やコ スト負担の増加などを招く可能性があり望ましくない。契約等形態を見直すことで、効率化、法 的なリスクの軽減、コストの低減などが可能となる場合も考えられる。そこで現状を踏まえ上記 利用方針に合わせ購入、提供、契約の形態などを検討することが望まれる。
④利用形態
標準化、契約形態などの検討に合わせて、利用形態自体を見直すなどの検討することも考えら
れる。利用形態を見直すことによりSAMの管理の効率化、購入コストの削減などが考えられる。
具体的には次のような点が挙げられる。
z サーバなどの整理統合 z OA環境の見直し
z ASP、SaaS、クラウドなどのサービスの利用
(2)管理体制
この段階で、管理体制についても基本的な事項を検討しておくことが望まれる。
具体的には次のような事項の検討が考えられる。
① 管理責任者、管理部署
SAM を担当する責任者、とりまとめ部署を決め、当該責任者、管理部署を中心に導入検討作 業を進めていくことが望まれる。当初より担当する部署を決めておくことにより、運用を踏まえ たSAMの構築が可能となり、スムーズな導入、運用への移行が行えるようになる。
②集中管理、分散管理
SAM をどのように実施していますかというと、各部署に任せていてそれぞれが適切に実施し ているはずだと言うような話はよく聞かれることで、その際、集中管理と分散管理という点が取 り上げられることがある。集中管理は、一元的に一括して管理するような形態、分散管理は、管 理単位を分け管理単位ごとにそれぞれ管理する形態と考えられる。この管理形態は、どちらがい いというものではなく、組織の状況、管理の内容によって適切な形とすべきものである。しかし ながら、組織としての管理、ガバナンスという点を考えると、組織として適切に管理を実現して いる必要がある。分散管理だからそれぞれが実施していればよいということも考えられなくはな いが、それぞれが実施していることが組織全体として適切でなければ、全体としては最適ではな い可能性もある。したがって、全体的な観点からの調整あるいは管理を行うことが必要となって くる。
SAM を考えた場合も、同様に、組織全体を一括管理できる組織もあれば、個々の部署などで 組織の形態や、規模や状況が異なり、一括して管理することは困難な場合も考えられる。一括し て管理することが適当でない場合、個々の部門などの管理単位ごとに管理を任せることになる。
しかし、組織としては、任せるというのだけではなく、組織全体として適切なSAMが実現でき るように、どのような管理を実施すべきかを示すとともに、どのように管理を実施しているかの 状況を把握し、個々の管理単位におけるSAMを統括し、取りまとめ管理する必要がある。
したがって、このような点を踏まえてSAMの管理組織をどのような構成にするかを検討して おくことが重要となる。
○○事業部
SAM統括 管理責任者
・・・
・・・
SAM
管理者 A課
SAM 管理者
B課××
グループ
△△事業部
SAM 担当者
SAM 担当者
SAM 担当者
B課□□
グループ
・・・
・・・
◎◎管理本部 SAM管理単位
SAM統括管理 SAM事務局
(統括管理部署)
SAM委員会
部門SAM 管理責任者
部門SAM 管理責任者
部門SAM 管理責任者
図5-2 SAM管理組織の例
③購買手続、窓口の一本化
SAM を検討するうえで、よく購買手続や窓口の一本化ということが課題として取り上げられ る。ソフトウェアを適切に管理しようとした場合、まず対象資産の発生時点、すなわちソフトウ ェアの取得する時点から把握し、管理しておくことが望ましいということによると考えられる。
購買は、自社開発などの場合を除きソフトウェアのライフサイクルの一番初めの時点ということ になるからである。しかしながら、ソフトウェアを購入する場合、購入時点でSAMが考慮され ておらず、手続なども様々となっているケースが多く見受けられる。そうした状況では、管理す べきソフトウェアを把握できず網羅的で適切な管理が困難となる可能性がある。購買手続や窓口 を一本化することによりソフトウェアの発生時点から把握し、適切なSAMを実現することが望 まれる。なお、一本化としているが、必ずしも一つの必要はなく、効率的に確実に管理可能は手 続が検討されればよいと考えられる。
④関連部署との連携
SAM の業務は、組織の中で独立した業務として存在しているのではなく、ソフトウェアのラ イフサイクルなどを考えると、上記の購買手続と同様に様々な業務と関連を持ち、実現されると ころが多いと考えられる。したがって、SAM に関連するすべての部署と適切な連携がとれるよ うな、体制を検討しておくことが必要となる。具体的にはSAM の管理組織や連絡体制などとし て考慮されることになる。