第5章 現場急行支援システムを活用している消防本部救急隊アンケート調査
5.2 アンケート調査結果
5.2.1 救急隊長・隊員
救急隊長・隊員に対して実施したFASTに関するアンケート調査に対しては、12 消防本部、
救急隊長・隊員より回答が寄せられた。アンケート集計結果を設問ごとに以下に
。 384 人の 整理する
(1)FAST認知度
図5-1は、FASTの認知度を示したも のである。FASTの認知度を確認する設 問に対し回答のあった隊長・隊員384人 のうち376人(98%)がFASTを認知し ていることが確認され、隊長・職員の間 での認知度が高いことが確認された。
図 5-1 FAST 認知度 FAST認知度
376人, 98%
8人,8, 2%
知っている
N=384
(2)救急救命士の資格
図5-2は、救急救命士の資格の有無を 示したものである。救急救命士の資格の 保有状況を確認した設問に対し、回答の あった隊長・隊員377人のうち救急救命 士の資格を有するのは227人(60%)と 本調査の協力者の6割が有資格者であっ た。
救急救命士の資格
150人,40%
227人,60%
無
有
図 5-2 救急救命士の資格
N=377
(3)行いやすくなった応急処置・観察
FAST設置路線を緊急走行中での応急処置・観察について、行いやすくなったと回答 した隊長・隊員を対象とし、どのような応急処置・観察が行いやすくなったかという質 問に対する回答を、消防本部別に整理する。
緊急走行中に行いやすくなった応急処置として、心肺蘇生や嘔吐介助、止血処置等が 挙げられたほか、処置全般と回答した消防本部も多い。緊急走行中に行いやすくなった 観察としては、血圧測定、心電図測定、聴診、瞳孔観察等、個別の観察事項が挙げられ た他、全ての観察と回答した消防本部もある。
また、傷病者の病状悪化の軽減、痛みの軽減といった観点での効果についても回答が 寄せられており、FAST導入により加減速が減り車両の速度が一定するため、揺れが削 減された結果、応急処置・観察が行いやすい車内環境が整備され、結果的に傷病者の負 担軽減にもつながっていることが推測される。
(4)傷病者の観点からのFASTの意義 図5-3は、傷病者の観点からのFAST の意義を示したものである。FAST整備 により救急車両が交差点通過時の停 止・発進が少なくなり傷病者に対して 優しく搬送ができているかを確認する ための設問である。回答のあった隊 長・隊員 368 人のうち、傷病者に優し い搬送ができていると回答したのは 204人(55%)であり、半数以上がFAST の効果として、傷病者にとって優しい 搬送であることを実感していることが 確認された。
図 5-3 傷病者の観点からの FAST の意義 FASTによって傷病者に優しい搬送がで
きているか
164人,45%
204人,55%
いいえ はい
N=368
(5)気付いた点または意見
その他、FAST設置路線整備について気づいた点または意見について確認した設問で ある。ほぼ全調査箇所からFAST設置路線の拡大との意見が寄せられた。また、システ ムの不備事項に対する指摘や、効果に対する不満等の他、効果を高めるための提案など が寄せられている。
5.2.2 機関員
機関員に対して実施したFASTに関するアンケート調査に対して、12消防本部、338 人の機関員より回答が寄せられた。アンケート集計結果を設問ごとに以下に整理する。
(1)FAST認知度
図5-4は、FASTの認知度を示したも のである。FASTの認知度を確認する設 問に対し回答のあった機関員 338 人の うち337人(100%)とほぼ全員がFAST を認知していることが確認された。
FAST認知度 1人,0%
337 人,100%
知っている
図 5-4 FAST 認知度
N=338
(2)FAST設置路線認知度
図5-5は、FAST設置路線の認知度を 示したものである。FAST設置路線の認 知度を確認する設問に対し回答のあっ た機関員338人のうち320人(95%)が 認知しており、認知していないのは 18 人(5%)であった。
FAST設置路線の認知
320人,95%
18人,5% 知らない
知っている
図 5-5 FAST 設置路線認知度
N=338
(3)FAST設置路線の通過経験
図5-6は、FAST設置路線の通過経験 を示したものである。FAST整備路線を 救急走行で通過した経験について確認 する設問に対し、回答のあった機関員 327人のうちFAST設置路線の通過経験 について312人(95%)が経験有と回答 しており、経験無との回答は15人(5%)
であった。
FAST設置路線の通過経験 15人,5%
312 人,95%
無
有
図 5-6 FAST 設置路線の通過経験
N=327
(4)FAST設置路線の走行しやすさ
FAST 設置路線を緊急走行した時、円滑に走行できているかどを確認する設問に対 し、回答のあった機関員315 人のうち102人(32%)が「円滑である」と回答してお り、「円滑でない」の84人(27%)を上回っている。
なお、消防本部別では、3消防本部で「円滑である」と回答した率が8割以上と高い のに対し、他の3消防本部では5割前後が「円滑ではないと」回答しており、傾向に違 いが確認された。これは交通環境等の差が影響しているものと考えられる。
(5)現場到着及び搬送時間
FAST設置路線の走行による現場到着及び搬送時間の短縮効果について、回答のあっ た機関員313人のうち「短縮される」と回答したのは109人(35%)、「短縮されない」
が67人(21%)であった。
(6)FAST導入前の機関員業務経験
図5-7は、FAST導入前の機関員とし て の 業 務 経 験 を 示 し た も の で あ る 。 FASTシステム導入前から機関員業務を 行っていたかどうかを確認する設問で は、回答のあった機関員313人のうち、
FAST導入以前から機関員業務を行って いたのは228人(73%)と本調査の協力 者の7割強を占めている。
問6 FAST導入以前から機関員業務 を行っているか
228 人,73%
85人,27%
している していない
図 5-7 FAST 導入前の機関員業務経験
N=313
(7)赤信号での通過回数
FAST による赤信号通過回数削減効果について、回答のあった機関員 235 人のうち 99人(42%)が「減った」と回答しており、「減らない」の35人(15%)を上回った。
効果に関する実感の違いは、同じ管轄を長い期間担当しているかどうかにも影響される ものであると推測される。
(8)交通渋滞
FASTによる一般車両の交通渋滞の解消効果については、回答のあった機関員人236 のうち55 人(23%)が「解消された」、71 人(30%)が「解消されない」と回答して いる。
FAST の効果として信号で渋滞している車両を進めることで緊急車両の停止を抑制 することであるが、調査結果からはこれも地域の交通環境の差が影響しているものと推 測される。
(9)FAST設置路線緊急走行時の印象
図5-8は、FAST設置路線を緊急走行した際の印象を示したものである。FAST設置 路線緊急走行時の印象については、「走行しやすい」、「事故発生の危険が少ない」とい ったFASTに対する好印象を示す回答が142人、「変わらない」という回答が189人で あった。「特に注意する」という悪印象を示す回答は22人にとどまっている。
「変わらない」という回答が最も多いことに関しては、救急車両の運転に関しては、
刻々と変化する交通状況を判断して操作しているので、多数の機関員がFASTの効果を 実感しにくい環境におかれていることも理由の一つとして考えられる。
なお、好印象を示す回答と、悪印象を示す回答とでは3~4倍の差が確認されており、
FAST導入により救急機関員が走行時に感じるストレスを軽減する効果があるものと考 えられる。
FAST設置路線緊急走行時の印象
変らない 189 走行しやすい 78
特に注意する 22
事故発生の危険が 少ない 64
0 50 100 150 200
悪印象 変らない 好印象
図 5-8 FAST 設置路線緊急走行時の印象
(10)FAST設置路線の選択
緊急走行時にあえてFAST設置路線を選択しているかどうかを確認する設問では、救 急機関員は経験上から最短時間で到着する走行ルートを判断し選択するが、あえて FAST 設置路線を選択した方が最短時間での搬送が可能と判断するだけの情報がない ことが確認された。
(11)FASTの効果
図5-9は、FASTの効果を示したもの である。FASTが傷病者の容態や救急処 置の内容を考慮した運転に効果的かど うかを確認するための設問では、「効果 的」と回答した機関員は、197人(63%)
と、「効果的でない」の 114 人(37%)
を大きく上回っている。
隊員は傷病者の状況に応じた心肺蘇 生等、緊急走行中に不安定な体勢で応急 処置を行うことがあり、機関員は安静搬 送の運転を要求されることがある。この ようなときにFASTは傷病者に対して有 効と機関員が判断しているものと思わ れる。
FASTは傷病者の容態や救急処置の内 容を考慮した運転に効果的か
197 人,63%
114 人,37%
効果的 効果的でない
N=311
図 5-9 FAST の効果
5.3 アンケート調査のまとめ