4. エネルギー特区
5.1 燃料電池
5. 燃料電池車の普及に向けた取組み
図3.4に示す通り、現在は石油の35%を自動車の燃料として利用している。よって、
二酸化炭素の排出量が少ない自動車を開発する必要性がある。一次エネルギーを電池 に蓄えて運転する自動車は、電気自動車や燃料電池自動車などがある。
電気自動車は、走行中に排出ガスを全く出さず減速時にエネルギーを回収するなど の利点があるが、走行距離が短く積載量が少ないことなどにより用途が限定されるこ とや、普通充電の充電時間は 8 時間程度であり、急速充電の充電時間であっても 30 分かかるなどの難点もあり、本研究では充電不要な水素エネルギーを利用する燃料電 池自動車に着目する。
出典:社団法人日本ガス協会
出典:日本自動車研究所
図5.1 水の電気分解と燃料電池の原理
また、水素は宇宙で最も豊富にある元素である。質量では宇宙全体の 75%を占め、
原子の数は全原子の90%以上を占めていると言われる。これらのほとんどは恒星ある いはガス型惑星の構成物として存在している。宇宙では大量に存在しているにもかか わらず、地球の大気中には1ppm以下とほとんど存在していない。地球上で水素を作 る場合、水を主な原料とする。有機物が腐敗する際の副産物でできるメタンも水素の 重要な原料となっている。
Hydrogenは、フランス語で「水を作る物」の意味があり、これはギリシャ語のhudôr
(水)とgennen(発生)を合わせた言葉である。水素を水素として発見したのは1776
年、ヘンリー・キャベンディッシュ(Henry Cavendish)であり、アントワーヌ・ラボ アジエ(Antoine Lavoisier)が命名した。
燃料電池の本体であるセル・スタックは、空気極と燃料極は気体を通す構造をして いて、反応に必要な酸素や水素がその中を通る。水素は電極中の触媒の働きで、電子 を切り離して水素イオンになる。電解質はイオンしか通さないという性質を持ってい るため、切り離された電子は外に出る。電解質の中を移動した水素イオンは、反対側
の電極に送られた酸素と、外部から電線(外部回路)を通じて戻ってきた電子と反応 し、水になる。ひとつのセルが作れる電気は電圧約 0.7V であり、大きな電気を作る ためにはセルを積み重ねる。例えば1kWの電気を作るには、セルを約50枚積み重ね る。この「反応に関与する電子が外部回路を通ること」が原理の重要なポイントであ り、電子が電線を移動することにより電気が発生する37。
水素が爆発する危険性については、燃料電池車では密閉した装置の中で使用してい るため、通常の使用範囲では爆発の危険はない。もし水素が漏れた場合であっても、
水素は軽い気体で拡散するスピードが気体の中では最速なため、爆発する濃度には成 りにくい性質がある。ただし、車庫などの密閉空間では換気を望まれる38。
出典:社団法人日本ガス協会
図5.2 セル・スタックにおける流れ
37 社団法人日本ガス協会 燃料電池 燃料電池のしくみ http://www.gas.or.jp/default.html
38 財団法人日本自動車研究所 くるま学園 燃料電池車について http://www.jari.or.jp/ja/denki/pdf/04_21-26.pdf
出典:社団法人日本ガス協会
図5.3 燃料電池システムの詳細図
5.1.2 燃料電池の歴史と今後のスケジュール
1801年、イギリスのデービー卿により燃料電池のアイデアが発表される。その後 1838年、イギリスのウィリアム・ロバート・グローブ(William Robert Grove)卿によ り燃料電池による発電実験の成功、そしてイギリスのフランシス・トーマス・ベーコ
ン(Francis Thomas Bacon)卿が燃料電池による特許を取得したことにより、燃料電池 が認知されるようになる。1965年以降、燃料電池の開発の主導権はアメリカに移り、
主に宇宙用燃料電池として開発が行われてきた。その技術開発を生かすべく、1967 年頃より小容量燃料電池の商業化が開始された。日本では、1978年にムーンライト 計画、1993年のニューサンシャイン計画など、政府主導により民生用製品の開発が 行われており、その結果2002年には燃料電池自動車の試験的市販が行われた39。
出典:社団法人日本ガス協会
図5.4 今後のスケジュール
39 研究・技術計画学会 第19回年次学術学会 燃料電池の技術ロードマッピング