第 62 回九州地区獣医師大会並びに平成 25 年度獣医学術九州地区学会が、平成 25 年 10 月 12 日(土)
~ 13 日(日)の2日間、本会が主催し九州各県・市獣医師会の共催で、本年7月に完成した「ホルトホー ル大分」で開催されました。大会には九州各県・市獣医師会会員をはじめ 900 名を超える参加者を得て盛 大に開催されました。
大会では、「九州から実現しよう! 人と動物が共生できる豊かで健全な社会を」のテーマのもと、下記 の4議案が提案、可決され、日本獣医師会を通じて関係省庁へ要請されることになりました。
三学会については、本県から日本産業動物獣医学会7題、日本小動物獣医学会9題、日本獣医公衆衛生学 会7題の計 23 題の発表がありました。産業動物獣医学会では、地区学会長賞1題、九州地区獣医師会連合 会長賞2題、小動物獣医学会では地区学会長賞1題、フロアー賞1題、獣医公衆衛生学会で地区学会長賞1 題と多くの発表者が受賞されました。
第1号議案
産業動物診療獣医師及び勤務獣医師の処遇改善と人材確保対策について
近年、獣医師及び獣医療は、人と動物の共通感染症対策や食品の安全・安心の確保をはじめ、畜水産業の 生産振興と安全・安心な生産物の安定的な供給に深く関与するとともに、動物愛護や福祉・自然環境の保護 まで、その資格と高度な知識や技術を駆使して広範囲な業務に従事し、社会の経済発展と広く国民生活の安 定に重要な役割を担っている。
また、世界的な物流のグローバル化の中、中国における口蹄疫の発生や鳥インフルエンザの浸潤、台湾に おいては 52 年ぶりに狂犬病が発生するなど、国内における越境性感染症の発生も危惧されるなど、これら に対する危機管理対応が求められている。
このような中、産業動物診療獣医師及び勤務獣医師は、休日や夜間業務など不規則な勤務対応を余儀なく されることも多く、獣医学教育6年制に見合う処遇の改善が進展しないことなどから、就業希望者は少なく 安定的な確保が困難となっており、業務に支障を来している。
地方自治体等においては、勤務獣医師が関与すべき多くの事業の推進に支障を来し、また、産業動物診療 獣医師の減少による畜産振興への影響が危惧され、それぞれの地方自治体は獣医師の人材確保のため修学資 金の貸与制度や獣医学系大学の訪問活動などの様々な取り組みを行っているが、国においても積極的な獣医 師確保支援対策が必要である。
さらに、獣医師自ら行動し、専門職として社会の要請に応えるためには、重要な職責に見合った処遇の改 善が必要であり、下記事項について特段の配慮を要請する。
記
1 公務員獣医師の給与改善については、医療職(一)表に準ずる医療職給料表を新設すること。
2 産業動物診療の基盤となる家畜共済制度を充実し、魅力ある産業動物診療体制(制度・運営)を確立す ること。
3 勤務獣医師の職場における管理職ポストへの積極的な登用制度を確立すること。
4 産業動物診療獣医師及び勤務獣医師確保支援対策として、獣医学系大学において獣医師の就業優先入学 枠の導入を図ること。
第2号議案
獣医療提供体制の推進と関係機関等との連携強化について
平成 22 年に発生した口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザの対応に際し、防疫活動や経営再建対策に多大 な人材と経費が投入されたところである。特に、口蹄疫が発生した宮崎県では飼育農家はもとより地域社会 全体に甚大な被害が生じた。
現在、発生地域の復興は、多くの人や関係機関・団体支援のもとで進められてきているが、これまで家畜 の飼養再開は6割程度に留まっており、現在も地域経済に大きな影響を及ぼしている。また、本年7月から は TPP 交渉が開始されており、交渉の結果如何では地域の農林水産業は計り知れない影響を受けることが 考えられる。
このような中、家畜の防疫対策は、これまでの教訓を生かし海外からの悪性伝染病の侵入防止や発生予防 のため、国及び地方公共団体等が一丸となって防疫の強化対策を講じているものの、近隣諸国では依然とし て口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザ、狂犬病などの悪性伝染病が発生しており、国内への侵入が危惧され ることから、水際でのさらなる検疫強化や家畜飼養農場への侵入防止及びまん延防止などの防疫体制の強化 が必要である。
安全・安心な食料の安定供給を図るため、農畜産物等の食の安全・安心の確保とともに、人と動物の共通 感染症や海外悪性伝染病に対する危機管理対策の強化が重要である。
改めて、海外からの悪性伝染病侵入阻止に向けて、産業動物臨床、小動物臨床、家畜衛生、公衆衛生、獣 医学術等のそれぞれの専門分野の獣医師がこれらの社会的要請に的確に応えていくために関係機関との連携 をさらに密にして、獣医師が担うそれぞれの獣医療提供の質の確保と連帯感を強化する必要がある。
記
1 越境性感染症に対する水際対策の更なる強化を図ること。
2 家畜飼養農場への家畜伝染病の侵入及びまん延防止対策に向け、関係機関等の連携強化を図ること。
第3号議案
狂犬病予防対策の強化について
狂犬病は、日本やオーストラリア、ハワイなど、ごく一部の国や地域を除き、世界中で広く発生しており、
主な流行地域はアジア、南米、アフリカで、全世界では毎年約5万人の命が失なわれている最も危険かつ重 要な疾病である。
本年 7 月には、日本と並び世界でも数少ない狂犬病の清浄国であった台湾で、52 年ぶりに3匹の野生の イタチアナグマが狂犬病に感染していたことが確認され、ペットや犬、猫に予防注射をするためのワクチン を緊急輸入する事態になっている。
我が国では昭和 31 年を最後に狂犬病の発生はなく、世界的にも例外的な清浄国であるが、全国における 狂犬病予防注射の推定実施率は約 40%(全国ペットフード工業会資料)であるといわれており、年々その 接種率は低下傾向にある。
狂犬病は、犬へ狂犬病予防注射を実施することで、人への感染が防止できることから、予防注射の接種率 を上げることが最大の予防対策である。
しかしながら、現状は十分な接種率の向上対策が図られているとは言い難く、また地域における的確な登 録頭数の把握が不十分であると考えられる。
このため、狂犬病予防法に基づく犬の登録制度にマイクロチップの装着の義務化を取り入れた確実な登録 頭数の把握や予防注射接種率の向上に向け、国及び地方行政との連携を強化し普及・啓発に努めることが重
記
1 国は狂犬病予防法に基づき地方行政(県・市町村)との連携を強化するとともに、年間を通じた実効性 のある広報活動等により予防注射接種率の向上に努めること。
2 狂犬病予防法に基づく犬の登録制度にマイクロチップの装着を義務付け、確実な飼育頭数の把握に努め ること。
3 関係業界に対して狂犬病予防対策の普及・啓発・広報活動の協力を強く要請すること。
第4号議案
災害時におけるペット同行避難に対する理解の醸成について
平成 23 年3月に発生した東日本大震災とそれに継発した原発事故により多くの人々とともに、飼育され ていたペットも同行避難したが、ペット用の避難施設が無く放置を余儀なくされたペットも多くいたと聞い ている。
災害が発生した場合、ペットとして飼育している犬や猫を連れて避難が出来るかどうかは、ペットを飼っ ている人の大きな悩みである。
また、避難所には動物が苦手な人も身を寄せるため、ペット用の避難場所やシェルターが必要である。
環境省は、災害時におけるペットとの同行避難を位置づけしているが、動物を飼育していない人の理解は 不十分であり、地方自治体の避難マニュアル等に同行避難に対するペット避難場所やシェルターの設置場所 等を明記するとともに、ペットの避難に対する理解の醸成を図ることが必要である
記
1 ペット用の避難場所やシェルターを設置し、避難マニュアル等に明記すること。
2 ペット同行避難に対する理解の醸成を図るとともに、同行避難訓練を実施すること。