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現地リスクの特定と分類

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 85-91)

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次に、現地作業フローとリスクとの関係からリスク事象と考えられるものを特定し、

著者自らが現地調整に参加して、現地での実経験をもとにそれを体系化する。

現地作業フローとしては、機器の搬入から据付までの準備段階、電気工事から電気 試運転までの定修工事段階、再稼働後の客先引渡段階に分けられ、それぞれの制約条 件、環境条件から鑑みてリスク事象として考えられるものをいくつか挙げてみる。

図27に現地作業フローとリスクとの関係を示す。

機器の到着遅延、

紛失・盗難・破損、

手配洩れ、

仕様不備、

現地の法令改正

<リスク事象>

<現地の制約条件>

SV人員不足、

現地作業員不足、

工程短縮、

仕様変更、

機械工程遅延、

現地改造発生 調整項目が多い、

仕様変更が多発、

重大トラブル発生

海外の既設更新工事 START

機器の搬入 機器の保管 機器の据付

電気工事 電気調整 電気試運転

再稼働 END

機械工事

機械試運転 機械調整

SV:スーパーバイザ

外国での現地環境、

社会規範など

人的資源が不足、

工事期間が短い、

仕様変更が多い、

機械制約が多い、

客先要求が多い、

不明箇所が多いなど 性能保証が厳しい、

改善要求が多いなど

図27 現地作業フローとリスクとの関係

この現地リスクの定義に従い、既設プラント更新の国際プロジェクトにおいて“不 確かさ”と思われる事象を識別するため、著者自らがプロジェクトマネジャとして現 地調整支援に参加して現地リスクに関する実態調査を行った。その対象は鉄鋼分野に おける既設プラント更新の国際プロジェクトであり、既存のモータ駆動装置や監視・

制御システムの更新である。

そして、先進諸国で比較的政情が安定した諸外国での環境下において既設プラント 更新工事の現地工事・調整を実施する場合の不確かな事象について抽出を行い、既設 プラント更新の国際プロジェクトにおける現地リスクに限ったものではあるが、その 中で普遍性のあるものを特定、抽出した。

現地リスクの特定方法について以下に記述する。

1) 国際プロジェクトを対象に考えた場合、過去のプラントの知識や経験から言える ことだが、世界的に共通していることは、日本と違って機器の紛失や盗難、現地 到着遅延などが比較的起こり易いということであり、現地での環境の違いによる 機器の破損やトラブル、現地工事業者のストライキや法令の改正といった日本で は考え難い不測の事態も起こり得るということである。また、現地での作業員不 足や作業員のスキル不足、コミュニケーション不足などの問題は当然避けられな いということである。つまり、これらの事象は普遍的に抽出しておくべき不確か な事象であると言える。

2) 既設プラント更新のプロジェクトを対象に考えた場合、現地立上げ工程が短く、

設備の再稼働の期限厳守や早期操業、生産品質の安定化が必須条件となるため、

過去のプラントでの実績などから当然考えておかなければならない事象として、

図面等で見落とされている既設改造分が現地で判明するケースがあることや現 地立上げ工程が非常にタイトであるため機械据付工事や機械調整の遅れが発生 し易いこと、新設の場合と比べ客先からの要求として工程短縮や機能改善要望な どが比較的多く発生するということが挙げられる。つまり、これらの事象は少な からず起こり得る事象であり、現地リスクとして考えておくべきものである。

3) 新設、既設更新の工事種別や国内、国外のプロジェクトの違いなどに関係なく、

プロジェクトの現地立上げにおいて共通していることは、現地調整のヒューマン リソースの問題,製品の出荷品質や手配ミスの問題,現地での仕様変更発生など いくつかの普遍的な不確かな事象が存在するということである。

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抽出した現地リスクをまとめると図28のようになる。

国際プロジェクト

既設プラント更新

・機器の紛失・盗難・破損

・機器の現地到着遅延

・システムの重大トラブル

・現地工事業者のストライキ

・現地の法令改正

・作業員の人員不足

・作業員のスキル不足

・コミュニケーション不足

・現地改造分が判明

・機械工事・調整の工程遅延

・客先からの工程短縮要求

・現地調整項目が多い

・機器の手配洩れ

・機器の仕様不備

・現地スーパー バイザの不足

・現地での仕様変更 共通項

図28 現地リスクの分類図

さらに、現地リスクの特性要因図をまとめると図29のようになる。

図29 現地リスクの特性要因図 機器・工事材料

手配洩れ 仕様不備 現地到着遅延 紛失・盗難・破損 システムの重大トラブル 現

地 リ ス ク

ヒューマンリソース

現地工事業者のストライキ コミュニケーション不足

スーパーバイザの不足 作業員のスキル不足

作業員の人員不足

顧客・機械メーカ 既設設備更新

現地改造分が判明 現地調整項目が多い

現地での仕様変更 機械の工程遅延 現地の法令改正 工程短縮要求

図28 と図 29 については著者自らが海外の既設更新プロジェクトの現地調整に参 加し、そこで得られた情報や経験をもとにリスクと思われるものを抽出し、特に問題 となった事象を中心に体系的にまとめた。また、海外プラント更新プロジェクトでの 過去の事例や現地でのトラブル、国際プロジェクト特有の問題などからリスクを抽出 し、著者自らの経験知と照らし合わせて特性要因図の形でまとめ、国際プロジェクト、

既設プラント更新の観点で分類を行った。

現地リスクをマネジメントの観点から分類すると、次のように分類できる。

1) 機器の現地到着遅延、手配洩れ、仕様不備、紛失・盗難・破損、トラブルなどの 契約出荷品に関する事象や現地スーパーバイザの人員不足、コミュニケーション 力不足などサービス提供側のヒューマンリソース問題に関する事象については、

機器やサービスを提供する契約者側に関係するリスクであるため、基本的にプロ ジェクトの情報、現地環境の状況などをきちんと把握していれば、未然にリスク を検知することが可能であり、プロジェクトで未然に防ぐことが可能なリスク

(内的リスク)である。

2) 客先手配範囲の機器・工事材料の現地到着遅延、手配洩れ、仕様不備などの客先 手配品に関する事象や現地作業員、客先調整員の人員不足、スキル不足などの客 先側のリソースの問題、現地での仕様変更、現地の法令改正、機械の据付工事・

調整の遅延、客先からの工程短縮要求、機能改善要求などの客先や機械メーカに 関する事象については客先や機械メーカに依存するため、プロジェクトで未然に リスクを防ぐことは困難であり、コンティンジェンシープランを策定し、起きて しまった場合の影響の最小化や吸収を行う必要がある。さらに、現地工事業者の ストライキやシステムの重大トラブルなどの事象については実際に起こり得る リスクであり、類似のプロジェクトから予測はできるが、具体的根拠がないため 発生するかどうかが不明である。これはプロジェクトでは未然にリスクを検知す ることが難しく、プロジェクトで未然に防ぐことが困難なリスク(外的リスク)

である。

既設プラント更新の国際プロジェクトにおける現地リスクとして考えておくべき リスク事象とその根拠を表15に示す。表15 は、図28と図29に示したリスク事象 の根拠を記載しており、一般的に海外での既設更新プロジェクトを考えた場合、現地 リスクとして考えておかなければならない事象を抽出した。

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表15 現地でのリスク事象とその根拠

リスク事象 リスクと考える根拠

契約出荷品の現地到着遅延 プラントの立上げが海外となるため、機器の輸送や通関な どの手続きに遅れを生じるケースが多々ある。

契約出荷品の手配洩れ発生 手配区分の確認洩れや単純な手配ミスなどで機器の手配 や出荷が遅れるケースがある。

契約出荷品の仕様不備発生 仕様の検討が不十分で客先との確認が洩れたり、不足した りするケースがある。

契約出荷品の紛失・盗難・破

外国でのプラント立上げの場合、地域によっては保管の不 備や取扱いの不備などから機器の盗難や紛失、環境の違い などによる機器の破損等も考えられる。

現地スーパーバイザの不足 プロジェクトの置かれている状況で場合によっては人員 の不足や適材適所の人員配置ができないケースが生じる。

現地スーパーバイザのコミュ ニケーション不足

外国でのプラント立上げの場合、習慣や文化の違いなど で、工事業者や機械メーカの作業員とのコミュニケーショ ンがうまく取れないケースがある。

既設設備の現地改造分が判明 既設更新工事の場合、十分な既設調査ができず、客先から の情報も不足するケースが多々ある。

システムの現地調整項目が多

既設更新工事の場合、客先からの要求仕様も高度になり、

高いレベルの調整を要求されるケースがある。

客先手配機器、工事材料の現 地到着遅延

客先の都合により機器や工事材料の到着遅れが発生する 場合がある。

客先手配機器、工事材料の手 配洩れ発生

客先手配ミスによる突然の機器や工事材料の手配洩れが 発生する場合」がある。

客先手配機器の仕様不備発生 客先の検討不足による手配品の仕様間違いがよくある。

現地作業員、客先調整員の不

外国でのプラント立上げの場合、他プラントと輻輳して現 場の作業者を確保できない場合がある。

現地作業員、客先調整員のス キル不足

外国でのプラント立上げの場合、現場に不慣れな作業者、

又は経験の少ない作業者を就かせることもあり、作業者の スキルに問題がある。

客先からの工程短縮要求 既設設備の再稼働を早めるため、場合によっては客先上層 部から工期短縮の要請が出される。

客先の現地での仕様変更が多

操業からの既設の機能改善要求があり、客先からの突然の 仕様変更が発生する。

機械据付工事・調整の遅延 既設更新工事の場合、現地工程が非常にタイトであるた め、機械据付工事や機械調整に遅れが発生し易い。

機械メーカの現地での仕様変 更が多発

現地での機械メーカからの突然の仕様変更が発生する。

現地の法令改正 外国での諸事情による突然の法改正が発生する。

現地工事業者のストライキ発

外国労働者の突然の労働テデモや労働ストライキが起こる 場合がある。

システムの重大トラブル発生 過去の事例から起こらないとは言い切れない事象である。

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