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IT戦略本部の「重点計画-2007」に基づき、FAST設置路線の救急車両における有効 性の検証を実施した。過去、幾つかの消防機関で検証を行い、平成15 年度には「消防 用車両緊急走行支援システム検討会」が財団法人日本消防設備安全センターにより設置 され報告書が出されている。札幌市消防局で検証したデータでも所要時間が16.5%短縮 され、平均走行速度も19.8%向上し、赤信号遭遇回数も46.1%減少した。印西地区消防 組合消防本部では、日本医科大学千葉北総病院と連携し所要時間を 6.7%短縮し、青信 号での通過率は36%増加したとの本検討委員会で報告があった。

今回、金沢市で効果を検証した結果、14.3%の時間短縮が図られ、かつ、FAST 設置 路線を利用することによって得られる効果は、走行時間の短縮だけではなく揺れの少な い走行安定性の二点が大きいことが検証できた。また、金沢市の場合、駅西救急隊・中 央救急隊・味噌蔵救急隊については消防署及び出張所に面する道路にFASTが設置され、

かつ、金沢市の主たる医療機関である金沢大学医学部附属病院、石川県立中央病院、独 立行政法人国立病院機構金沢医療センターに通じる道路にFASTが設置されていること から、搬送に係わる時間の短縮につながっているものと考えられる。

走行時間の短縮は、FASTにより救急車両の進行を妨げる車両の停滞が少なくなり、

結果として救急車両が赤信号で減速、一時停止する回数が少なくなったことを意味し、

出動から現場到着、搬送開始から病院到着まで迅速な走行を可能としている。心肺機能 停止傷病者、重症傷病者、特にt-PA(脳動脈閉塞に係わる治療法)対象傷病者は発症か ら治療開始までのタイムリミットがあり、現場到着所要時間及び医療機関収容までの時 間の短縮は大変重要な意味合いをもつものである。

また、揺れの少ない走行安定性は、FAST設置路線により、赤信号等によるブレーキ をかける機会が少なくなり、一定速度による走行が可能になったことを意味し、救急隊 の車内活動(観察、救急救命処置)、傷病者への安静を確保する上で一助となっている。

アンケート結果からも傷病者の車酔いが減少したとの意見もあり、加速・減速・停止な どによる傷病者の身体的負担が減少したことにより、傷病者が安静に搬送を行うことが 可能となりFASTの効果はここでも反映されると推察できる。これらのことは、救急隊 員側においても、傷病者の救急救命処置等に配慮した走行ができるという認識がある。

増加する救急需要に対し、国民を安心・安全に医療機関へ早急に搬送する効率的な救 急隊の運用が迫られている。救急車両の出場から病院到着に関する所要時間は年々遅延 する傾向にあることから、「走行時間の短縮」と「揺れの少ない走行安定性」の特徴を 持つFASTは救急業務を行う上で有効な手法のひとつと考えられる。平成19年12月末 現在、FASTの導入地域は全国11道府県13消防本部に及ぶが、本報告書の結果など参 考の上、今後も関係機関と協議を重ねながら、地域事情を踏まえ、効果的かつ効率的な 導入・運用がなされることを期待するものである。

参考資料

参考資料 アンケート自由記入欄の詳細

問:FAST路線を緊急走行中、どのような応急処置・観察が行いやすくなりましたか。具体 的に記載してください。

回答:隊長・隊員

本部 応急処置 観察

A

・ 心肺蘇生(胸骨圧迫、人口呼吸)

・ 処置全般

・ 呼吸状態、心音等聴取

・ 血圧測定

B

・ 心肺蘇生法

・ 嘔吐介助

・ 全身観察が行いやすく、CPR がやりや すい。

・ 発進、停止が少なくなったことにより、傷 病者の状態を全身的に継続観察すること が可能になったと思う。

・ 交差点での加減速が減り車両の速度が一 定するため、揺れも少なく患者や救急隊へ の負担が少なくなった。更に重傷者等の観 察などは、立位での処置が多いため、作業 しやすい。

C

・ 車の揺れによる痛みが軽減する。

・ 車酔いから来る患者の病態悪化の軽 減。

・ その他処置全般

・ 心肺蘇生、止血措置

・ 血圧、脈拍測定

・ 全ての応急措置

・ 車内でのバランスがとりやすくなっ たので、バイタルを測る際の処置が行 いやすくなった。

・ 立位での処置観察

・ 止血処置、固定、器具を使用しての気 道確保の安定

・ 速度が一定であれば車内での活動が しやすく胸骨圧迫など行いやすい。立 位で行うものには有効。

・ 止血処置、酸素投与、体位変換

・ 心電図

・ 血圧測定

・ その他観察全般

・ 全ての観察

・ 観察カードが記入しやすくなった。

・ 血圧測定、SpO2 測定の正確さ、患者への 同様が少なくなり嘔吐が減った。

・ 瞳孔測定、対光反射。脈拍、血圧、心電図 測定。

D

・ 車両の一時停止の回数が減り、CPR 実 施時に有効である。

・ 嘔吐、吐血、介助での対応

・ 体位管理が楽になった。

・ 気道確保(用手、器具)、換気補助、

吸引異物除去

・ 酸素投与

・ 器官挿管

・ 薬剤投与

・ 止血、被覆

・ AED

・ 脊椎固定

・ シーネ固定

・ モニター類を傷病者へ装着する際に、スム ーズに装着できる。

・ 全身観察(特に聴診)

・ 加減速が少なくなり、バイタルサイン(ECG モニター、呼吸、脈拍、血圧、血中酸素飽 和度、瞳孔、体温、JCS、GCS、検温)の観 察が容易になった。

本部 応急処置 観察

E

・ 全て

・ 心肺蘇生や特定行為を行う場合

・ 血圧計測、心電図モニター、静脈路確 保(穿刺)

・ 人工呼吸

・ 傷病者への体位管理

・ 嘔吐時における体位変換、嘔吐介助

・ 急変時における資器材の準備

・ 応急処置全般

CPR

・ 嘔吐防止

・ 胸骨圧迫、被覆、固定等の処置

CPA症例:呼吸管理、胸骨圧迫

・ 全て

・ 立ち上がって機器を操作する必要がある 場合。

・ 脈拍触知

・ 詳細観察(特に外傷時)

・ 血圧測定

・ 聴診

・ 聴診器による呼吸音、血圧測定(交差店内 で赤信号だと拡声器やモータルサイレン での警告を行うが、青信号であればその必 要がなく、車内の雑音を軽減できるため。

・ 瞳孔観察

・ 腹部触診

F

・ 静脈路確保

・ 心肺蘇生法、特に胸骨圧迫時に効果あ り。

・ 聴診

・ 観察資器材を傷病者に装着する際、揺れが 少なく、傷病者に親切である

・ 心電図測定で揺れ等による波形が少なく なったように感じます。

G

CPR 実施時(立位で胸骨圧迫を行う とき)

・ 観察器具の操作

・ 揺れの影響による数値の変動が少ない

H

CPR

・ 酸素投与

・ 体位管理

・ 中腰で対応するので、揺れが少ないこ とは安全面、確実な活動に付して優位

・ 心臓マッサージの位置がずれず、適切 なマッサージが行える。

・ 心配蘇生法が効果的に行いやすくな った。

・ 嘔吐に対する処置が行いやすくなっ た。

・ 胸骨圧迫の深さ、テンポの一定化

・ 吐物による吸引措置

・ 聴診

・ 瞳孔観察

・ 触診

・ 後席から、前方の状況も気になることか ら、スムーズな運行は観察に集中できる。

・ 患者及び家族の乗り物酔いが少なくなっ た。

・ 患者の痛みの軽減が見られ、観察、事情聴 取がしやすくなった。

・ 呼吸の観察(胸部挙上)が行いやすくなっ た。

・ 脈拍・血圧は揺れ、痛みにより変動・測定 不能になるがその頻度が減ったようであ る。

・ 心電図

・ 搬送中、ストレッチャー横で立って移動 し、全身観察が不安なくできる。

・ 傷病者の測定値が比較的安定する(心電 図、SpO2等)

I

・ 体位管理

・ 嘔吐介助(嘔気、嘔吐を訴える傷病者 の介助が行いやすい。

・ 血圧測定

・ 心電図測定(体動の軽減されるため波 形が安定する。

・ 静脈路確保

・ 各応急処置の継続した観察が行いやすい。

問:その他、FASTについて気付いた点または意見がありましたら記載してください。

回答:隊長・隊員

本部 意見

A

・ 道路全般に導入されることを望む。

・ 信号間が短いところ等では、2、3先の信号も同時に青に変化させるなどの対策が必要 である。

B

・ 支援システムを更に整備し範囲を広げて欲しい。

・ 発進、停止が少なくなったことにより、患者室での活動がより的確に行えるようになり、

傷病者には有益であると同時に隊長・隊員に関わる負担も軽減されると思われる。

FAST路線の国道を多く利用しますが、FASTが反応する際は効果的であるがタイミン グ等の原因で反応しない場合がある。

・ 国道のような交通量の多いほかの国道等にもいえるが、その国道等に進入する交差点に FASTを導入してもらうと一層の効果が期待できると思う。

C

・ スムーズに通行できるようになった。

・ 他の緊急車両への整備拡大。

・ 時間短縮負担軽減になると思うのでもっと導入して欲しい。

・ 特定路線だけなので優位性が薄い、全線に設置して欲しい。

・ 整備箇所を増やして欲しい。

・ もっと普及した方がよいと思います。

FASTを送信できたときと出来なかったときがあるため、その状況を知らせる装置があ ればわかりやすい。

・ 具体的に信号が反応しているかどうかがわからないため「有効性」が発揮されているの かどうか分からない。信号機に反応表示か車両側ビーコンに明確な反応(作動)表示を 示してもらいたい。

・ もっと多くの路線でFASTが整備されればよいと思う。

・ 軌道敷を含め、どの車線をどの速度で通行してもFAST効果が得られるように整備が必 要だと思われます。

D

・ FAST は救急業務全般に良い効果を発揮していると思います。

・ 更に広範囲の FAST の整備を望む。

・ 更に多くの FAST 路線が整備されれば、より効果が得られると思う。

・ 限られた区間のみではなく、全ての信号に対して設置すればよりよい救急業務が行える と考えます。

・ 今後も可能な限り FAST の設置を進めてもらいたいと思います。

・ 救急車の交差点通過時の停止、発進が少なく傷病者に優しい搬送ができていると思いま す。

・ 交通量の多い交差点、多車線の道路、狭路により交通渋滞が起こる道路等に取り付けれ ば停止、発進が少なくなり、傷病者に優しい搬送ができる。

・ FAST システム信号機であることを一般車両が認識できるような表示があれば、効果があ がると思います。

・ 一般市民にも事故が起きないよう、FAST 整備をわかるよう表示すべき。

・ 救急車の通過を、FAST システムが反応しているかを、救急隊に判別できるシステムへ変 更をお願いしたい。

・ 機関員の教育もそこまで至っていないのが現状である。

・ どのような速度でどこに至ると信号が変わるなどのシステムの特性を完全に把握し、救 急隊に教育できればこのシステムの恩恵をより一層受けることができると思う。

・ このシステムが整備されれば、設問にもあったように救急車の交差点通過時の揺れを少 なくでき、傷病者のみならず救急隊にとっても有益であると思われるが、このシステム が作動しているのか否かが実施交差点通過時に把握できず、経験上の明確な回答ができ ない状態です。

・ 救急車内から操作可能になれば、もっと効率が良くなるのではないかと思います。

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