鉄鋼分野における現地リスクマネジメントの現状分析によると、サイトマネジャが 現地でのリスク特定と分析を行い、プロジェクトマネジャがリスク対策と処理を行う 分業制となっている。
そこで、プロジェクトマネジャの現地リスクの認知度向上と迅速な対応、及び現地 リスクまで含めたリスクの一元管理を実現するためにプロジェクトマネジャによる 現地リスクマネジメントのプロセスモデルを構築する。図26にその概念図を示す。
図26 現地リスクマネジメントプロセスの概念図
現地リスクマネジメントのプロセスモデルと各プロセスでの処理内容について以 下に簡単に説明する。また、各プロセスの詳細な方法論については4.2以降で詳しく 説明する。
1) リスクの特定と分類では、過去の事例やプロジェクトマネジャの経験的知識から 既設プラント更新の国際プロジェクトにおいて現地リスクとして考えておくべき 事象を抽出して、普遍的な事象として扱うべきものを選別する。さらに、それを プロジェクトで未然に防ぐことが可能なリスクと困難なリスクに分類し、現地リ スク定義書としてまとめることで現地リスクを一般化でき、プロジェクトマネジ ャが認知可能となる。
2) リスク分析では、サイトマネジャの経験により実行されてきた現地リスク分析を リスクモデル[鈴木 04]に記載されたリスク因子と結果の重大さに至る経路と結果 の重大性との関係を用いて定量的分析手法を提案する。リスク因子と結果の重大 さに至る経路については、プロジェクトで未然に防ぐことが可能なリスクのみ特 定することが可能である。そこで、これらのリスク因子と経路を明らかにして、
リスク発生の可能性の重み付けを行うためのリスク評価スコアシートを作成する。
また、結果の重大性については、現地立上げ工程への影響度を考慮してレベルを 5段階で簡易的に評価し、リスク評価スコアシートを作成する。これにより現地 リスクの可視化ができ、どのリスクに注意すべきか、どの程度のリスクかを簡易 的に判断することができる。
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3) リスク対策では、リスクの連鎖を考え、リスクの検知・回避の可能性のみならず、
結果の重大性の軽減の可能性についても視野に入れて対策を検討する。そして、
プロジェクトマネジャがこれまで経験的に実施してきたリスク対策の具体策を挙 げ、その可能性についての重み付けをするためのリスク評価スコアシートを作成 する。これによりリスク対策の点数制による簡易的な評価ができるようになり、
評価結果を可視化することで実践的なリスク対応計画が立てられる。
4) リスク評価では、リスク分析とリスク対策で得られたリスク評価スコアシートを 使ってこれまでサイトマネジャやプロジェクトマネジャの経験によって実行され てきた現地リスクの定量的評価を行うことで簡易的に各リスク事象の重み付けを 行い、現地リスクの評価結果を可視化できる。これにより現地メンバとプロジェ クトメンバでリスクを共有化でき、個々のリスク対策の意義と重点施策を示すこ とができる。
5) リスク監視では、現地立上げ工程の各フェーズ(電気工事、電気調整、試験運転、
操業運転、性能試験)とリスク事象との関連性を考えながらリスク評価スコアシ ートを用いてリスク事象の評価を行い、各フェーズでのリスク評価点をリスク管 理表にまとめ、リスク評価結果の可視化とリスク総合評価点の傾向分析ができる ようになる。これにより、今までサイトマネジャやプロジェクトマネジャの経験 的知識やスキルに頼って実行されてきた現地リスクマネジメントに関して、この プロセスモデルを適用することで簡易的な現地リスクの分析、評価ができるよう になり、リスク対策まで含めた現地リスクマネジメントのフレームワークと現地 リスクの定量的な判断基準(リスクの許容範囲や管理目標など)を設定すること ができる。そして、今後はプロジェクトマネジャ主体の現地リスクマネジメント のプロセスモデルとして活用できる。